2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~   作:イリーム

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7話 王国ランカーの集結 その1

 

 

「はっ! 今、何時だ!?」

 

 信也はベッドの中から跳ね起きるように上体を起こした。窓からは太陽の光が差し込んでいる。場所は「オレゴン」の宿屋……自分が昨日、通された部屋だ。寝て起きたら、日本の自宅に逆戻りだったということはなかったようで、信也としても安心した。

 

 

「頭はかなりスッキリしてる……半日くらい寝てたかもな。そういえば、風呂入ってないな……替えの下着はないし……まあ、買えばいいか」

 

 

 信也は下着の替えなども調達する必要があると感じ、とりあえず外へと出ることにした。

 

 

「あ、信也先輩! おはようございまーす!」

 

 信也が眠い目をこすりながらロビーへと降りてくると、元気なファリスの声がこだました。信也にとっては目覚まし時計代わりとも言える。一気に目が覚めたような気がした。

 

 

「おっす、ファリス……」

「なんだか眠そうですね? まだ寝足りませんか?」

「いや、スッキリはしてるから大丈夫だ。ちょっと買い物行ってくる」

 

 ファリスは信也の言葉に疑問の表情になっていた。

 

「買い物ですか?」

「着替えとかほしい」

「先輩、お風呂入ってないんですか? ばっちいですよ?」

「ばっちいとか言うな。まあ、ファリスが言うと可愛いから良しとするか」

「なに言ってるんですか、もうっ」

 

 ある程度気を許している信也に言われたからか、可愛いという言葉に少し照れたようなしぐさを見せるファリス。本日も美しく出ている太ももに目を向けながら、信也はファリスをからかっていた。

 

「じゃあ、雑貨屋で着替えなどを買って、お風呂入ってからランカーの集会場に行きましょうか」

「お前……なんでそれを」

 

 信也は言葉の途中で察しが付いた。おそらく、昨日の段階でレイチェルが彼女に話したのだろうと。

 

「レイチェルから聞いてたか?」

「はい。どのみち、私も集会場には行く予定でしたし。丁度いいですから、一緒に行きましょうか」

「悪いな、案内してくれるか?」

「はい、お安い御用です」

 

 信也はファリスに感謝しつつ、着替えを買える場所と、集会場までの道案内をお願いすることにした。

 

 

 

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「ええっと、ここが、王国ランカーが集う集会場になります」

 

 城や、ギルドの近くの建物……ステンドグラスが美しいその建物は、意外にも巨大でありギルド以上の面積を誇るものであった。雑貨屋で信也の着替えなどを購入した二人はそのまま、集会場に向かっていたのだ。

 

 この中に自分よりランキングの高い者が居る……信也は武者震いをしていた。

 

「緊張してます、先輩?」

「ま、少しな。ただ、それ以上に楽しみだ」

「えへへ、頼もしいですよ。では、20位以内のランカーの皆さんが集まる部屋に行ってみましょうか」

 

 ファリスに促され、信也もステンドグラスの入り口に入って行った。内部はまさに集会場と呼ぶにふさわしい広さを誇っていた。所々に設けられているソファーにはランカーと思われる人物が座っていたりする。

 

 ギルドが依頼を受ける場だとすれば、集会場はランカー同士の情報交換の場といったところだろうか。ファリスによって連れて行かれる間、信也はそのような印象を感じていた。

 

「あの突き当りの部屋が、20位以内のランカーの集まる場所ですよ」

 

 一際大きな両開きの扉。その向こうに、ランカーの上位者たちが集っているとファリスは言った。

 

 信也は自分でも驚くほどの興奮に戸惑っていた。どんな人物が集っているのか、ランキング1位を目指す決心を固めた反動だろうか、上位のランカーの雰囲気というものを無性に味わいたくなっていたのだ。

 

「入り口付近に居たランカーはもっと下の連中なのか?」

「そうですね。王国ランカー自体、1000人以上居ますし。ランキングとして数えられるのは100位までですよ」

 

 100位まで……例え100位であっても、絶対数が1000人以上いるのであれば上位と言える。そう考えると、27位というランクはかなり高い位置ということになる。

 

もしかすると、自分は相当に強いのではないか……そんな気持ちが信也の中を巡った。昨日、ファリスが自分よりも強いと言った言葉もお世辞ではないのかもしれない。

 

 

「まあ、その辺は後で考えるか。それより、俺も中へ入ってもいいんだよな?」

「はい、もちろんです。信也先輩は実質的には20位以内みたいなものですし」

 

 ファリスは信也に対してそう言った。昨日のプライマルビーストを倒した功績でそう考えているのだろう。

 

「それじゃあ行きましょうか。多分、何人か人も居ると思いますし……あれ?」

 

 ファリスが歩を進めた為に、信也もそれに続いた。しかし、彼女は唐突に歩みを止める。

 

 その原因は、20位以内のランカーの部屋の前の人物だ。少し揉め事が起こっていた。

 

「てめぇ、俺が誰だかわかってんのか? 注文した食い物とは違う物を持って来やがって」

「も、申し訳ありません……テオ様……! すぐに正しい商品をお持ちいたします!」

 

 信也は状況は呑み込めていなかったが、どうやらテオと名乗る人物がメイドの格好をした女性に恫喝しているようだ。メイドが自分が望んだ物とは違う物を持ってきたことに腹を立てているのだろう。

 

「間違いは身体で償ってもらおうか? なかなか美人じゃねぇか」

「ええっ!? そ、それは……お許しを……!」

 

 テオは信じられない要求をしてきたが、メイドの態度も弱々しい。テオの脅しに完全に屈している様子だ。このままでは、メイドの女性が手籠めにされかねない。

 

 信也は自然と歩みを早めた。ファリスの横を通り過ぎ、テオとメイドの前まで足早に移動していた。

 

「おい、そのくらいにしたらどうだ?」

「あん? なんだてめぇは……見ない顔だな」

 

 いきなり声をかけられたテオは鋭い目線を信也に向けた。赤い髪をオールバックにしている男。顔は非常に強面であり、幾つかの古傷が見える。青いサングラスを付けており、サングラス越しでも目つきの鋭さは変わらなかった。

 

 黒いズボンに黒いシャツ、金のネックレスを首から下げたラフな男だが、そこから放たれる威圧感は、プライマルビーストよりもさらに大きい。

 

「聞いている限り、そちらのメイドさんが注文を間違えたみたいだが、それの償いが身体なんて、あまりにそぐわないだろ?」

「てめぇ、俺に意見するなんていい度胸じゃねぇか。ぶっ殺してやろうか?」

 

 テオと呼ばれた男は眉間にしわを寄せて、信也の胸倉を掴む。一触即発の状況ではあるが、信也はこの程度では怯まなかった。

 

「離せよ……!」

「ん……? なんのつもりだ?」

 

 テオはそのまま信也の胸倉を掴み続けていたが、彼の言葉の異様さには警戒心を覚えたのか、少し腕の力を緩めていた。

 

「テオ、そこまでにしておいたらどうですか?」

 

 そんな時、聞こえる優しげな声。いつの間にかテオの背後の扉は全開になっており、そこから一人の青年が現れていた。

 

「ネプトか……」

「無駄に評判を下げることもないと思うが……いや、君の場合は、それ以上下がりませんかね」

「てめぇ……殺すぞ?」

 

 テオは信也の胸倉を掴んでいた腕を離し、ネプトと呼ばれた男に向き直る。ネプトはテオとは180度印象の違う男として、信也には映っていた。

 

 目は細いが優しげな表情をしており、おかっぱ頭を思わせる髪型をしている。ゆったりとした厚手のローブを身に纏い、その外観からは魔導師の印象が非常に強い。

 

「こんなところで凄んでも意味はないですよ。さて、ファリスさんも来たようですし、20位以内の主要なランカーは揃ったと言えますかね」

 

 テオの恫喝をネプトは軽くいなした。それだけでも彼が只者ではないことを感じ取る信也。佇まいからも強者であることが伺えた。テオは怒りの矛先を見失ったのか、その場で舌打ちをして部屋の中へと入って行った。

 

 

「先輩、大丈夫ですか?」

「ん? 大丈夫だよ」

「意外と無茶しますよね、先輩って」

 

 ファリスは心配している様子で信也の顔を覗き込んでいた。

 

「心配かけて悪いな。ところで、テオとネプトも20位以内のランカーなんだろ?」

「はい、そうですね。何位なのかはわからないですけど」

 

 ファリスは頷いたが、信也も彼らの雰囲気から上位ランカーであることは見抜いていた。テオに対して、「言霊の力」は通用しなかったのだ。20位以内というのは確実だろう。

 

「あ、申し訳ありません。私の為に……!」

「いや、気にしなくていいですよ」

 

 信也はメイドに対して優しく微笑みながら言った。メイドも嬉しそうに何度もお礼を言いながら、持ち場へと戻って行った。

 

 信也は少し良いことをしたと感じながら、テオとネプトが入って行ったランキング20位以内の連中が集まる部屋を見る。

 

 全開の扉の奥からは何人かの人物の姿が見えた。信也は不安以上に、強者に出会える喜びを感じながら、室内へと脚を踏み入れた。

 

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