狩人、あるいはケモノハンター   作:溶けない氷

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狩人は思った、カレル文字が人のあり方を定義するなら
人ならざる物を人たらしめるカレル文字もあるのではないかと


第14話

貴方達は日が落ちると共に準備していた通りに指示された畑の見回りに出る事になった。

畑のそばには農機具や収穫物などを置く小屋がある、貴方達の見回りの拠点だ。

「まず俺と女神官が出る、3交代で休憩を取りながら見回る。

出現したら警笛を鳴らして知らせる」

そう言うとゴブリンスレイヤー が女神官に指示する。

「常に明かりを持ち、離れるな。

ゴブリンが出たら迷わず撃て。

危なくなったら走って逃げろ。」

「は、はい!頑張ります!」

彼はとても親切な人間だ。

 

二人は小屋を出発した。

貴方と妖精弓手のチームは彼らが戻ってくるまで休憩している。

「…狩人、覗かないでよ」

休憩場所は畑のすぐ側にある番人小屋だ。

妖精弓手は中でマントにくるまって眠っている。

特にこの季節はまだ夜風に吹かれても暖かいので貴方男3人は外で焚き火を囲んでいる。

見ればあちこちに小さな明かりが仄かに見える、里のエルフ達が見張りで火を焚いているのだ。

貴方はやはり男女が同じパーティーにいることは無理があると思った。

具体的に言うと男女の痴情の縺れでパーティーが解散したと言う話をよく聞く。

現に狭い小屋はエルフ娘一人で占領している。

「ま、そりゃ誰もが一度は思うことじゃわい。

だが実際、同性で前衛後衛のバランスが取れたパーティーを組むなんて

贅沢なことは中々出来るもんじゃないわ。

特に今はどこも人手不足じゃしな」

「ふむ、只人や森人はそう思われるか。

拙僧ら蜥蜴人種は雌雄の区別なく隊を組み武器を取るのが当然といった文化習慣故

そう言う考えは出てこなかった。

いや実に興味深い…

拙僧も母上と父上が出会い拙者を授かったのは戦場だったと聞いている故…

戦場で戦士の間に授かった子は将来強き戦士となるという験担ぎのようなものがありますからな」

当然の事ながら只人にこのような習慣はない…と思う。

とはいえ異人種の習慣風俗を貴方は少しだけ聞いて知識が深まった。

貴方達はとりとめのない会話をしている。

「そういやそのハンマー、興味深いのう。

ワシらドワーフもよくハンマーを使うがそんな代物は目にしたことがないわい。

さしずめオーガ殺しの火槌といったところかの」

貴方はこれは火薬庫の大業物、獣を叩き潰し焼き殺す導きの爆発金槌。

力任せに振るわれることこそ匠の業の本懐という考え方の産物。

「ははは、なんじゃい可笑しな只人の職人もいたもんだのぉ。

なんだかうちの穴蔵の鍛冶連中とも気が合いそうだわい」

火薬庫の連中はドワーフの職人とも気が合いそうなのか…

確かに豪快な見た目と破壊力、それでいて汎用性の高さとを併せ持つ優秀な武器を作っていた。

貴方達が寛ぎながら待っていると

ピィーピィーという音とパンパンという2発の銃声が聞こえた。

貴方達は武器を取るとパッとかけていく。

バァンと扉を叩き開けて最初に飛び出していったのは妖精弓手だ。

「聞こえた!まっすぐあっち!東の畑道の方!」

貴方方も彼女の指示の下走っていく。

彼女が良い耳と足をした一流の斥候なのは疑いない。

近接して戦うにあたっては貴方が優れるが、遠くから先手を取るのは彼女だろう。

又してもパンパンという音が断続てきに響いてくる。

 

貴方達が銃声と笛の音の方向に駆けていくとそこにはゴブリンスレイヤーと女神官

そして倒れた数体のゴブリンの姿があった。

「ゴブリンだ、1匹は逃した。追って巣を潰す」

ゴブリンスレイヤーは逃げたゴブリンに道案内をさせる気だ。

ゴブリンスレイヤーはそう言うとさっさとゴブリンの後を追い始めた。

後には銃を持って呆然とする女神官が残された。

…彼女の前にはホブゴブリンが倒れている、頭を撃たれたようだ。

…ホブゴブリンは死んでいる、2mという大きさだが脳を破壊されては耐えられない。

貴方達は逃げたゴブリンの後を追うゴブリンスレイヤーも心配だったが…

妖精弓手は未だ呆然としている女神官を気遣っているようだ。

「だ、大丈夫!?怪我とかない?もうオルクボルグももうちょっと気遣ってあげてもいいでしょ!」

「わ、私は大丈夫ですから…ただゴブリンが出てきたことに驚いて…

これ…もう死んでますよね…私、ただちょっといつも通り引き金を引いただけなのに…」

どうやら自分が殺してしまったこの汚物を案じているのだろうか…

「いえそういうわけじゃなくて、私…初めての冒険でこいつらに仲間を…

凄く強くて大きそうだったのに…う、うふふ」

わかる、彼女は狩の快感に酔っているのだ。

貴方も今まで苦戦させられてきた強敵がパリィになれたら回復薬兼アイテム袋にしか見えなくなる『血の歓び』だ。

だが貴方は彼女に警告する。

そう、かねて血を恐れるべきだ。

「あ、はい。そうですね!もっと練習しないと…」

もっと練習して良い狩人になるがいい。

狩りに優れ、無慈悲で、血に酔っている。

貴方はそうだ、彼女もやがてそうなるだろう。

貴方達はゴブリンスレイヤーの後を追っていく。

どうやら彼は岩場の方に入っていったらしい、ランタンの灯りを追って貴方方も彼の後を追う…

しばらくして貴方達が彼に合流するとそこには岩場の隙間のゴブリンの住処を発見した彼の姿があった。

「ゴブリンだ、すぐに燻し出す」

そう言って彼はあたりから枯れ木や草、落ち葉などを集めて巣の中に放り込んでいく」

未だ夜は明けていないが、ゴブリンが逃げ出すよりはマシだ。

数匹のゴブリンが巣の中に倒れている、どうやら散弾銃が役に立ったようだ。

脱出しようとするゴブリンの封じ込めていた彼はいつもの手段をとるようだ。

貴方達Bチームは側面と後方を経過しつつ側道や逃げ道がないか探すのが役目だ。

貴方達Bチームはあたりを見渡したが今の所逃げ道はなさそうだ。

ゴブリンスレイヤーが可燃物に更に油や硫黄などをかけて火炎瓶を投げ込むと凄まじい勢いで燃え始める。

「炙り出すつもりだったが、少し崩せるか?酸欠させてもいい」

貴方は了承すると爆発金槌の威力を最大にし巣穴の入り口に叩きつける。

爆発音と共に出入り口がほぼ崩れ封鎖を完了させた。

中からはゴブリンどもが大騒ぎする音が聞こえてくるが貴方方は意に介せず辺りを探索する。

…しばらくするとゴブリンどもは静かになった、中からは硫黄が燃えた匂いがする。

「この洞窟は完全に崩す、手を貸してもらえるか?」

貴方は了承すると更にガンガンと金槌で叩き、洞窟の入り口を完全に埋める。

…このような場合はゴブリンの巣穴を調査するのでは?

「必要ない、それにまだ仕事がある」

彼はゴブリンを殺すのに興味があるのであって、ゴブリンから剥ぐことは興味がないらしい。

そも、どうせろくな物は持っていないだろうが。

貴方方はエルフの里に戻ると今度はゴブリンスレイヤーと女神官が休憩する番だった。

今度は貴方と妖精弓手が見回りする番だ。

「気をつけろ、連中はまだ来る

ゴブリンどもがこんなに勤勉に襲いに来るからには上位者がまだいるはずだ」

 

「任せなさいよオルクボルグ!私の里を襲うゴブリンなんてみんなやっつけてやるんだから!」

貴方は彼に決して油断せず、汚物を狩ると約束した。

それまではよく休み、またよく殺せるように体力を温存しろとも伝えた。

スタミナ管理は重要だ。

「そうか、わかった」

彼はいつもの通りだが、なぜだか少しだけ安らいでいるような顔をしている気がする。

「あ、それじゃ。私も…アフ…地母神様、私もやれました」

女神官は安心したのか眠たそうだ。

きっと天井の女神も信徒が立派な狩人の第一歩を踏み出せて喜んでいることだろう。

 

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