狩人、あるいはケモノハンター   作:溶けない氷

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いつもはゴブが数を頼みに新米をリンチしてるので
今回は新米冒険者が棒でリンチ
そういう事もあっていいんじゃない?


第33話

貴方のガトリング砲が迫り来るゴブリンチャンピオン・シールダーの大楯を砕き弾丸が脳髄を貫いた。

だがシールダーはその役目を果たした。

倒れたシールダーの後ろから続々と別のホブやチャンピオン、ソルジャーが押し寄せてくる。

矢と魔法が乱れとび、女神官の聖壁にガンガンとぶつかるが女神官はいまだにこの奇跡を保っている。

ゴブリン焼きの蓋に使うよりはかなり本来の使い方に近いのでこれには地母神様も満足。

もはや弾は残り少ない、これからは白兵戦になるだろう。

すると今までの使い方を覚えた女神官が驚愕の一言。

「私が殺ります!」

信じて送り出した可愛い娘同様の信者が大量破壊兵器に魅入られた。

地母神様は卒倒した。

「今まで溜めたお金で私も弾をコツコツ作ってたんです。

ほら!」

なんと、彼女にはまだ百発ほどの弾を保有していた。

45口径ロングコルト弾のレシピを確かに渡したが、ここまで持っているとは…

ならば容赦はしない、貴方はガトリング砲のハンドルを彼女に手渡し破られた壁の応援に向かうと告げた。

まだ残ったチャンピオンがいる。

それにしても銀級とも互角というチャンピオンがあんなにもいるというのにゴブリンが雑魚など誰が言い出したのか。

どう見てもオーガ並の大きさがあるのだが?

貴方は女神官に照準を壁に向け、敵が侵入するときに密集する瞬間を狙えと指示した。

「はい!任せてください!」

貴方にはもはや鉛玉は無い、だが貴方にはまだ水銀弾がある。

見れば更にもう一体のチャンプが大きな棍棒を振るって壁を破壊している!

大楯の壁は所詮は杭と柱と柵で固定しただけの簡易な壁なのでチャンプの怪力なら簡単に壊せるのだ。

ミシミシと音を立てて壁が崩れ去った。

「Guooooo!」

勝利の雄叫びをチャンプがあげる。

その足元からは大量のゴブリンどもが待ってましたとばかりに壁の突破口から侵入してきた。

チャンプへのロードの命令は単純。

壁を壊せ、多くの入り口を作れ。

チャンプの温存と巨体を考えれば狭い内部に入るのはソルジャーの方が都合がいい。

だが侵入したソルジャー達の上にまたも櫓の上から火線が降り注いだ!

「焦らず、よく狙い確実に一定の速度でハンドルを回す!」

狩人が戦線の支援に向かい、女神官がクリップに装填された最後の銃弾を吐き出し続ける。

ゴブリン達は驚愕した、あの忌々しい女神官が魔法使いだったのかと。

もはやゴブリンがわの遠距離攻撃手段のアーチャー、シャーマンは砦側の射手や魔法使いに次々と殺され壊滅状態だった。

だからこそ近距離線に持ち込むための突撃だった。

数十体のゴブリンがガトリング砲に撃ち殺されて銃声はようやく止まる。

とうとうの弾切れだ。

ゴブリンソルジャー達は顔を見合わせてどうする?とお互いを牽制する。

もうこんなに殺された、逃げるか?

だがどうやって?それに餌も無い、女も無い。

なに、魔法使いはようやく弾切れだ。

それにやっと砦への道が開けた。

自分たちならやれる、今までのヘマをして死んだ連中とは違う。

そう思い上がったゴブリン達はホブもソルジャーも砦の中に突っ込んでいく。

そして再び『壁』に直面する。

新米冒険者達の押してきた移動盾だ。

「押せ!押せ!奴らを近寄らせるな!」

「間隔を空けるな!押し競饅頭の要領で押し出すんだ!」

突入したゴブリンどもの正面左右に突如として押し出されたのは壁。

ゴブリンスレイヤー急造の移動大楯。

それが壁の中に入り込んだゴブリンの前に立ち塞がり、小鬼どもは動揺する。

だがホブは自信満々だ、所詮は戸板に輪をつけただけだと。

ホブは前に人間の冒険者から奪った大剣を盾に振りかぶって切りつける。

ガリィという音とともに木に食い込むが、盾は切れない。

逆に剣は挟まって抜けなくなった。

どんな怪力だろうと、錆や欠けだらけの大剣で木材は切れないものだ。

「危ないぞ!火炎瓶を投げろ!」

「フレイルよ!盾の陰から殴って!」

剣も研がない不精なホブへのお返しはまず火炎瓶、熱で怯ませる。

次にフレイルの一撃が頭部に命中した。

「みんなやるじゃん!」

そう言いながら盾の隙間から侵入してきたゴブリンどもに矢を浴びせかける妖精弓手に率いられた弓手隊。

経験の浅い新米から中堅、ベテランまで一斉に撃ちまくる。

至近距離から放たれた上にゴブリンどもは壁に囲まれて密集し、身動きが取れない。

次々と射殺されていく、遮二無二なって突撃するゴブリンは盾で阻みフレイルで殴り殺す。

これはまずいと残ったゴブリン達が遂に逃げ始めるが、壁の外側にいたのは冒険者達だった。

「おっと、悪いな。ここまでベテランが新米さん達とスコアがそんな変わらないってのはバツが悪いんでね。

お前さんがたに逃げてもらっちゃ困るんだよ。」

壁から外へ出たベテラン達は外で激闘の末にゴブリンチャンピオンを倒し、その勢いのまま壁の中のゴブリンの後ろに回った。

言うは易く行うは難し、だが熟練冒険者の腕前ならできて当然の技。

絶望…

前後左右を囲まれた大勢のゴブリン達は逃げることもできない。

数で囲んで叩く、ゴブリンが得意としてきた戦術。

今回はそれをされる側になったというだけだ。

ゴブリンは巣に迷い込んだ冒険者を囲むのは得意だが、自分たちが囲まれる側になるとは想像もしない。

故に今囲まれて、打ち殺される。

…矢が石が火炎瓶が降り注ぎ…フレイル、剣、槍が振るわれる。

人間同士の戦争ですら長い棒を持ち、囲んだほうが圧倒的に強い。

それが長い棒を持った冒険者と中途半端な長さのゴブリンとでは言うまでもない。

ゴブリンの感覚からすれば長い訓練を重ねたホブやソルジャーがなりたての新米冒険者に、あるいは熟練冒険者に一方的に嬲りごろされる。

連中とてかなりの経験を積み、それなりの数の冒険者を殺してきた。

いわばこのゴブリン軍団のゴブリンはゴブリンにとっての鋼鉄以上というエリートゴブリン達だった。

ただのソルジャーでも鋼鉄以上、ホブなら青玉、アーチャーは翠玉、シャーマンは紅玉、ライダーは銅。

チャンプに至っては銀といった精鋭ぞろいのはずだった。

今やチャンプはことごとく熟練に殺されるか、新米の火炎瓶で気道を焼かれて窒息死。

シャーマンとアーチャーは撃ち合いに負けてほぼ全滅。

ライダーは杭に引っかかったところを殴り殺された。

だがこの場に残ったホブやソルジャー、あるいは僅かなシャーマンやアーチャーでも通常なら鋼鉄級冒険者のパーティーとも渡り合える。

それが今や一方的に泣き叫び、狼狽え前から押し寄せる新米の大盾とフレイルに後ろからは熟練冒険者に一方的に押しつぶされようとしていた。

「しっかり頭を殴れ!味方に当てるな!味方との距離を保て!」

「盾を密集させろ!隙間を空けるな!」

「倒れた奴はあと二回殴れ!死んだふりしてる奴がいるかもしれないぞ!

慈悲をかけるな!慈悲のない獣だ!」

新米達は実戦で今や中堅になった、実戦は訓練に勝るとはこのことである。

 

「おー新米おっかねー。ははっこうなったら何級でも関係ねーな」

「でも、報奨金は、いっぱい、欲しい、でしょ?」

槍使いとお…いっぱいな魔女も熟練として後方から回り込んでゴブリンどもを確実に減らしていった。

もはやこうなればゴブリンが体制を立て直すことは不可能だ。

僅かに外に包囲の外に残ったために逃げようとするゴブリンを槍使いはその素早い槍で、魔女は炎の魔法で仕留めていく。

足の速い熟練は敗走したゴブリンを追撃しその首を挙げる。

ゴブリンは敗走はできない、なぜならその短足故に平原では簡単に追いつけるからだ。

「ま、楽できた割には結構稼げたし良しとしますか。

あんま欲張って怪我してもつまんねーしな」

貴方はゴブリンを掃討する新人達のサポートに回っていた。

ホブが突破しようと釘が体に突き刺さるのも御構い無しに盾に体当たりを仕掛けたりして新人を崩そうとしたこともある。

貴方はその度に散弾銃を浴びせ、ホブを弱らせ新人に叩かせた。

懸賞金を出す貴方が新人の仕事と経験を奪ってはならないのだ。

しかしながら包囲した時点で既に勝敗は決していた。

全てはゴブリンスレイヤーの作戦通りだった。

それにしても彼は今どこにいるのだろうか?

 

…『そう考えるだろうことはわかっていた。

間抜けな奴め、大軍は囮にこそ使うべきだ』

ゴブリンロードは逃げた、まだ再起はできる。

あの群れはもうダメだが、自分にはまだ手下がいる。

自分と手下にならまだ充分な餌もある。

兵隊を生む雌もいる、次はもっとうまくやれる。

そうだ、今までだって失敗は何回もあったが結局は上手くいった。

生きてさえいればまたチャンスはある。

 

巣へと逃げかえろうとする、そんなゴブリンロードの前に立ち塞がったゴブリンスレイヤー。

ショートソードと彼から買った散弾銃を構えてロードに言い放つ。

『お前の故郷はもう無い』

 

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