狩人、あるいはケモノハンター   作:溶けない氷

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第16話

…特に足が遅く、小さく脅威度の低い個体を散弾をかすらせて血を流させながら逃した。

獣ならば文字通り死ぬまで襲いかかってくるのだろうが、ゴブリンは自分が痛いのは嫌らしい。

貴方は8匹、妖精弓手は6匹倒した。

貴方の勝ちだ、どうでも良いことだ。

重要なのは獣が死ぬ事だ、誰がどれを殺したかなどどうでもいい。

「むぅう、けど次は私が勝つからね。覚悟しときなさいよ」

その通りだ、まだ狩は長く続くだろう。

たかが100や200狩った程度では何ほどの事もない。

貴方は殺害数で劣ったことでも気にしている、妖精弓手に優しく甘い言葉を投げかけてやった。

すなわちありがとうという感謝の言葉と狩人の一例で応えた。

妖精弓手には感謝している、彼女抜きにはこの狩に手こずっただろう。

「な、何よ急にかしこまっちゃって。

ま、まぁわかればいいのよ。わかれば」

事実、囲まれて叩かれれば死ぬが二人いれば囲まれる危険性は格段に減る。

やはり狩に赴くに数を揃えるのは重要だ。

貴方方がゴブリンを確実に殲滅してからしばらくするとまずは彼が駆けつけてきた。

「ゴブリンか」

 

 

そこらに転がっている汚物を見て開口一番ゴブリンスレイヤーは貴方方の心配よりも逃げたゴブリンの事を心配した。

追いかけて、巣を見つけ、確実に全滅させる。

彼の狩は単純明快でブレない。

「血か、目印だな。すぐに追う」

貴方は逸る彼を押しとどめた、すなわちゴブリンが罠を張る可能性もある。

破壊工作の失敗を悟ったゴブリンは、警戒をしている可能性もある。

どの道一人では大規模な巣を破壊するには人手が足りない。

ここは堪えて後の人員を待つべきだ。

「ちょっと狩人!そんなグズグズしてたらゴブリン逃げちゃうわよ!」

心配はいらない、あの足ではそんなに早くは逃げられない…

それよりむしろ巣にたどり着く前に失血死するかもしれない。

故に焦る必要はないと貴方は彼らに説明した。

「そうだな…わかった」

彼からの厚い信頼を感じる。

貴方とゴブリンスレイヤーとの絆が深まった気がする。

ほんのしばらくののちに残りの仲間達が貴方達に合流した。

ゴブリンスレイヤーはゴブリンの残した装備を調べている。

装備といっても粗末な棍棒や刃こぼれした短刀など価値はなさそうだ。

「はぁはぁはぁ…ご…ゴブリンスレイヤー さん早すぎですよ!

あ、狩人さんも妖精弓手さんもお怪我はありませんか!?」

彼はあの距離を駆け続けて軽く息切れする程度だったは残りの3人はそうも行かなかったようだ。

「全く…かみきり丸ときたら…弾ける音が聞こえたと思ったらすぐすっ飛んんでったわい」

「全く、拙僧らもいささか足が鈍りましたかな?

いやはや小鬼殺し殿の健脚には敵いませんなぁ」

どうやら彼は脚も鍛えたらしい、なるほど攻めるにも逃げるにも機動力は重要だろう。

貴方も重量のある装備をしたらスタミナ消費が激しくなる気がする。

特に大砲と聖槌とか見た目にも重そうな装備は。

我ながらあんなものを持ったまま、よく飛んだり跳ねたりできるものだと貴方は自分自身に感心した。

貴方方は心配してくれた女神官に異常はないと伝えた。

まだ奇跡は取っておくべきだ、何が起こるかは常に不確定なのだから。

周辺には矢が突き刺さったゴブリンと爆散したゴブリンだったものが散らばっている。

ゴブリンどもの臆病さは屋外では密集隊形という結果で現れる。

お互いが真っ先に逃げ出さないように監視しあい、他を矢面に立たせようという考えだ。

もっとも貴方の導きの爆発金槌の前ではカス以下の盾役もまとめて吹っ飛んだが。

盾は良い、だが過信するなかれだ。

もっとも過信するものは人にもゴブリンにも後を絶たないものだ。

それが過信と自己過大評価の塊の小鬼なら尚更だし、過信した者が生き延びることは無い。

…

貴方達は6人揃って息を落ち着かせた後に逃げたゴブリンの追跡を開始した。

貴方はゴブリンが自らの身を呈して見当違いの方向や罠の誘う可能性はあるかと尋ねた。

「ゴブリンどもは身勝手で自分本位な生き物だ。

だが予め計画してあったなら人間を罠のある場所まで誘導するくらいの事はする」

女神官はその言葉を聞いて錫杖をぎゅっと握った。

どうやら彼女には心当たりがあるようだ。

貴方もそういう経験があると伝えた、罠を仕掛けやすそうだなと思った地形や敵の配置とは間違いなく罠がある知らせだと。

つまりはそういう事だ。

「そうか」

貴方達が追跡しているゴブリンは血を流しており、点々と腐臭を放ちながら川ぞいに続いている。

それにしてもこのようにエルフの里の近くまで拠点を…

それもゴブリンごときが略奪でも襲撃でもなく嫌がらせ攻撃といった戦略的な考えを元に拠点を築くとは貴方は聞いたことがない。

ゴブリンスレイヤー なら経験したことはあるのだろうか?

「ゴブリンロードやチャンピオンといった上位種がいるなら可能だ。

だがここまで離れた連中を統率するほどの連携は無い。

恐らくは魔神王の将軍の指示なんだろう」

魔神王、貴方も聞いたことがある巨大で恐ろしい獣らしい。

貴方はゴブリンスレイヤーにいつか魔神王を狩るつもりだと応えた。

…それが人に仇なすならゴブリンも魔神王も同様の獣だと。

その間にゴブリンを狩るのはゴブリンスレイヤーとその仲間しかいない。

貴方は彼に何かを託すべきかという思いが頭をよぎった。

獣を狩り尽くすという使命感、それこそが連盟員であるという事なのだから。

「そうか」

これには貴方方の他のメンバーも呆れ顔だ。

「あーあ、また始まったわ。狩人の大言壮語!

魔神王までゴブリン扱いとはね…」

「はは、まぁそれくらい言わんとな!」

「ふむ、だが狩人殿ならなぜかできそうな気がしますな。

魔神王を狩る、いや並大抵の冒険者では例え法螺でもそこまで吹けませんなぁ」

 

いつもの事だ、貴方が戦ってきた敵はいずれもが強大な力を持っていた。

悪夢を見て勝つ、それだけがここでもあそこでも地下でも貴方が取るべき道だ。

獣狩りが終わる時が来るまで狩り続ける、だが終わりなど本当にあるのだろうか?

…

貴方達が血を辿って捜索していると、そこにはゴブリンの死体があった。

散弾が動脈を貫通し、失血死したらしい。

「向こうだ」

どうやらゴブリンの巣があると思わしき方向に逃げていたらしく貴方達は警戒しつつ前進する。

貴方達はすぐに前方にゴブリンの巣を発見した、外には見張りもいない。

「いつものやり方で行く」

ゴブリンスレイヤー は前と同じ方法で巣を潰すと言い、貴方達も同様に散開しようとする。

すると巣の中から凄まじい咆哮が聞こえた!

ドスンドスンという音とともに巣の中から何かがでてくる!

「Guoaaaaa!」

!ホブゴブリンの群れが襲いかかってきた!

だが貴方達は慌てない、すぐにゴブリンスレイヤーと貴方そして女神官が次々と銃弾を発射する。

パンパンと乾いた音が響くとまず先頭のホブゴブリンがひっくり返った。

女神官の銃弾が頭蓋に命中し、脳髄を後方のゴブリンどもに浴びせかける。

貴方達二人も散弾を途切れる事なく発射し、連中を巣穴の中に押し戻す。

今回は数を生かせない通路に篭ったゴブリンの負けだ。

「この!くそゴブリンども!」

妖精弓手も射撃戦に参加し次々と矢を貴方方に襲いかかろうとするゴブリンどもに浴びせかける。

「前はいい、後ろのゴブリンを警戒してくれ」

「よしわかった!」

「任されよ!」

…!見れば闇夜の中で貴方方の後ろからゴブリンが攻めかけようとしていた!

敵の奇襲攻撃だ!だが肝心の巣穴の正面兵力が潰されている状況では後方のゴブリン達の目論見は失敗した。

「投げたら穴に聖壁だ、狩人と妖精弓手は後方のゴブリン!」

「は、はい!」

夢中になって装填発射を繰り返していた女神官は装備していた油壺を投げ込んだ。

ゴブリンスレイヤー も油壺と火炎瓶を投げ込み巣の中を火の海にする。

「聖壁!」

女神官はこの巣穴に蓋をした、これで正面からの攻撃は火と聖壁で防げるだろう。

中のホブゴブリンも破ろうとするが、火で炙られ亜硫酸ガスが充満していては力を出せないようだ。

…

ゴブリンスレイヤー に指示を受けて貴方と妖精弓手は後方から奇襲してきたゴブリンの迎撃に当たった。

「狩人!右を殺るわ!あんたは左!」

右にはゴブリンが6匹、左には8匹が残っている。

蜥蜴僧侶は竜牙兵を一体召喚し左の援護に向かわせてくれているようだ。

貴方は散弾を発射し、音と衝撃でゴブリンどもをまとめて怯ませる。

「Guge!」「Gugayaaa!」

足を止めたのが運のツキとばかりに貴方は炉に火を入れた爆発金槌を集団の中心に振り下ろす。

大爆発と共に地面が弾け、ゴブリンどもを一気に吹き飛ばす。

「やるわね!ほらこれで10匹目!」

妖精弓手は本日10匹目のゴブリンを倒した。

貴方は何匹倒したのだろうか?まぁどうでもいいことではないか。

鉱人導師も蜥蜴僧侶も向かってきたゴブリンを手早く倒している…

なるほど、彼らもまた銀級冒険者なのだ。

…ゴブリンスレイヤーは聖壁が有効な間に洞窟の入り口を完全に封鎖しろと貴方に注文したので貴方は洞窟入り口を崩してゴブリンどもを生き埋めにした。

毒ガスに苦しみながら貴方に憎しみの目を向けるゴブリンと目があった。

貴方は暗く澱んだ目を見た、実に穢らわしい獣の目だ。

蕩けた目をした獣よりもずっと喜んで殺せる。

…

夜が明けることまでに貴方方は一夜に二つのゴブリンの巣を潰した。

いずれもがホブゴブリンの存在が多数確認できたが…

「頭脳労働負担のシャーマンがいない、まだ本命の巣穴は他にある」

ゴブリンスレイヤー によればあれらは単なる一時的な巣穴。

いわば前線基地のような物に過ぎなかったらしい。

「少し休んだら、探索する」

だが本命が見つかるだろうか?

「前線を二つ潰した、いくら連中が馬鹿でも仕事をサボっていないかどうかくらい確認の目を夜になったら寄越す。

そいつをつけて本命を叩く」

彼はゴブリンを憎んでいる、良い事だ。

だが同時に不安にもなる、憎しみだけで動き守るべき物がなくなればそこには狂気しか残らないだろう。

…

貴方達はゴブリン穴を潰し、畑を荒らすゴブリンどもの一部を討伐した。

お陰で他の場所を襲ってきたゴブリンを始末できたとは昨夜に警戒の番をしていた里の戦士だ。

昨夜はかなりの数のゴブリンがあちこちに嫌がらせの攻撃をしてきたが、一箇所としての最大の戦果は貴方達が挙げた。

昨晩だけで50以上のゴブリンを始末できたようだ。

「ふあーあ…それにしても一晩中ゴブリンの相手なんてサイテーね」

だが流石に皆疲れて眠そうだ。

ゴブリンスレイヤーはというと貴方達には休んでくれと指示したが、自分は捜索に出ると言った。

「俺は捜索に行く、皆は休め」

だが貴方は同行しようと提案した。

「…わかった」

もともと貴方は夢を見る、夢の中で眠ることなどあるのだろうか?

「待ってください!私も行きます」

疲れた体で女神官が立ち上がるが彼は押しとどめる。

「体調管理も重要だ」

貴方は女神官に伝えた、本当に貴方達はまだ疲れておらず昼間は敵も眠りこけている。

単に偵察で済ますだけだと。

 

「わかりました、でも絶対に無理して戦おうとしないでくださいね!」

勿論だ、無理して戦うなど…




無理しては戦わない(単独で全滅させないとは言ってない
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