捻くれた少年と海色に輝く少女達 Guilty Kiss編 作:ローリング・ビートル
出された紅茶に口をつけると、ほのかな甘みが口の中に広がる。
味は違うのに何故か奉仕部の部室を思い出してしまう。
はっきりと浮かぶ二人の姿に、つい首筋に手を当ててしまう。
紅茶を飲んだだけでこんなにも思い出してしまうとは⋯⋯いや、まだ思い出すなんて言うほどここに来て時間も経っていないからだろう。
「ハチマン、どうかしたの?顔が暗いデース」
「ん?ああ、これがデフォなんだよ」
「そう?見ようによってはかわいく見えなくもないけど」
小原は距離を詰め、こちらの瞳を覗き込んできた。
まるで宝石のような青い瞳に近距離で見つめられるとこちらも落ち着かなくなる。いや、青い瞳じゃなくても緊張するんだけどね。だって男の子なんだもん!
「ふふっ、もしかしてここに来る前の友達の事でも思い出してた?」
「…………」
言い当てられたことに眉がぴくりと動いてしまう。
それを肯定と受け取った彼女は髪をかき上げ、カップに口をつけた。
そしてそれをソーサーに置くと、普段と違うどこか寂しそうな笑みを見せた。
「私もそういう目をしていた時期があるもの。まあ、向こうにいた時だけどね」
「……そっか」
それだけしか口にできなかった。
あまり気軽に踏み込めるような話題ではないし、うまく聞いて気の利いた一言を返すような会話スキルも持ち合わせていない。
俺は少し冷めてきた紅茶を一気に飲み干し、立ち上がった。
「そろそろ帰るわ」
「ええ、もう乾いてると思うわ」
彼女が窓の外に向けた目は、海ではない何処か遠くを見つめていた。
********
「今日は色々付き合ってくれてありがとう。また付き合ってもらいマース」
「えっ、強制なの?」
「嫌なの?」
「……ま、まあ、時間がある時なら……テキトーに、そのうち……」
「さすがハチマン!」
あれ?普段ならこれで煙に巻くか、相手が察して諦めるんだが……ガチすぎる陽キャには通用しないということか。もしくはこの技は国境を越えられなかったということか。
俺は紅茶やその他諸々の礼を言い、その場を後にした。
********
帰り道、見覚えのある女子の姿を前方に見つけた。あれは……松浦か?
海を見つめて向こうが気づかなかければそのまま通り過ぎようとしていたら、向こうが偶然気づく。
「あっ、たしか……比企谷君だったよね」
「お、おう……」
「今から帰り?商店街でも言ってたの?」
「いや、そこから」
ここから見える小原邸を指さす。改めてさっきまであそこにいたのが嘘みたいに思える。
すると、松浦はすっと目を細めた。
「比企谷君、鞠莉と仲良いの?」