捻くれた少年と海色に輝く少女達 Guilty Kiss編   作:ローリング・ビートル

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Your song #4

「「あ」」

 

 二人して固まる。

 昨日の出来事があってから、その翌日に本屋帰りに遭遇するとは……思わず「不幸だ~!」と叫びたくなる。まあ、こいつはさすがにレールガンとか撃ってこないだろうけど。

 しかし、レールガンのように鋭い視線に射抜かれ、俺は足が震えるのを抑えながら、見なかったことにして、その場を去ることにする。

 あっちも同じ様に振る舞うかと思えば、そうでもなかった。

 

「どうして逃げるんですか?」

「…………」

 

 どうやら逃げることは許されないらしい。

 俺は溜め息と共に振り返り、彼女に向き直ると、その表情からは、ほんの少し気まずさが見てとれた。

 

「そんな無視しなくてもいいじゃないですか」

「……いや、逃げるだろ。普通に」

「べ、別に逃げなくてもいいじゃないですか。人を危険人物みたいに……」

「別に危険人物扱いはしてない。ただ怖いだけだ」

「それ、意味合いはそんなに変わりませんよね?」

「……確かに」

「否定しないんですね。まったくもう……別にあなたに危害を加える気はありません」

「そのセリフが既に怖いんだが……え、何?お前ヒットマンなの?」

「ち・が・い・ま・す!こんな可憐な乙女つかまえて、何言ってるんですか」

「自分で言うのかよ……まあ、いい。その袋の中の本、ぶちまけないように気をつけろよ」

「なっ!?何で中身を知ってるんですか!もしかして、ストーカー?」

「いや、違うから。ありえないから。じゃあな」

「ああ、はい。それじゃ……」

「あっ!桜内さ~ん!比企谷さ~ん!」

 

 いきなり聞こえてきた声の主はすぐにわかった。

 目を向けると、高海と渡辺と、知らない女子三人がすたすたと歩み寄ってきた。

 その姿を見た桜内は、肩をびくんと跳ねさせ、明らかに他所行きの笑顔を向ける。

 

「あら、どうかしたの?申し訳ないけど……私、スクールアイドル部には……」

「違うよ。せっかくだから一緒にお茶でもどうかなって?そういえば二人って仲良かったんだね?」

「「違う」」

「う、うん、なんかごめんなさい……」

 

 うっかりタイミングが被ったことに気恥ずかしさを感じていると、いきなり強い風が吹き荒れた。

 

「きゃっ!」

 

 その風にバサッとはためくスカートを手で押さえる桜内。言っておくが別に見ていたわけではない。たまたま視界に入っただけだ。俺は悪くない。

 そんな事より……

 

「あっ」

 

 桜内が何かに気づいたような声を上げる。

 どこかに破れかけた部分があったのか、なんと彼女の持っていた紙袋がビリビリに破れ、中身が地面にぶちまけられた。

 

「あ~~~~!!」

「だ、大丈夫!?」

「手伝うよ!」

「あっ、ちょっと待っ……」

 

 高海達が手を伸ばすのを止めようとするも、間に合わずに彼女達は迅速に拾い集めてしまう。

 そして、ピタリと固まった。

 

「これ……えっと……カベクイ?」

「普通のカベドンとアゴクイも……」

「ち、違うの!違うのよ!これは……」

 

 何というベタなオチ。

 高海は、しばらく気まずそうな顔をしていたが、すぐに笑顔を向けた。

 

「さ、桜内さん!スクールアイドルってすごいんだよ!だから……ね!」

 

 話題転換下手か!!どう考えても勧誘するタイミングじゃないだろうに……

 思わず心の中でツッコミを入れていると、渡辺がささっとまとめた本を桜内に手渡す。

 

「私、何も見てないから、うん」

 

 優しすぎる嘘松に、全俺が泣きそうになっていると、桜内はまだ言葉を並べていた。

 

「そう!これは作曲の為なのよ!曲作りっていうのはありとあらゆるものからインスピレーションを……」

「だ、大丈夫だよ!桜内さん!」

「私達、そういう偏見とかないから!」

「好きなものを好きと言える気持ち抱きしめていようよ!」

「ち、違……」

 

 桜内は顔を真っ赤にし、わたわたしている。助け船を出そうにも、このシチュエーションは初めてすぎて、どうしようもない。そもそも、ボッチ歴長すぎて、誰かに助け船を出すシチュエーションにほとんど遭遇した事がないんだが……。

 そこで彼女と目が合う。

 

「…………」

「…………」

 

 え?何でこっち見てんの?俺何もできませんよ?

 その意味ありげな視線に首を傾げると、何故か距離を詰められ…… 

 

「っ!」

「なっ……!?」

 

 いきなり桜内は俺の腕にしがみついてきた。

 そんな桜内の挙動に、周りの女子達も目を丸くしている。

 突然の甘い香りと柔らかな感触に、何がなんだかわからなくなっていると、彼女ははっきりと宣言する。

 

「本当に私、そういうのじゃないから!!だって私……この人と付き合ってるんだから!!!」

 

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