それに見たところ優秀な…冒険者だ
ああ、俺は狩人。
連盟の長だ
連盟とは、世界に轟く汚物すべてを根絶やしにするための協約さ
お前も冒険者なら、気持ちは同じだろう?
穢れたゴブリン、気色悪いアンデッド、頭のイカれたデーモン
みんなうんざりじゃあないか
だからこそ、殺しつくす。
連盟の冒険者が、お前に協力するだろう
どうだ?お前も、我ら連盟の仲間にならないか?
…暫くして、ゴブリンスレイヤーと例の三人は2階の応接室に上がっていった。
…彼らがゴブリンスレイヤーに用があるのなら貴方には関係はない。
貴方は討伐依頼成功の報告をするとテーブルに座り、再び紅茶を嗜みながらあのオルゴールを開いた。
どこまでも冷たく優しい曲だが、この曲が流れている間は頭がおかしい狩人がいるという他の冒険者への警告になっている。
「はぁ…」
女神官は貴方の隣でため息をつきながら紅茶を淹れ休んでいる。
ゴブリンスレイヤーが毎日どの程度のゴブリンの巣を焼いているかは知らないが
疲れているのは目に見えてわかる。
貴方は隠れ家で人形に癒してもらえば良い、だが彼女には癒しはない。
夢を見ないということが人にとってどれだけ辛い事か。
だが貴方には何もできはしまい、ただ血に塗れた貴方の手では何一つ癒せはしないのだ。
「ねえ君…俺達と一緒に行かないか…」
「いえ、折角ですけど…」
貴方の向かい側の席では女神官が白磁の少年剣士にパーティーに誘われていた。
…彼女が誰とどんな依頼を受けようと貴方にとっては関係の無い話だ。
…尤も、あまりにも無謀な冒険に出ようというのなら貴方も警告くらいはするが…
貴方はそれからずっとオルゴールを聴きながら紅茶を嗜んでいた。
…そういえばあの少年剣士のパーティーは彼以外女性だったな…
女神官と少年剣士がゴブリンスレイヤーの件で口論になりそうになると、流石の貴方もこれにやんわりと忠告しようかとしたところ
別のパーティーの魔女が彼らを止め、女神官の少女を連れて行った。
…そういえばやたら若くて露出が多かったな、貴方はヤーナムの魔女を思い浮かべた…
ランランランラーン♪ラーンララー♪
うっ!危ない!あまりの悍ましさに危うく発狂しかけてしまった!
貴方は急いで鎮静剤を飲んだ。
周りに濃厚な血の匂いがまた広がる…
…ふぅ、ヤーナムとこの地方を比べるのはなるべく止めよう。
それにしても少し離れただけだというのにあれを思い出すだけで発狂しかけるとは…
どうやら貴方の発狂耐性は下がってしまったらしい、これも啓蒙のせいか。
「やだ、何飲んでるのあの人…」
「また血なまぐさいアイツかよ、受付嬢さん泣いてたぞ。
ギルドの周りが血腥いって苦情来てるって…」
「あのゴブリンスレイヤーと仲良いって…そりゃ変人同士だからだろ。
ある意味納得だな」
「いつもあの音楽の箱鳴らしてるって何で?…でも音楽のセンスだけはいいのよね」
貴方は狩道具の準備をし、次の狩に備える。
すると唐突に例の妖艶な魔女に話しかけられた。
「こんにちはぁ ちょっと いいかしら?」
貴方は構わないと告げた。
「ねぇ、あなたも 一人なんでしょ?どうしてパーティー組まないの?」
あなたは苦笑して告げた、今までに一人だけで狩に行ったことはあるがどうしても勝てない相手を狩る時には助けを求めることも多かった。
「へぇ意外ねぇ?貴方ってほら、どんな依頼でも受けてあっという間に片付けちゃうでしょ?
だからぁ 貴方が苦戦する場面なんて想像できなくってぇ」
過大評価のしすぎもいいところだ、確かに今では狡猾さと力を備えたが新米の頃は恐らくはゴブリンにすら苦戦しただろう。
実際に貴方は犬や烏相手でも苦戦しっぱなしだったと正直に伝えた。
特に犬の恐ろしさは身にしみている、今でもゴブリンが犬に近い狼を使役するという話を聞くと緊張すると強調した。
「ふふっ、おかしな人ねぇ。大抵の冒険者さんは自分が雑魚に苦戦したぁ
なんて言いたがらないのにぃ…」
そんなわけはない、それに雑魚というが人を殺せる凶器には違いない。
どんな名人、達人も所詮は人。
鋼鉄の刃で刺されれば傷つき、炎を浴びれば火傷するのは誰でも同じ。
雑魚がナイフならデーモンは名剣だろう、だが遭遇する確率と頻度、自らの力量を考えれば雑魚への対策が延命策となる。
常に退路を確保し少しでも危なそうと思ったら脇目も振らず逃げる、冒険者は冒険してはいけない。
あんたはそう思わないのかい?
「初心忘れるべからずって奴?
えらいえらい、白磁級の新人さん達もあなたを見習ってほしいものねぇ…」
魔女はどこか遠い目をして彼方を見つめる。
どうもこのような女性と話すのは初めてで苦手だ、年上の女性といえば鴉羽狩人くらいなものだろうか。
「ねぇ、あの女神官ちゃんをちょっとだけでいいから見てあげてほしいの。
…昔の私を思い出しちゃってね。
ま、老婆心ってやつかしら。
貴方だってあの子の事気に入ってるんでしょ?
おねぇさん知ってるのよ」
クスッと笑って魔女は以外と人懐っこい笑顔を向けてくる。
貴方は同業者に助言と手助けをすることは大いに賛成だし奨励されるべきだと思うと伝えた。
それどころか憎むべき獣を効率的に狩るためにも積極的にこの冒険者ギルドに協力したいと思っている。
狩道具の改良や体系的な訓練、知識・経験の共有など冒険者ギルドには改良すべき点が山ほどある。
新人冒険者が死亡するような事は事前の準備さえあれば9割は防げたというのに…
これでは人材の浪費に他ならない…
貴方が現場を憂いていることを伝えた。
するとキョトンとして魔女はこう言った。
「ふっくっ。あらごめんなさい、いえね。てっきり貴方って自分の事さえ良ければっていうタイプだと…誤解してたみたいねぇ」
気にするなと貴方は言った、それにあながち間違ってはいないのだ。
自分の為に獣を殺す、それに間違いはない。
穢れたゴブリン、気色悪いスライム、頭のイカれたデーモン、みんなうんざりだ。
だからこそ、殺しつくす。
貴方は今や冒険者ギルドの狩人だ、冒険者に喜んで協力するだろう。
貴方は強い覚悟で獣への憎しみを強めた目をする。
凄まじい殺気を孕んだ目に魔女も背筋が凍るような恐怖を一瞬覚えるが、貴方に感謝していると伝えてきた。
「ふふっ、冒険者の事をこんなに真剣に思ってくれる冒険者か…
なるほどね、彼とはまた違うけど…でも確かに似てるわ。
今なら彼が貴方のことを気に入ってるのも分かる気がする。
あら、それに私もよ。
ねぇお姉さんからのアドバイス…やっぱり週に一度はお風呂に入って洗濯したほうがいいわよ。
そのままじゃ初見さんに誤解されちゃうしぃ
それじゃ貴方のしたい『狩り』にも支障が出ちゃうでしょ?ね?」
魔女はやんわりと貴方に助言してくれた。
今のままではくさすぎて普通の冒険者の仲間にはなれないと…
…貴方は考えを改め、次の依頼を終えたら必ず風呂と洗濯場に行くと約束した。
「それでよし、お姉さんとの約束よ?
いい男なんだから、損しちゃうわよ?」
魔女は貴方との会話を切り上げ、彼女の仲間に合流した。
…なぜだろう?このギルドで一番普通の会話をしたような気がする…
一番非常識な格好なのに…人は見た目によらないということだ。
…貴方と魔女が会話を終えると例の女神官はまた椅子でお茶をしている…貴方はそうだと思いついて彼女に話をしに言った。
「な、なんでしょう?」
貴方はゴブリンスレイヤーがどのようにゴブリンを狩って駆逐しているか彼女の視点から聞きたかった。
「え?ゴブリンスレイヤーさんですか?あ、聞いてくださいよ。
あの人ったら聖壁でゴブリンを閉じ込めて…」
…なるほど、彼女からの話によると彼は彼女の能力を有効に利用しているようだ。
だがと、貴方は彼女に逆に問いかける。
それでは彼女自身は直接ゴブリンを殺していないのかとも
「っ!そ、それは…」
どうやら彼女はまだ直接自分の手では殺せていないようだ…
貴方は自分の銃を取り出すと彼女に言った。
もしも彼が傷ついたら誰が彼を守ってやれるのか?と
「え?ゴブリンスレイヤー さんが…ですか?」
彼もいつかは傷つくかもしれない、そんな時には女神官が彼を安全な場所に避難させる必要が出るだろう。
そんな時に神秘…いや奇跡を使い果たしていたらどうするのか?
「そ…それは…」
では何もできないからと彼を置いて逃げるのか?
「そんなことしません!」
いや違う、その状況では彼を置いて逃げるのが最善の選択だ。
彼が傷つき、女神官が誰も守れないのなら彼一人の死亡で済ませる逃亡という選択肢を取るべきだ。
「そんな事言わないでください!絶対にそんな事にはなりません!
パーティーを組んだ人は私が守ります!」
ならば、と貴方は銃を彼女に渡した。
獣狩りの短銃を、かつて貴方が渡されたように…
これが選択肢の一つだとも女神官に伝えた。
これは守る力だと伝えた。
「守る…力…」
女神官も『銃』という武器の事は聞いている。
火の秘薬の力で鉄の筒から鏃を打ち出す武器だ。
「でも…地母神様の教えでは…」
それでいい、だが女神官は冒険者だ。
冒険者である以上は相棒を守る為に全力を尽くすべきではないのか?
それとも地母神は自分の教えの為に誰かが傷つくことを望むのか?
「そんなはずありません!地母神様が誰かを傷つける事なんて許すはずはありません!」
そうだ、銃は地母神の守る力でもあると考えるのだと貴方は彼女にアドバイスした。
火の秘薬が大地から産出する以上、その力を正しく使い誰かを守る事を望んでいるはずだと
「地母神様の力…これも…わかりました…狩人さん、私に銃の使い方を教えてください!」
女神官は銃を手に入れた!
連盟は女神官を迎えて僥倖だった…
信じて送り出した可愛い信者が邪神に言いくるめられて呆然とする地母神様の図