捻くれた少年と海色に輝く少女達 Guilty Kiss編   作:ローリング・ビートル

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Your song #17

「へえ、こんなとこに楽器屋が……」

「ええ、ちょっと付き合ってください」

 

 店内に足を踏み入れると、BGMの穏やかな旋律が心地良い。

 楽器店に来たのは、昔ギターを買った時以来だろうか。

 久々すぎて、初めて来た時のような新鮮さに浸っていると、奥から若い女性店員さんがやってきた。

 

「あ、いらっしゃい」

「こんにちは……え?梨子ちゃん、もしかして彼氏?」

「違いまっ……あはは、そうなんですよ~」

「…………」

 

 おい、デート中とかいう設定はどうした。楽器屋で浮かれてすっかり忘れてただろ。いや、そのまま忘れてくれても構わないんだが。

 すると、桜内はいきなり腕を組んできた。

 

「っ!?」

「わ、私達ラブラブで~」

 

 だからいちいちオーバーなんだよ。自分から墓穴掘りやがって。真性のMなんですかね……あとさっきから当たってるんだが……。

 

「あらあら、見せつけてくれちゃって。今日は彼氏とどんな用事かしら?」

「あはは、五線譜を買いに来たんですけど、彼氏がどうしてもって言うから~」

「へえ、じゃあついでに一曲聴かせてくれない?」

「もちろんです」

 

 桜内はゆっくりと椅子に座ると、慣れた手つきでピアノを弾き始めた。

 店内を優しい旋律が包み込み、他の楽器を見ていた客の視線も自然と桜内に集まる。

 俺もその旋律を頭の中で追っていた。

 タイトルは知らないが、どこかで聴いたことのある曲だが、彼女の手によって、これまで聴いたものとは違った響きで耳に届けられる。

 やがて音楽が鳴り止むと、数秒の静寂の後、ぱらぱらと控えめな拍手が聞こえてきた。

 桜内は頬を赤らめながら、ぺこりと頭を下げ、こちらに駆け寄ってくる。

 

「な、なんか恥ずかしい……」

「いや、すごかった。お前ずっとピアノ弾いてりゃいいのにな……」

「あはは、それほどでも……あれ、今さらっとディスられませんでした?」

「つーか、五線譜買いに来たんじゃないのか?」

「誤魔化してる気が……まあいいか、買ってきます」

 

 ……セーフ。

 いや、まあ……ピアノ弾いてる時は、本当にすごいと思ってるんだが。

 それを本人に言うと、変なテンションになり、ウザそうなので言わないけど。

 

 ********

 

「ふぅ……たまに設定を忘れそうになっちゃうのがこわいですね」

「え?お前、俺の事本当に好きになったの?」

「はぁ!!?そんなわけないじゃないですか!」

「お、おう……」

 

 めっちゃ否定されたが、今のは俺が悪かった。自重しよう。

 すると、桜内がいきなり距離を詰め、耳元で囁いた。

 

「本当はそっちが好きになってるんじゃないですか?」

「いや、それはない」

「ちょっ、そこは照れるとこじゃないんですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

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