不死殺し 作:ユルト
我は、世界の蛇、闇撫でのカアス
貴公ら人を導き、真実を伝えるものだ
不死の勇者よ、真実を知りたくはないか?
貴公ら人と、不死の真実を
▼火防女の朝
心地よい暖かさの光が部屋に射し込んでくる。その光を受けて彼女は少し眠たげにしながらも起床する。
寝ぼけ眼で周囲を確認すると昨夜彼女と共に寝た
少し揺らしてみたりするが起きる気配はない。いつものことであるため放置し、ベッドを出る。
「んっ……朝ですね……支度をしないと…」
ベッドの側へ立て掛けてあった杖を取り、家の主がいるであろうリビングへ向かう。
「ん?おはよう、今朝は早いのだな」
リビングではこの家の主が暖炉の前に椅子を置き、本を片手に寛いでいる。
服装は外で見る上級騎士の鎧ではなく、町で買った服装をしている。
「もう…その本が気になるのはわかりますけど、睡眠時間を削るのはどうかと思います」
彼は究極的にいえば飲まず、食わず、寝ずでも戦うことは出来る。だが、冷静な思考や判断力を保つには休息は必要だ。
「もう少しで理解出来そうなんだ、魔法というのも使い始めると中々いいものだ。純粋な魔術師たちには遠く及ばないが、戦うための手札が増えるのはいい」
彼が読んでいるのはロードランで買ったはいいが
この地に来て五年、彼は時間があれば魔法を研究した。ロードランであれば、師事できる人物もいるだろうが此処にそのような人物がいるはずもない。
研究は難航しているがそれでもこの五年間は無駄ではなく、着実に実を結んでいる。
「『盾と武器に強力な魔力を付与する魔法』ですか……前にも似たような魔法の本をお読みになっていましたよね?」
「私にとって武器の方はイマイチだが、盾の敵からの攻撃を受けやすくなるというのは素晴らしい」
「はいはい、あまり根を詰めないようにしてくださいね。私は朝食の用意をしますから少ししたら御姉様を起こしてきてくれます?」
「ああ、わかった」
火防女はリビングを離れるとキッチンで朝食の準備を始める。朝食の準備といっても盲目では料理は難しく、彼女がするのは三人分の食器を用意したりすること。
普段の食事は孤児院の大食堂で食べているが三人集まる時は此処で食事を摂っている。
「もぉー…起こしてくれてもいいじゃない…」
「御姉様、私の呼び掛けでは起きないじゃないですか」
「それでもさぁ…寝起きの顔を彼に視られるのは乙女として…」
「そういうことを気にするのなら早起きしてください」
「うぅ……はぁ…善処します」
「それよりも朝食ですよ。久方ぶりの御姉様の料理は楽しみです」
「昨日買い物もしてきたけど、朝に凝ったものは無理だよ?」
「それでも楽しみなのです」
「はいはい、それじゃあ椅子に座って待ってて」
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▼五年経てども変わらず
「私の分まで食事を用意する必要はないのを知っているはずだろう」
「食べられないわけではないのだから、一緒に食べた方がいいわよ!そっちの方が美味しく感じるもの」
確かに誰かと共に食卓を囲むというのは幸せなことだ。自宅で
「そういえば、王都で吟遊詩人が彼の唄を歌っているの聞かないよね」
「王都では受けが悪いからな、ゴブリン退治よりもドラゴンやデーモン退治の方が好まれる」
王都の人間にはゴブリンの被害というのが農村で暮らす民よりも伝わりにくいため
農村にとってゴブリンの被害はその村の存続に関わるが、王都でゴブリンが20出たところで衛兵や冒険者が直ぐに片付けるためだ。
そのため、王都出身の新人冒険者は辺境の冒険者よりもゴブリンを侮っている。
「そういえば、聞いた?彼に
「新人神官の女の子だと聞いた」
「神官ねぇ…危なっかしい彼にはぴったりかな?」
「新人というのが怖いがな。ただ、
「生存能力は高いよねぇ。こう…なんて言うか…死んでやるもんか!って感じ」
「そうだな、その場を凌ぐ技術に長けている」
「死にやすい新人教育にはぴったしなのかな?でも、ゴブリンだけってのはなぁ…」
「それが問題だな、冒険者全員が
ゴブリン退治は大切だが。それでもこの世界にはゴブリン程度と捨て置けるほどの危機が沢山ある。
悲しい話だが、致し方ない犠牲として一部の農村は切り捨てられる。そうしなければ、農村が滅びる前に国が滅びる。
王は無能ではない。むしろ、有能な部類だ。ただ、ゴブリン退治に割く余力がないのだ。
明日、国を滅ぼす魔神。今日、農村を滅ぼすゴブリン。どちらを優先すべきなのかなど考えるまでもない。
だが…だからこそ
「いるかなぁ?」
「恐らく、帰ってきているはずだ」
ギルドの扉を開けると冒険者たちの視線が集まる。
新人たちは見慣れない冒険者が入ってきたことに疑問を抱き、ここを拠点としている中堅以上の冒険者は片手を挙げて挨拶してくる。
「おう!旦那に
「槍使いか久しぶりだ」
「ひっさしぶりー!魔女ちゃんと仲良くしてる?」
「おうよ!昨日まで遺跡で
「
「ん?あいつか…たしか昨日、神官の嬢ちゃんと一緒にゴブリン退治に出掛けてたな」
「そうか、ありがとう」
「おう、旦那もまた何かあったら声かけてくれや」
槍使いは魔女を待っていたようで彼女が現れるとそちらへ歩いていった。入れ替わるようにして受付嬢が声を掛けてくる。
「あっ!
「ああ、武器や道具の使い心地を聞いたりしたいからな。後は無茶をしていないかどうか…」
「あはは…相変わらず毎日ゴブリン退治ですね。最近は
「あれでも昔に比べたらマシになっているんだが…」
受付嬢は普段の
その後は辺境の近況を聞いたり、王都での出来事を報告していた。
話し込んでいると後ろでギルドの扉が音を立てて開かれた。そこには私の待ち人が相変わらずな姿でいた。
「少し、待ってろ。知り合いと話してくる」
「あっ…はい。あちらの席で待ってます…」
「帰ってきていたのか。何か用か」
「いや、用事は特にはない。道具の使い心地はどうだ?」
「一部の道具はゴブリン退治には過ぎたものだが、概ねは使いやすく重宝している」
「何か次の商品でリクエストはあるか?」
「………投擲道具をスリングの要領で投げることができれば、更に遠くへ投げることが出来る」
「火炎壺か……安定するかはわからんな。考えておく、試作品の実験は貴公にも頼もう」
「わかった」
「ねぇねぇ、あの子を紹介してよ!」
指されているのが自分だと気付くと此方へ向かってくる。
「あの…何か私に御用でしょうか?」
「貴女が
「い、いえ!
「いや、助かっている。俺では奇跡は使えんからな。神官が一人でもいると戦略の幅が広がる」
「何が使えるの?」
「
「……すごい優秀じゃない!白磁でそれならこれからが楽しみね」
「いえ…まだまだ
「新人なんて最初はそんなものだ」
「こっちは新人とはいえ、
「本当にゴブリン退治とはいえ今までよく一人でやってこれたな」
「それをデーモン相手に似たようなことする君が言う?」
デーモンの話が出たところで女神官は先程から気になっていたことを口にする。
「あのー、貴方は…
「そうだ、その錫杖の聖印からすると君は地母神の神官か」
「はい、私の先輩が
「彼女は元気にしているかね?」
「現在は相方さんが王都にいるので、冒険者家業はお休みしていますがとても元気です。私も冒険者になる前に何度か助言して頂きました」
「そうか、元気なら何よりだ」
その後もお互いに近況を話し合う。
「今回のゴブリン退治の
「そんなに多いのか?」
「
「相当な数になってそうだな」
「うへぇ…想像したくないなぁ…ゴブリンの大群…」
「早く対処しなければいけませんね、人が生きているなら出来れば救出も…」
「生存は望めないが…もしもの場合のために協力して欲しい」
「私はいいだろう」
「まぁ、彼が行くってなら私も!」
「なら、準備して此処へ戻ってきてくれ。直ぐに出立する」
」
こうして私の辺境、久しぶりの
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三日三晩続いた宴が終わりを告げようとしている。元々は壮麗な広間だったであろう場所には
犯された後も玩ばれたのだろう屍はバラバラにされ、死に顔は苦痛に満ちていた。
「…もう手遅れのようだな」
私は一人で砦に潜入していた。指には二つの指輪、『霧の指輪』、『静かに眠る竜印の指輪』を装備して隠密に徹している。
冒険者の屍には鋼鉄級の認識表。彼らが上の等級ならとも考えられるが、この砦には既にかなりの数のゴブリンが繁殖し終わっている。
銀等級でもまともに相手しようとするならば苦戦するだろう。多勢に無勢というのはどれだけ個々の知能や技量が低かろうと脅威である。
私は救出不可能と判断して、三人の元へゴブリンに気取られないよう戻った。
「やはり、既に手遅れのようだ」
「そうか、なら砦に入る必要はないな」
「ん?どうやってあいつらを?ここから火をかけてもゴブリンの大群が大挙して危険だぞ」
「火をかけ、女神官の
その言葉に女神官と
特に守りの奇跡をそのように使われると思ってなかった女神官は口をパクパクして、驚きを隠せていない。
私は合理的ではあるといった感じだ。最小の
「わかりました、それでいきましょう…」
あまり納得は出来ていないようだが、
「火矢を任せていいか?」
「了解した。貴公は彼女達を頼む」
ゴブリン達にここまでの距離を狙うことは出来ないが、
ロングボウを取り出し、『静かに眠る竜印の指輪』から『鷹の目の指輪』へ変更する。
鏃へ炭松脂を塗ると勢いよく燃え始める。
「普段は竜狩りとアヴェリンばかりだったからな…久しぶりだが!」
ギリギリと弦を引き、離すと火矢は物見にいるゴブリンの頭へ突き刺さる。ゴブリンは燃え上がりながら物見から落下し地面へ激突する。
私は次の弓を準備する。生き残った物見のゴブリンからは私は『霧の指輪』の効果で見えていないはずだ。
ゴブリンを黙々と処理していると火の手が広がり始めた。
「出番だ、
「はい、『いと慈悲深き地母神よ、か弱き我らを、どうか大地の御力でお守りください』、
出入り口から逃亡しようとしていたゴブリンたちの前に透明な壁が出現する。
一匹のゴブリンは運良く入り口が閉まる前に逃げ出せた。その他は煙と炎に巻き込まれながら
残りの一匹も
「あらら、私の出番は結局来なかったなぁ」
「生き残りがいたら私と共に潜入する予定だったが致し方ないだろう」
砦が轟々と燃える様子を三人で眺める。
「ん?雨か…」
暫くすると雨が降り始めた。消火する手立ては元々あったがその手間が無くなった。
女神官は雨に濡れながらも両手を合わせ祈祷する。砦から上がる煙はまるで被害者たちの魂が天国へ昇っていくようであった。
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▼
「友が作りし隙を突き、小鬼殺しの鋭き
吟遊詩人がリュートの弦を爪弾くと心地よい音を奏でる。
「おお、見るが良い。青く燃えゆるその刃、まことの銀にて鍛えられ、決して主を裏切らない」
老若男女、多くの民が足を止めて吟遊詩人の歌に聞き入る。
「されど、彼こそは小鬼殺し。彷徨を誓いし身。引き留めようとする姫の手は空を掴み、勇者は友と共に振り返ることなく立ち出づる」
民衆の受けは良かったようで、拍手が巻き起こる。観客は吟遊詩人の帽子へ金銭を投げ込む。
本日の稼ぎに満足している吟遊詩人の元へフードを被った一人の人物が近寄る。
「ねぇ、さっきの話って本当なの?」
「ここから西へ二日ほど行った所にある辺境のギルドの冒険者だよ」
「彷徨を誓いし身なのに場所がわかるの?」
「あれは脚色だが、西の辺境にゴブリンを専門に退治している冒険者がいるのは本当だ」
「ふぅーん……まぁいいわ。西の辺境ね」
フードに隠されていた顔が風で露になる。そこには長い耳に緑の髪、現れたのは見目麗しい細身の女だった。
「オルク…ボルグねぇ…」
新たなる出会いの日は近い。
皆さん、感想、お気に入り、評価ありがとうございます。
連休中にもう少し頑張りたい…金床娘可愛いよ…
またリマスターをやってますが相変わらず、楽しいです
純粋な攻略組はもうほとんどいませんがサインを出してくれてる
白の方と病み村から苗床まで連続攻略出来たので興奮しました
あとダークソウルtrpg買いました
リプレイ同額流行れ…流行れ…