捻くれた少年と海色に輝く少女達 Guilty Kiss編   作:ローリング・ビートル

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Your song #5

 ……………………は?

 俺の頭上を疑問符が飛び交う。

 今、何て言った?

 桜内の発言の内容をもう一度反芻してみても、上手く理解できない。

 すると、高海が驚きと共に口を開いた。

 

「えぇ~~~~~~~!!?」

 

 彼女は俺と桜内を交互に見て、ただだだ目を丸くしている。どうやら俺と同じく、まだ現実を飲み込めてないみたいだ。ちなみに、他の四人はポカンとしたまま、何故か俺の方を見てくる。

 やがて、高海は桜内に詰め寄り、キラキラした瞳を向けた。一方、桜内のほうは気まずそうに唇をひくひくさせ、視線を逸らす。

 

「ねえねえ、いつから付き合ってるの!?まだ出会ったばかりだよね?」

「え、えーとぉ……そう!今さっきよっ」

 

 おい。

 

「そうなんだぁ、それで……ど、どっちから告白したの!?」

「えっ!?あー……」

 

 嘘のハリボテがあっさり剥がれ落ちようとしていると、渡辺が高海の肩に手を置き、ふるふると首を振った。

 

「千歌ちゃん。千歌ちゃんにはまだ早いんじゃないかな?」

 

 妹に諭すような渡辺の言葉に追従するように三人組も頷く。

 

「「「確かに」」」

「そ、そんなことないもん!私、もう高校2年だよ!」

 

 どんだけ子供扱いされてんだよ……。

 つーか、やばい。場の雰囲気に流されすぎてやばい。

 このままでは訳のわからん事情に巻き込まれ、面倒を抱えることになる。

 それだけは断固阻止しなければならない。

 

「……いや、俺は別に……」

「っ!!」

 

 口を挟もうとした瞬間、彼女はガバッと俺の腕をとった。

 突然の柔らかな感触に、危うく「おふぅ……」とか気持ち悪い声を漏らしそうになる。

 そして、ほぼ同時に太ももに痛みが走る。

 彼女はこっそりと太ももの裏をつねっていた。

 目をやると、至近距離から花が開いたような、美しい笑顔を向けてくる。そして、その棘もしっかりアピールしてきた。

 俺は、腕に絡みつく柔らかな温もりと太ももの痛みに、何ともいえない複雑な表情になりながらも、とりあえず抗議することにした。

 

「……おい」

「お願いします!話をあわせてくださいっ」

「どうかしたの?」

「な、何でもないのよ!今からどこに行こうか相談していただけ!ね、ダーリン♪」

「…………」

 

 今、めっちゃ鳥肌たったぞ。初対面の時からテンション変わりすぎて怖ぇ……!てか、何がダーリンだよ。実際に使う日本人いたのかよ……。

 桜内は、俺の沈黙を勝手に肯定と受け取り、高海達に手を振りながら歩みを進めた。

 

「じゃ、じゃあ、私達もう行くから!ごきげんよう!!」

「…………」

 

 よくわからないまま、彼女は俺をどこかへ連れていこうとしている。

 ……仕方ないから、ここはこいつに協力しておこう。

 そう。別に肘に押しつけられている何かのせいじゃない。絶対に違う。

 

 *******

 

「大変申し訳ございませんでした」

「……ああ」

 

 喫茶店にて、俺は彼女から頭を下げられている。店員の目は気になるが、今はそれどころではなかった。

 

「あの方法しか思いつかなくて……」

「そりゃあ、凄まじい思考回路だな。将来は発明家にでもなれそうだ」

「…………」

「まあ、とりあえず……後は知らんから、どうにか言い訳を……」

「ちょ、ちょっと待ってください!少しの間でいいですから……!」

「……いや、んな事言われても」

「こ、こんな可愛い子の彼氏になれるんですよ?形だけでも……!」

「…………」

 

 自分で言っちゃったよ……どうやら自分の容姿に関しては、雪ノ下ばりに自信があるらしい。

 ……まあ、確かに美人だと思う。

 だがそれとこれとは別である。

 

「じゃあな」

「ちょっと待ってください!」

「?」

「あ、あの手を使うしか……」

 

 何だ、次は何をやるつもりなんだ?

 急に身に纏う雰囲気を変え、しゅんと俯いた彼女は、制服の胸の辺りをきゅっと摘まみ、数秒経ってから、何かを放出するように顔を上げた。

 

「……お願ぁい……!」

「…………」

 

 居たたまれない空気が店内を支配し、店員さんにあまりに申し訳なかったので、俺は彼女を促し、喫茶店を出た。

 

 *******

 

 外に出ると、そろそろ陽が沈みきってしまいそうだった。

 空はうっすらとした赤色も消えかけ、夜の帳が降りかけている。トラブルに巻き込まれている内に、意外と時間が経っていたのか。

 彼女は半ば諦めたような表情で話しかけてきた。

 

「あの、それで……」

「……はあ。まあ別に……」

「っ!」

「まあ、フリだけなら別に……構わん」

 

 正直、もう断るのも面倒くさい。別にヤクザとマフィアを騙すわけでもないから特に危険も何もないし、たまに並んで歩くくらいなら、材木座の小説を読むよりもずっと楽だろう。

 俺の言葉を聞いた彼女は何故か神妙な顔をして頷き、俺の肩に白い小さな手を置いた。

 

「じゃあ、さっそく……ん」

「はっ?」

 

 頬に柔らかいものが触れる。

 

「っ……い、今……」

「う、う、嘘とはいえ恋人ですし?た、ただのお礼ですから!えっと……勘違いしないでくださいね!」

 

 彼女は耳まで真っ赤にして、そっぽを向いた。

 今、こいつ、何した……?

 

「…………」

「な、何か言ってくださいよ」

「い、いや、べ、別に……?」

「あぁ、もう!恥ずかしいじゃないですか!さよならっ!」

 

 彼女はいきなり駆け出し、すぐにその背中は見えなくなった。

 ……いや、恥ずかしいのはこっちなんだが……てか、あれ?え?

 今さらながら、頬にキスをされたという事実が頭の中を侵食していく。心臓がいつもより高鳴るのがはっきり自覚させられる。

 こうして、俺にガールフレンド(嘘)ができた。

 ……てか、何で……今の、する必要あったのか?

 

 *******

 

「あああああああああああああぁぁ~~~~~~~!!私ったら何やってるのよ~~バッカじゃないの!?バーカ、バーカ!!」

「り、梨子?……あの子、大丈夫かしら?」

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