2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~ 作:イリーム
「魔族の情報? ネプト、あんたそれ本当でしょうね?」
「情報は本当さ。しかし、その情報自体が正しいかどうかはわからないよ」
「それでもいいわ。聞かせて」
魔族という言葉に、ドロシー以外もネプトの言葉を待っている様子であった。彼女の態度は他の人物とは一線を画していたが。
「アルファ大森林の西、50キロメートルの地点に砦を設けてあるのは知っているだろ? あれは、さらに西のアルフォンスの森からの魔族の襲撃を想定して造られたものではあるが……アルフォンスの森からの瘴気がさらに濃くなっているとの情報がある」
ドロシー達は納得したような表情をしているが、信也だけは意味が分かっていない。ネプトの言葉の中で理解できたのはアルファ大森林のことだ。
アルファ大森林の西へ50キロ行ったところには王国の砦が設けられていて、魔族の襲撃に備えている。ここまでは理解ができた。
「アルフォンスの森に魔族の居城があるっていうのよね?」
「噂では。だが、あの幻惑の森でそこまで辿りついた者はいないね。君のその脚も治せないよ」
「………」
ネプトの言葉にドロシーは無言になった。歯を食いしばっているようにも見える。
「そしてもう一つは……極秘の依頼で魔族絡みのものがあるよ。詳しくはギルドに聞けばわかるさ。定例会議の新情報は私からは以上」
ネプトはそれだけ言うと、机に出していた幾つかの資料を片づけ始めた。しばらくの間、沈黙が流れる。
「その魔族絡みの依頼、達成すれば報酬やランキングに影響する度合いも高いのか?」
「それはもちろん」
信也はネプトに話しかけた。いきなり知らない人物からの質問だったが、彼は普通に答えた。
「君は……見ない顔だが、新入りかい?」
「昨日、ランカーになったばかりだからな。まだ27位だけど、すぐに上に行くからよろしくな」
信也としては内心は緊張していたが、最初にインパクトを与えることは重要だと考え、わざと自らのランキングを公開した。
「はははははっ! たかが、27位で俺に喧嘩売りやがったのか? こいつは笑えるぜ!」
信也としても予想はしていたが、テオの大声が室内に響いた。他の者の視線も決して好意的ではない。
「お兄さん、随分余裕だけどさ。そう言って大した成果上げられず脱落していった人も多いんだよ? 僕も何人も見て来たし」
眠たそうな印象のあるニグレドは信也に対して口を開くが、バカにしたような口ぶりだ。上位者からすれば、調子こいた新人の戯言と映ってしまうのだろう。
「ま、でかい口たたきたいなら、魔族の依頼をこなせばいいんじゃない? 実力の伴わない男の自信家とか、見てて吐き気してくるし」
「すげぇ言われようだ……これは、多少は認めてもらわないとな。沽券に関わる気がしてきたぜ」
「すごいバカっぽいわよ、あんた?」
「……」
信也はドロシーと話していると精神を病みそうな気がしてきた。テオとは違う意味での毒舌……第1印象が悪かった為か、彼女も容赦してくれる気配がない。
「ファリス、俺はそろそろ行くわ」
「え、もう大丈夫ですか? なら、私も行きますね。それではみなさん、またお会いしましょう!」
信也はそのまま部屋を出ていく。その後ろから犬みたいについて行くのは、ランキング7位のファリスだ。信也は狙ったわけではないが、その光景は室内の者たちの目に、大きな印象として残った。
「ファリスが懐いているよ。……あのお兄さん、もしかして結構すごいんじゃ」
「実力は27位レベルではなさそうだね。お手並み拝見と行こうか」
ファリスが懐いているという事実だけは、信也を見直すポイントになったようだ。この世界では挑戦者の信也。彼の挑戦が始まったのはこの時からと言えるだろう。
「すいませ~ん、極秘任務について聞きたいんですけど」
集会場を出た信也とファリスはギルドに足を運んでいた。ネプトからの情報を頼りに早速、依頼を受ける心構えだ。
「これはファリスさん。極秘の任務はございますが、貴族の方からの依頼になりますので、別室に参りましょう」
受付の者はそう言って、信也とファリスの二人をギルドの奥へと通した。依頼は通常、誰もが見れる形で受付の前に載っているが、極秘の依頼や知られたくない依頼などは奥に招かれて詳細を知ることになる。
そして、通された部屋にはいかにもお金持ちの紳士といった風貌の男性の姿があった。30代から40代の年齢だろうか。口髭をお洒落に生やした金髪の人物は、信也達が来たのを見ると同時に立ち上がる。
「ああ、早速引き受けてくれる方が居ましたか、一度帰ろうかと考えていましたが……これはありがたい」
「貴族様ですよね? なんだか初めて見たかな~」
陽気に男性の姿を見て喜んでいるファリス。彼女は権力者が相手でも態度は変わらないらしい。
「バルトシアン王国の貴族の方ですよね?」
「うむ、そのとおりだ。ノイモント家の当主を務めているよ。爵位は伯爵だ」
伯爵……それなりの地位の者ではないかと考える信也。しかし、バルトシアン王国の貴族がどこまでの権力を有しているのかはわからないが。
「バルトシアン王国での貴族は、それほど大きな地位を持っているわけではないよ。特に王国ランカーの君たちにとっては、馴染みも薄いだろう。気楽に依頼の話をしようじゃないか」
「そう言ってもらえると助かります。堅苦しいのは苦手なもので」
ノイモントは信也の言葉に笑いを見せながら、再びソファーに腰を下ろした。そんな彼の前方のソファーに信也とファリスも腰を下ろす。
その後、ノイモントは依頼の内容について話し始めた。