貴方とゴブリンスレイヤーは朝日が昇ると共に出発し、他のエルフの里に襲撃してきたゴブリンの痕跡を辿った。
貴方方は里の戦士達が射殺したゴブリンどもの死骸があった場所までやってきた。
見ればそこかしこに血の跡がある。
恐らくは射殺されたゴブリンのものだろう。
足跡は反撃に慌てふためいた連中のものなのだろう。
彼らによればゴブリンスレイヤーと同様の手段で里周辺の巣穴を数多く潰したらしい。
「これだけの規模の襲撃で囚われた女がいないのは珍しい」
彼によればゴブリンどもは繁殖のために人間やエルフの女を孕み袋として巣穴においておく。
それが無いのはつまりはどれも分巣でしかなく、それを潰さなければいくらでも湧いてくるということだ。
エルフの里の戦士達は優秀な斥候でもあるが、数の少なさから里を長くは離れられない。
本巣から分巣への兵力補給は恐らくは夜間に行われているのだろう。
故に貴方方二人が昼間のうちにできるだけ本拠地の割り出しを済ませておこうという考えだ。
「大丈夫だ」
貴方は彼を気遣うが問題はないようだ、それにしても彼はなぜこれほどまでにゴブリン狩りに執念を燃やすのか。
…大方の想像はつく、聞かないでおこう。
貴方方は無言のうちに昨晩のゴブリンの襲撃経路と襲撃地点を纏めた地図を作成した。
襲撃してくる方向はバラバラだが、ゴブリンスレイヤー には何か考えがあるようだ。
「北東から調べる」
彼によれば分巣は北東の方向に集中していることが多かった、故に北東の巣を調べれば何か痕跡がわかるかもしれないということだ。
貴方方はまずは北東の巣を調べに移動した。
…それにしても話さない二人だ。
貴方方は二人揃って北東の巣を調べにやってきた、どの巣も既にエルフの戦士達によって焼き払われ全滅している。
巣には周辺で殺されたゴブリンの死骸が投げ込まれ、焼き払われ埋められている。
墓穴というよりは生ゴミ捨て場と言ったところだろう。
貴方方は捜索したが最初の巣の周辺では何も目ぼしいものを見つけられなかった。
「他の巣を調べる」
だが彼はまだ続ける気のようだ。
…
貴方は気になった、そういえばゴブリンスレイヤーはあの赤毛の娘と婚約しているのかと。
「幼馴染みだ。なぜ?」
傍目からすれば夫婦のようにも見えたが?まぁいい。
貴方はゴブリンスレイヤー にある古狩人の話をした。
獣を憎み、妻を愛し、娘を慈しんだ強い神父だった。
だが守るものを失った彼は狂気へと囚われ遂には慈しむものを守れなくなってしまった。
貴方は彼に神父のようにはなるなと警告した。
ゴブリンを憎むのは良い、復讐も殺意も尊いものだ。
だが守るべきもの、帰るべき場所を失ってしまえば人は弱くなる。
そうなってからでは遅いと貴方は彼に警告した。
「…そうか…そうだな…だがゴブリンは村を滅ぼす」
わかっている、一人の力などたかが知れている…
古き時代、助言者は民の中に獣狩りの狩人を募ったという…
狩人達が真に英雄だった時代の話だ。
「助言者…か。俺にできるだろうか?」
無論、彼とて最初から英雄ではなかったし強くもなかった。
貴方方は他の巣の跡までやってきた…
!
貴方は獣臭い匂いを感じ取った!
咄嗟にゴブリンスレイヤーに身を隠すようハンドサインを送る。
貴方方が見ていると森の向こうからゴブリンが姿を現した。
貴方方は姿を隠しながら様子を伺う。
「Gua!?Gugagga!」
…ゴブリンは焼けた巣穴を見ながら狼狽えたようにあたりをうろうろしているが暫くして諦めたように元来た道を引き返し始めた。
「後をつける」
貴方とゴブリンスレイヤーは偵察ゴブリンの後をつけ始めた。
…貴方方が暫く奴の後をつけると森を抜け、崖の方へとやってきた。
この辺りに奴らの巣があるというのだろうか…ゴブリンはあたりをキョロキョロと見渡すと崖道を伝って小さな滝の裏に入っていった。
「滝の裏に入り口か…あそこが奴らの本拠地というわけだな」
前の砦の時にはあからさまに見張りを置いて感づかれたのを警戒し、今度はカモフラージュの容易な滝の裏の洞窟に本拠地を構えたというわけだ。
貴方方はさてどう攻め込んだものかと思案した。
最大の難点は人質の有無だが…
「…一度戻る」
貴方方は一度戻り、装備と休息をとって態勢を整えてから本格的に拠点を襲撃することにした。
…!
いやどうやら時間は無いようだ。
貴方方の目には何かが引きずり出されていくのが目に映った。
女性が外に引きずり出されている!
全身に青痣を作り痛々しい姿の女性が外に引きずり出されてきた。
ゴブリンどもは弱々しく抵抗する女性の髪を掴み引きずり回している。
ゴブリンどもは何かを嘲るようにしながら喚き、石で彼女の後頭部を殴りつけると彼女を滝壺に突き落とした!
「あぁぁぁ!」
彼女は悲鳴を上げながら落ちていき…そして浮かんでこなかった。
うっすらと赤い血が川に混じったがそれもすぐに消え、ゴブリンどもはその様子をケタケタ笑いながら見ていた。
既に追跡に時間を取り、日は傾きつつある、
もうすぐゴブリンの時間帯だ。
だがそれは同時にもうすぐ夕暮れ、襲撃の機会ということだ。
「すまん、手遅れになる…俺は行く」
…やはりケダモノ狩りか。すぐに出発するんだな?貴方は同行するだろう。
「いいのか?」
貴方は獣狩りは慣れている、地下は慣れすぎていると答え同行することにした。
「すまん…狼煙を上げる」
貴方方は人質の女性が手遅れにならないうちにゴブリンを殲滅しながら巣に突入する事に決定した。
ゴブリンスレイヤーは何かの脂をそこらの枯れ木にかけて燃やし始めた。
…里には見張りが絶えない、必ず誰か気づくだろう。