捻くれた少年と海色に輝く少女達 Guilty Kiss編 作:ローリング・ビートル
Your song
「りっこりっこり~♪あなたのハートにりこりこり~♪笑顔届ける桜内りこりこ♪皆だいすき~……りこっ♪」
「…………」
「……リアクションしてくださいよ。一応彼氏なんですから」
「いや、それとこれとは別だし……てか何やってんだよ」
「か、可愛いアイドルの練習です!スクールアイドルですので!」
「……そうか」
「そうです」
「…………」
「…………」
桜内は頬を赤く染め、気まずそうに目を伏せる。そこまで恥ずかしがるならやらなきゃいいのに……。
それにしても……一応、彼氏か。
……何故こうなってしまったのか。
*******
転校初日。
当たり障りのない挨拶を済ませ、背景に溶け込んだような静かな時間を過ごした俺は、何となく砂浜に足を運んでいた。
この前の高海達とのスキューバダイビングで、割と海が好きになったのかもしれない。まったくの無人というわけではないが、ぼんやり考え事をするのにも向いてそうだ。
ざらざらした砂浜に腰を下ろし、静かにたゆたう海を眺めていると、特に意識していなくても、千葉でのあれこれを思い出してしまう。
……今頃何してるのだろうか。
そんなことを考えていると、背後からじゃりっ、じゃりっ、と砂を踏みしめる音が聞こえてきた。
振り向くと、一人の制服姿の少女がそこにいた。
赤みがかった髪が風に揺らめき、その端正な顔立ちも相まって、何だか小説の中の登場人物が、そのまま抜け出てきたかのような気分になる。
その少女は、波打ち際まで一歩一歩ゆっくり歩き…………こけた。
そりゃもう豪快に顔から海面に突っ込んだ。
水しぶきが上がり、それと同時に俺は自然と駆け出していた。
しかし、彼女はすぐに立ち上がる。
そして俺と目が合った。
「「…………」」
しばらく無言で見つめ合う。というより、目が離せなかっただけだが。
しかし、彼女の視線が何を訴えようとしているのかは理解できた。
『見たわね』
うん。俺のせいじゃないけど、ただひたすら気まずい。
とりあえず顔を背け、進路を変え、何事もなかったかのように振る舞い、そっと砂浜をあとにする。
これが俺と桜内梨子の初めての出会いだった。
*******
「は、恥ずかしい……何であそこで転ぶのよ……ちょっと海の音を聴こうと思っただけなのに……」
私は溜め息を吐き、一人ぼっちの砂浜に腰を下ろす。
さっきの人はもういない。何だか悪いことしちゃったかも。
すると、春の風が優しく頬を撫でていき、慰めてくれている気がした
「ふぅ…………くちゅっ」
やっぱりまだ寒いわね……風邪引かない内に早く帰ろ。