捻くれた少年と海色に輝く少女達 Guilty Kiss編 作:ローリング・ビートル
「おはようございます」
「……なあ、当たり前のように朝っぱらから人の部屋にいるのやめてくんない?」
枕元で作り笑い浮かべてるもんだからマジでおっかねえわ。何だろう、本物の彼女みたいな真似やめてもらっていいですか?
「それで……何か用か?」
「せめて布団から出てきてから言いません?二度寝する気満々じゃないですか」
「だが断る」
「それは相手の要件を聞いてから言う言葉ですよ。まったくもう……」
「いや、絶対に面倒なやつだろ……」
「そんなわけないじゃないですか。あの……今から一緒出かけませんか?」
「…………」
ほら、面倒なやつじゃん。知ってた。
布団を被り、これ以上は何も聞かないというアピールをすると、外側から揺さぶられているのを感じた。
「とりあえず話を聞いてくださいよ~!絶対に損はさせませんから!」
「いや、損しても構わないからお断りします。これ以上関わると、さらなる泥沼にはまりそうな気がするんで」
「八幡、あまり梨子ちゃんを困らせちゃダメよ」
「…………」
目を向けると、ドアの隙間から母ちゃんが顔を覗かせていた。
何だ、このシチュエーション。まるでねぼすけな男子を起こしにきた健気な幼馴染みの女子みたいな、こいつに有利でしかない見られ方をしている。
「いえ、私が好きでやっていることですから。気にしないでください」
「…………」
見たかよ。この変わり身のはやさを。このお嬢様スタイルを1割くらい俺に向けて欲しい。いや、今さらやられても失笑ものかもしれんが。
まあ何はともあれ、このままこうしていても、母ちゃんや小町に何を言われるかわかったもんじゃない。そうなるともう手をつけられない。何なら桜内母の元へ逃げる所存だ。
俺は溜め息を吐き、観念して起きることにした。
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身支度を整えている間、桜内は部屋の隅っこで、漫画を読み耽っていた。何だ、この徐々に慣れてきた感じ。何ならそのうち普通に晩飯まで食っていきそう。
準備ができたので、彼女から話を聞き始めると、まあ予想していたような内容だった。
「……作曲のネタ作りにデート?」
「はい……こう、頭の中にはっきりとした情景が欲しいんですよね。せっかくファーストライブも成功したことだし」
「そっか。まあ、色々難しいだろうが、全力で応援するわ。じゃあな」
「またそうやって逃げようとする……一回デートしてくれるだけでいいですから!ね!?」
「いや、別に出かけるくらいならいいんだが……いいのか?」
「え?どういうことですか?」
「いや、何つーか……あれこれ言われるというか……これだと、その……本当に付き合ってるみたいな感じになるけど、大丈夫なのか?」
「え?……はっ!ま、まさか、このままさりげなく逢瀬を重ねて、本物の恋人になろうとしてますか!?ごめんなさい。ぶっちゃけそこそこ相性良さそうだし、一緒にいて気が楽ですけど、まだそういう気分ではないのでお断りします。ごめんなさい」
「……お前、千葉にあざとい身内か知り合いがいたりする?」
「いえ、いませんよ。どうしてですか?」
「……いや、別に」
案外アレをやる女子は日本中にいるのかもしれない。まあ、そういうことにしておこう。
こうして、なし崩しに桜内との外出が決定した。