Hallo wee(ke)n(d)   作:トマトしるこ

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久しぶりに一万字を超えた気がする。


AR-15「生きてるって素晴らしいわ」

「一〇〇式の元気がない?」

「そうなんだよ」

 

午前のスケジュールを終えた指揮官は最近の悩みを今日の副官を務めるST AR-15に相談していた。先日の大規模作戦の折に自殺まがいの行為を行った彼女は、謹慎処分と監視を兼ねて一ヶ月の無休と実戦禁止を言い渡されている。事務処理もそつなくこなせる彼女を遊ばせる余裕の無い当基地では、実質の副官縛りであった。

 

誰よりも戦果に執着している彼女には堪える罰だろう、というのが指揮官の考えだった……のだが、なぜか当の本人は落ち込むどころか目を輝かせる始末。何故か? と頭を抱える指揮官の反応を見てM4達は苦笑いを浮かべつつ、AR-15の肩を叩いていたり。副官ローテーションから一ヶ月外された面々は逆に不満たらたらで、見事にやらかしたのが一週間前。

 

ここ最近の話し相手と言えば、副官席でばばばばと書類を捌くAR-15、話題の一〇〇式、面白がっているUMP45、監査を控えたヘリアンぐらいのものだ。カリーナ? 有給一週間をくれてやったら泣いて喜んで実家に帰ってる。ウチはホワイトなんだ。

 

だから、というわけではないが、目に見えて元気を無くしている一〇〇式は見るに堪えない。貧乏性ながらも元気いっぱい。それが彼の相棒である。

 

「珍しいですね。真冬の寒い季節に指揮官が間違えて一〇〇式のマフラーを洗濯機に突っ込んでおきながら出撃させて、挙句マフラーを台無しにしてもげんこつで済ませる彼女だというのに」

「え、何で怒ってるの?」

「他の女が落ち込んでるから励ましたいなんて相談をされて喜ぶと思いますか?」

「……スミマセン」

 

AR-15はため息をつきながらそう返した。「なんでこんな人に……」とぶつぶつ呟いているが、なんだかんだで頼りにされて喜んでいる。

 

「どうせまた怒らせることしたんじゃない?」

「うーん、心当たりが無い」

「でしょうね。指揮官の主観は頼りにならないので」

「うぎぎ…」

「だから、元気をだしてもらう方法を考えましょうか」

 

整理を終えた書類を脇にやり、席を立ったAR-15は二人分のコーヒーと菓子を用意して応接用のソファに腰を下ろし、ちらりと物欲しそうな顔でアピールする。長い休憩になりそうだと思いながらも、指揮官はAR-15と並んで深く座りコーヒーを受け取った。

 

「何かプレゼントするのがベターなんだが…」

「彼女に限っては、悩みの種ですね」

 

一世紀ほど遡って第二次世界大戦、一〇〇式の祖国こと日本は資源の捻出に喘いでいたと記録があり、国民の生活は苦しいものだったと言われている。貧乏性はそこから来ているのだろう、羽目を外す時は全力で楽しむのだが、日ごろの贅沢にはめっぽう厳しい。

 

特に大規模作戦を終了したばかりでどこの基地も疲弊しており、この基地も例外ではない。節制に励む時期に君の為にとプレゼントを用意しても一喝されるのは目に見えていた。

 

しかし、この指揮官にはアイデアがあった。

 

「部隊全体に振舞い且つ一〇〇式が特別喜ぶもの、これなら大丈夫だ」

「確かに……それなら少しの小言で済みそう」

 

色々と頭を凝らして最適解にたどり着いても小言が返ってくるのはご愛敬。

 

「でも、少々ハードルが高いような。平時と比べて資源も余裕が無いし、これだけの人数が揃っている場所で全員が喜ぶものが、果たしてあるのか……」

「うん。だから、AR-15、お前が頼りだ」

「えっ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…………~~~~」

 

指揮官室を退室したAR-15は、それはそれはふかーーーく長いため息をついた。一瞬でも、一ミリでも、うわついた気分に浸った自分と、いつもの様に上げて落とした指揮官に。

 

「有益な情報が得られそうな人形をピックアップしたから聞き込みをしてくれって……。私が少々干されていること、気づいてないのかしら…」

 

右手には指揮官から手渡された殴り書きのメモ。そこには一〇〇式と特に仲の良い人形と、あの生真面目の餌食になってしょっぴかれる悪戯好きな人形の名前がつらつらと並んでいる。

 

仕事は先ほどまでの自分がバッチリ片付けてしまった為に時間はたっぷり、謹慎中の身なので他の仕事はふってもらえず、一〇〇式の仲良しは殆どが副官なので指揮官では話にならない。まるで計画されているかのような状況だ。

 

いや、まだそれだけなら良い。最も足を重たくしているのは、自分で愚痴ったように干されている事。

 

先日の大規模作戦では独断専行をした挙句、自殺まがいの行動に出た。一〇〇式が私の意図にいち早く気づいたお陰で結果的に私は生き延びて作戦も無事に成功で終えることが出来たが、みんなを危険に晒し、命令違反を犯した事に変わりはない。その上のうのうと副官を任されているのだ、周囲としては許せないだろう。それこそ一〇〇式なんかは特に。

 

指揮官の考えが分からないなんて、この基地ではあるある話。仕事も無い私に振られた新しい任務だと割り切って、リストに並ぶ名前を見て再度頭を抱えた。

 

 

 

 

「一〇〇式の好きなもの? 分かんない!」

「はぁ、そうよね、アンタに聞いた私が馬鹿だったわ。というか、指揮官が馬鹿だわ」

「ねーちょっとー、聞かれたから答えたのにそれ酷くないー?」

 

まずは一番聞きやすい人形から始めようと思い、SOPⅡの元を訪れていた。胡坐をかきながらコレクションの鉄血目玉でお手玉をしている。メカメカしい両手で傷をつけずに十個も躍らせる様は、意外な器用さを持っていることが伺えた。

 

SOPⅡは悪戯好きというわけではないが、悪趣味っぷりから小言を言われることが多い。そもそもそういう性格で、本人も場を弁えるつもりがあることは一〇〇式も理解しているので釘をさすことは無いが、その場にいる純粋な子(G41がいい例)に悪影響が出そうなときはその限りでない程度。

 

彼女は最古参の人形なので、基地でも古株なAR小隊は私も含めてわりと関りが深い。ただ、M4と私は真面目な話だけ、M16は酒癖が悪いと怒られるばかり。確かに、一番こういう雑談をしてそうなのはSOPⅡとは思う。ROはまだ慣れてないだろうし。

 

「参考程度に聞くけど、アンタなら何が欲しい?」

「みんなが喜ぶものでしょ? だったら休みかカフェのチケットとか?」

「ま、その辺になるわよね。ありがと」

「どういたしまして。今度の配給がたのしみだなー!」

「……はいはい」

 

 

 

 

「で、私の番? 大変ね」

「全くだわ」

 

苦笑を漏らしながらも部屋へ迎え入れてくれたのはUMP45。

 

誓約の証はG&Kが特定の指揮官にのみ販売する強化装備の一つ。条件の一つに信頼し合えるパートナーであるかどうかの項目があることと、その形状が指輪であること、ケースが質素且つ豪奢なことから、結婚指輪扱いになっている。ぶっちゃけステータスアップはおまけ。

 

指揮官はG&Kの中でも人形を大切に扱う珍しいタイプで分け隔てなく接し、一般職員含めてとても人気がある。そんな指揮官から特別な愛情を注がれる人形は、六体。ひじょーに高い倍率の中、見事勝ち取った人形が六体もいるのだ(一部特殊な事情で誓約した子もいるが)。これ見よがしに見せつけるような煽り行為をする人形達ではないが、時折指輪を愛おしそうに眺めたりする目撃情報は後を絶たず、今日も何処かで指輪を欲している人形が血反吐を吐いている。かくいう私もそのうちの一人なのだが……。

 

その中でも更に、更に特別な人形が二体。二つ指輪を貰っている人形が居る。

 

一〇〇式とUMP45だ。指揮官大好きクラブ(命名:M16)の絶対王者である。

 

多分一番仲の良い人形ではないだろうか? 一〇〇式と冗談を言い合うのは彼女ぐらいだと思う。

 

「そうねぇ……色々と役に立ちそうな情報は持ってるけど、ごめんなさいね」

「貴女にそう言われると、こちらとしては詰みと同義なんだけど」

「教えてあげるのはいいんだけど、それじゃかわいそうだから」

「誰が?」

「誰かさんが」

 

決して崩すことの無い余裕を持った笑みは、今のような勿体ぶって教えない時には無性に腹が立つ。何より不気味。幾度となく部隊の窮地を救ってきた頭脳である彼女に、そんな視線を向けられては落ち着かないものだ。

 

「そんなに難しく考える必要はないわ。誰だって喜ぶものでも用意してみれば?」

 

 

 

「むぅ、一〇〇式の喜ぶもの、のぉ」

「どうかしら」

「むむむむ」

 

部隊のご意見番、M1895。唯一、一〇〇式よりも指揮官と付き合いの長い人形で、G&K最古の第二世代らしい。上層部とも強いつながりを未だに持っており、鶴の一声で改革を起こせるとかなんとかかんとか。本人も指揮官も否定しないのでウワサに尾ひれがつきまくっている。

 

設定盛りすぎとからかわれそうなものだが、その話が今日まで真実味を帯びているのは、ひとえに含蓄ある説教と豊富な経験と知識から授けられるアドバイスだろう。

 

「あやつは中々自分の願望を語らんからのぉ。好みは察しがつくが」

「流石ね。それで?」

「……45は何か言うておらんかったか?」

「UMP45? そんなに難しく考える必要は無いとか、誰でも喜ぶものとかは言っていたけど」

「ああ、そっちか。だったら儂もそれっぽく答えておく。偶には里帰りでもさせてやれ」

「……はぁ」

 

これだから年寄りは…。

 

「世話好きって思っていたけど、そうでもないのね」

「だからこうやって話を聞いておるではないか」

 

少々むすっとした態度で見上げてくるM1895。どうやら具体的に教えてくれるつもりはなさそうだ。UMP45もそうだったが、一〇〇式の好みや欲しい物は知られるとマズイ物なんじゃないかと思えてくる。危ない事でもしてるんじゃないでしょうね?

 

この様子だと、他も期待できないなとAR-15は思った。

 

 

 

 

曲がり角に差し掛かる中、そいつは向こうからやってきた。

 

「次は……「わぁっ!」きゃっ!」

「あはは! カワイー! AR-15ってそんな可愛いい……え、AR-15?」

 

誰が差し掛かったのかも確認せずに大声で驚かせたのは、探していたP7。華やかなシスター服に猫耳付きのヴェールは特徴的で、45とはまた違ったにやけ面が良く似合う悪戯っ子。反応が面白い奴で遊ぶらしく、派手に驚くスコーピオンや弱気なTMPが餌食になるが……

 

「は、はは、私ちょっと用事を思い出しちゃったー……」

「だから?」

「さらばっ!!」

「待ちなさい」

「ぐえっ」

 

自分が逃げ切れない相手やプレッシャーを感じる相手を嫌っており、そういうタイプには絶対に悪戯を仕掛けないらしい。なんと動物的な。

 

例えばスプリングフィールド、例えばトンプソン、例えばOTs-14。

 

例えばAR-15のような。

 

じりじりと後ずさりを三歩だけは許されたP7だったが、振り返った最初の一歩を踏み出すことは叶わず、がっしりと頭を鷲掴みにされ、AR-15の細腕からは考えられないような力で持ち上げられた。

 

アサルトライフル最高射速を実現するその指には、きっととんでもない握力が秘められているに違いない。

 

「いたたたたた!! 痛い痛い! ごめんなさーーーーーい!!」

「P7。貴女は何も見ていないし聞いてない。そうね?」

「見てない! 見てないよー! 聞いてなーい!!!」

「もし、この事を誰か……指揮官に話しでもしたら……」

「指揮官ならむしろ高評価になりそうな…」

「はァ?」

「言いませんーーー!!」

 

だばだばと涙を流しながら必死に許しを請う小動物にちょっと嗜虐心をくすぐられるAR-15だったが、流石に性格が悪いと踏みとどまり、ぱっと指を開いて拘束を解いた。べちゃっと床に突っ伏した姿は猫というより、獣に怯えるウサギの方が相応しい気もする。

 

はぁ、とため息をついて本題を思い出したAR-15は話した腕を腰にあててウサギに話しかけた。

 

「聞きたいことが――」

「いやーーーーっ! たすけてーーーーー!」

「………」

 

数秒前の脅かしてきた勢いは何処へ行ったのか、すっかり怯えた様子のP7はハンドガン特有の素早さで「ぐえっ」…躓いてこけながらも逃げ去っていった。

 

「はぁ、疲れた」

 

この一日ですっかりため息グセがついてしまったAR-15はつい愚痴をこぼしてしまうのだった。

 

 

 

 

指揮官からもらったリストがアテにならないと察したAR-15は手当たり次第に聞き込みを始めた。自分が干されている事などとっくに忘れて、道行く可能性のありそうな人形に「みんなが貰って喜ぶものって何?」と。

 

そして同じ言葉が返ってくるのである。休みか外出許可かカフェのフリーパス。(SOPⅡ)がちゃんと常識を持っている事を喜びつつも、どれもピンと来るようなアイデアではなく、また延々と基地の中を練り歩く。

 

いったい何度諦めて現状を報告して終わろうと思ったことか。AR-15が少し不貞腐れたように、他の女を励ますために利用されるなんて腹が立つし、おざなりにしたって罰は当たらないとも思った。が、色々と悩んだ末に投げるどころかお得意の執念を見せる。

 

形はどうであれ今の自分を指揮官はまだ必要としてくれている。戦術人形にあるまじき、命令違反をはたらいた自分を使ってくれるのだ。その信頼には報いなければならない。というより、見捨てられるなんて考えるだけでもおぞましい。どんな些細なアピールでも欠かせないのだ。

 

と、決意を新たにしたところでお腹が空いた彼女はカフェに来ていた。ここには探し人の一人、スプリングフィールドが勤務している。あとお小遣い欲しさに手伝いをする人形がたまにいる。

 

「あら、いらっしゃい。珍しいですわね」

「げっ、AR-15」

「こんにちは、スプリングフィールド。で、随分なリアクションじゃない、WA2000」

 

二人とも、白いシャツにブラウンのエプロンとバンダナといった装いが良く似合っている。指揮官も非常に気に入っているらしく、ラインがくっきり映えるパンツスタイルは直々に土下座して頼んだとか。苦笑いしながら渋々といった様子で承諾する彼女の姿が目に浮かぶ。

 

日中はカフェ、日が暮れればバーに変わるここは基地職員達の憩いの場。人間の一般社員から性別年代問わず人気が高い。食堂より少々値が張るも、落ち着いた内装や音楽、美女が美味しい料理や酒を振舞う事から根強いファンが一定数いる。主にスプリングフィールドに。

 

因みにオフの指揮官から、ここに居る間は“すーちゃん”“わーちゃん”と愛を込めて呼ばれている。

 

「わーちゃん。ランチセット。ひ、と、つ」

「くっ……か、かしこまりました」

「うふふ」

 

悔しそうな表情でオーダーのメモをとるWA2000。別に私達の仲が悪いわけではない、ただ恥ずかしがっているだけだ。多少は副官の日が減った怨みも籠っているかもしれないけど、大部分はこうやって揶揄うからだろう。だって可愛い。

 

彼女は一〇〇式、UMP45、416に次ぐ四体目の誓約人形だ。人前で指輪を見ては周囲を悶絶させている人形その一。

 

「今日は指揮官と一緒ではないのですか?」

「ええ。ちょっと、野暮用を頼まれて」

「大丈夫かしら…」

「大丈夫よ、45が暇そうにしてたから。ちょっかいかけに行ってるだろうし」

 

この基地では副官が昼食を用意するのが決まりになっている。あの指揮官は放っておくとお腹が減ってないからとか、仕事が片付かないとか言い訳をしてお昼を抜くのだ。そして食堂が閉まった頃にお腹を空かせてコーヒーで誤魔化すか、非常食の賞味期限が切れないように回転させてると変な言い訳をし適当に済ませて一〇〇式に叱られるまでがテンプレである。

 

昼食のオーダーはその日の気分。基本的には食堂で、カフェの営業日と気分が乗ればカフェ。稀に作ってくれと言われることも。

 

あれだけ言われても治らないので、これも部下の務めと割り切って副官の業務になったのだ。

 

「そういえば小耳に挟んだのだけど」

「?」

「先日の大規模作戦――」

「おまたせ。ランチセットよ」

「あ、ああ。ありがとう」

 

スプリングフィールドから聞き逃せないワードが飛び出てきたかと思えば、示し合わせたかのようにWA2000が注文していたランチセットを私の前にそっと提供してくれた。続きを聞かなければと思う反面、耳の痛い話になるかもしれないという怖気が混じって複雑な心境になる。

 

が、すっかり忘れていた空腹感が存在を主張し始め、食欲に負けた私はそれを後回しにして眼前の昼餉に集中することにした。

 

ランチセットは日替わりで、週に三回決まった曜日に納品される食料品でメニューがコロコロ変わる。カフェは指揮官の趣味とスプリングフィールドの道楽が行き過ぎた結果なので、その為にわざわざ食料品を融通してもらえるわけではないらしく、食堂でも使い切れないあまり(・・・)を頂いて調理しているんだとか。

 

今日はBLTホットサンドとスクランブルエッグ、チキンスープだ。

 

「……おいしい」

「えへへ」

 

感嘆が漏れてしまう程、文句のつけようがない上質な味。WA2000は私の挙動に神経を尖らせていたようだけど、偽りない称賛に気を良くしてにへらとほほ笑んでいる。

 

ホットサンドは絶妙な焼き加減で表面のサクサクと中のふんわりが口いっぱいに広がる。それに反してスクランブルエッグは一切の焦げ目が見受けられず黄金の様に輝いて、卵本来の風味を味わえるのだ。食前で飲み干すには惜しいスープもまた格別。

 

最初、指揮官に手料理を作るのだと息巻いてダークマターを量産していたあのツンデレライフルと同一人物とは思えない成長ぶりに涙がこぼれそうになる。人形でも成長できるのだと、彼女は身をもって教えてくれた。

 

人間からすれば少なめだろうが、人形にとっては十分。食材の質とシェフの腕前あってこそなのだが。

 

「ごちそうさまでした」

 

そんなにがつがつと食べる方じゃないけれど、今日はぺろりと頂いてしまった。ちょっと恥ずかしい。

 

スプリングフィールドが空いた皿を下げて奥に引っ込み、WA2000からサービスで貰ったコーヒーの香りを満喫していると、「そういえば」とつい先ほどきいた事のある言葉を聞かされた。

 

「あんた、聞き込みしてるんだって? 今朝から五回は聞かされたわよ。確か…みんなが貰って喜ぶもの、だっけ」

「え、ええ。ちょっと指揮官から頼まれて野暮用が」

「ふぅん。ま、深くは聞かないけどあんまり騒がしい事はゴメンだからね。あと、夜遅くなるのも却下だから」

「はいはい。昨日からはWA2000の日なんでしょ」

 

まったく、私の気も知らないで。こっちはその“わたしの日”が欲しくてこんなにも走り回っているというのに。私だって指揮官と同じベッドで眠りたいわ。

 

そしてこういう話が始まると、だいたいWA2000はのろけにしか聞こえない愚痴を漏らすか、盛大なのろけを始めるかに分かれる。そういうところ含めてこの話題が始まるとちょっとウンザリしてしまうのも、無理からぬ事だろうか。

 

半ば諦めて相槌を打つだけの人形に変身しかけたところで、二人目の客が現れた。

 

「あ、AR-15だ!」

「SOPⅡ?」

 

ベルを鳴らして隣に腰掛けたのは末妹。AR-15がすするコーヒーを見て露骨に顔を顰めると「ホットミルク!」と元気よくオーダー。トリップして帰ってこないWA2000に代わってスプリングフィールドがキッチンへ引っ込んだ。

 

「聞いたよ、この後祝勝会するんだって? どんなご飯が食べられるかなぁ…!」

「……は?」

 

祝勝会のしの字にも覚えのないAR-15は訳が分からないといった様子で眉を顰めた。祝勝会まがいを企画しなければならないのだろうかとは頭の隅で考えていたが、実際にそれを誰かに放したりはしていない。ましてや今日この後だなんて。

 

「誰から聞いたわけ?」

「P7」

「ブチっ殺してやる」

「わー待った待った!」

 

どうやら頭を粉砕されかけただけでは懲りてないらしい。いよいよその身に刻んでやらねばなるまい、と決意した

AR-15を身体を張ってSOPMODⅡが止めにかかる。文字通り身体にしがみついて。機械部分がAR-15よりも多いSOPMODⅡは当然ながら重たく、AR-15は着席を余儀なくされた。

 

全く成果が得られない中、なんとか気を持ちなおそうと訪れたカフェ。美味しいランチに舌鼓を打ってさぁやるかと気合を入れなおそうとした完璧なタイミングを見計らった嫌がらせ、としか思えないほど。そのいやらしさっぷりはベテランの域だ。

 

虫の居所の悪いAR-15はぎろりとSOPMODⅡを睨みつける。冷や汗をかきながらもSOPMODⅡはにこにこと話し出した。

 

「一〇〇式の好きなものを朝聞いてきたけど、あれ絡みなんでしょ? だったらのっかっちゃえばいいじゃん」

「……なんでよ」

「あるものを使って気にせずパーッとやっちゃいなよ。みんなが乗り気で楽しんでたら、流石の一〇〇式も文句は言えないでしょ?」

「……はぁ。うん、そう…そうね」

 

結局そうなるのか、いったい自分が走り回った数時間の苦労はなんだったのか。すっかり口癖となったため息をついて肩を落とす。誰に聞いても同じような答えしか返ってこない時点で、こうなることは既に確定事項だったかもしれない。その上、どこぞのガキに色々と持っていかれたとあっては、虚無感が果てしなく降り積もるばかりだ。

 

何がしたかったんだろうか、と朝からこの瞬間までの疲労が記憶とともにどっかと肩にのしかかった。

 

「……あ」

 

と、同時に天啓が下る。

 

『そんなに難しく考える必要はないわ。誰だって喜ぶものでも用意してみれば?』

『偶には里帰りでもさせてやれ』

 

きっかけとなったのは、頼りになりそうで頼りにならなかった人形の言葉。その二つと、SOPⅡとP7が運んできた祝勝会という場。それらが噛み合って弾かれた一つのアイデアは、今までの苦労を吹き飛ばすには十分すぎるほど、一〇〇式を縦に頷かせる自信があるものだった。

 

そうと決まれば準備しなければ。

 

「SOPⅡ。開始時間は? 場所は食堂でしょ?」

「うん。確か……19時開始って言ってた」

「今が13時33分だから……よし」

 

善は急げ。カフェに備え付けてある内線の受話器を取ったAR-15は指揮官室へと繋いだ。

 

「指揮官? ちょっと用意してほしいものがあるの。……そう、朝の一〇〇式の件で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渦中の一〇〇式はと言うと、副官の任を強制的に一ヶ月解かれて暇を持て余していた彼女は、久しぶりに射撃訓練所に籠りきっていた。先の大規模作戦でも専ら副官として働いていたため、長いこと半身である銃を握っておらず、鈍った腕を矯正すべく、あるいは溜まりに溜まったストレスを発散すべくひたすら引き金を引いている。

 

一〇〇式には特に代替の任務は与えられておらず、日ごろの感謝を込めてと休暇扱いになっている。だからこそ一週間ずっとかじりついていられた。そのおかげ(?)で一〇〇式へのサプライズが成功するわけだが……。

 

「うぅぅ~~~~~~っ!!」

 

憎しみの籠った評判通りの鬼の形相が、うめき声をあげながらひたすら模擬ターゲット(Ver指揮官)の眉間へゴム弾を撃ち込んでいる。頭の中では、指揮官への怒りと呆れが半分、副官として頷かなければならないやるせなさ半分が占めていた。

 

仕方がない、仕方がないことなのだ。日頃から何かと地雷を踏む旦那様だが、今回ばかりは悪くない。自分が子供のように駄々をこねているだけ。此度で六回目だが、未だに慣れない。

 

気丈に振舞ったり真面目であれと自らを律している鬼の副官も、余所行きの仮面を剥げばこんなものだ。

 

「……もうこんな時間」

 

セットしていたタイマーが鳴る。時刻は19時。特にやる事などないが、射撃訓練所の利用時間は限られている。口酸っぱく時間を厳守しろと言っている自分が破るわけにもいかないので、早々に片付けて鍵を閉めた。

 

人形は汗をかかない。が、激しく動いた後は何となくシャワーを浴びたくなる……様になった。指揮官の影響だ。美容に興味は無いし汚れが落ちる感覚もイマイチだが、湯上りのさっぱり感は嫌いじゃない。

 

シャワーを浴びて食事にしよう、その後は久しぶりに借りた漫画でも読んでみようか。

 

就寝までの予定を埋めた一〇〇式は、そうと決まればと足早になる。

 

「あーー! いたいた!」

「もー探したよ一〇〇式」

「スコーピオンとP7?」

 

早速足を止めることになった。特別珍しい組み合わせではない、自分を探している点を除いては。

 

走って駆け寄ってくる二人を睨みつけると、慌てて早歩きでサクサクと近づいてくる。最初からそうしなさい、とはもう言わない。

 

「ね、この後予定ある?」

「シャワー浴びてご飯だけど」

「じゃあ先にご飯ね!」

「ちょ、ちょっと」

 

ぐいぐいと両方から袖を引っ張られては抵抗も出来ない。はっきり理由も口にしないが、いつものような悪戯を企んでいるわけでは無さそうなので、諦めて任せる事にした。ご飯、というくらいだし行先は食堂だろう。順番が入れ替わるだけだし。

 

そこが近づくにつれて、なにやら騒がしくなってきた。この時間は賑わっているがこれはいくら何でも騒ぎすぎじゃないだろうか? 

 

……ドアを開けると、そこは宴会場だった。

 

「今日こそケリをつけようじゃねえか、M16」

「ははっ、上等だAK-47! 先に潰れた方が負けだぞ?」

「そ、そろそろ止めた方が……」

「ほっときなさいM4」

「あっはっは! これでアンタの連勝もストップよSVD! フォーカード!」

「全く、典型的なフラグを立ててくれるとは…君は最高だなWA2000」

「ろ、ろいやるすとれーとふらっしゅ……」

「一枚脱ぎたまえよ」

「このぉ…」

「紅茶は無いんですか?」

「あるわけないでしょ……」

「全く仕方がありませんね。ではスコーンを」

「紅茶が無いのにスコーンもクッキーもあるか!!」

「ふぅ、これだけ一ヶ所に集まると流石に暑いわね」

「416は厚着しすぎよ、もう少し薄着でもいいんじゃない?」

「貴女は色々とはだけ過ぎよ、PTRD」

「どうでもいいけど私を挟まないでくれる? 鼻へし折るわよ?」

 

違った、混沌(カオス)だった。

 

のんべえ達は酒瓶を次々と傾けては空にして、ポーカーで連敗を刻んでいるであろうWA2000は指揮官が見ている前でSVDにじわじわと脱がされて、ウェルロッドMkⅡが場違いにも紅茶を所望しては両断され、45がいつもの様に乳ハラを受けてハイライトを失っている。各々が思い思いに宴を満喫していた。

 

仕事を終えたスコーピオンとP7は何が起きているのか聞く暇も無く、そろって紛れ込み見失った。

 

棒立ちで唖然とする一〇〇式は思い返す。

 

おかしい。昨日まで、もといお昼までは普通の食堂だった。特に“祝勝会”なんてボードは掛かっていなかった(というか横線で消すんじゃなくて新しく書き直せ)。

 

この数時間で何が起きたのか……問いたださなければ。

 

探し人は器用に箸で焼き魚をつついてはおちょこを傾け、隣に座るAR-15は徳利で酌をしていた。

 

「指揮官!」

「おお、やっと主役が来たか。ほれ、グラス」

「あ、ありがとうございます……じゃなくて! 説明を要求します」

「この間の大規模作戦も無事終了したしな。あれは久しぶりに苦しい戦いだったろ、危うく仲間を亡くすんじゃないかとヒヤヒヤした。景気付けと無事を祝ってのことさ」

「だったら呪の書き間違えは消してください。あと、それが理由なら出撃してない私が主役というのは間違いです」

「こらこら」

「あうっ」

 

唐突なデコピンに危うく受け取ったグラスを溢しそうになる。赤くなっているであろう額を擦りながら指揮官を睨んだ。

 

先の作戦では自分は前線に出ず終始副官として後方に籠りきりだった。指揮官の言う通り苦しい戦いだからこそ、労うのは自分ではない。それこそ、仲間の為に自爆すら厭わない覚悟を持ったAR-15のような人形が相応しいはず。

 

「お前が気づいて進言してくれなかったら俺はAR-15を失う所だった。まぁ、コイツが変なこと考えたのが悪いんだが」

「ぐっ…」

「それに、カリーナじゃあ分からない前線視点の意見は重宝したよ。お陰で兵站は今までの作戦で一番充実していた。苦しかったのは鉄血が上手だったことと、AR-15の失踪だ」

「……ぐす」

「あの、流石にその辺りで止めてあげてください」

 

にやにやと意地悪な笑みを浮かべながら言葉のナイフをぐさぐさと突き立てる指揮官に、流石の私もストップに入ってしまった。AR-15が責められて当然と深く反省しているのは周知の事実なので問い詰めているわけではないが、彼女にとっては堪ったものではない。意外と気弱な彼女はちょっと虐めると反応が可愛いのでついやり過ぎてしまう気持ちはわかるけれども。

 

「さ、立ち話はもういいだろ。AR-15、一〇〇式の分を」

「はい」

 

一秒で立ち直ったAR-15は厨房へと引っ込んでいった。今更何を言おうが全員が出来上がっているのでどうしようもない。資源のやりくりが苦しいのは指揮官もAR-15も承知の上で会を開いたのだろうし、今の自分は副官ではないからと納得させて、指揮官の対面に座った。

 

にこりと笑った指揮官は箸を進める。焼き魚を箸で一口サイズに分けて大根おろしを盛り醤油を垂らす、一連の動作をいつの間にか凝視しており、指揮官が苦笑する。ちょっと恥ずかしい。

 

……和食か。

 

……和食?

 

「お待たせ」

 

AR-15が私の分を持ってきてくれた。盆にはつやつやと粒が立っているたきたてご飯、賽の目の豆腐とわかめの味噌汁、脂がのった丁度いい焼き加減のサバの塩焼き、小鉢にはほうれん草のお浸し、なんと漬物まで。

 

非の打ち所の無い、和食。

 

第三次世界大戦の折に故郷の日本は地図から姿を消した。正確にはちらほらと島が残っているのだが、核弾頭の撃ち合いで国土が削られ、海抜も上がり国と呼べるほどの領土と機能を失っている。生き残った人間が汚染から逃れた地区で細々と暮らしている程度で、経済もクソもない、秒読みの土地と化した。

 

それまでは世界的にも有名だった日本食も今では忘れ去られてしまっている。和食に欠かせない調味料である味噌や醤油など、製造する技術が失われたからだ。コーヒー豆やダイヤの宝石よりも希少価値があると言っても過言ではない。

 

つまり和食は地球から姿を消した。筈なのに。

 

感動のあまり言葉すら出てこない。だが身体は欲しているのがよくわかる。合掌し、いただきますと唱え、左手で茶碗を持ち箸で白米を口へ運ぶ。味噌汁を啜る。漬物を食む。

 

「美味しい?」

「………はいっ」

 

もう二度と味わう事は無いだろうと思っていた懐かしい味に、涙が止まらなかった。

 

「良かった。泣くほど喜んでもらえるなんて思ってなかったけど」

「これはAR-15が?」

「食材は指揮官が。後は私とスプリングフィールドで。ほら、元は民間用だから古いレシピもインストールしてあるのよ。こう見えてAR小隊のシェフなんだから」

「……やりますねぇ」

 

得意げなAR-15とは珍しい。だが何であれ感謝しかない。しかし、それもつかの間で彼女は申し訳なさそうにしゅんと縮こまってしまう。

 

「えっと……」

「この間の独断専行を誤りたいんだとさ。一番怒ったの、お前だったろ。それからまともに口もきいてないし」

 

ああ、そのことかと合点がいく。

 

確かそうだった。他の人形からも少なからず不満が上がっていたらしいが、それらを代表したつもりで激しく叱責した。仲間の事となると人一倍熱くなる……見境が無くなるという表現が正しいか。彼女なりの仲間を思った行動だったのだろうけど、それらを頭から全否定して正論でねじ伏せた。あまりにも言い過ぎて指揮官から窘められるぐらいには強く言い過ぎたと思う。

 

内心では嬉しかったし、羨ましかった。躊躇なく行動に移せた勇気を讃えたい。しかしそれとこれは別。結果的により部隊を危険に晒したし、誰一人掛ける事無く終えられたのは偶然で、ただの結果に過ぎないからだ。

 

それで手打ちにしたつもりだったけど、訓練所に籠りっきりで顔を合わせてなかったからそう思われていたのだろうか? だとしたら、申し訳ない。

 

「言いたいことは言いました。あれで全部ですし、あれで終いのつもりです。あと勘違いしているようですが、みんなAR-15の行動には称賛を送っています。それは素直に受け取ってください」

「だ、そうだぞ」

「でも……」

「AR-15。もう一回お説教されたい?」

「け、結構よ」

「よろしい。だって冷めてしまうし」

 

若干引き攣った顔だが、これでこの話は終わりだと踏ん切りをつけられたようで何より。次に同じことをしなければそれでいいのだ。頭のいい彼女なら心配しなくても良い。

 

どうやら私を待っていたらしく、自分の分を取りに行って戻ってきたAR-15は私を真似ていただきますと合掌。慣れない手つきで自らが用意した和食に舌鼓を打った。

 

彼女のサバが骨だけになった頃、他意は無かったんだろうけどAR-15は爆弾を投下した。デストロイヤー級のどでかい爆弾を。「落ち込んでたって聞いたのだけど、どうして?」と。

 

びくっと肩を震わせた指揮官を横目に、にやりと口角が吊り上がる。いつも迷惑をかけられてるのだ、偶には仕返しをしたって良いだろう。いや、いい筈。罰は当たらない。

 

「だって、指揮官が七体目の誓約人形を選んだって言うから……」

 

がやがやと騒がしかった会場がピタリと鎮まり、AR-15が放心するあまり右手の箸をこつんと落とす。その音で一斉に一部の人形が弾かれるように指揮官の元へ押しかけた。M16命名、指揮官大好きクラブの過激派だ。最も近い位置にいたAR-15はサブマシンガン顔負けの速度で机を飛び越えて指揮官を押し倒してマウントを取り、続々と他の人形も押し寄せる。

 

確実に言えるのは、我らが指揮官がハイライトを失った瞳と涎で覆い尽くされている事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恒例、と表現していいのか悩むところだが、現状の誓約人形六体は揃えたようにこう口にする。

 

「昨夜は激しかった」

 

と。

 

指揮官が誓約を宣言したその夜、なんと宿舎の個室を訪れてその場で誓約を交わすらしい。マニュアルではなくそれが指揮官のやり方なのだ。よく聞くのは人間の結婚式のように、ドレスを着て新婦の前で愛を誓うというあの場面なのだが……。

 

そして結婚初夜と言えば……まぁ分かるだろう。

 

なので、(AR-15)含む誓約を積極的に望んでいる人形は目いっぱいおめかしをして、今か今かと来るかどうかも分からない指揮官を待つのだ。

 

例に漏れず、私もその一人なので今回も頑張った。古参とはよく言ったもののAR小隊は厳密には司令部所属。特に命令が無ければこの基地で一戦術人形として作戦に組み込まれるが、留守にすることもしばしば。同時期に基地へやってきた人形達と比べて指揮官と過ごした時間は圧倒的に短い。WA2000がいい例か。

 

最も新しい誓約は特殊な子だったので、全体へ昼の内から公表していた。今晩の結婚初夜待ちは久しぶりである。何度も鏡を見てはおかしなところが無いかチェックし、部屋のレイアウトを見直すのも何度目か。M4以外の妹たちに背中を押されるのも、今日で終いにしたい。

 

時計の針は22時を指す。消灯だ。

 

先人からもらったアドバイス通り、アロマを焚いてその時を待つ。指揮官が好きな香りらしい。一〇〇式と45が情報源だ。45はちょっと怪しいところがあるが、指揮官絡みになると嘘はつかないし一〇〇式の口添えもある。

 

アロマに身を包まれながら、その時をひたすら待った。

 

なぜ二人がそうアドバイスしたのかも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官、AR-15はぐっすり眠っています」

「おっけ」

「行ってらっしゃい。……毎回思うけど、浮気の背中を押される気持ちってどうなの?」

「浮気ってのは愛情がそっくりそのまま移る事だ。でも俺は全員に愛情を注いでいるので浮気ではない。ただの重婚だ。そもそも本社が誓約証を販売している時点で重婚を推奨しているからな? つまり俺はグリフィンにとって模範的な指揮官ってことだ。もっと旦那を誇り思いたまえよ」

「はいはい。蔑ろにせず愛してくれるならそれでいいわ」

「ですね」

「それより、彼女大丈夫なんでしょうね? 指揮官の秘密、打ち明けるに足るのかしら?」

「45は不安か?」

「AR小隊は司令部直轄だもの。もしバレてしまったら、怖いわ」

「それこそ大丈夫さ。なぁ、一〇〇式」

「はい」

 




AR小隊だったら彼女が一番好きだ。だからストーリーを終えた瞬間に泣き崩れたね。

ていうか、今度は一〇〇式メインのつもりだったのに、いったいいつ主役が交代したのか

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