捻くれた少年と海色に輝く少女達 Guilty Kiss編 作:ローリング・ビートル
l Really Like You
転校初日、特に可もなく不可もなくのスタートだった。まあ、3年になったら、皆受験勉強やら何やらで、転校生など一々気にしていられないだろう。
現在時刻は正午を過ぎているとはいえ、まだ腹は減っていない。
とりあえず、この前見つけた本屋にでも……。
ふと目を向けた先、向かいの歩道を歩く誰かに、視線を縫い付けられる。
「ふぅ……この道も2年ぶりデスネ」
「…………」
春風にさらさら揺れる金髪。甘めのトーンが印象的な片言の呟き。この街の海のように透きとおった金色の瞳。白いワンピースから伸びる長い脚。
そこで、唐突にふわりと風が吹き、彼女の白いつば広帽を攫っていった。
そして、その帽子は俺の元へと飛んでくる。
胸元にふわりと飛び込んできたそいつを受け止め、こちらに駆け寄ってきた彼女に手渡す。
「サンキュー♪助かりマシタ」
片言の日本語がやけに心地良く響くのは、そのハキハキした明るい声のトーンのせいだろうか。去年の今頃の俺なら、そのまま回れ右して何事もなかったかのように去っているところだが、何故かその場に縫いつけられたように、立ち止まり、彼女の金色の瞳を見て……いや、つい見とれていた。
「どうかしマシタか?」
「え?あ、いや……」
キョトンと首を傾げる彼女に慌てて目を逸らす。
そのまま早足で立ち去……
「ちょっと待ってクダサイ」
「……な、何でしょうか?」
え、何?いきなり肩を掴まれたんだけど。逆ナン?
「アナタも財布、落としてますよ?」
「え?あ、ああ、悪い……」
頭を下げ、財布を受けとる。危ない危ない。ていうか意識しすぎだ、俺。だからただの偶然にいちいち意味を見出すなとあれほど……。
「あ、お兄ちゃ~ん!」
聞き覚えのあるとても可愛らしい声が聞こえてくる。振り向くと、天使……じゃない、小町だ。一瞬天使の羽が見えてしまった。
「お兄ちゃん、どしたの?ぼーっとして……」
「え?ああ、今……あれ、いない?」
さっきまで金髪の少女がいた場所には、もう誰もいなかった。
「えっ、何?お兄ちゃん、幽霊でも見たの?」
「いや、んなわけねえだろ。いや、本当に怖いからやめて?」
俺は手にした財布をもう一度強く握りしめ、さっきの出来事を思い返す。
それは間違いなく現実に起こった事だ。
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「鞠莉お嬢様。何かいいことでも?随分ご機嫌なようですが?」
「そうカシラ?ふふっ、アイリから見てそう見えるのならそうでしょうネ。それに……」
「これからもっと良いことが起きる……いえ、起こすんだから!」