不死殺し 作:ユルト
…俺の、俺の太陽が、沈む…
…暗い、…まっくらだ…
私はギルドを出て、まず質屋へ行くこととした。
冒険者として活動していくとしても、無一文では話にならない。体内に蓄積された大量のソウルもこの世界では何の意味も持たないのだから。
聞くところによると、白磁等級冒険者の一日の報酬が約金貨一枚。
そこへ
「君たちは白磁等級の頃はどのようにして日々を過ごしていた?」
私が問いかけてたのはギルドからずっと後ろに付いてきている。女神官と女戦士の一党だ。
今日はもう休むつもりらしく、残りの自由時間を私に付いてきて潰すそうだ。
「私たちですか?そうですね…」
「解毒剤や治癒の水薬はケチって死んだ新人の話は聞いたから切れたら毎回しっかりと買ってたら、稼ぎはなかったわ」
「冒険者は体が資本といいますし、残りの稼ぎの大半は宿代と食事代に消えていましたね」
「黒曜等級になって少し余裕が出来てきて、鋼鉄等級になってようやくまともな防具を揃える事ができるようになったのよ」
「防具、武器は既に手持ちの物がある。あとは食事代、宿代か…」
正直言って、稼ぎを削ってまで食事をしたり、宿を取る必要性を不死人である私は感じなかった。
空腹を感じないのは不死院で一週間ほど閉じ込められていた時に理解した。寝床も雨風凌げれば、何処でもいい。
最下層で何日も汚物共と戯れながら。最後は
…まあ、そんな事をしたら周りから白い目で見られる程度ではすまないだろう。
「質屋はあっちの方がいいわよ?あそこの質屋は表は豪勢にしてるけど、店主がケチで白磁等級の冒険者では買いたたかれるわよ」
「高ランク冒険者相手には色付けたりして、贔屓にして貰っているそうですけどね…」
なるほど、この街の
彼女達に手を引かれ辿り着いたのは、外観はお世辞にもいいとは言えない古びた店だった。
店に入ると、仄かに甘い匂いがする。香だろうか?
「いらっしゃい、今日は何のようだい?お嬢ちゃん達と鎧姿のお客様」
店の奥には魔術師のように深々とローブを被った、声色からして恐らく老婆が座っている。
「今日、用があるのは私たちじゃないわ。この人、この国の通貨を持っていないから質に出してお金が欲しいらしいのよ」
「だから、この町で物を売るならお婆様の店がいいと薦めさせて貰いました」
「そうかい…そうかい…。で、どのような物をお持ちで?」
「今回はそれ程急ぎの用ではないのでな」
老婆の前の机へ、『銅の硬貨』、『銀の硬貨』、『金の硬貨』、『太陽のメダル』を一枚ずつ置く。
二人は机に並べられたそれを興味深そうに見つめる。
「手に取ってみてもよろしいかね?」
「ああ、構わない」
老婆は硬貨を一つ一つ丁寧に観察していく。特に見ている時間が長かったのは『太陽のメダル』だった。
「そうさねぇ……。ざっと、金貨50枚ってところかね?」
「ご、50枚!!」
「す、すごいですよ!騎士さん!」
二人は私よりも興奮したようで、高額な値段を付けられたそれらをジッと見つめている。
私も内心、ここまでの値段が付くとは思ってもおらず驚いていた。
「どういう内訳になっている?」
「この銅の硬貨は金貨2枚、銀の硬貨は3枚、金の硬貨は5枚。この奇妙なメダルが40枚だよ」
まさか、『太陽のメダル』が一番の高値とは…。私にはもう要らないものだ。
「何故、それがそこまでの値段なんだ?」
「ああ…この硬貨が微弱とは言え、尽きぬ魔力を放っているからさ。防具や武器ならまだしも硬貨にこんなことする奴はそうそういないだろうね。珍しさで言えば、この中で一番だよ」
「なるほど、それは太陽のメダルというのだが。私の信仰している宗派で、他人の助けになると与えられるものだ」
「ほうほう…」
老婆が私の話を興味深そうに聞き入る。少女、二人も興味があるようだ。
「そこへ描かれているのは太陽のシンボル。シンボルの主は『太陽の光の長子』でな。神から追われた今ではほぼ全ての書物からも記録はないが。太陽を信仰する戦士たちを見守っていると言われている」
「他の硬貨に彫られているものにもエピソードはあるかい?詳しく言ってくれるなら少々色を付けるがどうだい?」
「まあ、そこまで時間は掛からないからいいだろう。まず、銅の硬貨に描かれているのは…」
その後、三つの硬貨についても話していった。
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「いいのでしょうか?私たちがこんなにも頂いてしまって…」
「ああ、あの店主と出会えたのは君たちのおかげだ。私、一人ならこんな枚数の金貨は得られなかった」
「そうよ♪貰えるものは貰っておかないと!」
女戦士は『何を買おうかな~』と上機嫌だ。逆に真面目な女神官は本当に貰ってしまっても良いのかと悩んでいる。
店主は最終的に50枚+10枚という破格の値段を付けて、買い取ってくれた。その内の10枚を彼女たちに渡した。
ずっしりと重くなった金貨の袋を腰に下げ、私は次の目的地である武具屋へ向かう。
「次は武具を見に行くんでしたっけ?」
「ああ」
「貴方、そんな立派な鎧と剣を持っているのに行く必要なんてないでしょ?」
「いや、武具という物は色々な事がわかる。特に量産品に傾向が出やすい。その街で消耗しやすく使い潰す、必要なものが一番多いのだからな」
「ほえ~、そんな考え方する人初めて見た」
「例えば、スケルトンの襲撃が多い街があったとする。その街の武具屋に量産品の剣など大量に置いてあっても無駄だろう?」
「まあ、スケルトン相手ならメイスみたいな打撃武器が欲しいわね」
「そういうことだ」
まあ、理由はあるものの。実際には私の
使わない武器、防具も蒐集品として欲しい。この癖だけは直らない。
「ここがそうだな」
「そうね、私もここで武器や防具を買っているわ。おやじさん、頑固で無愛想だけどいい人よ?」
「私たちが白磁の頃はよくアドバイスを貰いましたから」
「ふむ、無愛想な鍛冶師か…」
鍛冶師と言われて思い出すのは、よくお世話になった三人の鍛冶屋。
荒廃する前のアノール・ロンドから騎士たちの武具を鍛えていた巨人の鍛冶屋。
骸骨の姿となってもなお、地下墓地で金槌を振るう鍛冶屋。
そして、一番世話になったのは地下不死教区に居た。アストラの鍛冶屋だろう。
今、自身の身に付けている、この上級騎士装備や愛武器の数々は彼に打って貰っている。
本当に彼とは長い付き合いだった。普段は無愛想な彼だが。いつも去り際には
『・・・死ぬんじゃねえぜ あんたの亡者なんて、見たくもねえ・・・』
……ああ、あの荒廃した世界では珍しい善人であり、私の友人でもあった。
彼にはかなりの無茶な要求をいくつもして困らせてしまっていただろう。
だが、彼は文句は言いつつも嫌な顔一つせず。要求通りの武具を拵えてくれた。本当に感謝してもし足りない。
「どうしたの?考え事?」
「昔の事を少しな。鍛冶屋の友人がいたのさ」
「もしかして、その武具は」
「ああ、彼が打ったものでね。私のお気に入りだよ」
「なるほど…いい、ご友人なんですね!」
「ああ…いい友人『だった』よ」
私は武具屋の扉を開ける。すると、そこには新人冒険者らしき二人と頑固そうなおやじさんがいた。
「武器はどうする?」
「剣…片手剣を使う」
「盾持ちなら当然だな」
鍛冶屋から渡された、剣を腰に掛ける新人。やはり、剣の重さに慣れていないのだろう。身体の重心が少し傾いている。
白磁等級の新人だと考えれば上々だろう。だが、買う前に剣の振り心地や長さを確認してないのはいただけない。
「次は革鎧と丸盾だな、そこに置いてあるものがお前さんにはおススメだ」
その言葉を聞いて、ツカツカと歩いていき。革鎧に丸盾を装備する。彼は軽戦士だろうか?
「なあ、アンタも今日冒険者登録した新人か?」
その様子を見ていたもう一人の新人であろう男が声を掛ける。
「ああ、そうだ」
「なあ、だったら。一緒に一党を組んで冒険しないか!?」
「冒険?ゴブリンか?」
「いやいや、ゴブリンなんて小物じゃなくてよ!ドラゴンとか未知の遺跡を探索とか…」
未知の遺跡という言葉に後ろの二人がビクリと肩を震わす。やはり、いい思い出ではないだろう。
「ゴブリンだ」
「は?」
「俺はこれからゴブリンを狩りにいく」
ゴブリンを狩りにいくと宣言する新人の言葉には何か強い意志を感じる。
「この革鎧と丸盾も買った。残りの金貨はいくつだ」
「残り三金貨だ」
「それで
「はぁ…次から水薬はギルドの受付で買ってくれ」
そう言いつつも鍛冶師は棚から二つの水薬を取り出す。
「
「ああ」
残り三枚だった金貨も後一枚を残すのみとなった。
「他に必要で、金貨一枚で買えるものは?」
「………ん…予備の短剣と冒険者セット…それに兜だな。待ってろ、安いがいいのがある。顔を売るつもりがないなら、兜くらいは覚えてもらえ」
それを聞いていたもう一人の新人は兜と聞いて、ゲッとした顔をするとウンザリした様子で店を出て行った。
恐らく、顔を売りたいが為に兜は被らないつもりなのだろう。だが、それは強者に許される余裕だ。
戦いを何も知らない新人ならば、兜を被るのが生き残る確率を上げる良い方法だろう。
あとは自分の身の丈に合わない依頼は受けない事だ。
賢明な新人は兜を被り、準備できたのだろう。店を出て行こうとする。
「少しいいか?」
私は彼に声を掛けた。新人は声に応じて、こちらへ振り返える。
「なんだ?」
「貴公、ゴブリン退治に行くと言っていたな」
「ああ、ゴブリンを狩りに行く」
「ゴブリンは大抵は洞窟などの狭い場所を根城にしていると聞いた。ロングソードを買っていたが、それではその剣の長所が生かせないのではないか?」
「………」
新人は私の言葉を聞き、ジッと自身のロングソードを見詰め。数秒後、こちらを向き直した。
「閉所で戦うならばどのような武器がいい?」
「ロングソードではなく、せめてショートソードにすべきだな」
私は
鍛冶屋のおやじさんはその光景にギョッしたが、後ろの二人はこの一日でもう慣れたようだ。
一応、このポーチは魔法のポーチで色々な物が入るようになっているとギルドでは誤魔化しておいた。
「金貨はもう…」
「いらん、いらん。ただ、もしゴブリン退治でロングソードよりもショートソードの方が有用だったら。そのロングソードを渡してくれ、それで交換だ」
「わかった」
「後、言うべきことは…」
新人の姿を隅々までよく見る。指摘したいことはいくつか出てきた。
「一つは兜だ」
「これが?」
新人は兜を脱ぎ、訝し気に兜を見る。
「ああ、ゴブリンは巨大鼠や巨大蟲と違って人型の化け物だろう?」
「そうだ」
「そういう輩は手癖が悪い。戦闘中に掴まれて、バランスを崩すような要因は消した方がいい」
「なるほど。すまない、この角を切ってくれ」
「……あいよ、少し待っていな」
おやじさんは何か言いたげに俺を睨むが、直ぐに作業に掛かる。
「二つ目は
「どうすればいい?」
「小道具入れも買えないのなら、せめて瓶を布で厚く巻いておけ。それだけでも安定はする」
「わかった」
「これも餞別として受け取れ」
私は『緑花草』、『血赤の苔玉』、『毒紫の花苔玉』を渡す。
「これはなんだ?」
「この草は『緑花草』といって代謝を上げたりするものだ。ギルドで売ってるスタミナポーションに近いものだ」
「…」
新人はその説明を聞き逃すまいとしている。このように生きることに必死な姿勢は好感が持てる。
「こっちは『血赤の苔玉』、止血の効果がある。ゴブリン共を駆逐したとして、帰りに血を流しすぎて死ぬなんて言うのは笑い話にならん」
「ああ…」
「最後に『毒紫の花苔玉』、解毒剤と同じ。ただ、即効性がある。数分後には死に至る猛毒であろうとこれなら解毒できる。ゴブリン共は自身の糞尿を混ぜ合わせた毒を使うそうだ」
「助かる」
彼は遠慮なくそれらを受け取った。いいぞ、使えるものは全て使え。
最後にはプライドを捨ててもいい、生き残り勝ち残った奴こそが全てだ。
私たちの会話が終わるのを待っていてくれたのか、鍛冶屋のおやじさんが角を切った兜を持ってきてくれた。
「ほら、兜も準備出来たぞ」
「感謝する。では、行ってくる…」
「ああ、貴公の旅路に太陽の導きがあらんことを…」
私に一瞥すると彼は出て行った。これから、彼の冒険が始まるのだ。
「お前さん、随分とあの新人に肩入れするじゃないか。知り合いなのか?」
「いいや、彼を見ていると昔の自分を思い出してね。ただ、彼の目が
「で、結局アンタはここへ何をしに来た?」
「……………冷やかし?」
「帰れ」
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冒険者登録をした。
依頼も受けた。
装備品も揃えた。
小道具も準備出来た。
さあ、後は……
ゴブリン退治だ
一人の青年は一つの出会いでより早い成長を遂げるだろう。
だが、その成長は英雄譚に載るような冒険や、御伽噺の勇者のような活躍をする為ではない
そう、全てはゴブリンを殺すため。彼は
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不死人:ステータス
素性:戦士
SL:120
体力:40
記憶力:14
持久力:37
筋力:40
技量:40
耐久:11
理力:9
信仰:9
右手1:ムラクモ+15
右手2:呪術の火+5
左手1:草紋の盾+15
左手2:雷のアヴェリン+5
兜:上級騎士+10
鎧:上級騎士+10
手甲:上級騎士+10
足甲:上級騎士+10
指輪1:ハベルの指輪
指輪2:緑花の指輪
( ゚Д゚)
評価数:56 お気に入り:932
( Д ) ゚ ゚
日刊:4位
(´・ω・`).;:…(´・ω...:.;::..(´・;::: .:.;: サラサラ..
ソラ―ルさん、見つけたよ…私の太陽を…
五話も書いて、戦闘が一回のゴブスレ二次があるらしい
次はたぶん冒険する(予定)