狩人、あるいはケモノハンター   作:溶けない氷

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月の魔物ちゃん「お母さんに早く孫の顔を見せて欲しいわぁ」

妖精弓手「いい?毒攻めも火攻めも水攻めも爆薬も生き埋めも圧殺もなし!
私が血に塗れるのも臭くなるのも無し!
それから私が気持ち悪くなくて、むしろ気持ちよく笑顔になれること!
それからそれから…」

狩人「滅茶苦茶言うなこいつ…そうだ!
上の条件を全部満たしながら冒険に貢献できる策があるけどヤル?」

妖精弓手「本当?やるやる!」

狩人は策をヤリまくった。

100年後
受付嬢4世(少しエルフ耳、仕込み杖+短銃)
「あ、ゴブリンスレイヤーさん!」
ゴブスレ4世(少しエルフ耳)
「ゴブリン狩だ」(ノコギリ鉈+散弾銃)
女神官4世(やっぱり少しエルフ耳)
「あっ!すぐ支度しますね!」(レイテルパラッシュ+エヴェリン)
妖精弓手二世(まだエルフ耳)
「ほら、今年生まれた双子の写真よ。こっちは去年生まれた妹達で、こっちが一昨年ので…
父さんも母さんも飽きもせず100年間毎年よくやるわよねぇ」(シモンの弓剣+貫通銃)
勇者ちゃん4世(少しエルフ耳)
「任せといてよ!オーガなんてちゃっちゃとやっつけちゃうから!」
(ルドウイークの聖剣+ルドウイークの長銃)
剣の乙女4世(そこそこエルフ耳)
「ゴブリンスレイヤーさん…」(月光の聖剣+ロスマリヌス)
めっちゃ仲良し夫婦やないけ
そして確かに条件は全て満たしている。
こうして月の魔物の血族は西部で大繁殖した。
めでたしめでたし


第20話

貴方方ゴブリン狩り一行は朝日が昇ると共に再び街に戻ることにした。

ゴブリンスレイヤーはその足で幼馴染の牧場に行くことになったらしい。

貴方は彼に硬貨の詰まった袋を渡した。

「すまん、必ず返す」

貴方はご祝儀なので返す必要はないと伝えた。

それにどうせ殆ど牧場の守りの備えに使うのだろう、貴方にしても美味しいチーズの供給源がなくなるのは困る。

「狩人さんって現世でのお金に頓着しないんですね、良いことですよ」

女神官が貴方を褒め称えてくる、こういう時は遠回しに教会に寄付を求められているのだ。

最近貴方の新弟子は黒くなってはいないだろうか?

白い神官服が眩しいが、中身はだんだん赤黒く染まっている気がする。

兎にも角にも貴方は彼にヤーナムの硬貨を渡した。

雑多な硬貨だがとりあえずの結納金くらいにはなるだろう。

ちなみに結納金はやはりそのまま牧場の防衛強化に消える模様。

それにしても金である。

貴方は金を特に必要としないが、世間では物を言うのは金である。

金、それもポンドでもドルでもなく金銀銅のコインである。

なぜコインなのだろう、紙幣では駄目なのだろうかと思ったが

戦時中のこのご時世で紙幣乱発なんかしたら

インフレで魔神王が攻めて来る前に国家崩壊の危機になる気がする。

…そもそもなぜヤーナムには常駐して市民を守る保安官的な狩人が少なかったのだろうか。

皆狩りによっているからである。

冒険者は冒険に酔い、狩人は血の酔う。

具体的にいうと冒険者は金がないと動かないし、農村に金は無い。

つまりはそういうことである。

結論、もっと狩人が必要だ。

その為には…

…そういえば狩人たちはどこからあれだけの武器装備を調達する資金源を得ていたんだろうか…

輸血袋…常習性…

貴方は医療教会のマフィアめいた暗黒面に触れた。

もっともマフィアの方が人道的な気がする…

…貴方方は街に帰ってきた。

パーティーメンバーはそれぞれの用事を済ます為に街のあちこちに出かけるようだ。

ゴブリンスレイヤーは牧場の防備のための装備や物資の調達に。

女神官は神殿に顔を出しに。

妖精弓手は買い物に。

鉱人導師は酒場に。

蜥蜴僧侶は食べ歩き。

貴方はどうしようか…

『ただ獣を狩ればいい、結局はそれが目的に敵う…』

貴方は助言者の助言を思い出した。

貴方は獣狩りだ、獣を狩る。

それ以外を考える必要はない。

そもそも彼らとはたまたま依頼で二回パーティーを組んだだけだ。

というわけで貴方はギルドにやってきた、ソロだろうがマルチだろうが構わない。

貴方は勢いよく扉を開けて獣狩りを始める気分でギルドにやってきた。

「ひっ!か、狩人さん。いい天気ですね…(震え声」

獣はどこだ、獣狩りの夜を始めよう。

「えっ?でも先のゴブリン退治が終わったばかりじゃ…

あ、いえそうですね。何でもないです。

でも今の所狩人さんが気に入りそうな案件はありませんよ」

何ということだろう、獣がいないとは…

そういえば受付嬢はゴブリンスレイヤーが結婚を決意したことは聞いているのだろうか?

披露宴には彼女も招待される予定なのだろう。

「えっ…」

目が光を失った、ヤーナムではありふれた症状だ。

貴方にグイと詰め寄ってくる、鉛の秘薬の時間だ。

今なら絶望的な悪夢の中でのみ物質化するという秘薬がこの受付嬢から採取できそうだ。

「結婚…ゴブリンスレイヤーさんが…今そう言いましたよね」

無明の瞳で貴方を攻める、貴方はあらましを説明した。

「ああ、牛飼い娘さんと…そうかぁ…そうですよね…10年一緒ならそりゃそうですよね。

うふ…うふふふふふ」

何ということだろう狂気の症状だ、医療者にはよくあることだが…

「…もうこうなったら二号でも三号でも…最悪赤ちゃんさえ貰えれば…」

ぶつぶつと何かを呟いている、女性の狂気は恐ろしい!

何とも罪作りな男よ、ゴブリンスレイヤー 。

…ふぅ…危うく受付嬢の狂気に飲み込まれるところだった!

貴方は落ち着いて何か獣狩りの案件が出るまでロビーで落ち着くことにした。

鎮静剤はもううんざりだ、薄気味悪い医療者の真似事で狂気を落ち着かせるのはやめよう。

貴方はミルクを頼んだ。

美味い!これは貴方の好物の牛飼娘の牧場のミルクだ!

貴方の狂気ゲージが下がった!

…学徒がみんな薄気味悪いナメクジになったのはきっと鎮静剤ばっか飲んでたからだろう。

「うふ…うふふふふふふ」

受付嬢は唐突に脳に瞳でも得たかのように笑っている。

「あのーすいません」

貴方は唐突に新人冒険者から話かけられた。

「ほら!あんたの件なんだからあんたが話すのよ!」

「なっ、お前手伝ってくれるって…」

「嫌よ!だって怖いんだもん」

貴方は剣士の少年から相談を受けた。

聞けば、彼は剣を地下下水道で無くし困っているのだという。

地下…死体溜まり…ネズミの大群…赤目犬…赤蜘蛛…ノミ!!

何と悍ましく恐ろしい場所に行ったのだろうかこの少年は。

貴方はよく生きて戻ってこられたなと少年に労いの言葉をかけた。

「えっありがとうございます。

でもドブさらいなんて白磁の仕事ですよ…ハハ」

そんなことはないだろう、あんな恐ろしい場所は滅多にないのだろ貴方は力説した。

溢れかえる死体、死に損ないの亡者、夥しい汚れた獣、カラスにネズミに豚!

「…いや絶対違う下水の事話してません?」

違うのか、そうか…

「ちょっと!本題に入りなさいよ!」

「あ、うん。それで話というのはもし余ってる武器があったら貸してもらえないかなとか思いまして」

?なぜ貴方にだろう?今まで誰か他に頼んだのではないか?

「頼んだんですけど…力に見合ってないとか、そもそも予備がないとか…

俺たち二人で結構頑張ってるんですけどなかなか成果が上がらなくって…

それで受付嬢さんに聞いたら、ゴブリンスレイヤーさんか狩人さんがそういうのは得意じゃないかって…」

貴方は西部辺境最速の昇進スピードの冒険者という事になっている。

なるほど、では貴方から新人戦士にアドバイスすべきだろう。

貴方は…そもそも攻撃を受けなければ良いとアドバイスした。

具体的には…

1:射程の長い武器を使う

2:常に先制して攻撃する

3:囲まれないよう常に幕末戦法

4:相手の動きを覚えて見切る

5:防具などを買って行動不能になる攻撃は防ぐ

 

「それが…お金なくって…」

お金がないので武器も防具も買えないらしい…

それならと貴方は予備のノコギリ鉈を差し出し、使えるかどうか練習場で試させた。

…駄目だ!とても使い物にならない。

「すみません、重すぎるし。動きも複雑すぎて俺にはとても使えません…」

変形を自在に繰り返し、常に相手の虚を突く仕掛け武器だが彼には技量が足りなかったようだ。

実に困った。

…貴方は何かを思いつきそこらへんにあった生木の枝を拾い上げた。

乾かして薪にするものだ。

貴方は彼にそれを渡し、自分で武器を作ってはどうかと提案した。

「え?棍棒…ですか?」

殴打武器は不得意が少なく使い勝手は良い。

貴方は更に彼に力を貸してやることにした。

…貴方は鍛冶屋で使い物にならないクズ釘と革紐、ボロ布を手に入れた。

彼にこれで武器を作るように指示したのだ。

「え…まだ何か?ただの棍棒ですよね」

いいや、それは強化クラブだ。

だがその完成予想図はどこからどう見ても釘バットだった。

貴方は釘を打ったら頭を切り落とし石で尖らして殺傷力を増すように指示した。

殺傷力は上がったが、弄った分耐久性は下がる。

聖女が予備を持つと良いだろう。

更に貴方はスタッフ・スリングを作るように指示した。

棒の先に革を紐で付けた武器だ。

「カッコ悪い…」

相方の新人聖女は不満なようだが、古代では軍隊の正式装備だったこともある。

投石紐に比べて両手が使えて重い石をぶつけられるので下水道のような狭い場所ではそこそこ有効な武器になるだろう。

紐に比べて習熟が容易なのも急ぐ彼らにはちょうど良いと思って勧めたのだが…

「おい!あ、すみません。

でも狩人さんって思ったよりもいい人ですよね…

あ!別に悪い人とか思ってたわけじゃなくって…」

 

新人剣士が貴方への聖女の態度を詫る。

だが気にしないでいいのだ、狩人が恐れられるのは別に珍しいことではないと貴方は伝えた。

むしろそれが当然だった気がする。

貴方は彼に白い丸薬を手渡した。

「毒消し?いいんですか…何から何まですみません…」

新人への先輩からの餞別だ。




強化クラブ
地味にダークソウルシリーズ皆勤
地味に強武器

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