狩人、あるいはケモノハンター   作:溶けない氷

42 / 55
第42話

「うええぇ…」

妖精弓手も胃の中のものをあらかた吐き出してスッキリしたようだ。

先を急ごう。

「ったくもう、狩人のやることっていつもロクでも無いんだから!」

「だがゴブリン退治には有効だ。」

「とにかく少し休みましょう…」

女神官は連戦と奇跡の行使により体力の減少著しい。

貴方も休憩の必要性は認める、だが。

「いや直ぐに動くべきだ」

「同感ですな、随分と騒々しくやりましたから。

雨で音が妨げられているとはいえ、他の者が感づいているやもしれません」

ゴブリンスレイヤー、蜥蜴僧侶共に今直ぐここを離れるべきだという意見だ。

…一度補給と整備、休息の為に上の街に戻るべきかもしれない。

…水の中に何かいる!

「ゴブリンか?」

貴方方は下水道の中に注目した、流れは雨の影響か水嵩も増し早くなっている。

やはりこのままの戦闘で相手が船を持っているゴブリンの場合、足場を取られて遠距離攻撃されるのは危険だ。

貴方は雨が止むまで探索を一時中断、休憩にあてるべきだとゴブリンスレイヤーに提案すべきだろう。

すると水の中から溺れるゴブリンを一口に飲み込む影が見えた。

アレは…鰐!?誰かペットを下水道に捨てたのだろうか?

「アレはゴブリンでは無いな」

「見ればわかるでしょ!逃げるのよぉ!」

…貴方は別に倒してしまっても構わないのだろう?と言いかけたが

よく考えたらゴブリン退治以外を依頼されたわけでも無い。

それにアレは鱗物であって毛物では無い。

貴方方は走りながら考える。

「まさか沼竜がいるなんて!」

「沼竜、アリゲーター…」

あの手のアルビノ種の鱗は高く売れるのだろうか?

どちらにしろ水の中にいるのではどうしようもない。

「鱗の!ありゃお前の親戚じゃろい、なんとかしろい!」

「生憎と拙僧、出家してこのかた、親戚づきあいもないもので!」

 

皆楽しそうに走っている。

 

さてどうしたものか…

「ドワーフを食べさせて、その隙に逃げましょう!

きっと食あたりを起こすから!」

「ぬかしおる!」

何やら鉱人と妖精が仲良く騒いでいるが、貴方は構わない。

「前から何かくる、またゴブリンの船!それも多分複数!」

「ど、どうしましょう」

「手はある」

狼狽える女神官と、考えがあるらしいゴブリンスレイヤー。

…手はある、貴方は持ちうる最大の秘儀:

『彼方への呼びかけ』を使えばゴブリンの船団といえども一撃で一掃できると進言した。

「ちょっとぉ!またあのグロい系魔法使うのは無しだからね!」

心配いらない、彼方への呼びかけはむしろ美しい程だ。

ついでにこのエルフ娘も啓蒙が開けるかもしれない。

「いや、お前の考えでいく」

 

ゴブリンの船団が進んでいく、目指すは自分たちの縄張りに踏み入った冒険者どもだ!

弓矢に剣、槍を構える。

声からすると雌がいた。

冒険者の雌はゴブリンどもにとっては嬲りがいのある人気の戦利品だ。

明かりを確認し、いざ!

しかし目の前に現れたのは巨大な沼竜だった。

ゴブリンシャーマンがいるとはいえ、お粗末な整備しかしていない船はあっさりと叩き沈められる。

 

…「いと慈悲深き、地母神よ。

闇に迷える私どもに聖なる光をお恵みください」

女神官が奇跡を使い、沼竜の尻尾に光を灯すという器用な技を発揮している。

「成る程〜、沼竜の尻尾にホーリーライトをかけてゴブリンどもをおびき寄せたってわけね」

「毒気も火攻めも水攻めも狩人の技も使えないのではこの程度が関の山だ」

妖精もゴブリンスレイヤーもこれなら文句はないようだ。

それにしても夷を以て夷を制すとは、それも咄嗟に奇跡で間に合わせる。

やはり彼は大した男だ。

ちなみに貴方はまず先制して彼方への呼びかけをぶちかました後に

火炎瓶と呪詛をありったけ投げつけるという単純な作戦しか思いつかなかった。

これで大砲でも持ってきていれば話はもっと単純だったのだろうが…

「にしても明かりであっさり騙されるとはねー」

「奴らは、冒険者は明かりをつけて移動するものと学習している」

「そうなの?」

「いつの頃からは知らん、だが共通の常識となっている

そもそも奴らは略奪民族だ、ものを作るという発想自体を持たん」

ヤーナム民は逆によく物を作る、彼らは非常に高度な技術と文明の持ち主だ。

建築・芸術・武器…いずれも恐ろしく繊細で高度な技術を反映している。

しかしながら結果として出来上がったものはなぜか冒涜的だったり殺意満点な代物ばかりだが。

…ふむ、となると投げて使う発炎筒が有効かもしれない。

貴方はゴブリンスレイヤーにこういうものはどうだろうかと話した。

「悪くない道具だと思う、奴らは夜目がきくがそれは同時に光には弱いということだからな。

あんたの言う発炎筒?俺もよく松明を怪しい場所に投げ込む」

そうか、やはり彼も考えることは同じか。

発炎信号銃は中世に発明されたらしいが、彼の散弾銃に弾として作るのはそんなに難しくはないだろう。

「撃てる松明か、それは便利そうだな」

そのうち試してみよう。

「しかし、奴らはバカだが間抜けじゃぁ無い。

道具の使い方はすぐに学習する。

船の使い方を教えればすぐに学習する」

 

「随分と詳しいのね」

 

「調べて研究した、だから俺は奴らに新たな発想を与えない。

鏖殺する」

それに関しては貴方も同意見だ、もっとも学習しようがしまいが殲滅することには変わりがないが。

「つまり誰かが船について教えたっちゅうことか」

それに船もだ、あの船は明らかにゴブリンがその場しのぎで作ったようなチャチなものでは無かった。

明らかに人間から奪ったか、混沌の軍勢とやらのもっと器用な連中が作ったものだろう。

「でもそれだけならまだ、シャーマンとかが思いついただけかもしれませんし」

女神官も不思議に思い話しかける。

「かもしれん、だが奴らがここで自然に増えたのだとしたら

なぜあの…なんだ?」

 

「えっと、沼竜ですか?」

 

 

「そうだ、なぜゴブリンはあの存在を知らなかった?

知っていれば、船を用いるなど思わなかったはずだ。

奴ら、臆病だからな」

「何が言いたいのかね?小鬼殺し殿」

「地下にはびこるゴブリンどもは、自然に増えたわけじゃあ無い

この一件は何者かが人為的に引き起こしている」

 

 

…水の街、地下深く

「うふふふ、エルフ・ドワーフ・ヒュム・レーア、ああゴブリンも…素晴らしいわ…

陰気なヤーナム民の治験では得られなかった治験、ねぇわかる?

脳に瞳を得る感覚…

ああ、でも…魔神の治験も得難いものかしらね…」

「…」

「ええ、ええ。わかっているわよ、邪悪な魔術師さん。

私の目的と貴方のそれは合致してる?

貴方は上位者の叡智が欲しい、私は治験の経験が欲しい。

(ふふ、何も知らない愚か者めが。

上位者の可愛いお人形さん達、何にも知らないお人形さん達の箱庭。

でも大丈夫、みんな可愛い私の患者になるの。

うふふふふ)」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。