不死殺し   作:ユルト

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三者三様

 「オルクボルグよ、オ・ル・ク・ボ・ル・グ!いるでしょう!」

 

 「うーん‥どなたでしょうか?」

 

 ギルドの受け付け前。只人(ヒューム)の冒険者ギルドでは珍しい森人(エルフ)鉱人(ドワーフ)蜥蜴人(リザードマン)という組み合わせの一党(パーティ)が受付嬢と話している。

 

 「耳長の、ここは只人(ヒューム)の領域じゃ。おぬしらの言葉が通じるわけなかろう」

 

 「あら?それなら、どう呼べばいいのかしら?」

 

 鉱人(ドワーフ)に馬鹿にされたのが気に入らないのだろう森人(エルフ)の娘は不機嫌に小鼻を鳴らす。

 

 「『かみきり丸』だろうに」

 

 「すみません‥そのような名前の方も‥」

 

 「おらんのか?!」

 

 「やっぱり、鉱人(ドワーフ)は駄目ね!頑固で偏屈、自分が正しいと思っているもの」

 

 「なにおうっ!?」

 

 先程の仕返しとばかりに森人(エルフ)鉱人(ドワーフ)へ言う。

 

 「この森人(エルフ)ときたら、金床に相応しい心の狭さだのう」

 

 「なっ?!」

 

 セクハラ紛いの言葉に顔を赤くして、思わず胸を庇うようにして鉱人(ドワーフ)と距離を取るように退く。

 

 「胸は関係ないじゃない!それに鉱人(ドワーフ)の女子は樽じゃない!」

 

 「あれは豊満と言うんだ!金床より良いわ!」

 

 森人(エルフ)鉱人(ドワーフ)の仲が悪いのは神代からの伝統である。

 

 しかし、話が拗れ本題から離れすぎている。そんな二人を見かねて、沈黙していた蜥蜴人(リザードマン)が二人の間へ割り込む。

 

 「すまぬが二人とも、喧嘩ならばギルドの外でやってくれぬか?」

 

 「あ、ありがとうございます」

 

 見上げるような体躯に鱗の生えた全身。混沌ではなく秩序に属しているのだろうが、受付嬢は思わず漏れそうになった驚きの声を押し止める。

 

 「いやいや、拙僧の連れが騒ぎを起こしてすまぬ」

 

 「それで結局、誰をお探しなんでしょうか?」

 

 「うむ、拙僧も只人(ヒューム)の言葉に詳しいわけではないが、『オルクボルグ』、『かみきり丸』というのは只人(ヒューム)で言うところの小鬼殺しだな」

 

 「ああ!それなら、誰だかわかりますよ」

 

 「おお、そうであったか!」

 

 蜥蜴人(リザードマン)は目を見開き、口からは舌をチョロチョロと出している。

 

 先程とは違い受付嬢もその獰猛な笑みを向けられても驚きの声を挙げそうになることもない。

 

 「それで彼の人物は何処へ‥」

 

 「二日前にゴブリン退治に出掛けていますから‥もう帰ってはいるかと‥」

 

 「二人とも小鬼殺し殿はここにいる冒険者で間違いないそうだ」

 

 「ほら、私の言った通りじゃない」

 

 「言葉が伝わらなかったくせに何を言う」

 

 「アンタも同じじゃない!」

 

 また喧嘩を始めた鉱人(ドワーフ)森人(エルフ)の二人に、蜥蜴人(リザードマン)の口からはシューと溜め息が漏れた。

 

 「あっ!悪魔殺し(デーモンスレイヤー)さん!」

 

 「依頼(クエスト)を完了した」

 

 そんな三人の横をすり抜け、一人の人物が受付の元へ来る。

 

 全身鎧で胴の青いサーコートには背に負う盾と同じ紋章があり、その他の部位の意匠も統一されていることから騎士であると彼らは考えた。

 

 「緊急のデーモン討伐の依頼お疲れ様です。大丈夫でした?」

 

 「何の問題もない、山羊が遺跡から抜け出しただけだ」

 

 「いや、それは大騒ぎになりますよ!」

 

 彼の言う山羊というのは勿論牧畜の山羊ではなく、「山羊頭のデーモン」である。

 

 正直、彼が出向くまでもなく銀等級の冒険者なら対処出来ただろう。

 

 「それで?彼らはどういう集まりだ?珍しい組み合わせだな、特に鉱人(ドワーフ)と上の森人(エルフ)とは」

 

 「私たちはオルクボルグに依頼するためにここまできたのよ」

 

 「オルクボルグ‥‥ああ、森人(エルフ)の伝承に出てくるゴブリン殺しの剣か」

 

 騎士が森人(エルフ)の言葉を理解していることに皆が驚く。

 

 「貴方、私たちの言葉がわかるの?」

 

 「知り合いに森人(エルフ)がいるのでな。となると目的は小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)だな」

 

 「はい、まだ戻ってきてないみたいで‥」

 

 「いや、来る途中で女神官を見掛けた。準備が終わり次第、ギルドに報告しにくるだろう。噂をすれば‥」

 

 ギルドに二人の人物が入ってきた。一人は華奢な体に神官服、両手で錫杖を握っている娘。

 

 もう一人は薄汚れた革鎧と鉄兜、中途半端な長さの剣を持つみずぼらしい格好の男。

 

 「どうした、ゴブリンか」

 

 「違う、そっちの三人が貴公に用があるそうだ」

 

 「依頼をしにきたそうです」

 

 「そうか、上の応接間は空いているか?」

 

 「はい、どうぞお使いください」

 

 「では、行こう」

 

 「あ、あの‥私はどうすれば‥同席した方が‥」

 

 歩き出した小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)に女神官は慌てて問いかけた。

 

 「休んでいろ」

 

 ぶっきらぼうな一言に女神官は小さく頷く。小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)は振り返ることもなくズカズカと階段を上がっていく。

 

 「ごめんなさいね、ちょっと借りるわね」

 

 森人(エルフ)は会釈して彼女の前を通りすぎていく、鉱人(ドワーフ)蜥蜴人(リザードマン)もそれに続いていった。

 

 ポツンと女神官が取り残された。

 

 「はぁ‥」

 

 「そう落ち込むことはない。小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)は言葉足らずなだけだ」

 

 「そうなんでしょうか?ご迷惑をかけていないでしょうか?」

 

 「前も言ったが最初から完璧な奴はいない、勇者だってそうだ。小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)に言われた通り、今は座って休んでいるといい」

 

 「はい‥」

 

 悪魔殺し(デーモンスレイヤー)と女神官はギルドの端の席に座る。

 

 「一体、どうやればお役に立てるのでしょうか?」

 

 「そうだな、私の昔話を聞かせてあげよう」

 

 「悪魔殺し(デーモンスレイヤー)さんの昔話ですか…興味あります!」

 

 「私がいた国では、自分の旅の途中に多くの人物達と旅をした。今でこそ多くのことを出来る私だが、最初は君よりも弱かったと思う」

 

 「私よりも…ですか?」

 

 女神官は信じられないような目でこちらを見る。たが、私の言ったことは事実だ。

 

 「ああ、恥ずかしい話だが路上にいる魔物の相手すらマトモにできなかった」

 

 「それでどうしたのですか」

 

 「他の人物を頼ったのだよ。自分よりも技量の優れた人物達に関わることでその技術や知識を学んだ」

 

 多くの先人達はいろいろな知識を持っていた。多くの魔物や護衛中の対処は仲間の白霊から、対人などの一対一から一対多の戦い方は闇霊からだ。

 

 「そういうところはどの国でも同じなんですね」

 

 「中にはそんな動き出来ないと思ったものも多い。特に天井の梁の上を、全力疾走で駆け抜けるのはあまり真似したくない」

 

 アノール・ロンドを専門に侵入する闇霊には必須テクニックらしいが、あの全力疾走で迫り来る闇霊たちは今でも恐怖の対象だ。

 

 「そんな私からすれば最初の依頼(クエスト)でゴブリンの巣から『全員生き残る』というのは素晴らしいことだ」

 

 「えへへ…」

 

 「私も、共に旅する者たちも最初はひどかった」

 

 「その旅のこと、少しお聞きしてもいいですか?」

 

 「ああ、小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)が戻ってくるまで時間がある。もう少し私の昔話をするか」

 

 小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)が戻ってくるまでロードランでの旅を彼女に語った。表情をコロコロ変えて驚く彼女の反応は可愛らしいものだった。

 

 

 

 

 

 

___________________________________________

 

 談笑していると、途中で他の新人たちが彼女を勧誘しに来たり、話が拗れそうなところを魔女が嗜めたりといろいろあったが、漸く話が終わったのか小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)が二階から降りてくる。

 

 「小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)さん!お話終わったんですね」

 

 「ああ」

 

 「依頼だったのなら私も準備を…」

 

 「いや、俺一人でいく」

 

 女神官はそんな淡々とした言葉に声を上げる。

 

 「そんな……せめて、決める前に私にも相談を…」

 

 「……………?しているだろう」

 

 話の噛み合ってない様子に小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)は首を傾げ、女神官は目をぱちくりと瞬かせる。

 

 「これ、相談だったんですか?」

 

 「そのつもりだが?」

 

 「はぁ……悪魔殺し(デーモンスレイヤー)さんから聞いていましたけど…言葉が足りないです!」

 

 「そうか…」

 

 「そうですよ、選択肢がないようなものは相談とはいいません」

 

 「うむ…」

 

 「もう…仕方のない人ですね。私も一緒に行きます。放っておけませんから」

 

 女神官の小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)を見つめる目には確たる意志が宿っている。それは先程までの自信がないものではなかった。

 

 「…好きにしろ」

 

 「はい、好きにします」

 

 「悪魔殺し(デーモンスレイヤー)

 

 「なんだ?」

 

 「同行を依頼したいがいいか?」

 

 「今は闇人(ダークエルフ)はいないから俺だけになるが、それでもいいならな」

 

 「それでいい、大規模な巣が発見された。手はいくらあっても足りん」

 

 「了解した、準備をしてくる。場所は何処だ?」

 

 「森人(エルフ)の領土だ」

 

 「道案内は彼らか」

 

 「…………」

 

 「その様子だと、我々で行くつもりだったな?」

 

 「ああ…」

 

 「現地の者がいた方が対処できるだろう」

 

 「そうだな…」

 

 森人(エルフ)鉱人(ドワーフ)蜥蜴人(リザードマン)の三人のもとへ行く小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)を見送り、私も準備へ向かった。

 

 

 

 

 

 

___________________________________________

 

 ギルドを出てから三日が経った。目的地には明日の朝方、突入する。

 

 その為、目的地前で一夜を明かすことになった。六人で燃やした薪を中心にして座っている。

 

 道中も鉱人(ドワーフ)道士と妖精弓手が小競り合いを起こすものの、一党(パーティ)の雰囲気は悪くなく。連携にも問題はなさそうだと私は一安心する。

 

 「それでさ、皆は何で冒険者になったの?」

 

 「なんだ、耳長娘?突然どうした」

 

 「ただ、気になっただけ」

 

 「わしは旨いもんを食うためだ、おまえさんはどうだ」

 

 「私は外の世界に憧れてって感じ」

 

 「俺はゴブリンを殺すためだ」

 

 「アンタは何となく分かってたわ」

 

 「拙僧は異端を殺して位階を高め、竜となるため」

 

 「は、はぁ…えと、宗教はわかります。私も地母神様の教えを守っていますから」

 

 「竜になるためか…懐かしいな」

 

 ロードランで見掛けた彼らを思い出して思わず声が漏れた。蜥蜴僧侶はその話に興味があるようだ。

 

 「おや、騎士殿は拙僧の同胞と旅をしたことが?」

 

 「いいや、私の故郷で同じく竜になろうとする者たちが居たのを思い出した」

 

 「ほほう、その話を聞いても?」

 

 「ああ、私の故郷では『竜体石』というものを使って体を竜に変化させる者たちが信仰する宗教がある」

 

 「なんと!人の身で竜に!」

 

 「へぇーすごいわね」

 

 人が竜になるという話に興味があるようで、蜥蜴僧侶と妖精弓手は食い入るように話を聞く。

 

 「竜といってもあの巨体になるわけではない。人の体に竜の頭、全身には鱗が生え、小さな翼と尾がある。あとは竜のブレスを吐けるようになっていたな」

 

 「それでも人の身で竜になるというのはすごいですよ」

 

 「騎士殿はなれないのですかな?」

 

 「なれないことはないがなるつもりはない」

 

 そうして私が懐から取り出したのは『竜体石』と『竜頭石』。

 

 「これが竜になるための道具なのだが…」

 

 「ほうほう」

 

 「これを使っている間は装備防具を装着することは出来ない」

 

 「鱗が生えるとはいえ、只人(ヒューム)には厳しいわよね」

 

 「最大の問題は死ぬまで変化が解けないことだ」

 

 「えぇ…それは…信徒でもないと使わないわね…」

 

 「でも、元々悪魔殺し(デーモンスレイヤー)さんはその宗教の信徒だったんですよね?」

 

 「別に私は竜になりたい訳ではないからな。竜には成らず、貢ぎ物をして鞍替えした」

 

 「そんな鞍替えをしていいのですか?」

 

 宗教に造詣の深い女神官としてはあまり心地いい話でないのかは少し顔をしかめる。

 

 「あちらでは普通のことだったな。宗教と言ってもこちらのようなまともな感じではない」

 

 「えっと…どのような」

 

 「基本的には戦うための宗教しかないな。闇に唆され戦いの血に酔ったダークレイス、神に仇なす者を狩り、耳を剥ぐ『暗月の剣』、周囲に死を撒き散らす墓王の眷属とか」

 

 「アンタところの宗教はどうなっているのよ」

 

 ロードランの血生臭い宗教事情に皆引き気味だった。実際はダークレイスにも愉快な人物はいたりする。

 

 逆に白教だというのに我欲に塗れ、聖女レアとその供たちを陥れた『アイツ』のようなのもいる。

 

 私も恩恵を受けられていないのに『太陽の戦士』になっている変わり者の部類かもしれない。

 

 「人それぞれだが私のように鞍替えする者は少なくない。ダークレイスから暗月の剣へ鞍替えする奴もいる」

 

 「アンタはどうなの?」

 

 「太陽信仰が一番性に合った。『ある人物』に憧れてというのもある」

 

 「へぇー…やっぱり、外の世界は私が知らないことが沢山ね!」

 

 その後は各自が持ち寄った食べ物を分けあったり、酒を飲んだりし、そろそろお開きかと思われた頃

 

 「そういえば、悪魔殺し(デーモンスレイヤー)さんの冒険者になった理由を聞いていませんね」

 

 「あー!そうじゃない!」

 

 「冒険者になった理由といわれてもな…この国で稼ぐ術が冒険者になることだったからだ」

 

 「じゃあ!旅をしていた理由は?」

 

 「……………」

 

 どうしたものかと悩む。勿論、いくら彼らが善良だとはいえ真実を話すわけにもいかない。

 

 「あのー、無理にはお聞きしませんよ?」

 

 「ん…いや、大丈夫だ。私が旅していたのは『古い王たちの地(ロードラン)』と言われていた」

 

 「聞いたことがないの…かなりの遠方か?」

 

 「ああ、ここ数年で同郷を見掛けたことはない」

 

 「じゃあ、何でこっちに来たの?」

 

 「偶然だ、転移(ゲート)巻物(スクロール)を誤って開いてしまってな」

 

 こういう誤魔化しを行うとき、古代の魔具は言い訳に便利だ。

 

 「そりゃ、大変じゃな…帰る気はないのか?」

 

 「彼処での使命は終えた。もう戻っても何もすることはないだろう」

 

 「それでその使命はなに?」

 

 「『火を継ぐ』ことだ」

 

 「火を…継ぐですか?」

 

 「そうだな…選ばれし者が多くの苦難を乗り越え、王に謁見する。それが『火継ぎ』だ」

 

 嘘は言ってない、嘘は。正確には火継ぎは謁見(戦闘)の後が重要だが。

 

 「へぇ!英雄譚みたいなことしてたのね!それで王様に謁見できたの?」

 

 「そうだ。私の火継ぎは終わり、使命を果たした私は何もすることがなかった。故に今回の出来事は私に新たな楽しみを与えてくれた」

 

 「なるほどねぇ……」

 

 「そろそろ、お開きとしよう。明日は明け方に到着しなければならない。早い内に休息を取るとしよう」

 

 「そうだな、見張りはどうする?」

 

 「私、オルクボルグ、騎士の三人でいいんじゃない?術師は休息をしっかりと取らなきゃいけないし」

 

 「そうするか」

 

 「ああ」

 

 「じゃあ、私が最初の見張りね」

 

 「任せた」

 

 見張りを妖精弓手に任せ、横にならず背後の岩に背を預けるようにして眠るふりをする。そうして、私は一晩寝ずに見張りをしているのだった。















感想・評価・お気に入りありがとうございます。
前回も誤字脱字訂正等ありがとうございます!
感想の方も頂けたのなら楽しく読ませて頂きます。

実際、作者が太陽戦士好きになったのは
某動画サイトのゴーレムアクスを使う
ダークレイス上がりの太陽戦士が楽しそうにマルチをしていたからですね

ゲームは楽しくやるのが一番ですから
皆さまにも太陽の加護がありますように!
太陽万歳!Y
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