捻くれた少年と海色に輝く少女達 Guilty Kiss編 作:ローリング・ビートル
新学期が始まってから数日。当たり障りのない静かな日々は、受験勉強をするのには最適だった。何ならこのまま高校卒業した後は専業主夫として当たり障りのない日々を送りたいものである。無理か。いや、決めつけはなしだよっ!
今日は休日ということもあり、本屋に行くことにしたのだが、せっかくだから普段とは違う道を通ってみようということになり、海沿いの道をのんびり自転車で走っていたのだが、視界にダイビングショップが入る。
……どうやら知らぬ間にいつか来た道を通っていたようだ。
そのまま通り過ぎようとすると、店から見覚えのある金髪が出てきた。
あれは……確かこの前の……。
とはいえ、話しかけるような知り合いでもないし、向こうも気づいていないようなので、見なかったことにしていると、彼女はいきなり視線を俺に向け、ぐっとにこやかにサムズアップしてみせた。
俺は自転車を止め、何故かドヤ顔気味の金色の瞳と見つめ合う。
いや、意味は何となくわかるんだが……。
とりあえず軽くサムズアップして、彼女をやり過ごすことに……
「ストップ!!」
やっぱり簡単には逃げられないようだ。
そして、ストンっと何かが荷台に乗っかる感覚がした。
「…………」
「チャオ♪」
振り返ると、荷台には金髪お嬢様が乗っていて、にっこり笑顔を見せた。
「……あ、あの……」
「ふふっ、途中まででいいから乗せてくれない?」
いや、もう乗ってんじゃねえか。
本来その席に乗せるのは小町だけなのだが、ここで説得をしても時間の無駄になりそうなので、俺は再び自転車を走らせることにした。
*******
「いきなりごめんね?本当は歩いて帰るつもりだったんだけど、ちょうどアナタが通りかかったから」
「……そうですか」
「ふぅ……やっぱり内浦の風は気持ちいいデス……」
言葉の割に、その声の響きはどこか切なかった。
本来なら黙って目的地に運ぶだけで十分だが、背後で白けた空気になられては、せっかくの休日が台無しである。
なので珍しく自分から話を振ってみた。
「……ダイビング、しに来たんじゃないのか?」
「ええ。今日は親友に挨拶しに来ただけだから」
「松浦に?」
「あら、アナタ……果南の知り合い?」
「いや、知り合いっつーか……この前ダイビングショップ利用した時、少し話したくらいだが……」
「そう……」
あれ?声のトーンが沈んだ……どうやら、話題のチョイスを間違えてしまったようだ。慣れないことはするべきじゃない。
俺は気を取り直し、しばらく無言のまま自転車を漕いだ。
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商店街に到着すると、彼女は俺の肩をぽんぽんと叩いた。
「ここでダイジョウブデェス♪」
「……わかった」
ゆっくり減速し、商店街の入り口の近くで止めると、彼女はストンと自転車から降りた。
そして、こちらに先程の憂いを拭い去るような華やかな笑みを向けてくる。
「あー、ラクチンデシタ!サンキュー♪いい気晴らしになったわ」
「そっか、そりゃよかったな。じゃあ……」
「あっ、あなたの名前、聞いてイイ?」
「えっ?あー……比企谷八幡だ」
「八幡……ワオ!ユニークな名前ね♪」
「ほっとけ。てか、人に名前を尋ねる時は自分からって教わらなかったのかよ」
「Oh、ソーリー。そうでしたね……」
彼女は申し訳なさそうにペロッと舌を出す。その赤さに何故か胸の鼓動が高鳴った。
微かに色香を振り撒き、鮮やかな金髪を春風に靡かせながら、彼女は自分の名前を口にした。
「私の名前は小原鞠莉。気軽にマリーって呼んでね♪」