捻くれた少年と海色に輝く少女達 Guilty Kiss編   作:ローリング・ビートル

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I Really Like You #5

「ふぅ……時差ボケはもう治ったけど、あれこれ手続きが大変ですネェ」

「そうか……」

「むむっ、これが日本のオタクカルチャー……八幡、結構好きなの?」

「まあ、そうだな」

「あ、とってもプリティな猫デスネ~。ほら、おいで♪あっ、逃げられちゃった~」

「おい」

「なぁに?」

「どうしてお前が朝っぱらからここにいるんだよ」

 

 そう、30分前に小原はいきなりウチにやってきた。

 いきなりすぎて、『突撃!となりの朝ごはん』が始まったかと思ったくらいだ。

 しかも、彼女の華やかな容姿に、親父も母ちゃんもしばらく口をぱくぱくさせ、俺に意味ありげか視線をよこしてから出かけてしまった。

 小町もそれについていったので、今我が家には俺と小原とカマクラしかいない。てか、小町の奴はまだ小原が理事長に就任するのを知らないようだった。驚くだろうなぁ。

 ちなみに当の彼女は、足をだらんと伸ばして座り、何やら残念そうな顔をしていた。

 

「だってぇ~、せっかくのオフなのに、果南もダイヤも忙しくて相手してくれないからデース!」

「……そっか」

「それで暇そうにしてる君のところに来たってわけ」

「暇ではないんだが……」

「あ、勉強中?……ワオ!八幡、三年生だったの?」

「あー、そういやお互いに年言ってなかったっけ?」

「ふふっ、まあ何となく同い年とは思ってたけど」

「……そっか」

 

 だが今はそんなことより、この距離感を何とかして欲しい。こいつ、無駄に近すぎだろ。

 ふわりと鼻腔をくすぐる甘い香りや陶器のように滑らかな白い頬。そして、当たるか当たらないかの位置にある豊満な膨らみ。あらゆるものが理性を揺さぶり、気持ちを落ち着かなくさせてくる。

 すると、こっちの心情を知ってか知らずか、小原は耳元に唇を寄せ、そっと言葉を吹き込んできた。

 

「八幡は進路、どうするの?」

「……大学進学。てか、何故小声?」

「だって、デリケートな話題じゃない?」

「別に今家に俺達しかいないから気にしなくていいっての」

 

 俺の言葉に頷くように、小原は離れ、部屋の中をキョロキョロ見回した。べ、別に名残惜しいなんて思ってないんだからね!

 彼女は何故か一人で納得したように頷いている。

 

「ふぅん」

「どした?」

「男の子の部屋って初めて入るから。なんか不思議デース」

「……っ!」

 

 なんでそんなデリケートな情報ばらしちゃうの?イミワカンナイ。

 小原はこちらを見て首を傾げているが、首を傾げたいのはこちらである。

 

「どうかしたの?」

「……いや、別に」

「そう?ねえ、八幡。この前私が言った事覚えてる?」

「……………………ああ」

「そ、それ、覚えてないリアクションじゃん!も~、やりたい事があるって言ったでショウ!?」

「…………そういや言ってたな」

「その事なんだけど、ちょっと予定より遅れそうデース。本当はもっとスムーズにできると思ってたんだけど」

「そっか。まあ何やるかはわからんが……」

「色々難しくって……よしっ!八幡、海行かない?」

「……は?」

 

 *******

 

「シャイニ~!!」

「…………」

 

 両腕を広げ、陽の光を全身で受け止める小原を、歩道を歩く子供が不思議そうな目で見て、通り過ぎていった。

 うわあ……他人のふりしたい。

 

「あれ?八幡はやらないの?」

「やらねえよ。てかその掛け声なんだよ」

 

 光合成でもしてんのかと、ついツッコミたくなる。

 俺の問いかけに、彼女は何故か得意気な笑顔を見せた。

 

「だってこんなに晴れてるんだもの。このくらい叫ばないと失礼というものデース」

「そ、そうか……」

 

 うん。わけわからん。

 まだこいつだから絵になる部分はあるが、俺が同じ事をすれば変質者扱いされるだろう。

 戸塚ならもちろん余裕で許せる。

 材木座……………………ちっ。

 想像だけなのにイラッとしてしまった。つーか何故想像した?馬鹿じゃねーの。

 

「ふむ、まだ泳ぐには寒そうデスネ」

「そりゃあ、まあ……4月だし」

「じゃあ、追いかけっこでもする?」

「いや、しないから」

「それじゃあ、かけっこは?」

「いや、しないから。てか、それさっきとあんま変わってねえだろ」

「もうっ、八幡はワガママデース!」

「貴方達、何してますの?」

 

 突然背後から届いた声。

 小原と同時に振り向くと、そこには長い黒髪を風に靡かせた黒澤ダイヤがいた。

 

 

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