捻くれた少年と海色に輝く少女達 Guilty Kiss編 作:ローリング・ビートル
ファーストライブも終わり、いよいよ本格的に活動が始まる私達は、空いた時間を使って、部室の掃除をしていた。
「はぁ~、やっと終わったよ~」
「あはは、お疲れ様」
「ほらほら、掃除終わったからって寝転がらないの。早く片付けて帰るわよ」
「そだね。今日は私も水泳部の練習あるし」
「は~い」
普段はこんな感じなんだけど、ステージだと頼りになるのよね。
すると、千歌ちゃんはこちらを見て、口を開いた。
「梨子ちゃんは今日はデート?」
「ぶふぉあっ!!げほっ!げほっ!」
「ど、どうしたの梨子ちゃん!?」
曜ちゃんが背中をさすってくれる。ありがたいけど、力強すぎませんかね?
「いえ、別に……彼の事を思うあまりむせただけだから」
「そうなの?何て言うか、ウソついてる人がギクッとしてむせたみたいな感じだったから」
「…………!」
この子、わざとやってるんじゃないかしら。ニアピンどころかホールインワンよ。
何とか気を取り直した私は、なるべく大人びた笑顔と優雅な仕草を心がけて、彼女達に向き直った。
「ほら、うちの彼氏、今年受験があるから。あんまり遊んでばかりもいられないの」
「そうなんだぁ。やっばり梨子ちゃんの彼氏だから頭いいんだろうなぁ」
「そ、そうねぇ……まあ、うん」
「あれ、梨子ちゃん大丈夫?なんか汗かいてるけど」
「大丈夫大丈夫大丈夫。ほら、りっこりっこり~」
「「…………」」
あ、滑った。
「うわ……」と顔に書いてる感じ。やだ、めっちゃ恥ずかしい。
とにかく!今度あの人に詳しいことを聞いておかなくてはならない。
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「ふぅ……どっと疲れたわ……」
『りっこりっこり~』は可愛いと思うんだけどなぁ。そもそもやってる私が美人なわけだし……。
帰ったらゆっくりピアノでも弾いて、気持ちを落ち着かせよう。
「って、私ったらいつの間にかこんな所まで……」
気がつけば、だいぶ長い距離を歩いていたみたいだ。
そういえば、この辺りに図書館があったわね。たまには寄ってみようかな。
ひとまず足を踏み入れてみると、中はそこそこ人がいた。それでいて静寂が保たれているのだから、図書館ってやはり独特な空間だと思う。
さて、何か借りようかな。それともここで読もうかな……ん?あれは……。
視界の片隅に、見覚えのある人物がいたので、ついそちらに足が向かう。
なるべく近づいて、もう一度確認してみると、やはり比企谷さんだ。どうやら図書館で勉強しているらしい。
ふむ……こうして見ると、イケメンっぽく見えなくもないというか……目つきはあれだけど……って、私ったら何やってんのかしら。いや、これもボーイフレンド(仮)の生態を知るには必要なことよね。ふむ……。
「あの……どうかされましたか?」
「はっ!い、いえ、何でもありません!」
いきなり職員さんに声をかけられ、肩が跳ねる。そ、そんなに怪しかったかしら?
さらに、近くに置いてあった脚立を蹴り倒してしまう。
ガシャンっと静寂な空間に罅をいれるように、大きな音が響いた。
同時に数多の視線がこちらに向く。あ、気まずい。申し訳ない。
「す、すいません!」
慌てて脚立を立て直し、職員さんに頭を下げる。ていうか、この声も大きいし、あーもう何やってるんだろう、私……。
「お前、何やってんの?」
「……別に」
「……あっそ。じゃあな」
「あ~!ひ、一人で行かないでくださいよ~!」
*******
「ふぅ……」
「いや、何黄昏てリセットしてんの?全然できてないからね。むしろ俺も巻き込まれて、しばらく行きづらいわ」
「それはさておき、比企谷さんの得意科目とか教えてくださいよ」
「え、何?何なの?唐突すぎて怖いんだけど……」
「はーい、怖くないですから吐きましょうね♪私のも教えますから♪」
「ええぇ……交換条件になってなさすぎるんだけど……」