不死殺し 作:ユルト
世界はまだ分かたれず、霧に覆われていた時代
岩と大樹と古竜ばかりであったという
その後、王のソウルを得たもの達と戦い
裏切り者の竜によって徐々に姿を消していった
しかし、太陽が世界を照らすようになろうとも
彼らを信仰する者は確かに居たのだ
一説によると彼の神の長子が名を消され
何処にも記録がないのは神々の敵対者であった
古竜を信仰していたからとも言われている
狭い通路、前方に正確に言うのであれば私が殿をしていたのだから後ろだが大量の犬ネズミ。それを『バベルの大盾』でまるで石臼で小麦を挽くように磨り潰す。
『キュギィィ!!』
グシャリという不快な音やズリズリという骨が床に擦れる音と共に肉片を飛び散らせる。しかし、少し目を離すと既に犬ネズミの死骸はまるで存在しなかったように消え失せた。
「うぇ……何でネズミが挟撃や待ち伏せなんてしてくるのよ…」
「遺跡自体が奴等をそう配置しているのかもな。若しくは過去に餌にありつけた方法を繰り返しているかだ」
私が処理し終えると先頭に立ち同じように処理していた
ロードランでも考える頭も無さそうな者たちが我々を殺しに来るような配置をされていたことがあった。
流石に常に天井に意識は割いていられない為、最初は注意しているが忘れた頃に降ってくる。逆にそれで天井に注意していると足元から飲み込まれるなど散々であった。
「犬ネズミの毒は遅効性のものだ。奴等も不意打ちなどを繰り返せば、獲物が何時か死ぬと理解しているのだろう」
「実際に我々も何度か感染してますからな」
軽々と鼠どもの攻撃を避ける
「……一通りここら辺は見回ったよね?」
「ああ、
「しかし、下へ続く階段など在りませんでしたな」
「それに関しては一つ心当たりがある」
そう言い私が指が指す先を見ると
「えっ…まさか排水溝を落ちるの?」
「トラップにも見えるがああいう抜け道もある。まあ、落ちた先に何があるのかは何となく予測できる」
取り敢えず、安全確認のために『七色石』を放り込む。しかし、水の流れる音が聞こえるのみであの『甲高い音』は聞こえてこない。
これで落下死する心配はない。私は『猫の意匠がある銀の指輪』を嵌める。これはつい最近、古物商の老婆から買い取った物で高所から落下しても猫のように軽々と着地出来るようになる指輪だ。
「まずは私が降りる。次に
、最後に
「了解」
「うむ」
二人の了承を確認すると私は排水溝へ飛び込む、重力に従って体が地面に吸い寄せられるこの感覚はいつまで経っても慣れはしない。
数秒にも満たない時間で有るのに過去の記憶から恐怖が甦るが指輪の効果もあり、問題はなく地面へ到着した。
「………周囲に敵影は無しか、少し考えすぎか?」
私は降り立った瞬間、
「ほいっ」
「…ふむ、特に問題はないようですな」
「あんまり上の階層と変わらないね」
「相も変わらず、鼻が曲がるような臭いですな」
上層よりも強まった臭気が鼻の利く
そんな水路の先へ進むとロードランではお馴染みだった悪趣味なオブジェが其処らかしこに放置されていた。
「え、えぇ…何これ?」
「人の像ですかな?」
地下水路に突如現れたいくつものオブジェに二人は困惑している。
「それは人が『呪死』した結果だ」
「え゛っ」
「ふむ、つまりここは
「ああ、ここはアイツらの巣だろうな」
先程から水が流れる音や水滴が滴り落ちる音に混じって、カエルが鳴くような音が響いている。
そして獲物が迷い込んだ事を察知したのか周辺の水路からバシャバシャとアイツらの走り水の跳ねる音が聞こえた。
「来るぞ、出来るだけ呪詛のブレスを吐かせるな。もし、吐かれたのなら懐に潜れ」
二人に指示を出すと私はバジリスクの群れへ突っ込む。こいつら相手に密集するのは悪手である。
ブレスを除けばバジリスク自体は強くないのだから、個々で動き対処した方が安全である。
「ふっ!」
『ゲゴォ』
前方から現れた三匹のバジリスク。その内、二匹が私を待ち構えるように喉の袋を大きく膨らませる。
もう一匹は高く飛び上がり呪毒の液を飛ばそうとするのでソイツへ向かって投げナイフを投擲。
『グゴゴゴォ……』
投げられたナイフはバジリスクの眉間に深々と突き刺さり絶命させる。
『フシュウゥゥ……』
二匹の口からはブレスが放たれ、霧のように拡散されたそれは前方の視界を塞ぐ。過去の経験から後方への回避は無駄だと感じた私はローリングで懐へと潜り込む。
「はぁ!」
『ゲッゴ…グゥゥ…』
呪毒の霧を抜けた先に居た二匹を立ち上がり様に『ムラクモ』で薙ぐ。剣先はバジリスクの頭の少し上を通り、『死の瞳』として一部の眷属で好まれている器官を両断。
『死の瞳』と言っても本当の目ではない。呪いを蓄積する器官というバジリスクの厄介な要素を排除する方法である。
「処理完了だ」
微かに生きているバジリスクの喉へ剣を突き刺し息の根を止める。それでようやくあのゲコゲコと煩い鳴き声が止んだ。
「お疲れ、こっちも終わったよ」
「こちらは鼠どもと同じく現れましたが数が少なかった故、苦戦することもありませんでしたな」
二人の方も問題はないようだ。ふと、
「バジリスクが『死の瞳』を
「ん?『死の瞳』って言うの?死んでバジリスクが消えてもこれだけ残ったから持ってきたんだよ。昔から
「それはどの様な使い道があるのですかな?」
「私も聞きたい!」
周辺に敵が居ないことを確認した二人がそう言い出した。冒険者として戦利品というものに心を惹かれるのはどの種族でも同じなのだろう。
「これはだな…」
私たちは少しペースを落としつつも探索を続ける。このようなジメジメと辛気臭い場所で話す内容ではないかもしれないが無駄に気を張るよりも良いのかも知れない。
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その後も探索は順調に進み、恐らくこの遺跡の最下層であろう場所にたどり着く。何故、最下層だろうと考えたかというとあの忌々しい『病み村』へ続く大扉が見えるからだ。
「 本当に久々に辛い冒険ね。ネズミ、粘菌、カエル、ネズミ、粘菌、カエル…」
「戦っている相手だけ聞くと初心者冒険者みたいですな」
ハッハッハッと笑う
大扉の広間の右手には更に奥へ続く階段がある。左手にはショートカットの道があるのだろうが此処で力の無い者に乱入されるのは好まない為後回し。
階段を上がると見張らし台へ辿り着き、そこから景色を見るもロードランで見た風景と同じ物が広がっていた。
私は『彼のサイン』が地面にないか探してしまい無意識の行動にハッと我に返る。もう一人の『ひねくれ者』のサインもついでに探すがやはりなかった。
「恐らくこの先が最後の部屋だ」
「またこの霧みたいなのね」
「拙僧にも分かりますぞ、これは
見張らし台から階段を下りていくと通路を塞ぐように霧が掛かっている。
これはこの先へ行く者へ注意を促すが、入った
「今回の冒険で最後の戦いだ。恐らく相手は過去に話した
「
「拙僧も同じく。何、竜を狩ったとなれば故郷へ帰る際の土産話には困るまい」
二人はそんな調子で返答するが言葉とは裏腹に軽さは存在しない。あくまでも気負わずに行くという心構えであり、その表情は真剣である。
「では行くぞ」
「ええ!」
「うむ」
霧へ手を向けるとズブズブと沼に沈み込むような感覚と共に奥へ引き寄せられる。
霧を抜けるとそこは崩壊した広間のような場所。崩れた天井からは日が射し込み、地下だというのに割と明るい。
先程はでの狭苦しく薄暗い雰囲気とは真逆で広大な広間に明るい空間は一種の神聖さを感じる。
「ここ、位置的には水の都の地下よね?あんな穴が空いてる場所なんてないよね?」
「遺跡の内部は空間が歪んでいる。ここから見えている外の風景は四方世界ではなく、もしかするとロードランかもしれん」
「流石にあそこまで高いと翼でも生えていなければ、辿り着くことすら出来ますまい」
そんな会話をしていると広間の奥。床が崩れて崖になり、水が流れ込んでいる場所から現れた。
最初に見えたのは可愛らしい蛇のような顔。その大きさも考えると恐ろしいが、この後の光景を考えればまだ許容範囲である。
その蛇の顔の下には一対の腕に二対の足。さらに『首下から縦に裂け、大量の牙の生えた口となっている怪物』。
体の構造自体は古竜に近いのだろうが如何せん腹部の口や立ち姿からゲテモノ感が否めない。
「いやー!何あれ気持ち悪いぃ……」
「
初めて対峙した二人からも散々な謂われようである。しかし、それでも古竜の端くれであり油断していい相手ではない。
『_____________■■■■■■■■■ッ!』
「二人とも突進が来るぞ!左右へ避けろ!」
咆哮と共に腹部の口を地面へ向け一対の腕と二対の足で這う。あれほどの巨体ならば走るだけでも武器になり、広間にある柱を薙ぎ倒しながら私達の方へ迫り来る。
私は咄嗟に左へ、
勢い良く壁へ激突した貪食ドラゴンだが特に
「私達が気を惹き付ける。すまないが尻尾を頼む!」
「承知した」
「私も行くよ!」
私は雷のアヴェリンで頭部を狙い、彼女は見事な双剣で着実に
「流石は腐ってもドラゴンだな」
「足の鱗、硬いんだけど!」
突撃するとき以外は基本的に海老反りのように体を曲げて動き回る貪食ドラゴン。頭部を狙うのが困難な為、仕方なく他の部位へ攻撃を行うが硬い鱗に阻まれた。
『_____________■■■■■■■■■ッ!』
「踏みつけくるよ!」
「むぅ……いけませんな。尻尾も暴れて手が付けられませぬ」
後方で尻尾への攻撃を続けていた
迂闊に攻撃も出来ない為、その場から距離を離すと突如貪食ドラゴンは高く飛び上がる。そしてそのまま
『悠々と空を飛び始めたのだった』
「はぁ!?あんな姿で飛べるの?!」
攻撃を行おうにも貪食ドラゴンの真下は腹部の口から漏れた酸の液が降り注ぎ、まともに立てるような状況ではない。
「あれどうするの?」
「私も予想外なんだが…『竜狩りの大弓』で撃ち落とせるか?」
ソウルから取り出した人が扱うには少々大きい弓を取り出す。弓に矢をつがえて弦を大きく引き、狙いを貪食ドラゴンへ向ける。
「__■■ッ!」
「っ!危ない!」
弓を構えていた私へ何かが飛来するが咄嗟の事で反応出来なかった。私を押し倒すようにして飛び出した
先程まで私が弓を構えていた場所が飛来したものによって『溶けて』抉れた。恐らく、あの蛇のような頭顔から放たれた酸のブレスなのだろう。
「すまない」
「大丈夫、それよりもアレどうするの?」
「こんな遮蔽物の少ない場所でないならやり様はあったんだがな」
「ふむ、ではどのように?」
「………やり様はあるが……皆を危険に晒すことは出来ん」
「じゃあ……」
「はっはっはっ!貴公、水臭いではないか!」
我々が身を隠して動いているというのに知ったことかと言わんばかりの声と鎧に描かれた主張の激しい太陽。
そんな人物を私は一人しか知らない。
「貴公は……」
「何、積もり積もった話もあるだろうが先にあの食いしん坊を地へ落とさねばな」
彼は左手にあのお手製のタリスマンを握ると大きく掲げる。するとタリスマンを中心にバチバチと音を立てて雷が集まり、大きな槍を形成した。
「我が友との再会なのだ。しっかりと奴を落としてくれ、我が太陽の輝きよ!」
彼から放たれた『雷の大槍』は悠々と空を飛び続けていた貪食ドラゴンの翼へ当たると堅牢な鱗を弾き飛ばし穴を開けた。
『_____________■■■■■■■■■ッ!』
轟音と共に貪食ドラゴンが地へ墜ちる。更に場所が悪かった様で奴が最初に現れた崖際に墜落したことで床へ爪を立てて踏ん張っているが今にも谷底へ落ちそうである。
私は『竜狩りの大弓』へ『竜狩りの雷矢』を装填し、大きく引く。
『_____■■ッ!』
「友の邪魔はさせん」
最期の攻撃とばかりに先程と同じ、酸のブレスを放つが彼の『放つフォース』によって阻まれたそれは空中で霧散する。
「ではな、谷底で逝け」
放たれた大矢は蛇のような頭部へ一直線に向かい大きな鏃で貫き潰す。頭の失くなった体では踏ん張ることも出来ず、貪食ドラゴンは谷底へ流れ落ちていった。
戦いも終わり、大したものは無いが周辺を探索して戦利品を集める。二人も気遣ってくれたのかこの場には彼と私の二人だけとなった。
「貴公には聞きたいことが…」
「まあ、待て。先にドラゴン討伐の祝杯を挙げようではないか!」
彼はソウルに仕舞っていたのか杯を手渡すとそこへエールらしき液体を注ぐ。
「此方へ来てから同じ太陽戦士の同胞から聞いたのだよ。戦いの後はこれだとな」
「何に乾杯する?」
「我々の旅路に、久しい再会に、そして此度の勝利に!」
地下の明るくも薄暗い場所だというのに確かに我々の頭上には太陽が昇っていたのだった。
ドーモ、読者=サン
ユルトです
明けましておめでとうございます
久しぶりの投稿だというのに沢山の
感想と評価もありがとうございました
今後も少しずつ投稿出来るよう頑張ります
ダクソTRPGのリプレイはまだログがあるので
それを元に一つ話を作ってみようかなぁと
エルデンリング……ハヨ…ハヨ