狩人、あるいはケモノハンター   作:溶けない氷

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狩人さんはナム帰還兵めいた悲しき存在
ステイツに戻ってもベイビーキラーと罵られ
パーキングガードにすらなれず
恩人のリベンジのためにナム仕込みのベトコンスレイヤー・カラテ的なサムシングをしていたら
半世紀にわたって君臨するアメリカ最大のザイバツヤクザのゴッドファーザー的サムシングになるしかなかった的ソロー


第24話

新狩人の隠れ家にて

貴方は一緒に寝て欲しいという武闘家を寝かしつけると工房に戻った。

「暗いのが怖いんです…せめて寝るまで抱いててください…」

怯える少女を抱いて眠るまであやしつけてあげた。

胸や股を擦り付けてしがみついてくるのは何故だろう、やはり人間縋るものが必要なのだろうか。

彼女は今は服は脱いで薄いシャツとパンツだけだ、ほぼ裸の少女と同衾というのはどう見ても夫婦の営み真っ最中にしか見えない。

貴方に性欲はあるのだろうか?(ダイスを振る

『こんな夜だっていうのにお元気なことね…・』by娼婦

どうやらあるらしい、とはいえ出会った初日の少女と肉体関係を持つほど貴方は節操がない人間ではないと説得した。

「わかりました…そうですね、ちゃんと危険日にしないと駄目ですよね。

私頑張りますから…スゥ…」

疲れていたらしく寝付きは早かった。

身の危険を感じる、このままではいつの間にか15歳の少女を孕まして父親になっているかもしれない。

とはいえ、冒険者ギルドからすれば性格に少々難はあれど

優秀な冒険者である貴方の子供なら高確率で優秀な冒険者になるので歓迎だろう。

西部辺境ギルドの街の近くの家を格安で紹介したのも貴方を街の城壁の補強作兼西部に籍を固定していてもらいたいという考えの現れだ。

考えてみれば当たり前の話だが、

冒険者として大成するのはやはり農村の土地を継げない口余りの次男三男娘でなく

それなりの装備と訓練を積める騎士や貴族の次男三男か娘

あるいは親が高名な冒険者(という名のモンスター専門の傭兵)の方が圧倒的に多いからだ。

 

農家出身でゴブリンを追い払った程度の経験で冒険者になった白磁は

依頼の失敗率も1年以内の死亡率も高いのでギルドとしても困る。(例・第一話の剣士

 

夜遅くまで夜更かしする妖精弓手は貴方の工房で話している。

 

「成る程ねぇ、事情は分かったわ…

まぁ私もあんなとこ見ちゃったし、気持ちは分かるけどね…」

椅子に座り暖かいミルクを飲みながら貴方の工房仕事を見学している妖精弓手がいる。

興味深げにあちこちを見ている。

…自分の里の近くで里の少女や女性の冒険者達があんな目にあったのだから

武闘家の少女の境遇に同情を覚えているらしい。

「この女たらし、アンタもオルクボルグも大概よね。

あいつはゴブリンゴブリン、アンタは獣獣言ってるくせにやたら女の子に懐かれるんだから」

そう言うと立ち上がり、またも工房のあちこちをうろちょろする。

 

「弓?変わった弓ね…へぇあんたも弓を使うんだ」

妖精弓手は壁に飾られたシモンの弓剣に興味を示している。

狩道具は全てが神秘を宿した隕鉄を含んでいるという。

変形前は曲剣として、変形後は大弓として戦える一風変わった武器だ。

弓で獣にいどむなどと多くの古狩人は嘲ったと言われる、だがあの古狩人の実力は本物だった。

「ちょっと試させてよ、いいでしょ?

…かた!何よこの弓!?滅茶苦茶固くて重いじゃない!誰よこんなの作ったやつ!

アンタねぇ…言っちゃなんだけどこんな弓まともに使えるやついるの?」

 

そうか…弓が得意な森人の基準からしても固いのか…

やはり、あのやつしの狩人は一流だったんだな…

いやそもそも鋼鉄のごとき獣の剛毛や革を撃ち抜ける弓という時点でおかしい。

医療教会も彼の為にわざわざ特注の武器を作るほど優れた狩人だったのだろう。

矢にしても森人の使う弓と弓剣ではそもそも使われる状況が違うのもあるのだろうが

弓剣の矢は短剣かと思うほど太く重い。

繊細な森人の長弓とは全く違う。

「そりゃ使いこなせればとんでもなく強いけど使えないんじゃ意味ないでしょ」

 

工房で貴方は弓剣の弦を引き、変形させたりした。

使いこなせば接近戦も射撃もできる優秀な武器だと思うのだが。

「な、なかなかやるじゃない。んむぅ…でも肝心なのは急所を射抜く精度でしょ!」

何を張り合っているのだろうか、この子は…

だが確かにこの妖精のように長距離狙撃、さらには軌道変更などという器用な真似は貴方にはできない。

本家射手のあの『やつしの狩人』ならできたかもしれないが、貴方にはまだ無理だ。

「うん?もっと弓に興味が湧いた?いいわよ、教えてあげよっか?

私の事は先生と呼ぶ事、いい?」(ドヤァ

 

もう帰って寝たらどうだろうか?

「へ…だ、駄目よ!あの傷心の女の子とあんたを二人っきりなんて絶対駄目!」

 

それならあの娘と今晩だけでも一緒にいてあげてはくれないだろうか。

 

「うーん、まぁそこまで言われたら仕方ないわねぇ

…正直あの子と里の子の事が重なっちゃってね…

あの子もやっぱりゴブリンごときに傷物にされたって事で凄く落ち込んでるんだって…

里の大人達もどうしたらいいかわかんなくて困ってたって…」

 

森人は寿命が長い、だがそれは心の傷が癒えるのが遅いという事だ。

いつまでもあのトラウマが残り続ける、残酷な事だ。

 

「正直さ、あの子を見て私も怖くなっちゃたんだ…

森人でもゴブリンに捕まったらあんな目に遭わされるって…

あのオーガ見たとき私、あんな目に合うなら…捕まるくらいなら死のうって…

そう思っちゃったくらい怖かったんだ」

 

女性の冒険者は誰でも死の恐怖以外にあれの恐怖を抱えている。

それがわかるならあの子に少しだけ付き合ってはくれないだろうか?

 

「わかった、でも勘違いしないでよ!

あんたの為じゃなくてあの子の為だからね!

あの子があんたに頼らず自立するまでのちょっとの間だけだからね!」

 

彼女はそう言って工房から出て行き、武闘家の部屋まで歩いて行った。

彼女はああ見えて優しい女性だ。

…貴方は工房仕事を続ける。

 

朝になった、貴方は工房仕事で一晩を過ごし新たなる狩りの準備を整えた。

大量の武器弾薬を用意すればいかなる獣も恐れるには足りないのだ…

 

「あっ狩人さん、お早うございます!

はい、お台所借りて朝ご飯作ったんですけど…」

「うーん美味しい!武闘家ちゃんってお料理上手なのね!

これ凄い優しい味がするよ」

「えへへ、妖精弓手さんにも褒めてもらえるくらいなんてそんな〜

これからもっと料理の練習して狩人さんにもっと美味しいご飯作ってあげますからね!

さ、お代わりもありますからね」

 

朝目覚めた二人はとても仲良くなっていた。

良い事だ。

 

 




ちょっとの間(上の森人にとって)
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