牛飼いちゃん「ねぇ、大事な話って何?」
女神官「地母神様、どうか私達をお護りください…」
妖精弓手「あ、あれもこれも!それとこれもね!」(買い物中
鉱人導師「おーこりゃここの酒もいいのが揃っとるわい」
蜥蜴僧侶「甘露!」
そのころ
ゴブロード「もっとキリキリ働くゴブ!(牧場レイドイベ準備」
モブゴブ「ひー!労働待遇の改善を求めるゴブ!(協調性なし」
…身綺麗にし、食事と休養を取ったことで彼女はある程度落ち着いたようだ。
色艶も悪く、異臭を放っていた体は若さ相応の瑞々しさと甘い香りを放っている。
実際問題として彼女はどうするのか、どうしたいのかを貴方は聞いた。
「それは…」
…すぐに冒険者に復帰というのは無理な話だろう。
恐怖が支配する心のまま出かけても『死ぬ』だけだ。
「う…」
それ以前に彼女には仲間との連携、いやそもそも仲間がいないではないか。
しかし方法はある、狡猾さと用心深さこそ人類の有史以来最大の武器と言われている。
貴方は彼女にまずは工房で武器と防具を揃えることを提案した。
ここは土地代が非常に安い、それは壁から出ればいくら街に近くとも常にモンスターの襲撃に備えなければならないリスクがあるためだ。
人は壁を作り、エルフは木の上に、ドワーフは地底に住む。
それは外敵から身を守るそれぞれの種族の知恵とでもいうべきものだろう。
故に壁の外に住むということは常に戦いに備えるということでもある。
と言ってもまだ城壁に近く人の往来もそこそこある墓場近くではそこまで強大な獣が出没することはあるまい。
彼女が下宿人としてここに居たいというのなら別に構わないが、最低限の自衛はしてもらうつもりだ。
「わ、私武術なら使えます!」
駄目だ、武術は良いがそれは人から身を守る術であって獣を殺す術ではない。
「!そ、それは…」
武術は良い、だが彼女は武術を誤解している。
武術とはどれだけ鍛え上げたとしてもそもそも殺しが目的の技では無いのだ。
思うに武術は素手で犯罪者を生かして捕らえる事や自衛がそもそもの目的なのだろう。
それは尊い技ではあっても、狩ではない。
貴方がそう言うと彼女は泣き出してしまった。
「うっ、ううううう」
俯いて涙を流している、それにしても年頃の少女に向かない貴方だ。
…とにかく最低限防具だけでも見繕う事にした、何をするにしても今の彼女の服はシャツにズボンだけと言う姿だ。
女物として通じる服装といえば時計塔の狩人の衣装、人形、聖歌隊、娼婦のドレスくらいか…
元の衣装は擦り切れ、汚れていたので洗って繕わなければ駄目だろう。
貴方は家の寝室の衣装箱を開けたがどれもサイズが合いそうにない…
さて困った、そういえばヤーナムの狩人衣装は基本的に成人サイズである。
どう見ても15の少女に合うサイズではないだろう。
…街の裁縫屋に頼んでサイズを調整してもらうか。
使者たちだ!寝室の水盆で使者たちが貴方を手招きしている。
貴方が彼らに語りかけると彼らは一斉にブンブンと横に首を振り、ポーズを各々取り始める。
あるものはボクシングの真似をしたり、カラテの真似をしたり、また服を出して手招きする…
武闘家を連れて来いと言うのだろうか?大丈夫だろうか?
だが魔法や奇跡のある世界なら使者達も普通に妖精扱いなのだろう。
こう言うと妖精弓手は怒るかもしれないが。
貴方は食堂で泣き臥せっている少女に寝室に来るよう言った。
「は、はい!」
少女は身綺麗にし休憩し食事をとり涙を流し頭の回転が途端に回ってくる。
(し!?寝室!?まさかお礼は身体でしろってこと!?)
武闘家の脳内では自分が男にベッドで組み敷かれ、あんなことやこんなことをされる図が浮かんだ。
(でももうすぐ銀級に昇級って噂になってたし…)
狩人は非常に勤勉だ、24時間365日人里にモンスターが出ればどんな凶暴な獣でも嬉々として皆殺しに行くので昇級も恐ろしく早い。
そして獣狩り以外に興味がなく、金も使わないので案外評判が悪い。
金の流れを滞らせると受付嬢に文句を言われたので家を買った。
家持ち、小金持ち、実力者、若い、仕事熱心、独身…ここまで書くとなかなかの優良物件だが
そんな些細な事をぶち壊すのが狩人である。
(こんな私でも…赤ちゃんさえ出来れば、こっちのもんよね…)
そして男と女の戦いは妊娠という圧倒的に有利な武器を持った女の勝利に終わるのが常である。
信用を第一とし、街の冒険者ギルドに顔を出さなければならない冒険者となれば
責任を取らないというのは冒険者としての信用にも関わるのでなおさらである。
冒険者の墓場は1にゴブリン穴で2が出来ちゃった婚なのではないだろうか?
男女の関係は起こらず、貴方は武闘家に水盆の使者達から防具を受け取るように指示した。
「え?使者って…ヒィ!?な、何ですこれ!?」
確かに見た目は異様かもしれない、しかし可愛らしいではないか。
使者達はヤーナムの狩衣装を武闘家に差し出し受け取るようにフリフリと掲げる。
彼らにはなかなか重そうでプルプルしているのもいる。
「あ、本当だ。よく見たら結構可愛いかも。うん、キモかわいい」
武闘家はヤーナムの狩衣装を受け取り、装備した。
するとぴったりだった、使者達はどうやって採寸したのだろうか?
「わぁ、これ凄く軽い。動きやすい!」
貴方は使者達に遺志を請求された、なかなかしっかりしている。
「あ、でもお礼なんて私…やっぱり身体で払いますか?
大丈夫ですよ、神殿の検査でも病気にもかかってませんし
ちゃんと健康な赤ちゃんを産めるって診断されましたから…」
…もっとこの子は自分を大事にした方がいいだろう。
だが装備を身につけ自信が戻ったのか出会った当初よりは明るくなった気がする。
まだ明るいうちに貴方は武器の練習をしようと外に出た。
スタッフ・スリング、要するに長めのラクロスラケットである。
一流のラクロスの選手は150g程のボールを時速150km程で撃ち出せるという。
だが彼女が撃ち出すのはボールでなく火炎瓶だ。
貴方は彼女にそこらへんで拾った石を拾わせ、スタッフスリングで投射するように命じた。
実戦では火炎瓶を撃つが、今消耗するわけにはいかない。
「ちょっと待ってください!私は!」
だが今の彼女ではゴブリンに近付くことすらできないだろう。
では弓矢は使えるかと聞いた。
「う…」
では仕方ない、貴方は彼女に更に鎖分銅を渡し、どうしても接近戦が避けられないならこれを使えと指示した。
「鎖分銅ですか?話には聞いたことはありますけど…」
フレイルよりは射程が長い、殺傷力は劣るが足に絡ませて逃げる時間が稼げる。
後でロープと石でボーラを作り、動きの早い敵に使って足を止めるよう指示した。
まぁおいおい遠距離武器の銃や弓矢も練習すればいいだろうが、今の彼女がとるべき点は二つだ。
『相手の射程外から攻撃』
『とにかく逃げる時間を稼ぐ』
『近づかれたら逃げる』
単純な戦術だが効果はある。
貴方は彼女に女神官と同じ単発中折れ45口径拳銃を手渡した、獣に対抗するのには不足だが
裸のホブゴブリン程度なら倒せるだろう。
もっとも初心者が命中させるには相手が止まっていてくれないと駄目なのでボーラや鎖分銅はそのためだ。
「ホブ…」
大きなゴブリン。足が掴まれて、壁に、捕まって、引き裂かれた。
押し当てられた、汚いのに貫かれて!
「う、ぐうううう」
彼女はまた泣き出してしまった。
これは手間取りそうだ。
今の目標:
武闘家 敵に近づかない
火炎瓶、石、銃で攻撃する
「武術全否定ですか!?」
「じゃから鎖分銅があるじゃろ。
まずは遠距離攻撃で弱らせ、スタン効果やドンムブ効果のある武器で止めてから殴って経験値を稼ぐのだ」
武闘家ちゃん戦術
遠距離:石や火炎瓶を投げる
中距離:ボーラで足を止める
近距離:止まった敵を棒で叩き殺して逃げる