狩人、あるいはケモノハンター   作:溶けない氷

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第30話

戦闘の前に貴方とゴブリンスレイヤーは女神官に女性冒険者達を集めて説明をしてもらった。

「えっとですね、女性冒険者が用途足す時はここをおトイレにしてくださいということです」

壁の外側になる予定の場所で風上、布で隠されている。

「ご、ゴブリンは女性の匂いに敏感だから…その…」

 

ゴブリンスレイヤーは恐れていることを貴方に説明した。

「ゴブリンどもが別の村に行けば被害が拡大する。

だからどうしても今夜、奴らにこの砦を攻めてもらう」

だがそこまで上手くいくだろうか?ゴブリンがそもそも目標を変えれば防御が無駄になる。

移動がもっと可能なように装甲を施した馬車にすべきだったろうか?

いや、それでは生産が間に合わなかった。

ウォーワゴンとは思ったよりも構造が複雑だ。

「そのために風上で女性の小水の匂いを撒く、奴らは必ず女欲しさに突っ込んでくる」

…貴方はそれを女神官を介して女性冒険者に説明してもらった。

彼女は顔を真っ赤にして全員に説明してくれた。

衛生と安全確保の為に牧場では男女別で一箇所で用を足してくれと。

…後で銃弾を送っておこう。

 

貴方は櫓の上でガトリング砲を構える、そういえばヤーナムでは時々大砲が飛んできたが

なぜただの農民や職人のはずのヤーナム民はあそこまで重武装していたのだろうか…

やっぱヤーナムはヤベー場所だったんだな。

 

「そんな…ひどい…」

櫓の上には女神官がはしごを使って登ってきている。

遠くでゴブリンどもの盾になっている女性に女神官はショックを受けている。

ガトリング砲の弾丸の装填を手持ち以上に効率的に行うには射手の他に装填手が必要だと言うと

 

「わ!私がやります!銃について少しでも詳しい人がいいんですよね!だ、大丈夫ですから」

と自ら志願してくれた。

貴方は弾丸をガトリング砲のクリップに装填した。

用意できた弾はわずか500発にすぎず、確実な殺傷距離は200m程だろう。

切り札的運用が求められる。

 

「500発…凄く多そうですけど。

そうですね…銃弾ってかなり高いですもんね」

 

真鍮薬莢は高価なので拾って再利用したい、もっと量産できればよかったのだが。

女神官にしても弾は二十発しかない、だからこそ一発一殺が求められる。

200m、既に確実に殺せる範囲内だ。

どうする気だゴブリンスレイヤー、やるのかやらないのか。

150m

いや焦ってはダメだ、魔法は意外と射程が短い。

100m

既に至近距離だ、ここまで阿呆みたいにのこのこ歩いてきたら蜂の巣だったろう。

50m

既に確実な距離だ、目と鼻の咲きといっていい。

ゴブリンどもからも嘲るように矢が飛んできては大楯に突き刺さる。

だが燃えにくいように生木から作られた盾は火矢でも燃え上がらないので無意味だ。

 

ゴブリンスレイヤーはゴブリンが『盾』を使うことを知っていた。

彼は誰よりも小鬼を殺してきた男だ。

 

「ここね《睡雲》」

「ああ、頃合いじゃい《酩酊》」

 

壁の内側の魔術師、神官、導師からゴブリンどもの肉盾に向かって非殺傷の魔法が飛ぶ。

呪文使い達から魔法が飛んで行き、「盾」を持っているゴブリン達がバタバタ倒れていった。

先頭を行く盾持ちたちが倒れ込んで動揺するゴブリンたちに向かって突如として開いた城門から飛び出した冒険者たちが躍り掛かる。

特に足の速いものたちが身につけたナイフで女性達の戒めの縄を切り、あるいは板ごと抱えて壁の内側へと交代する。

貴方は女神官に笛を吹かせた。

『投擲、火炎瓶』の合図だ。

飛び出た冒険者達は速さを重視しているために軽装であるし

女性達は裸同然である。

故にゴブリンが彼らを狙う前に援護しなければならない。

貴方は彼らの勇気に賞賛を送り、ハンドルを回した。

一定の間隔で刻まれる発砲音とともに銃弾が吐き出され、彼ら勇敢なる疾い者たちを狙うゴブリンの遠距離攻撃者達が打ち倒される。

まず第一にゴブリンシャーマン、後方でゴブリンの盾持ちの後ろに隠れていた。

なるほど、考えることは似ているはずだ。

奴は冒険者に狙いを定めている。

貴方はシャーマンを今や盾でないただの板ごと撃ち抜いて殺した。

板ごと10匹ほどいたシャーマンを撃ち殺した。

周りのゴブリンも巻き添えで死んだらしい。

そしてゴブリンアーチャー、獣のくせに一丁前に弓矢を使う。

いやヤーナム民の中にはライフル射手もいたのでそんなものか。

見れば新米冒険者達は彼らなりに奮闘している。

投石や弓矢を壁の内側から撃ち、撤退を支援している。

 

「喰らいやがれ!この畜生ども!」

「死ね!クソゴブリンはみんな死ね!」

 

あの仲良し新米二人組だ、剣士も聖女も今や得意分野となったスタッフスリングで火炎瓶を次々と投げつけている。

 

「gobbasd!?][Gugyaaaaa]

 

言葉ならぬ悲鳴を上げながら火炎瓶の中身を被ったゴブリンが一瞬で火だるまになって転げ回る。

転げ回っても一度ついた粘つく油は消えず、むしろゴブリン同士が接触することによって他のゴブリンの鎧にも燃え移る。

木と竹と蔓でできた鎧は軽く簡単に作れ物理攻撃にはそこそこ耐性があるが、生石灰を含んだギリシャ火には逆効果だ。

これではたまらないとまだ燃えていないゴブリンは、燃えて暴れるゴブリンを槍で突き殺し大人しくさせる。

そんな同胞愛に満ちた連中を妖精射手は壁の銃眼から弓矢で射殺す。

「クソゴブリンども、オルクボルグも狩人も!

こんなの冒険じゃないわ、ただのゴブリン相手の戦争よ!」

 

だったら殺せばいいだろうに。

 

「殺してやるわよ、ゴブリンどもは皆殺しよ」

 

妖精弓手は整った顔をしながらも冷静な殺意と暗黒の瞳で、矢を同時に3本放った。

一本はシャーマンに、一本はホブに、もう一本はアーチャー。

同時に3匹のゴブリンを殺す腕前は超一流としか言いようがない。

 

「全く、カミキリ丸も狩人も…あいつらとおるとやたらゴブリン退治と縁があるわい」

「ですがこれも徳行ですぞ、竜への道も一歩から」

 

導師も得意の投石紐で冒険者達をサポートする。

ヒュンヒュンという風切り音と共に鉛のつぶてが飛んでいけば、それはホブの頭蓋すら砕く。

向こうからこっちに飛んでくる矢や石玉、魔法は壁に隠れてやり過ごす。

蜥蜴僧侶は新人の治療の奇跡が可能な達と共に救出された女性達の介抱を拠点の内側、特に安全な建物の中心部で行う。

 

「『快癒』…危ないところでしたな、かなり衰弱しております。

体力回復のポーションを!」

 

冒険者達が命がけで救出した彼女達を死なせるわけにはいかない、

冒険者側の士気に関わる。

冒険者達はあるものは矢で、石で、火炎瓶で、魔法で、奇跡でゴブリンがわの攻勢を凌いでいた。

ロードは即席の砦の防御力を甘く見ていたことに動揺したが、すぐに指示を出す。

ゴブリンライダー、連中の脚力なら砦の柵をジャンプして超えられるだろう。

外からダメなら内側から崩してやるのだ。

 

「剣士!壁に取り付かれたわ!ホブよ、壁を壊す気!」

 

射撃を掻い潜ったホブゴブリンが棍棒で即席の壁を壊そうとしている。

小さいゴブリンはわざと開けておいた柵から入ろうとしては熟練の近接戦士に殺されている。

 

「このやろう!」

 

新米剣士は思いっきりフレイルを壁の向こう側から振りかぶった。

槍でも剣でもできない壁越しの攻撃。

相手に自分の体を見せずに攻撃する、安心して攻撃に集中すればこのような白磁の冒険者でもホブを簡単に倒せる。

フレイルの先には強化クラブの要領で棘が多数あり、突き刺さる。

頭蓋骨を簡単に砕かれたホブは壁の外に倒れ、死ぬ。

新米冒険者に一方的に殺される、厭らしい獣には似合いの死に様だ。

 

「やった!狩人さんが言った通りだ、壁越しに殴るならフレイルは使える!」

「いいわよ、剣士!後でいいことしてあげる!」

 

この二人も新人から中堅に成長するのは直ぐだろう。

今回の戦争に用意した棍棒はフレイルでもある。

棒の先に鎖で強化クラブをつけて作った簡易的なフレイルだが条件が揃えば強い。

 

「ゴブリンライダー!気をつけろ、柵を越えようとしてくるぞ!」

 

だが砦だからと言ってどこも高いわけではない、低いところなら狼の脚力なら跳躍して超えられる。

そこから火を放ち、壁を崩せば勝てる。

あるゴブリンライダーは砦の一部の柵は低く、簡単に超えられると踏んだ。

自分こそ軍団の花形だと周りに自慢していた。

ゴブリンソルジャーもホブも見下していた。

自分こそ軍団の花形、シャーマンやチャンプにも匹敵する重要な戦力だと。

事実、大食らいの狼にかかった肉の量を超えるほどの大ぐらいはチャンプくらいのものだろう。

いや、ゆくゆくは自分こそがこの軍団の長となる。

人間やエルフの雌どもを好きに嬲って遊ぶ身分になる。

冒険者の間抜けぶりを嘲笑いながら長年の付き合いの狼に跳躍するよう指示しあっさりと飛び越える。

 

「ギャン!」

 

だが着地した瞬間狼は突然悲鳴をあげて動かなくなりゴブリンライダーは地面に投げ出される。

何が起こった?身を打った時の衝撃で朦朧としながらも自分の相棒を見ると、血を流し死んでいる。

くそくそくそ!汚い冒険者ども!俺の狼をこんな木杭の罠なんかで殺しやがった!

俺はこんなところでやられる奴じゃない!直ぐに新しいゴブリンロードになってやるんだ!

 

「いたわ!ゴブリンよ!」

「大きいわよ!落ち着いて、囲んで叩くのよ!」

 

ゴブリンライダーは冒険者から奪った剣を手にして相対した雌の冒険者に退治する。

なんて弱そうな雌だ、こんな奴は押し倒して犯してやろう。

舌舐めずりして剣を構える、相手はただの棒しかもっていない。

明らかに新人だろう、村の雌と何が違うというのか。

すると突然ゴブリンライダーは後頭部に激痛を覚えて倒れこむ。

目がチカチカし、立っていられずに顔面から倒れた。

 

「やった!」

「まだよ、完全に動かなくなるまで叩いて!頭を叩くのよ!」

 

ゴブリンライダーは激痛の中、自分の頭に硬い棒がぶち当たる感覚を覚えた。

何度も何度も何度も。

こんな筈はない、こんな弱そうな雌どもに自分が殺される筈がない。

こうして孕み袋ハーレム願望のゴブリンライダーとその相棒の狼は死んだ。

何一つ成し遂げられず、全く無意味に新米冒険者の女圃人に殺された。

同じような光景はどこでも見られた。

隠された杭に突っ込んで身動きが取れなくなったゴブリンライダーを新人が囲んで棒で叩いて殺す。

あまりにも単純な戦法だった。

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