不死殺し 作:ユルト
「いたたた…最悪…」
「ふぇ…」
そこそこの高さから落ちた二人だったが、
「おーい!二人共!大丈夫か!?」
「うん…結構な高さから落ちたみたいだけど私は無事!」
「私も特に問題はないです!」
「そうか、それは良かった。こっちも別ルートを探すわ」
「わかった!こっちも合流出来るように出口を探してみる」
「じゃあ、気を付けろよ!」
四人一党は二人の安否を気にしつつも、先へ進んでいった。女戦士は四人を見送り、周囲を見渡すが出口らしき扉などはない。
いや、出口らしき場所はあったのが既に瓦礫の山に埋もれていて通れそうにもない状態だった。
「ああ言ったものの出口は見当たらないしどうしよう…」
「取り合えず、壁を調べてみましょうか?崩れやすい場所があるかもしれませんし」
「そうね、よし!」
二人は壁を調べながら、部屋を探索するのだった。
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一方、不死人の方も問題に直面していた。それは
「微妙に構造が違う…前まではデーモンの前に放り出されたのにな。今回は別の場所に向かえということか」
そう、八度繰り返した世界の不死院とここは
「それにしてもここには相変わらず亡者くらいしかいないな。まあ、不死人を閉じ込める施設なのだから当たり前だが。だとするとあのデーモンは一体何なんだ?」
考えながらコツコツと通路を歩いていくと見覚えのある階段へと着いた。いつもなら鉄球が転がり、自身を押しつぶそうとしてくる場所に似ている。
階段を登り始めると予想通り、上で待機していた亡者が鉄球を押している。ゴロゴロと転がって来る鉄球を慣れた動作で回避する。
上にいる亡者は降りてこないので、後回しでいいだろう。
「………彼の騎士は今回いないのだから行く意味はないのだろうが。確認せずに進み、
そう言い訳をしながらも、何処か自分の中にはあの騎士がいることを望んでいるようにも思える。
「うわぁ!?何事!?」
「急に鉄球が壁を突き破って来ました!」
……どうやら、今回の邂逅者は彼女達か。生きているのなら万々歳だ。あって直ぐの人間とはいえ、死に際に会うのはもう懲り懲りだからな。
鉄球が破壊した壁の穴から杖に白いローブの聖職者らしき少女とロングソードに鎧姿の少女が出てきた。
「すまない、まさか君たちがいるとは思いもしなかった。怪我はないか?」
「あれ…先程の旅人さんですよね?大丈夫ですよ、怪我はありませんから」
「落ちたのは最悪だけど、早めに会えたのは
「ん?ああ、上から落ちたからあの部屋に居たのか。それは災難だったな」
「はい…もう少し足元に注意しておけば回避出来ていたかもしれないと思うと…油断大敵ですね」
「まあ、僥倖よ僥倖。こうして、目的の相手と出会えたのだもの。それでね、旅人さん?」
「ん?なんだ?」
女戦士は敵意ではないが、少し警戒した様子で私を見詰める。
「貴方、ここの構造を把握しているって言ってましたけど本当ですか?」
「ああ、その話か…君たちこそ知らないのか?この場所は北の不死院と呼ばれている。名前くらいは聞いたことがあるだろう?」
「北の不死院?……いえ、ありません。そもそも、ここは最近発見された場所なんですよ?」
「何?北の不死院を知らない?それに最近発見された?」
おかしい、北の不死院が最近発見された?意味が分からない…ここは昔から不死人を収容する場所として有名だ。
ここを知らない奴などいない。もしいたとしたら、そいつは『私たち不死人』を知らないと同じだろう。
「あの?どうされましたか?」
女神官が不安げに私の様子を伺う。彼女は戦士とは違い、私に警戒心よりも心配をしているようだ。
「いや、すまない。予想外の返答に驚いていた。本当にこの不死院を知らないのだな?」
「はい。私たちはギルドからここの調査を任されてきました」
「そのギルドというのは?」
「え?…冒険者を派遣する場所ですよ?知らないのですか?」
「ああ、知らないな」
「一体、どんな場所を旅していたんですか貴方…」
女神官の方は不思議そうな、女戦士は少し呆れた様子でこちらを見ている。
彼女達は文字通りなら冒険をしている者なのだろう。彼女たちもここへ『調査』をしに来たという。
冒険者か…。カタリナの騎士を名乗っていた
行く先々で出会うものだから自然と手を貸してしまうのが、会う度厄介な目に合っていた印象だ。
彼の考えが理解できない訳ではない。私にも使わない武器を集めるという
カラミットの尻尾から生成される
普通に考えれば、
「どんな旅か…基本的には
「なるほど、ただ旅をしていたのではなく。護衛をしながら旅をしていたのですね。その格好も護衛をするためですか」
「ああ、護衛をしていると大抵は
「ふーん、旅慣れはしている訳ね。でも、ギルドを知らないってどんな辺境を歩き回ってたの?」
やはり、この話の噛み合わない感じ。彼女達と私たちの
これはあまり深く事情を話すのも面倒だ。出来るだけ、不死人がよく使う言葉は控える事としよう。
「沼地や森、下水道から廃墟の街など色々な場所だった」
「何その人の寄り付かなそうな場所は…」
「実際、何か目的がある奴以外は寄り付こうとも思わないだろうな」
白霊として護衛していた不死人達も何かしらの目的を持って、あの世界を歩き回っている。
それを襲撃する闇霊もそうだ。人間性を奪うため、強いやつと戦うため、勝利という功績が欲しい者など様々だった。
「それでですね…訊きたいことがあるのですが。ここの構造を知っているっていうのは何故ですか?」
「ああ、それか」
自分は繰り返す世界を認識しているなどと初対面の少女たちに言えば狂人としか思われないだろう。
「過去に似た…というよりも同じ構造の建物を探索したことがあった。実際、ここまでの道のりは『ほぼ』同じだった」
「じゃあ、何であんな場所に閉じ込められてたの?」
「……私も足を滑らせて下に落ちた。出ようにも扉が頑丈で出られないものだから、誰かが通るのを待っていた」
「……怪しいけど、まあ一応納得しておくわ」
「あはは……すみません。彼女、疑い深くて」
「いや、正しい判断だ。少女二人と武装した男一人なら男の方が有利だろう。私が善人であるとは限らない」
私がそう言うと女神官は目を丸くし、女戦士はプッと小さく笑った。
「何かおかしなことを言ったか?」
「いいえ、ただ怪しい貴方だけどこんな忠告をするなんて悪い人ではないのかなと思っただけよ」
「そうか。だが、本当の悪人というのは裏切る直前までその本性を隠すものだ。初対面であまり人を信じるものではない」
少女二人は私の言葉に顔を見合わせながら笑った。
「やはり、貴方はいい人ですよ」
いい人か…私は少なくとも善人ではないと自負しているのだが。
「それよりも他の者達はどうした?もう少し、居たはずだろう?」
「ああ…落ちたのは私たち二人だけで。他の四人は先に探索を進めています」
「……大丈夫なのか?ここには恐らくデーモンが居るが?」
「え…」
その言葉を聞いて、二人の顔は青くなっていった。
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「それにしても、二人共
「そうね、まさか急に足場が崩れるなんて。もう少し、私たちが注意していれば」
「仕方ない…今は先を目指す…」
「ああ、ここまで一本道だ。モンスターもいないし、楽な依頼だな」
「もう、油断しないの!何が起こるのか分からないんだから」
「わかってるよ…」
二人一党とはぐれてから数分。四人はずっと道なりに通路を歩いている。
途中、鉄格子越しに不死人の言っていた広場も見つけ、目的地までもう少しというところだ。
「それにしてもここってどういう目的で建てられたんだ?」
「罪人の収容所じゃないかしら?それらしい檻は遠目だけど何度か見たもの」
「でもよ、こんなそこそこな規模の収容所を誰も知らなかったってのはおかしいよな?」
「…国が隠していたのかも…」
「ここで罪人を使って、いろいろとしてたとか?」
「はーい!やめやめ!こんな話は止めましょう!」
「じゃあ、あの鎧姿の人って何者なんだろうね?」
「結構、いい装備だったよな」
「それこそ、国に仕える騎士かもしれませんよ」
「…国から派遣された騎士……その正体は…過去の実験の記録をもみ消そうとする派閥の刺客だった」
「ちょっとぉ!!何でそっちの方に話を持ってくの!」
「あはは…」
そんな話をしていると到頭目的の広場に辿り着く。
広場の中心には剣の立てられた篝火。火は消えているようだ。
その他にあるものと言えば、その篝火の前にある大きな扉だろう。大きな扉ではあるが四人も居れば開けるのには問題はない。
「あらら、鎧の人も二人もまだ着いてないみたいね」
「ああ、そうだな。どうする?」
「どうするって待つだけでしょ?」
「いやいや、扉の先だよ。先にあっちも探索してみないか?」
「おっ!それいいな!」
男冒険者二人はどうやら先へ探索へ進みたいようだが、女冒険者二人はその逆だ。
「駄目よ、合流地点はここなのだから。ここから離れるのは駄目」
「……ここにいないと後の三人が合流できない」
「ああぁ…じゃあ、あの扉の先の部屋だけっていうのはどうだ?扉を開けておけば、後続組からも見えるし大丈夫だろ?」
「……それ以上は探索しない?」
「ああ、流石に単独で行動するほど馬鹿じゃねぇよ。あくまでも先に何があるのかの確認だけだ」
「う~ん…それなら」
その言葉に二人も折れてしまい。探索を承諾する。
「じゃあ、扉開けるの手伝ってくれよ」
「わかったわ」
「ああ、この扉。引いて開けるのか」
「ん…しょ」
特に歪みもなかったのか四人で扉を引くとそこそこ重いものの抵抗なく開く。
四人が部屋に入るとそこは大部屋だが何もない部屋だった。入ってきた扉の逆側には同じような大きな扉がある。
「おいおい、何もないじゃん…」
「残念だけど、こんなものよ」
「まあ、収容所に宝物庫なんてある訳がないわな」
四人はそう言いながらも探索を始める。だが、目につくものは特にない。強いていうならば、まだ形を保っているツボくらいだろう。
本当にそれくらいしか何もないただ『広い』部屋だった。
「ん?こっちの扉は開かないのか?」
「そのようだな、どっちにしろ探索はここで終了だったようだな」
「じゃあ、戻りましょうか」
「ん…」
四人が戻ろうと振り返ると、ギギギギッと入ってきた扉が閉まり始める。
「はぁ!?何で扉が!?」
「そんな事言ってる場合じゃない!閉じ込められる!」
一番早く反応した女格闘家が扉へ向かうが、扉が完全に閉まる方が先だった。
その後から来た三人と共に扉を押すが扉は入ってきた時と違い、『まるで反対側から何者かに押されているように開かない』
「くっそ!!」
「しまったな。罠だったか…」
「すまない、三人とも俺が提案したばっかりに…」
「俺は同意したから同じだ」
「今、文句言ってもしかたないわよ」
「…とりあえず…出口を探る」
「ああ、そうだな。何処か、崩れやすい壁とか…」
突如、ズドンッという音と強い衝撃が背中に伝わる。一体何だ?と四人が振り返ると…
「おいおい、嘘だろ…」
「で、
そこには醜悪な顔にでっぷりとしたお腹。背中にはその巨体には見合わない小さな翼が生え、手には巨大な槌をもった
長くなったので区切り。次で終了予定