不死殺し   作:ユルト

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…貴方も、不死なのでしょう?

ならば、馴れ合いは不要です
お互い、己の使命を果たしましょう

…さもなくば、我々はただの呪われ人です


不死殺し:第一幕【小鬼の裏に潜む鬼】
蝶の羽ばたき(バタフライ・エフェクト)


▼王都の会議室にて…

 

 王都の会議室、早朝より始まったそれは正午を迎えようとしているが終わる気配はない。

 

 それもそのはず、この会議は今までの貴族同士の腹の探り合いや蹴落とし合いの類ではないのだから。

 

 『魔神王の復活』

 

 今から約10年前に混沌の軍勢を率いて現れた災厄。その『魔神王』が復活した影響で悪魔(デーモン)などの活動が活発になった。

 

 そのような理由で早朝から大臣、赤毛の枢機卿、褐色肌の宮廷魔術師、近衛騎士団長、名門貴族、学者、商人ギルドの長などが集まり御前会議が開かれた。会議室の中には金等級の冒険者も居り、その多くは王国の冒険者ギルド以外の機関にも属していたりする。

 

 そんな中、一人だけ銀等級の認識票を掲げている冒険者が居た。全身鎧に紋章の彫られた盾、漆黒の剣には悪魔(デーモン)を殺す力が秘められている。

 

 「魔神王の復活は最悪の事態だが…各地で暴れまわる悪魔の対処は彼に任せてある」

 

 「それにしても何故貴方は金等級への昇級を拒むのですか?悪魔殺し(デーモンスレイヤー)殿」

 

 その言葉を皮切りに先程のからチラチラと伺うような視線が、ジッと凝視するものに変わる。その視線の先には件の彼だ。

 

 

 

 

 

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 「(面倒だな…これならば会議に出席するのではなかった…)」

 

 国王と大臣の言葉によって自身に注目の視線が向けられているが面倒だというのが私の思いだった。銀等級の認識票を掲げられているからだろう。

 

 金等級の冒険者の中には国王や大臣に信頼を置かれている私を快く思っていないものもいる。先程から感じる冒険者からの視線が鬱陶しい。

 

 「簡単な話です…金等級になってしまえば、一つの場所に縛られる。私はそれを望まないからです」

 

 「貴殿はあの『遺跡群』の調査を主としているのだったな…」

 

 「各地のギルドで発見報告が上がるとそれを調査するため移動しますから、何処かに留まることはありません」

 

 「ですが、貴方は辺境のギルドに家と『神殿』をお持ちですよね?」

 

 赤毛の枢機卿が微笑みながら私に話を振る。その微笑みの奥に何が隠されているかなど考えたくはないものだ。

 

 「あそこは『孤児院』ですよ…決して『神殿』などという仰々しいものではありません」

 

 「ですが、そこでは貴方の信仰している『太陽神』を信仰されているのでしょう?」

 

 「訂正するならば、『太陽神の長子』です。彼らに信仰の強制はしていません」

 

 この世界に来てから五年の月日が流れようとしている。

 

 私は未だに基本的な拠点は辺境のギルドに置いている。その理由の一つが件の『孤児院』。

 

 最初は怪物たちによって村が滅ぼされ、行き場を失った女子供を匿う場所として開いた場所だった。

 

 私の趣味の武器や道具を購入する以外で使い道のない悪魔討伐によって得た多額の報酬金をつぎ込んだもの。

 

 現在はその居住者たちが『太陽信仰』を始めたことから、『太陽の神殿』と呼ばれるようになった。

 

 所謂、新興宗教の類であるが同じく辺境に神殿を置き、収穫祭などの行事で手伝いも行う『地母神』やよく悪魔討伐の依頼が舞い込む『至高神』の勢力からは快く迎え入れられていた。

 

 私としては何故こうなったのかと頭を抱える事態だったが辺境の民には迎え入れられ、最近は人数が増えてきたため増築するという話も上がっている。

 

 「邪教の類ではないのだから私としては何も言う事はない。すまないが宗教の派閥争いは今度にしてくれ」

 

 そんな宗教が絡んだ厄介な話題は国王の一言で収まった。枢機卿は苦手なタイプの人間のため、心底助かった。

 

 「本題に入ろう…勇者候補が見つかった」

 

 「やはり、彼女は勇者の器でしたか?」

 

 「ああ、貴殿の言う通り。彼女は規格外の冒険者だ」

 

 「国王、悪魔殺し(デーモンスレイヤー)殿…他の方々が現状を把握できていませんぞ」

 

 「おお、そうだったな。経緯を話すなら件の勇者候補は悪魔殺し(デーモンスレイヤー)殿の推薦だった」

 

 その発言にまた私へ注目の視線が集まる。

 

 「彼女は辺境の民である村の孤児院の少女。昔にゴブリンの襲撃からその村を守ったのが切っ掛けで私は彼女が冒険者になると言い始めた頃に少し稽古を付けていただけです」

 

 「彼女は白磁の頃から既に才能の片鱗を見せているようですな。魔法は一日に六度行使しても問題なく。初めてのゴブリン退治の際に聖剣を抜き、『魔神将』の一人を撃破しております」

 

 「やはり、勇者というのは規格外なものだな…。何故、彼女が有名になっていないかという話だが。冒険者ギルドや王国の機関で彼女の存在を隠しているからだ」

 

 「何故、そのようなことを?」

 

 「不用意に祭り上げ、混沌の勢力に存在を悟られるのは愚策だ。此度の闘いは隠密に徹し、早々に『魔神王』との決着を付けるつもりだ」

 

 「既に彼女は二人の仲間と共に王都を旅だった」

 

 「ですが、王。それでは民衆は不安がるのではないでしょうか?勇者の存在というのは民衆に大きな安心感を与えます」

 

 そう勇者が現れるというのは魔神王との闘いが激化する時代において希望の光。その存在を隠し続けるというのは民衆の不安を煽ることにもなり得る。

 

 「それは問題ではない、今回は悪魔殺し(デーモンスレイヤー)がいる。民衆にとって悪魔を屠る彼の活躍は勇者にも匹敵する」

 

 「つまり、勇者殿が魔神王を討伐するまでは悪魔殺し(デーモンスレイヤー)殿が王都へ居座るのですか?」

 

 「それでは意味がないだろう、王都だけが無事では何の意味もない。恐らく混沌の勢力も悪魔殺し(デーモンスレイヤー)を警戒している。故に表では悪魔殺し(デーモンスレイヤー)が動き、裏では勇者一党が各地を回り混沌の勢力の拠点を攻める」

 

 「では、どのように?」

 

 「先程、森人(エルフ)鉱人(ドワーフ)の王から会談の手紙が届いた。どうも、既に各国にも悪魔の被害が及んでいるようだ。悪魔殺し(デーモンスレイヤー)には今後も悪魔討伐の依頼に協力」

 

 コンコンと会議室の扉が叩かれた。一体誰だと皆がそちらを向くと私の世話係のメイドだった。

 

 「皆様、すみません。悪魔殺し(デーモンスレイヤー)様の馬車がご到着しましたので…」

 

 「時間のようですね。私は抜けさせて貰いますがいいですか?国王」

 

 「ああ、すまない。今後、依頼は手紙を送る。それまでは悪魔殺し(デーモンスレイヤー)は待機、辺境のギルドに戻って貰って構わん。指名の依頼に関しては最優先で頼む」

 

 「了解です」

 

 

 

 

 

 

 

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 私は会議室を出る。すると後ろから声が掛かる。

 

 「やっと終わったみたいだね!」

 

 それはこの世界に来てからの付き合いである闇人(ダークエルフ)盗賊(シーフ)。彼女とはあの依頼以降ずっと一党(パーティ)を組んでいる。

 

 狼人(ウェアウルフ)戦司祭(ウォー・プリースト)の彼は現在。自分の集落に帰省している。手紙は度々送られてくるので元気にしているようだ。

 

 「読書で退屈しのぎをしていたんだけど、まさか馬車が来るまで待たされるとはね」

 

 「すまない。私も時間が来て会議を抜け出しただけだから会議自体は続いている」

 

 「うへぇー…私はそういう長い会議は勘弁だなァ…。君の作戦会議は要点を纏めて分かり易くて好きだよ?」

 

 「そうか、話の続きは馬車に乗ってからにしようか」

 

 「おっけー!」

 

 こうして私と彼女は久方ぶりに王都を離れ、古巣である辺境のギルドに向かった。

 

 

 

 

 

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▼少女神官の旅立ち

 

 手には錫杖、身に纏うは聖なる衣と見るからに聖職者という服装。今日、一人の少女が冒険者としてこの教会から巣立とうとしている。

 

 「旅立ちの日が来ましたね」

 

 「はい、私に何ができるかはわかりません。ですが、司祭様のような立派な冒険者になれるように頑張ります!」

 

 「貴女は冒険者に成らずともその才能と勤勉さであれば、立派な聖職者にはなれると思いますが…。それは本人が決めることですね、私は貴女が決めたことを尊重します」

 

 「司祭様も冒険者としての活動は少なくなっていますが、お仲間と冒険者してらしたんですよね?」

 

 「相方が現在は都の方へ長期の依頼へ向かってから、それほど多くの依頼は受けてませんからね…」

 

 司祭が眺めるのは首に掲げられている銀のプレート。彼女が社会へ多くの貢献をし、在野最上位の冒険者であることを示す証だ。

 

 「冒険者とは過酷ですよ?私も彼女も『彼』に助けられてなければ、こうして生きてもいられませんでしたから…」

 

 「彼とは『悪魔殺しの騎士』様の事ですよね?時々、教会にも来てくださってました」

 

 「ええ、彼には大分お世話になりました。今は王都に居ますが近々帰って来るそうです。ギルドで見かけたらアドバイスを乞うのも手でしょう」

 

 「私みたいな新人に答えてくれるでしょうか?」

 

 「新人だからこそ真摯に答えてくれますよ?あの人は世話焼きですからね♪」

 

 司祭は昔を思い出しているのか穏やかな笑みを浮かべている。

 

 「それではいってきます!」

 

 「いってらっしゃい。貴女の旅路に地母神様と太陽の導きが在らんことを…」

 

 

 

 

 

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 地母神の神殿から数分歩けば、辺境のギルドに着く。女神官も何度か足を運んだことはある為迷わずに辿り着いた。

 

 「私…本当に冒険者になるんですね…」

 

 今までのように配達で来るのではなく、冒険者の一人として訪れたギルド。その扉はいつもよりも重く感じられた。

 

 ギルド内では朝であるのだが、冒険者たちで賑わっている。その光景に女神官は呆気にとられた。

 

 そんなギルドの一角で槍を持った男と大剣を背負った男が談義している。

 

 「そういえば聞いたか?」

 

 「ん?なんだ?」

 

 「万機使い(オール・ラウンダー)の旦那。また王都の悪魔狩りで大活躍したそうだぞ」

 

 「そういえば、数日前から旦那の事を謡う吟遊詩人が新しいのを謡ってたな…それか」

 

 「だが、王都周辺では魔神王復活の噂も広がっている。それに旦那が活躍してるってことはそれほどまでに悪魔が多いってことだ」

 

 「中級くらいならどうとでもなるが、上級とバッタリと出くわしてポックリ逝くなんて洒落にならねえ」

 

 「だな」

 

 「準備は…出来たわ…お話…もう…いいかしら?…」

 

 「ん?相方さんがお待ちだぞ」

 

 「おうよ、これから冒険(デート)なもんでね!じゃあな!」

 

 そんな何気ないギルドの一幕。だが、そんな光景すら女神官には目新しく映った。

 

 「あのー…大丈夫ですか?」

 

 そんな呆然としていた彼女に背後から声が掛かった。振り向くとギルドの制服を着た女性だった。 

 

 「すみません、冒険者登録を行いたいのですが…」

 

 「あっ、新人さんですね!ようこそ、冒険者ギルドへ」

 

 受付嬢が見惚れるような微笑み(営業スマイル)で対応する。しかし、それは表面だけの冷たいものではなく、新人に圧迫感を与えないようにという彼女なりの配慮である。

 

 多くの新人冒険者が彼女の微笑みに胸を射抜かれたのは想像に難くない。

 

 「文字の読み書きはできますか」

 

 「はい、神殿で習いましたから…多少なら」

 

 「では、こちらの冒険記録用シート(アドベンチャー・シート)に記入をお願いします。わからない箇所は訊いてください」

 

 手渡されたのは名前、性別、年齢、職業、髪、目、体格、技能…etc.。項目は多いが内容は実に簡潔なもの。

 

 女神官が冒険者になるのにこれだけでいいのかと思わず疑ってしまうほどだった。

 

 「技量点、冒険履歴に関しては空白でお願いしますね。そこは私たちギルド職員が査定しますので」

 

 「わ、わかりました」

 

 緊張でペンを持つ手が僅かに震える。しかし、その震えを抑え込みしっかりとした字で書き綴った。

 

 出来上がった書類を受付嬢が受け取ると記入漏れがないかを確認した後、白磁の小板に銀の尖筆で文字を刻みつける。

 

 「これで登録は終了、こちらが白磁の認識票になります。それでは改めまして…ようこそ冒険者ギルドへ」

 

 その後は進級やその他諸々についても話を聞く、話は冒険者にとって重要な依頼についての話に変わる。

 

 「私としては下水の巨大鼠(ジャイアント・ラット)の討伐がおススメですが…」

 

 「?…冒険者は怪物と戦ったりするんじゃ?」

 

 「巨大鼠(ジャイアント・ラット)の討伐も立派な怪物退治で社会貢献です。他に白磁の新人さんに出来るお仕事はゴブリン退治ですが…こちらはあまりおススメではありませんね」

 

 「そうですか…どうしましょう…」

 

 今日の所は宿を確保して一旦依頼をじっくりと眺めてみようなどと女神官が考えていると。

 

 「なあ、俺たちと一緒に冒険に来てくれないか?」

 

 「え?」

 

 その言葉で振り向くと居たのは傷一つない胸当てに剣を腰に下げた男の子、髪を束ねて道着を纏った活発そうな娘、杖を手に冷たい視線を向ける眼鏡の娘。

 

 彼らの話を纏めるとこれからゴブリン退治へ向かうのだが、この一党(パーティ)には聖職者が居らず同じ新人の聖職者を探していたらしい。

 

 「わかりました、私でよろしければ」

 

 これも何かの縁だと女神官はその誘いを受けることにした。一人で受けるのは心細い彼女にとっては渡りに船である。

 

 「えーっと…本当にゴブリン退治の依頼で宜しいですか?」

 

 「村娘たちも浚われてるそうだし、急がなきゃいけないだろ?それにするよ!」

 

 「まぁ、待て。お前たち、準備は万全か?」

 

 受付嬢から依頼を受注したら即刻ゴブリンの元へ向かいそうな4人へ声が掛かる。

 

 首には銀の認識票、幾つもの傷のついた鎧に腰の剣。如何にも冒険者というような風貌の男だった。

 

 「あっ!戦士さん、新人の付き添いありがとうございます!次の依頼ですか?」

 

 「水の都に行くことになった、少しの間は帰ってこない」

 

 「出来れば、彼らの依頼に付いていって欲しかったのですが…」

 

 「残念ながら無理だな、ゴブリン案件なら『アイツ』がいるだろ?」

 

 「『ゴブリンスレイヤー』さんは昨日の依頼からまだ帰って来ていません…」

 

 「そうなのか…話は戻るがお前たち、準備はしたのか?」

 

 戦士の品定めするような視線に4人はたじろぐ。そんな中、新人剣士が一歩前に出て発言する。

 

 「だって、ゴブリンでしょ?俺、村に来た奴を追い払ったことがあるよ」

 

 「馬鹿野郎、この依頼は巣穴への突入が前提条件だ。ゴブリン共の巣穴で戦うことの意味を知ってるのか?」

 

 「どういうことですか?」

 

 「まず、洞窟内での隊列の組み方は?誰が先頭で誰が殿を担当する?次には解毒剤(アンチドーテ)は買ったか?巣穴で生活するゴブリンは毒を塗った剣や弓を使用することもあるぞ?他には…」

 

 戦士の口から次々と紡がれる言葉に4人は真っ青になっていく。自分たちがどれだけ無謀な事をしようとしていたのか理解したのだろう。

 

 「まあ、俺が知ってるゴブリンについての情報はこんなもんだが…お前たちはこれらの情報をいくつ知っていた?金が足りなくて準備ができないならまだしも、作戦会議や役割分担すらしてないみたいだな」

 

 「はい…」

 

 「すみません…」

 

 「まあ、新人によくある勘違いだな。楽な依頼なんてない、冒険者は常に死と隣り合わせだ。さっきまで隣を歩いている奴が明日死ぬなんていうのはよくある話だ」

 

 そう話す戦士の目は真剣でその言葉が真実だと理解できる。

 

 「まあ、なんだ。死にたくないならせめて一党(パーティ)内での役割や隊列くらいはしっかりと決めとくことだ」

 

 「はい!」

 

 「じゃあな、俺はこれから荷造りしなきゃなんねぇ」

 

 「戦士さんもお疲れ様です」

 

 戦士は後ろ手で手を振ってギルドを出て行った。四人はその後ろ姿に礼をする、彼の姿が見えなくなると四人は話し合う。

 

 結果、解毒剤(アンチドーテ)は全員で出し合って2本購入し、洞窟内の隊列を決めてからゴブリン退治へ向かうのだった。

 












皆さん、お久しぶりです…
海外出張で年越しをし、その後はハイラルの地でボコブリンスレイヤーになってました。
厄災リンクさんの何でも使え精神はゴブスレさんに似通るところがあると思います。
アニメも終わりましたが、2期を信じてぼちぼちと書き続けようと思います。

ゴブスレ9巻の特典であるゴブスレ事典はいい資料ですね。
魔法が体力点消費だとか各職業のステータス等いろいろ載ってて面白いです。

ダークソウルの方は2、3をぼちぼちやっているのですが
久々過ぎて覚束無い&リマスターに比べてヌルヌル動くので難しいです

今後、2・3要素が出るかは気分次第ですが
出来るだけ面白く書けるようにしたいです
3のゲール爺大好き、かっこいい、闘争本能をくすぐられる
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