不死殺し 作:ユルト
太陽を信仰する者達と共に旅をすると得られる硬貨。
硬貨には彼らの信仰対象である太陽のシンボルが描かれている。
僅かに魔力を帯びており、握ると仄かに暖かさを感じる。その暖かさは暗闇を進む為の勇気を授ける。
▼勇者と太陽
未だに夢に見る。それはボクがまだ孤児院に居た頃の思い出。
村の敷地から少し離れた草原でボクと師匠が向き合っている。
ボクの手には木刀。師匠は手甲はしているけれど何も持ってはいない。
「やぁー!!」
「……」
「あわわ!?」
勢いよく振るわれた木刀を師匠は
倒れたボクの頭へ軽めの手刀が落ちる。冒険者になると決めた日から稽古をつけて貰っているが毎日こんな感じだった。
「うぅ…師匠強いぃ…一回も当てられないよぉ…」
「剣の振り方はマシになった。だが、素直な太刀筋になり、その分軌道が読みやすくなっている」
「フェイントを入れるの苦手なんだよね…。こう…ズバァッ!って感じで叩き伏せる程の力があればなぁ」
「特大武器こそ技量が必要だ。大振りの攻撃を一対一で当てるには武器の間合いや攻撃後の隙を考える必要がある」
「ほえー…武器選びって難しいなぁ」
「…そうだな。お前にはこれが丁度いいかもしれん」
取り出したのはロングソード。一見して何の特別な感じもしない剣の筈なのだがボクの目はそれから離れなかった。
「これは『アストラの直剣』といってな。強力な祝福が施されているらしい」
師匠は笑いながら『そんな祝福は感じたことはない』と言うがボクにはその剣が『光っている』様に見えた。
「ねぇ、師匠」
「なんだ?」
「ボクが冒険者になるまでに師匠に一発入れられたらさ…」
その剣をボクにくれないかな?
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チュンチュンと小鳥の囀ずっている。先程までの夢の内容はまだはっきりと覚えている。
故郷を出るまでの師匠との特訓。とても厳しかったがボクにとっては幸せな記憶の一つ。
いつもの服装に着替えると立て掛けてある『二つの聖剣』を腰に下げて部屋を出た。
「おっはよー!!」
二階から一階の『剣聖』と『賢者』の二人がいる席を目掛けて跳ぶ。
華麗に着地を決めるボクを見て二人は呆れた様子だがよくあることなので流す。
「今日は一層元気ですが何かありました?」
「うん!師匠と居た頃の夢をね」
「貴女の師匠といいますと
「うーん…割りと普通の人だよ?善人だけど聖人ではないし、様々な武器を使い分けるけど全ての腕前が達人って訳でもない」
「では、何故そのような方から師事を?」
「?そりゃ、師匠は『絶対に負けない』からだよ」
「絶対に負けない…ですか…。それは貴女が相手でもですか?」
「無理だね。『何度勝とうとも最後の一回は負ける』。」
「それは実質勝ちなのでは?」
「負けだよ、負け。ボクの心と師匠の心。折れるのはきっとボクの方が先なんだから」
剣聖はボクの言っていることが理解できないのか首を傾げている。
そんな会話に先程から黙っていた賢者が割り込んできた。
「彼はいくつもの魔術を使うと聞いている。それは本当?」
賢者らしい質問だった。師匠がボクに魔術を見せることは少なかったけど毎回違う術を使っていたことは印象に残っている。
「手紙によると最近は
「どんな呪文を唱えてたとか覚えてない?」
「うーん…同じように唱えても何も発動しないと思うよ?確か、特別な触媒が必要だって言ってたから」
ボクが教えて欲しいって言ってもまだ早いって教えてくれなかったからなぁ。今なら教えてくれるのだろうか?
「そう…彼の使う術についてはいつか訊いてみたい」
「次に会うのは魔神王を倒してからかな?」
「彼が表だって動いてくれているお陰で我々は動きやすい。今のうちに魔神将を討伐する」
「既に魔神王の守りも手薄になりつつあります。あと数体倒せば、魔神王との対決に持ち込めるかもしれません」
「じゃあ、今日も朝食を食べたら次の目的地へ出発ね!早めにこの戦いを終わらせて師匠に会いに行こう!」
今日も悪魔が出没するという遺跡を目指して旅を続ける。
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ボクたちが辿り着いたのは沼地の遺跡。沼地自体が疫病の温床らしく出来るだけ避けるようにして進んでいく。
「ぬちゃぬちゃするぅ…」
「あはは…少し油断していましたね」
「……………」
足元に気を付けていた為に上からの襲撃に気付かず羽虫の毒液を頭から浴びせられた。
毒液は粘着性があり、服に染み込んだ液は素肌に密着するとヌチャヌチャと不愉快な感触を与えてくる。
沼地に来てから口数が少なくなっていた賢者は毒液を浴びせられてから喋らなくなった。
「大きい虫やヒルは他でも似たようなのは見たことあるけれど。火を吹く虫や犬の敵は他では見たことないね」
「近年に発見された遺跡群は未知の存在が多いそうですから」
「……前方。複数の人影がある」
「ん?ボクたちの他にも冒険者が来てたのかな?」
「味方とは限りません。注意して行きましょう」
物陰に隠れながらその集団に近づく。彼らは地下に続く穴の前で話し合いをしていた。
声の大きさは普通なので息を潜めて近づけば聞こえないこともない。
「はぁ…やっと目的地ついたようだお」
「皆さん、沼地の毒を浴びているので念のため
小太りの術師がヒィヒィ言いながら汗をぬぐっている。対しての癒し手らしき赤い服の女性は他の者のケアに回っている。
「すまない。今回は貴公らには迷惑を掛けてしまった」
「リーダーはもっとわがまま言ったほうがいいよぉ?アタシたちの為にいろいろな
「そうだお。オイラの
バケツのような奇妙な兜をしている戦士が申し訳なさそうにしている。
すると横に立つフードを被っている女性がケラケラと笑いながら気にする必要はないと言い、それに術師も続く。
フードの隙間からチラチラと見える格好にボクは顔を赤くする。
フードの下は王都の鍛治屋で見かけた
正気なら着ないような装備だが彼女のプロポーションを引き立て扇情的な雰囲気を醸し出している。
恐らく彼女は軽戦士なのだろう。だが、それにしたって肌面積が多くはないだろうか?
そんな彼ら四人の話し合いを陰で聞いていると…
「ねぇ…さっきからさぁ…そこに隠れているお三方は何が目的な訳ぇ?」
独特な話し方をする女軽戦士はボクたちに気付いていたようでしっかりとボクたちの方向を向いてニヤリと微笑んでいる。
しかし、その笑みとは裏腹にフードの下にある片手は腰に据えられている。恐らくボクたちが怪しげな行動をとれば行動に移せるようにしているのだろう。
「ストップ!ボクたちはここへ調査に来たんだ。隠れて話を抜け聞いていたのは謝るけど敵ではないよ!」
「ふむ…では何故こんな遺跡へ赴いたのだ?」
「ボクたちは
「君たち三人で魔神をぉ?ギルドの階級は?」
「あぁ…それなんだけど…うーん…いいのかな?」
「仕方ない。それに彼らなら問題ないと思う」
先程から黙っていた賢者が問題ないと言う。それを信じて身分を明かすことにした。
普段は隠している白金の認識票を表に出す。
「貴公…その認識票は…」
「へぇ…アンタが十人目の勇者様なんだァ」
バケツ頭の戦士と女軽戦士は興味深そうにボクたちを見つめる。術師はまだ現実を認識できてないのか口を開けたまま呆けている。
癒し手は少し考えるようにして懐を漁ると三つの瓶を此方へ渡してくる。
「貴女たちも疫病の恐れがあるので、取り敢えず
「癒し手殿は相変わらずだお…」
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「では我々も自己紹介するとしよう。我々は東の辺境を主な活動場所としていてな。
「デーモンスレイヤー?それって…」
それは私の師匠を指す言葉。彼らもそう呼ばれるということは多くのデーモンを屠って来たのだろう。
「ああ…そうだったな。此方ではデーモンスレイヤーは別の冒険者を指すのだったな。では、我々は
「まず、自己紹介をしましょう。私は癒し手でこの
赤い服の女性はやはり
「薬師兼術師。材料があれば、
杖を持つ彼は術師。五回も術を行使するということは相当な使い手。ボクも回数は負けてないが賢者には使い方が雑だと何度も言われている。
「ワタシは見ての通りの軽戦士。速さには自信があるよぉ。対人型に特化しているから普通の怪物相手にはそこまで期待しないでねぇ」
軽戦士の彼女は『対人型』に特化していると言った。彼女の格好も対人での戦闘を想定して有利に戦うためなのだろう。
「俺は信仰戦士とでも言えばいいのか…剣や盾は一通り扱え、奇跡も使える。昔、旅をしていた土地では『太陽を探していた』」
「太陽を探す?空に浮かんでいるのではなくて?」
「過去の旅ではとうとう見つけることは出来なかった。しかし、こうして今も諦めきれず旅を続けているのだよ」
ウワッハハッと彼は豪快に笑う。不思議な人だとは思うがこれまでの言動で悪人では無いことは確かに分かった。
ふと、彼の鎧に描かれているマークへ視線が移る。そのマークを何処かで見たような気がするのだが思い出せずにいる。
「自己紹介も済んだところでこの先に進もうではないか」
マークの事を思い出そうと考え込むが信仰戦士の言葉に考えを中断した。
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「……流石に『彼女』はいないか」
「彼女って?」
「ここは昔に旅した場所にそっくりでな。その時、ここには『病に伏した妹の為に戦う姉』が居てな。話は通じなかったが今度は対話できないかと思っていたのだ」
「何故、話し合いが通じなかったのですか?」
「……彼女自身が対話する気がなかったのだろう。妹殿は話の通じる御仁だったからな」
「そっか…」
暗い空気を変えようとボクは少し声を張って訊く。
「目的ってその人に会うことなの?」
「いや、この先にある『目覚ましの鐘』と呼ばれるものを鳴らしに来たのだ」
「『目覚ましの鐘』って何処かで聞いたような…」
歩いていくと目的の大きな鐘が現れた。側には鐘を鳴らすためのレバーもある。
「では鳴らすぞ!」
信仰戦士がレバーを勢いよく引くとそれに数拍遅れて大きく揺れ、鐘は中の
辺り一面に『ゴーン…ゴーン…』という鐘の音が鳴り響く。それを聞いてボクはこの鐘の音は『何処までも届く』ような気がした。
「ふむ…同胞たちにも届いていればよいのだが…」
「これで終わり?この先の探索は?」
「いや、この先は恐らく溶岩地帯だ。今はまだその時ではない。我々は帰還するが貴公たちはどうする?」
「ボクたちもギルドに戻るよ。ここまで来て
「うむ、ならば共に帰るとしよう。目は多いほうが不意打ちなどにも対処できるだろう」
「そうだね。短い間だけどよろしく!」
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「では、貴公たちの旅路に太陽あれ!」
ギルドのある街に辿り着くと信仰戦士たちの
彼らが見えなくなるまで手を振って見送る。ボクの手には信仰戦士の彼から渡された『太陽の描かれたメダル』が握られている。
彼らとの出会いはこれが最後ではないだろうと勇者としての勘が囁く。
「あっ…思い出した!『不死の英雄』だ!」
「ど、どうしたのですか?」
「『目覚ましの鐘』!あと彼の着てた鎧やこのメダルのマーク!これって『不死の英雄』に出てくる言葉なんだよ!」
「『不死の英雄』とは何ですか?」
「えっ!知らないの!師匠がよく話していたから有名だと思ってたんだけどなぁ…」
「……興味がある。話の内容は覚えている?」
「流石に全部は覚えてないけどね。なになに?賢者も気になるの?」
「ん…少し気になった」
「ほほう!では、このボクが語ってあげようじゃないか!」
「二人ともそれはギルドへの報告が終わり、宿に着いてからにして下さい」
「はーい!」 「…うん」
旅はまだまだ続く。きっと魔神王を倒しても続くのだろう。その旅にはきっと喜びもあれば悲しみもある。
だからボクはただ強くあるのではなく『折れない心』を持ち旅を続けることを決意した。
どうも、皆さんお久しぶりです。
部署移動で引っ越しやらPCがぶっ壊れたりして忙しかったですが私は元気です。
取り敢えず、trpgのセッションも終了したので
録音とログを確認しながら文字に書き起こしていますので
もう少しお待ちください。
Twitterで今回のセッションで使ったキャラシを公開しときます。
他にも最近はまた最初から始めたダクソ3の話題を呟いたり、しなかったりします。
興味のある人は@soul_yurtをフォローしておいてください。
いつか読者さんとオンセとかしてみたいですね(基本的にオフセしかしたことがない)。