狩人、あるいはケモノハンター   作:溶けない氷

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今更だけどヤーナムの影って指輪物語の幽鬼そのものだね
長い黒フード被ってりゃ誰でも同じだけど



第15話

 

「はー、それにしても銀級冒険者にまでなってやってることが実家の畑の番とは…」

貴方は妖精弓手の嘆きを無視した、どうせ大したことは言ってない。

それにしても何か邪悪な力を感じる…気がする。

それがゴブリンどもを勢いづかせ、我々に敵意を向けているのだろう。

貴方が狩るべきは獣だ、獣とは人に仇なす汚物…魔神王も獣に過ぎない。

だがさしあたっては畑を荒らす害獣か。

さっきから妖精弓手が冒険がしたいしたいと煩い。

だが客観的に考えると魔神王と戦うのは戦争であって冒険ではない気がする…

戦争を冒険と期待した者は数多いが大抵は期待外れに終わる。

冒険とは未だに発見されていない土地や事象の探索や探求であって戦うこととは違う気がする。

その辺り冒険と戦闘を混同しているのではないだろうか。

メンバー的にはホビットがいれば冥王の軍団と戦って世界を救ったり邪悪なドラゴンを倒す行きて帰りし物語的な何かが始まりそうだ。

残念ながらこの妖精弓手の望む物語は始まりそうにない。

パーティーメンバーに馳夫もいなければ王が帰還する事もない。

一番英雄譚に近いのはやはりゴブリンスレイヤーだろう。

重要な外貨獲得手段でもある畑の守りは重要だと、村長に説教された今の彼女の役目は畑番だ。

貴方は彼女に黙って見回れと命令した。

「イーだ!やっぱあんたってサイテー!退屈してる女の子の扱い方一つ知らないの?」

貴方は嘆息し獣の感覚に集中した。

男と女が二人、月の下で共に散策している。

一人は月の香りする只人の男、一人は顔麗しい森の金床。

そう書いてやればこのロクデナシ二人にもロマンスが芽生えるのだろうか、いや無い。

連中、特にゴブリンの匂いは強烈で饐えた汗や腐った肉に汚物のような悪意ある不快な匂いが酷く遠くからでも漂ってくる。

特に狼に乗っているゴブリンとかひどい匂いだ、冒涜の匂いがする。

貴方はヤーナムで長く狩りを続け獣の匂いに敏感になった。

…畑は広大で今の里の人数では全てを監視することはできない上に里の主だった戦士は旅立って今残っているのは新米だけだ。

エルフは長い寿命を誇るがそれゆえに消耗できないというのも弱点だ。

やはりせめて後50人は戦士がいればそもそもゴブリンはおろかオーガの侵入を許すことも無かったと妖精弓手に愚痴る。

「あのね、森人の精鋭戦士が50人って。

そりゃそんだけいれば一大戦力よ、でもそんなに充実するまで何百年かかると思ってんの?」

気が長いことだと貴方は嘆息した、それならもっと冒険者でも雇えば良いかといえば

森人は自分達の里に他人を大勢入れるのは嫌だと言う。

時代は変わりつつある、四方世界を賭けた戦いはこれから始まることになる。

…かもしれない。

勇者は魔神王と戦い

賢者は未知の古代文明とかを発掘し

ゴブリンスレイヤーはゴブリンを殺し

金床は自分の里の畑の番をする。

それで良いではないか。

「良くないわよ!」

注文の多い金床だ、人生欲張るとロクなことにはならないと言うのに。

 

…貴方たちが暫く周りを巡回していると貴方と金床は身を屈める。

「聞こえた?いるわね」

貴方はそれに臭う、ひどく獣臭いと答え武器を構える。

貴方の前方にはガサゴソと薬草を荒らそうとしているゴブリンどもの音が聞こえてきた。

10匹前後だろう。

カボチャやジャガイモならともかく、食えもしない畑を荒らすゴブリンとは。

一体誰の命令を受けているのだろうか。

「私が前の3匹をやるわ、狩人は私を守りながら残りの相手をするのよ。」

…貴方の負担だけやたら大きくないだろうか?

従僕を騎士と呼び習わせば、せめて名誉があるものだろうか。

妖精弓手を豊満と呼べば…そこには絶望しか無かった。

「余計なこと考えてないで、行くわよ!」

妖精弓手が矢を放つと中空で弧を描いた矢は一撃で2匹のゴブリンの頭を射抜き更に一撃は別の頭を砕いた。

貴方は心中では見事な腕前を讃え、更に追撃にと散弾を集中していたゴブリンどものど真ん中に撃ち込み、パニックに陥ったところに爆発金槌を叩き込んだ。

一瞬の後に輪の中心のゴブリンは無残な肉塊となって四散し、周りの連中も爆発の衝撃で粉微塵になって吹き飛ぶ。

貴方はやはり汚物は消毒するのが一番だと言う確信の元に焼き払った。

すると岩陰の中から一際大きい唸り声が聞こえてきた。

「気をつけて!残りのゴブリンの一団よ!ホブもいる!」

無論わかっている、大方面倒なくせに実入りの無い仕事を下っ端に押し付けて自分は監視して楽しようと言う考えだったのだろう。

連中は大体そう考える生き物だ。

だが妖精弓手を見るなり突然張り切って連中は滾ったのか突撃を開始する。

連中の頭の中ではまだ数で勝る自信と貴方という男の戦士への不安、だが妖精弓手の肉体を楽しみたいという獣慾が鬩ぎ合い突撃するという選択肢をとった。

貴方は彼らと妖精弓手の合間に立ち連中の彼女への突撃を遮る。

再び散弾銃を放つと前のゴブリン連中のむき出しの部分に命中し足を鈍らせる。

痛みを感じれば動きが鈍るのは人も獣もゴブリンも変わらないという事だ。

「よっしゃ!良くやったわよ狩人!」

妖精弓手の腕からすれば足の鈍ったゴブリンなど良い的以外の何物でもない。

次々と貴方を掠める矢は狙い違わず貴方の前に立ち塞がるゴブリンどもに突き刺さっていく。

貴方は更に散弾銃を撃ち音と火花、そして痛みで敵のヘイトを稼いでいく。

敵から憎まれるのはいつものことだ。

ゴブリンの悪意や殺意など聖杯の連中に比べればまだマシだ。

再び炉に火を入れた貴方は性懲りも無く向かってきたホブの頭に叩きつけると、上半身が爆発四散し周辺に飛び散った。

派手な炎と音を放つ貴方はゴブリンの憎まれ役だ。

あっという間にあちこちで悪さをしていたゴブリンが貴方を憎み殺しに集まってくるだろう。

だが同時に銃声は貴方の味方を呼びあつめる笛でもある。

ゴブリンスレイヤーたちは直ぐに貴方達を助けにやってくるだろう。

岩陰から直ぐに新手のホブゴブリンが姿を表すのが目に止まった。

汚物の臭いもプンプンさせて不快な醜さだ。

「ちょっと狩人!私にも残しておきなさいよね!」

妖精弓手は次々とゴブリンを狩っていく、手数の早さと多さに関しては貴方以上だ。

獣は潰して焼くに限る、だが射殺すのも悪くはないだろう。

まぁ殺せるならどうでもいいではないか。

 

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