不死殺し   作:ユルト

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       混沌の従者

 病み村の『目覚ましの鐘』がある部屋には隠し部屋がある。その奥には病み村の病をその身に溜め込んだ『姫』がいた。

 かつて彼女は病み村の病に蝕まれた不死人のために涙を流し、姉の制止も聞かずにその病の膿を飲み込んだ。

 彼女の身体は病に蝕まれ、強い苦しみに苛まれている。『混沌の従者』とはそんな彼女の為に『人間性』を捧げ続ける者達である。

 



地下に潜み、群れを成す

 至高神の神殿で地図を受け取り、裏庭の井戸から地下水路へ入った。

 

 水路の水の流れは速く淀みが少ない。辺境ギルドのある街の下水は流れが遅く、その為汚物が溜まる。その違いなのだろうとこの街で下水の駆除依頼がない理由を考えながら地図を参考にしつつ、遺跡へ続く場所を目指す。

 

 「街の下にこんな立派な水路があるなんてね」

 

 「水の豊富なこの都市ならではですな。確かにこれなら他の街に比べれば巨大鼠も湧きにくい」

 

 「逆に巨大鼠や巨大蟲の駆除依頼がないのは新人には厳しくないか。新人に出来る依頼なんて後はゴブリンの討伐か薬草採取くらいだろう?次の角を左だ」

 

 「りょーかい!」

 

 現在、我々の隊列は先頭が(トラップ)の確認や奇襲を察知出来る闇人(ダークエルフ)地図描き(マッピング)をしている私を中央に置き、殿は狼人(ウェアウルフ)に任せている。

 

 「ここを左…」

 

 地図へ書き込み通った通路には『七色石』を置く。後ろを振り向くとポツン、ポツンと『七色石』の光が見える。

 

 こうすることで撤退時に地図を見ずとも退路を確認できる。

 

 一定間隔で七色石を置いていくとマッピングの際にも地図に正確性が出る。杜撰なマッパーは地図の縮尺がバラバラで宛にならない。

 

 「前から気になってたけど。それって何で光ってるの?」

 

 「……私にも分からん。昔からそういうものだと認識してたからな」

 

 「悪魔殺し(デーモンスレイヤー)殿は昔からこうして地図をお描きに?」

 

 「ロードランでは地図は一切描くことは無かったな。確かに迷うことが多く、最初は地図を作成しようとも思っていた。だが、天井の梁の上を渡るなど道なき道を行く事が多すぎてな」

 

 「つまり、これらを使うことも無かったのですな」

 

 「『七色石』はまだ割りと使う方だな。こうして道中に置く、死者への手向けとして供える、高所から降りる際に落として音を聴くなど様々な使い方がある」

 

 道中を警戒しながら進んで行くが特に何かしらとの遭遇もなく目的地にたどり着く。壁の一部が崩れ、少し下に何処かへ続く通路が見えている。

 

 「ここが地下遺跡に続く通路だな」

 

 「建築の造りがさっきまでと別物ね」

 

 「そもそも、悪魔殺し(デーモンスレイヤー)殿の記憶通りならここの上には別の街があったのですからな」

 

 「遺跡がバラバラになっている時点で各地に転移していると考えている。構造も似ているだけで完全に同じではないからな」

 

 流石に山の頂上に『イザリス』が出現することはないだろう。……きっとない筈だ。

 

 

 

 

 

 

 

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 建築様式の異なる通路へ踏み込むと影から巨大鼠……。いや、犬ネズミが襲いかかってきた。

 

 「早速だな」

 

 「うえぇ……何これ?ゾンビみたいな巨大鼠だね」

 

 「犬ネズミだ。噛まれたりして気分が悪くなったら言え、巨大鼠よりも強力な疫病持ちだ」

 

 「死体が残らない故、処理に困らないのはいいですな」

 

 「ああ、これで死体が残るなら。そこから水が汚染されて水の都が阿鼻叫喚の地獄だろうな」

 

 二人には取り敢えず『毒紫の花苔玉』から作成した水薬(ポーション)を数本渡してある。

 

 毒に対する効果は高く小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)や槍使い等の一部の冒険者からの評価が高いが、如何せん値段が金貨10枚と高く、見た目も毒々しいためあまり出回らない。

 

 「相変わらず、毒々しいよね。君はよくこれをそのまま使用できるね」

 

 「慣れだな。水薬(ポーション)は飲み易いのはいいが劣化や瓶の破損がな」

 

 「それを考慮しても苔玉を呑み込むのは無理よ」

 

 そんな雑談の途中であろうと犬ネズミは続々と集まってくる。

 

 小さな排水口から這い出てくるため大した大きさではないが小さくちょこまかと動き回る犬ネズミはとても煩わしい。

 

 「やぁ!」  「グルゥ…!」

 

 闇人(ダークエルフ)はナイフを脳天へ突き刺し一撃で仕留め。狼人(ウェアウルフ)は怪力故に腕を振るえば犬ネズミが容易く切り裂かれていく。

 

 「ふっ!うぉぉ!」

 

 『ピギィィ!…』

 

 『ムラクモ』では小型の動物は相手しにくい為、試しに『人喰い鬼(オーガ)戦鎚(ウォーハンマー)』を振るう。

 

 両手で持ち地面に向かって叩きつけるように振るうと犬ネズミは不快な音を立てて砕け散る。飛び散った肉片は溶けるようにして消えていった。

 

 「うわぁぁ……ぐちゃぐちゃ…」

 

 「弱肉強食と言いまするがここで弱者は肉すら残す事が出来ませぬな」

 

 その光景に闇人(ダークエルフ)は若干引き気味で狼人(ウェアウルフ)はクツクツと嗤っている。

 

 「……悪くはないな。だが、やはり常に使うような物でもないな」

 

 『人喰い鬼(オーガ)戦鎚(ウォーハンマー)』から『ムラクモ』へ持ち換えた。特大武器は雑魚処理とここぞという時には向いている。

 

 「何処まで進むか…これから先の通路は複雑だろうな」

 

 「うーん…初日で遺跡への入り口を見つけただけでも上々だと思うな」

 

 「だが、先行して未帰還の冒険者の足取りが掴めてない。せめて、彼らがここへ到達したのかをしりたいと思っていてな」

 

 これより先の区域へ踏み込んでいるのなら残念ながら彼らの生存は望めない。そも、依頼を受けた日数からしていくら食料を持ち込んでいても尽きているだろう。

 

 「そうだな…これより先へ進むならこれも必要だろう」

 

 「む…悪魔殺し(デーモンスレイヤー)殿、それは?」

 

 「『呪い咬みの指輪』というものだ」

 

 「名前からして呪いに対する防御策なのかな?」

 

 「ああ、ここが『不死街の最下層』と仮定するなら『呪死の息』を吐くトカゲがな」

 

 「あー…君がたまに話してたアレかぁ…」

 

 「不死人にとって『呪死』ほど嫌な死に方はない」

 

 『最下層』に初めて足を踏み入れた頃には何度も死にながら道を開拓して進むのにも慣れ始めた。

 

 道中には様々な罠や敵が待ち伏せている。それを初めの頃に察知するのは難しい。逃げる亡者を追いかければ袋叩きになり、橋を渡ればドラゴンのブレスに焼かれる。

 

 道をようやく抜けても『牛頭』、『ガーゴイル』、『山羊()』などの様々な強敵との闘いはそれこそ道中の死亡数をかるく上回りもする。

 

 そうして死にながらも進むのに慣れ始めた頃に出てくるのが『バジリスク』だ。多くの不死人は初めて出会う敵に警戒しつつも一体倒してみると大して強くはないのに安心するだろう。

 

 しかし、奴等の恐ろしさは戦闘力ではなく吐き出す『呪死の息』。猛毒に出血と強力な状態異常は多くあるがその中でも『呪死』は格別だった。

 

 『呪死』した者は生命力が著しく低下(最大値の半分)し、そこからもう一度死のうものなら更に虚弱となる(最大値の四分の一)

 

 噂を聞くと解呪せず、何度も『呪死』した不死人が『最下層』から抜け出すことが出来ずに諦めた(亡者化)という話もある。

 

 そういう訳で『呪死』と『バジリスク』に嫌悪感を持つ不死人は少なくない。

 

 私も解呪の仕方が分からず、何度も死に『解呪石』のことを知ったのは病み村に続く広場に居た『珍品売り(ドーナル)』に話を聞いた後だった。

 

 「………どれだけ強敵と闘おうと苦手なものは変わらんな」

 

 「三人で分担して狩ればブレスを吐く前に倒せましょうぞ」

 

 「ああ、そうだな」

 

 私たちは未帰還の冒険者の形跡が無いか探る為に先に進むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

___________________________________________

 

 天井へ『火の玉』を投げるとグシャリと『蠢く腐肉』が落ちてくる。スライムよりも肉の焼けるような臭いが強く、狼人(ウェアウルフ)が顔を歪めた。

 

 「性質は変わってないな。大抵は天井からの奇襲を狙っているが稀に足元に潜んで上を通る生物を捕食するタイプもいるから気を付けろ」

 

 「うわぁ……洞窟や下水で粘菌(スライム)ブロブ(人喰粘菌)は見たことあるけど『コレ』の数倍はマシね」

 

 「さっきの犬ネズミ然り、この世界の生物がロードランの生物に置き換わっているのかもな」

 

 「しかし、気味が悪い生物ですな。まるで只人(ヒューム)をミンチにしてそれを生物として動かしているような…」

 

 「ちょっ、ちょっと!気持ち悪い事を言わないで!」

 

 実際そうなのかは分からないが『蠢く腐肉』に捕食される際は粘菌(スライム)のように溶かされるのではなく、ゴリゴリと体を削られる。

 

 火に弱く、物理攻撃に強いというのは同じだがここまで悪趣味な生物に育つのはあの世界ならではだろう。

 

 「ん?アレって……」

 

 「む?」

 

 先頭を歩く闇人(ダークエルフ)が通路の先に何かを見つける。そこにあるのは認識票を下げた冒険者が鎖で繋がれている光景だった。

 

 「古典的な誘い罠(ブービートラップ)…嘗められたものね」

 

 闇人(ダークエルフ)が冒険者へナイフを投げる。ナイフは冒険者へ深く刺さるが呻き声も上げない。遺体を利用して救助しに来た他の冒険者を誘う為の罠なのだろう。

 

 罠の有無を確認しながら周囲を警戒し、冒険者の遺体へ徐々に近づく。ギルドへの報告の為に認識票を持ち帰る必要もある。

 

 私は罠がないことを確認して認識票へ手を伸ばした。

 

 「っ!避けて!」

 

 何かを感知した闇人(ダークエルフ)の声に反応して反射的に後方へ下がる。紫の炎と共に冒険者の遺体は『蒸発』する。

 

 爆炎には巻き込まれなかったが爆風の影響で後方へ弾き飛ばされた。

 

 「すまん…さっきのは……」

 

 「遺体の周辺で炎の精霊が騒ぎ始めたから不審に思ったの…明らかに遺体を魔術の触媒にしてた…」

 

 「外法の類いですな、拙僧もこのような術は知りませぬ」

 

 「………『死者の活性』」

 

 脳裏に浮かんだの書物に記されていた冒涜的な『奇跡』。『黒協会(ロンドール)』の者達が使う外法のひとつだという。

 

 『もう少しで葬れたのに残念だ。しかし、お前も此方へ来ていたのだな』

 

 突然の出来事に驚いていると物陰から一人の人物が現れた。

 

 鎧、盾、剣の全てに彼の人物の殺意を表すかの如く棘がある。その姿に見覚えのある私は目を見開いた。間違いなくアイツは…

 

 「久しいな、『トゲの騎士(カーク)』。相も変わらず、姫様に捧げる人間性を集めてるのか?」

 

 『貴様とて火継ぎの使命はどうした?神の下僕となり、世界を存続するための薪になることすら出来なくなったか?』

 

 お互いに軽口を叩いているが油断はしていない。『トゲの騎士』はロードランにいた『闇霊』の中でも特に殺し合った仲である。

 

 馴れ合いは一切せず、『混沌の娘』に人間性を捧げる『混沌の従者』。闇霊ということを除けば、割りと好印象な人物ではある。

 

 「貴公は『灰の時代』にも居たそうだな。書物には『中指の騎士』と記されていたが姫様から鞍替えでもしたのか?」

 

 『貴様ッ!』

 

 逆鱗に触れたのか『混沌の大火球』を此方へ投げつけてきた。狙いは正確で後方へ避けることを想定して投げられている。

 

 側面へローリングして避けるとそれも見越して『トゲの騎士(カーク)』は飛び掛かってくる。

 

 『死ねェ!姫様の為に!』

 

 「あの優しい姫様は従者が闇霊になることなんて望んでないと思うがな!」

 

 『トゲの直剣』を咄嗟に『ムラクモ』で受け止め鍔迫り合いが始まる。後方では闇人(ダークエルフ)狼人(ウェアウルフ)の二人も戦闘を始めていた。

 

 「何なのコイツら…」

 

 「悪魔殺し(デーモンスレイヤー)殿の話を聞くにこやつらも闇霊(ダークレイス)という者なのでしょう」

 

 二人は『小ロンド』に居たような『ダークレイス』を二体相手取っている。恐らく、『トゲの騎士(カーク)』が引き連れて来たのだろう。

 

 「アレも貴公の連れか?」

 

 『……最早、亡者と変わらんが使い道はある。さぁ、始めようか。貴様を殺したら次はアイツらだ』

 

 「そうはさせんよ」

 

 この世界に来て初めての『闇霊』との闘いが始まる。

 








ドーモ、ミナサン。ユルトデス。
どうにか投稿しようと頑張りました…
土日でユルユルと書いてストックが一つ来たくらいですね

そんな話は置いておいてやっと『ゴブスレtrpg』が発売ですよ!
ゲームブックとしての完成度もさながら
設定資料集としてもかなり使えますね

魔法は全てに詠唱が入ってますし、
奇跡も各宗教別の詠唱が書いてあるんですよ!

Trpgやらないって人でゴブスレが好きな人は
設定資料集を買うつもりでも損はしませんね

個人的に神々の設定で『覚知神』が
シンボルが緑色の瞳で外なる神の一柱で
様々な知恵を与えるがその結果文明は滅びると書かれてて
クトゥルー系、またはブラボの上位者っぽくて好きです

あまり呟かないツイッター
https://twitter.com/soul_yurt
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