不死殺し   作:ユルト

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           闇霊(ダークレイス)

 かつて、世界蛇に唆された『小ロンド』の『四人の公王』に仕えていた戦士達。

 『人間性』を求めて彷徨う幽鬼の如き姿からは最早生気を感じない。

 変質した仮面や鎧は体と同化し、彼らに闇霊の業とも言われるダークハンド(吸精)を授けた。

 遠い『灰の時代』で彼らは故郷なき後も己の渇きを満たすために現れる。



闇に潜む者(ダークレイス)

 水の街の地下遺跡、悪魔殺し(デーモンスレイヤー)の盾とトゲの騎士(カーク)の剣が衝突する剣戟の音が絶え間なく響く。

 

 『どうしたァ!先程から防戦一方ではないか!』

 

 「私は貴公のように戦闘狂ではないのだよ!」

 

 トゲの騎士(カーク)の振るう剣を盾で受け止める。他の剣とは違い盾に剣の棘が突き刺さり、振り抜く際に盾が引っ張られて防御を崩されそうになる。

 

 このまま相手の攻勢が続くのは不味い。『雷のアヴェリン』を取り出してトゲの騎士(カーク)へ放つがそれを察知したトゲの騎士(カーク)は後ろへステップで距離を離す。

 

 『小賢しい……』

 

 「昔から手数の多さも自慢でね」

 

 ガッガッガッと三連で放たれた『雷のボルト』は濡れた地面へ刺さるとその場周辺へ放電する。それに巻き込まれまいとトゲの騎士(カーク)は避けた。

 

 片手で素早く装填し、第二射を放つが冷静に左右へ避けられる。もう一度装填を行うが合間に距離を詰めて来る。

 

 トゲの騎士(カーク)を迎え撃つ為に『ムラクモ』を振るうが『トゲの盾』に阻まれた。

 

 盾崩しの為に蹴りを行うが盾のトゲが邪魔をして蹴りが上手く入らず、盾の構えを崩すことは出来なかった。

 

 その隙を逃すまいと繰り出されたトゲの騎士(カーク)シールドバッシュ(盾の殴り付け)でこちらの構えを崩される。

 

 『ふん!』

 

 「クッ……」

 

 『ちっ、浅いか』

 

 剣の一撃が脇腹に入るが後ろに距離を取ることで深手を負うことを防いだ。それでも鎖帷子を突き抜けて剣の刺さった箇所からはジワリと血が滲み出てくる。

 

 「うぉらっ!」

 

 『甘ぇ!』

 

 『ムラクモ』を勢いそのまま振り下ろす(強攻撃)。しかし、トゲの騎士(カーク)はそれを見切り、ギリギリで避ける。

 

 『くたばれ!』

 

 「まだだ!」

 

 トゲの騎士(カーク)はその隙を見逃さず『トゲの直剣』を勢いよく頭へ振り下ろすが僅かに体を逸らして肩の装甲の厚い箇所で受けた。

 

 『ムラクモ』を振り下ろした低い体勢のまま大きく体を回転させ、トゲの騎士(カーク)を袈裟斬りする。

 

 左腹部から右へ突き抜けるような一撃が入り、トゲの騎士(カーク)の鎧からは血が滴る。

 

 『ぐぉぉ………』

 

 かなり深くまで刃が届いたようで感触としては骨ごと断ち斬り、内臓まで届いている。それでも不死人は死なずに戦闘でき、エストを飲めば肉体的な損傷は回復する。

 

 少しよろめくが距離を離し、態勢を建て直そうとするトゲの騎士(カーク)。このまま距離を離されれば、エストで回復されてしまう。

 

 「逃がしはしない!」

 

 『これは…鞭か!』

 

 盾を仕舞い『ウィップ』を振るうと『トゲの直剣』に巻き付く。棘が鞭と複雑に絡まり、簡単にほどけることはない。

 

 『クソッ!!』

 

 「何、闇霊が今さら卑怯とは言うまいな?」

 

 武器を失うわけにはいかないトゲの騎士(カーク)は盾を構えて距離を詰めるがそれに向けて『雷のアヴェリン』を放つ。

 

 トゲの騎士(カーク)は避けるのは不可能と判断して『雷のボルト』を盾で受け止めながら近づいてくる。

 

 しかし、『その高さ』で盾を構えれば一瞬でも視界が塞がる。『雷のアヴェリン』をソウルへ戻し、別の武器に切り替える。

 

 「これでもッ……くらえっ!」

 

 『ガバッ!』

 

 盾を構え距離を詰めてきたトゲの騎士(カーク)へ『人喰い鬼(オーガ)戦鎚(ウォーハンマー)』の横凪ぎの一撃が当たる。

 

 トゲの騎士(カーク)も直前で攻撃に気付き盾でそれを防ごうとするが特大武器の攻撃を咄嗟に盾で防ぐことが出来るはずもなく、壁へ強く叩きつけられる。

 

 『ッ!………』

 

 カランカランという音と共に『トゲの直剣』が地面に転がる。吹き飛ばされる際に『ウィップ』に引っ張られ、彼の手から離れたようだ。

 

 トゲの騎士(カーク)は地面へ座り込み立ち上がろうとしない。戦鎚(ウォーハンマー)の一撃を貰った左腕は潰れ、鎧も一部が損傷していた。

 

 回復されては厄介な為、ロイドの護符(回復封じ)を投げ、戦鎚(ウォーハンマー)を突き付けて何時でも殺せる状態を保つ。

 

 『何故…殺さない?』

 

 「殺さない訳がないだろう。貴公を殺す前に訊きたい事がある」

 

 『……何だ』

 

 「貴公は何処までの記憶がある?」

 

 『その話か……『灰の時代』までだ』

 

 「他の闇霊はどうしてる?」

 

 『さあな、闇霊に仲間意識は無い。何処で誰が何をやろうと知ったことではないからな』

 

 「そうか……では貴公とはここでお別れだ」

 

 『何度だろうと貴様の前に立ち塞がってやる。貴様とその仲間を『皆殺し』にするまでな…』

 

 呪詛の様な捨て台詞を聞き終えるとトゲの騎士(カーク)戦鎚(ウォーハンマー)を叩きつける。兜ごと頭が潰れ、動かなくなるとそこに何もなかったかのように消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___________________________________________

 

 彼が全身棘だらけの騎士と闘い始めてから背後に『骸骨の戦士』が二人現れた。一人は片手に黒い両刃の剣を持ち、もう一人は黒い両刃の剣を二刀流にしている。

 

 彼がトゲの騎士(カーク)を相手する間に私たちはコイツらを始末する。私は懐から短刀を取り出し、戦闘態勢に入る。

 

 「どっちを相手する?」

 

 「拙僧が決めてよいのですかな?」

 

 「いいよ、私ならどっちにも『負けない』」

 

 「では、拙僧は二刀流を」

 

 「じゃあ、私はこっちね。早めに終わらしてそっちに加勢するから!」

 

 私は勢いよく飛び出すとダークレイスへ向かって突きを放つ。盗賊(シーフ)だから戦闘が出来ない訳ではない。むしろ対人技能だけであれば、この一党(パーティ)の中でも一番だと胸を張れる。

 

 一直線に突っ込んでくる私へ黒い剣が振り下ろされるが左手に仕込んである暗器で軌道を逸らすように受ける。黒い剣は暗器の刃と衝突し、火花を散らしながら滑る。

 

 「やぁ!」

 

 鎧の隙間へ短剣を突き刺すがダークレイスは呻き声一つ上げず、短剣の一撃が全く効いていないかのように動き出す。

 

 「うわっ!危ないなぁ」

 

 短刀を引き抜き、曲劇の様なバク宙で距離を取ると体があった位置を左から右へ水平に剣が通過する。

 

 「駄目だね、もっと致命的な一撃を入れなきゃ」

 

 彼のように大剣を扱い腕を切り落とすことや狼人(ウェアウルフ)のように鎧を貫く一撃を入れることは出来ない。

 

 狙うは相手を一撃で葬る致命攻撃(クリティカル)。しかし、ダークレイスは亡者(アンデッド)のような反応の鈍さではあるけれど、構えや攻撃自体は隙が少ない。此方が行動を起こせば、それに反応して反撃してくる。

 

 「理性がないように見えて、割りと正確な攻撃をしてくるなぁ。だったらこれならどう?『セメル(一時)』……『セトー(俊敏)』……『オッフェーロ(付与)』」

 

 『■■■___ッ!』

 

 私が唱えたのは加速(ヘイスト)の呪文。対象一人の俊敏を引き上げる呪文で軽戦士や盗賊(シーフ)などの素早い者なら目で追いかけるのが困難なほど早くもなる。

 

目で追うことの出来ない速さで動く私にダークレイスは驚きの声のようなもの上げる。脇腹、足、腕を鎧の隙間から斬り付けていく。私を振り払うように左右に剣を振り回すが今の私には当たらない。

 

 「理性が残ってた頃は貴方も強い戦士だったんでしょうね。でも、今の貴方には負ける気がしないわ!」

 

 冷静さを欠く一撃を難なく避け、懐へ潜り込むと左手の暗器を喉元から脳へ突き抜けるように差し込む。ダークレイスは少しの間、半狂乱になりながら暴れまわったが膝から崩れ落ちると絶命した。

 

 『■■■■■■!!______________……』

 

 「脳への一撃でも少しの間は生きてるのね……」

 

 不死人の生命力に驚愕するがパートナーは下半身が潰れてもエストを飲めば元通りになることを思い出してそういうものだと納得する。

 

 「あっ!あっちの加勢にいかなきゃ」

 

 少し離れた場所で狼人(ウェアウルフ)が二刀流のダークレイスに押されていた。如何に身体能力の高い獣人とはいえ剣で何度も斬りつけられれば出血で死ぬ。

 

 『山羊頭の悪魔』の様に隙の大きい相手ならば相手取ったところで苦戦はしないが、二刀流のダークレイスは見事な剣捌きで狼人(ウェアウルフ)に攻撃の隙を与えない。

 

 なら、私が加勢してその隙を作ればいい。助走を付けると勢いそのまま背後からの一撃(バックスタブ)、胸から暗器が突き出る。

 

 暗器を引き抜き、背中を蹴って放り出す。ダークレイスは予想外の攻撃に受け身を取れず地面へ体を打ち付ける。

 

 『■■■■■■■_________!!』

 

 「御免!」

 

 狼人(ウェアウルフ)背後からの一撃(バックスタブ)を受け地面に転がるダークレイスへ組み付くと叩き伏せ、首に手を回すと力任せに捻切る。

 

 首を失った身体が立ち上がろうとするがそこへボルトが三本刺さり動きを止めた。振り向くと『アヴェリン』を構えた彼が居た。

 

 「二人とも大丈夫なみたいだな」

 

 「まあ、狂っていなけりゃ強いんだろうけど」

 

 「身のこなしに戦士としての残滓は感じましたな」

 

 「ダークハンド(吸精)は使われなかったか?」

 

 「一応警戒はしてたけど使ってこなかったよ。私たちは君と違って魂を吸われたら死んじゃうからね」

 

 「悪魔殺し(デーモンスレイヤー)殿は鎧に傷が入っていますが大丈夫ですかな?」

 

 彼の装備に目を向けると盾には穴が空き、鎧のあちこちが斬り裂かれている。このまま探索を続けるのは危険だと思う。

 

 「腹部を軽く斬り付けられたが既に癒えた。だが、装備の消耗が激しい」

 

 「撤退する?」

 

 「ああ…取り敢えず先行した冒険者がここまで踏み入ったのは確認できた。ギルドへは正式に彼らの死亡判定を出す必要がある」

 

 「では、今日の探索はこれで終いとしましょうぞ」

 

 「そうするとしよう」

 

 こうして私たちの一日目の探索は終了した。未知の遺跡探索でダークレイスの襲撃ということを考えれば、今回の依頼は銀等級一党(パーティ)未満は受けるべきではなかった。

 

 私はここで死んでいった冒険者達に少しの間黙祷すると帰路に就いた。

 

 「ちょっと!二人とも待ってよー!!」

 

 

 

 

 

 

 

___________________________________________

 

 「ゴブリン共め……」

 

 「あはは……『七色石』に関しては仕方ないよ」

 

 我々は地下水路を抜け、神殿内の古井戸まで戻ってきた。何故、私が不機嫌なのかというと道中に置いてあった『七色石』がゴブリン共に回収されていたからだ。

 

 そのせいで地図に誤った道を描いたのかと焦った。次回の探索で『七色石』を置くかは考え直すとする。

 

 「やっぱり、外で雨が降ってたのね」

 

 「次回の探索では雨具も準備しておく」

 

 「体温の低下は死を招きますからな」

 

 地下で雨が降るとは思っておらず雨具を準備し忘れ、三人ともずぶ濡れであった。どのような環境でも鎧を身に付けていたわたしはどうともないが、闇人(ダークエルフ)は服の濡れた感触が不愉快なのだろう。

 

 狼人(ウェアウルフ)は私たちから少し離れた場所で時々体を大きく震わせて水気を飛ばしている。

 

 「取り敢えず、報告は終わらせる」

 

 「びちょびちょしてる…早く宿に帰りたい……」

 

 「神殿の大浴場を貸して貰えるそうだ。私が報告してくる間に入ってきたらどうだ?」

 

 「やったー!お湯のお風呂って王都以来かな?」

 

 「闇人(ダークエルフ)殿はお湯が好きなのですな。森人(エルフ)はお湯が苦手と聞きますが」

 

 「闇人(ダークエルフ)は地下の民よ。地下を掘り進める内に温泉を堀当てて、それに入浴したりするもの。森人(エルフ)は逆に森の湖とかでしょうけど」

 

 「なるほど」

 

 ギルドへの報告もあるが先ずは依頼主の下へ向かう。狼人(ウェアウルフ)はギルドへ報告に行き、闇人(ダークエルフ)は宿へ着替えを取りに行った。

 

 神殿へ到着したが流石に雨に濡れ、泥や何やら汚れた鎧のまま入るわけにもいかず。侍女たちにあれやこれやという間に着替えさせられ応接間へ連れてこられた。

 

 応接間の扉をノックすると『どうぞ』という返事が帰ってくる。

 

 「剣の乙女よ、遺跡の探索から帰還した」

 

 「悪魔殺し(デーモンスレイヤー)様……ご無事で何よりです。どうぞ、お座りになってください。先程、侍女が良い茶葉の紅茶を淹れてくれたのです」

 

 「身体に問題はないが無事かどうかは怪しいな。では、失礼して…」

 

 剣の乙女の向かいへ腰を掛け、紅茶を一口戴く。口に含むと紅茶独特の香りが鼻を突き抜けるようだ。普段は地母神の神殿から取り寄せたワインばかりだが、今度からは紅茶もいいかもれない。

 

 「?…何か問題が…」

 

 「地下遺跡は中堅の冒険者では継続して探索するのは無理だ。今回、他の冒険者を殺害した襲撃者と交戦した」

 

 「それは……貴方達が苦戦するほどですか?」

 

 「私の相手は相当な手練れではあった。私も仲間がいなければ罠に掛かっていただろう」

 

 『死者の活性』などの『奇跡』に対する知識を高める必要性が今回でよく分かった。私が薪になった後の世界でも多くの奇跡や魔術が産み出されている。

 

 不死人にとって怖いことは理解出来ずに死ぬことだ。何が起きたのか理解できなければ対策の施しようがない。その為にも知識を増やすことは重要となる。

 

 「それでその襲撃者は…」

 

 「既に討伐したがまた現れる可能性もある。その為、地下遺跡部分への立ち入りは銀等級以上にしてはどうだろう?」

 

 「分かりました。他ならぬ悪魔殺し(デーモンスレイヤー)様が仰るのでしたら正しいのでしょう。ギルドへ使いを出してそう進言しておきますわ」

 

 「そうしてくれ……そう言えば小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)達はもう到着しているのか?」

 

 「ええ…既に地下水路の探索を進めているようです」

 

 「彼らに地下遺跡の説明はしたのだろうな?」

 

 「そちらの探索は悪魔殺し(デーモンスレイヤー)様に既に依頼しているとお伝えしました」

 

 「なら問題はないな、もう一つの一党(パーティ)はどうだ?」

 

 「明日、到着するとのことです。どうやら遠方の冒険者で最近此方へ来たのだとか」

 

 「その一党(パーティ)小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)の方を?」

 

 「いえ、彼らの希望は地下遺跡の方でして……」

 

 その一党(パーティ)が銅以下なら申し訳ないが依頼を受けさせる訳にはいかない。

 

 「……等級は銀以上か?」

 

 「はい、銀等級の四人一党(パーティ)だそうで」

 

 「なら、私には止める理由がないな。後続には毒と呪いに気を付けろと言っておいてくれないか?」

 

 「わかりましたわ。そのようにお伝えしておきます」

 

 その後は他愛ない会話が続き、彼女が入浴の時間だと侍女に呼ばれたことでお茶会は終了した。

 











感想、お気に入り、評価ありがとうございます
何とか週一くらいで投稿出来てますね。
これも皆さんがいろいろも応援団してくださってるお掛けです

今回の執筆の為にダクソ3のダークレイスと戯れましたけど
AIが優秀過ぎて辛い…蹴りでの盾崩しが的確で
ずっとは構えてられないんですよね
構えなしからするパリィの練習には丁度いいですけど

小ロンド、ロンドール、輪の都など小人やカアスが
関わっている部分の考察をしていきたい
結局、世界蛇達は何故闇の世界の到来を望んだのか
蛇は竜のなりそこないという話だし
カアスが望んだのは小人の世界ではなく
神の時代=火の時代の終わりなのかもしれない
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