ガンダムビルドダイバーズ ミーティア   作:ウーパールーパー

1 / 6
少年少女がガンプラ作る話。
次からは短くなります。



スタートダッシュ

「なんだ、コイツは……」

 龍襄(りゅうじょう)学園大学付属高校ガンプラバトル部。その部室。

 部員であるナガツキ・タクミが扉を開けて目にしたのは、窓側の日の当たる長椅子の上で女子生徒が猫の様に丸くなって寝ている様子だった。

「鍵はかけていたハズなんだが……」

 ガンプラバトル部と言いつつも、現在部員はタクミ一人のみ。部室のドアを開けたときに誰かが居るというのは本来ならあり得なかった。

 すわ、泥棒かと思いながら恐る恐る扉を開けたタクミは胸を撫で下ろす。この少女が泥棒と言うことはないだろう。

「と、なると……」

 この部屋の鍵を持っている人間は基本二人、タクミ本人と顧問の教師のみ。

「あり得るとしたら先生くらいか……」

 最早、形だけの顧問となっているが、入部希望とかなんとか言えば部屋の鍵を開けてくれるだろう。

「しかし、簡単に鍵を開けるのもこんな場所で眠りこけるのも無用心だと言えば無用心だな……」

 すぅすぅと規則正しい寝息をたてている少女の顔を見下ろし、そう呟く。

 だが確かに夏も過ぎ、柔らかい日の差し込む窓際の長椅子は小春日和の午後に昼寝するにはピッタリのシチュエーションと言えよう。タクミも授業中には船を漕ぎかけた。

 タクミは作業ブースの前の椅子に腰掛け、肩にかけていた鞄を作業台の上に置いた。部員がタクミだけだった為、長椅子はほとんど荷物置きになっている。もとより占領されたところで大した問題ではなかった。

 とは言え、この少女は何者なのか。制服はこの学校のモノだ。部外者では無いのは明らかだろう。

 身長はさほど高くなく、小柄に見える。制服を着ていなければ中学生、下手をすれば小学生扱いをされるかもしれない。一年生だろうか。

 髪型はフワッとしたショートカット。丸まって寝ているところからも小動物的な印象を受ける。スカートとソックスの間から覗く健康的な太腿は細く、しかしスレンダーというよりかは柔らかそうに見える。

「ん、ん……」

 少女が、そのぷにっとした柔らかそうな唇から寝息漏らす。

「ば、倍返しだぁーッ!」

 叫びと共に、ガバリと少女は上半身を起こす。

「あ」

 そして、どうしたものかと眺めていたタクミと目が合った。

「お、おはようございます……」

 寝言を聞かれたからか、少女の声は言葉尻になるにつれて小さくなっていった。

「えっと、入部希望者かな?」

「あ、はい、そんなところです!」

(そんなところ……か)

 入部希望者ではなく、タクミは少々残念ではあったが、活動停止状態のガンプラ部という事実を彼女に知らせて落胆されるよりはマシかとよい方向に考える事にした。

「ガンプラバトルネクサスなんとかをやりたいんですが!」

(おしい、そこまでいけば後はオンラインだけなのに……)

 ガンプラ・バトル・ネクサスオンライン、通称GBN。

 仮想空間『ディメンション』にて、プレイヤー(ダイバー)が自らガンプラに乗り込み、バトルしたり仮想空間での一時を過ごしたりするオンラインゲーム。ガンプラ人気、さらには最新のVR人気に相まって爆発的に広まったという背景を持っている。

 しかし、ザクとヅダのように。勝者が居れば敗者が存在する。それは必ずしも片方が劣っていた訳ではない。GBNが人気を(はく)していく中、GPデュエルというゲームが下火になっていった。

 このガンプラ部の惨状もその影響が大きい。タクミもGBNは一応プレイはしてみたし、GPデュエルが下火になったのはGBNのせいだと思っている訳ではなかった。だが、多少思うところはあった。

「ガンプラに関してならガンプラ部だし多少はなんとかなるけど、GBNに関してはそれほど詳しくはないけど?」

「ガンプラに関してはガンプラ部に行けって言われました」

 少女が答える。

「まぁ……、妥当か」

 餅は餅屋。

 惰性(だせい)で狭いながらも部室まで使わせて貰っているのだ。多少は役に立たねば。

 GBNに思うところはあるとは言え、ガンプラ好きには変わりない。とりあえず、知りうる限りは教えてやるかとタクミは結論付けた。

「俺はナガツキ・タクミ、二年。よろしく」

「あ、申し遅れました。キクヅキ・アカリ、一年生です! よろしくお願いいたしますッ!」

 寝起きなのにテンションの高い奴だ。タクミの目の前の後輩を見て抱いた感想。

「いきなりだけど、ガンプラって作った事ある?」

「いえ……」

(なるほど、そこからか。いや、むしろそっちの方が本分か)

「ちょうどいい、ガンプラの作り方なら基本的なところまでなら教えられるし、GBNを始めてしまえばチュートリアルあるしな」

「よろしくお願いしますであります!」

「とりあえずは、ガンプラを買いに行かないとな」

「はいであります!」

 キクヅキは返事を返したかと思うと、鞄を背負いいつでも出立出来る様に準備をする。

「いつでも行けます!」

 気が早いなとタクミは思ったが、善は急げ。思い立ったが吉日、兵は拙速を尊ぶ。幸い、タクミもこの後は大した予定は無い。

「なら、行くしかないな。ちょっと電車に乗ったりするけど大丈夫?」

「はい、定期券もあるので大丈夫です!」

 タクミとキクヅキは自らの荷物を持つと部室の扉に鍵をかけ学校を後にする。目指すはガンプラショップ。学校からならば小一時間もあれば到着する距離にある。

「キクヅキはどんなガンプラ造りたい?」

 電車に揺られながらタクミが言う。

「うーん……」

「はじめてだし、思い付かなくても仕方ないよ」

「なんかこう、ズバッといってドッカーンって戦えるヤツが良いであります!」

(コイツ、だいぶアバウトだな……)

 キクヅキが初めてだというのも考慮し、タクミは頭の中でプランを練る。

(ビルドストライク、組み立て易く出来もいい。ストライカーパックを利用したビルドブースターとの合体はワンキットのみで楽しめる。武装もビームサーベル、ビームガン、ビームライフル、強化ビームライフル、ビルドブースターの大型ビームキャノン、遠近両方に対応可能。デザイン、設定も初心者に優しい……)

 そこまで考えてタクミは首を捻る。キクヅキのガンダム作品への知識はさほど深くない。

(初代ガンダムも価格的には素晴らしいし、パーツ数もさほど多くなく、組みやすい。何より誰が見てもわかるガンダムという機体、それは最早記号)

 初めてなので価格は出来るだけ抑え、かつ一つのキットのなかにプレイバリューも欲しい。

 けれど、制作にかかる工程数が増える事に加え、あれもこれも揃えてと言うのは始めたばかりの初心者には辛いかもしれない。

(逆にいきなり手応えのあるモノも良いかも。ムーンガンダムとかどうだろうか。確かに作り上げた時の達成感は凄い、でも価格がネック……)

 結局、結論は出ないまま列車は目的の駅に到着する。

「着きましたよ、ナガツキ殿?」

 キクヅキの声でタクミは思考から現実に引き戻される。ガンダムの事を考えすぎてしまうのは悪い癖だ。

「あ、うん」

 駅から徒歩十分程度。キクヅキとタクミの向かうガンプラ専門店には販売コーナーに加え、くつろぐためのカフェスペース、買ってすぐ作れる簡易な作業スペース、勿論GBNの筐体も置かれている。この店を選んだのも、そのためだ。

 GBN、加えてガンプラ初心者のキクヅキがガンプラを組み上げGBNに登録するにはこの店は丁度良い。

「一応ガンプラ買うだけなら、それこそネットで問題ないんだけどね。ここならGBNの登録も、ガンプラ作るのも出来るし」

 場合によってはネット通販の方が金額が抑えられているモノもある。

 だが、店頭で実際にガンプラの箱を手にとって選ぶ事もそれはそれで(おもむき)がある。

 ガンプラブームが拡がるにつれて店舗側もネット通販と差別化の為に、店頭でイベントを行ったり、カフェやGBN筐体を併設する様になってきた。

「GBNには家庭用の端末もあるんだけど、いきなり買うにはハードルが高いから」

 GBNの登録料と筐体使用料を考えても家庭用機を手に入れるよりはよほど安い。高校生にとっては重要な事項だ。

(お金、足りるかな……)

 料金の話が出てキクヅキは自らの財布の中身を気にかける。自らGBNをやりたいと言い出した手前、それなりに持ってきたつもりではある。

「着いたよ、ここがガンプラショップ。まぁ、必要なモノはだいたいここで揃うよ。GBNの筐体もあるし」

「凄いですね!」

 キクヅキはてとてとと、自動ドアをくぐり店内へと入っていく。

「ガンプラの壁だ……」

 それがキクヅキのショップに対する第一印象。

 縦四段の棚にガンプラが平積みされた什器(じゅうき)が間仕切りの様に立っている。通路毎にアニメ作品別、グレード別、旧キット、モデリングサポートグッズ等々。初めて訪れたキクヅキには圧巻の光景だった。

「ナガツキ殿ナガツキ殿! 小生でも作れるガンプラってありますか?」

「んー、作れないガンプラってのは無いけど、作りやすいガンプラはある」

「なるほど。ガンプラは“作るモノ”であって作れる作れないでは無いということですね!」

「ん? まぁ、いいや」

 ナガツキはキクヅキにあって然程(さほど)だか、こういう場合は流しても構わないということを学習した。

「とりあえず、先にGBNの登録かな」

「了解ッス!」

 ガンプラコーナーを抜け、店の奥まで行くと先程のガンプラコーナーの二倍程度の広さでGBNの筐体や受付カウンター等々の設備が整えられていた。

 ガンプラ制作コーナーも隣接しており、ショップで買ったガンプラを制作コーナーで組み立て、GBNにログインするという流れが構築されている。

 キクヅキも早速受付カウンターでゲーム内容の解説や注意事項の説明を受けGBNの登録を完了させる。登録が完了したらアバターの作成等のログイン前の準備。諸々含めるとそれなりの時間を要する作業だ。その間タクミはカフェコーナーで時間を潰していた。

(初心者に作りやすいという要素だけ考えていたが、PGだって作って作れないモノでもない。説明書通りに組み上げるのなら、難しい技術はいらないし)

 オススメのガンプラは何ですか? その質問はガンダムのアニメどこから見たら良いですか? と同じくらいガノタを悩ませる。勿論、個人の趣味嗜好で回答は千差万別だ。だからこそ、自身と質問者との間に齟齬(そご)が生じる可能性もあり、回答に悩んでしまう。

(最近組んだHGCEストライクフリーダムも基本的な構造は分かりやすかったしな)

 やはり、最初はフィーリングで良いので好きなキットを選んでもらおう。作りやすいキットと作りたいキットが一致しない可能性もある。そうなった場合優先すべきは後者だ。手間のかかるキットならばタクミが手伝うことも出来る。

 結果的には思考は一巡してそこに行き着いた。

「ナガツキ殿ナガツキ殿ー」

 タクミの飲み干したアイスコーヒーの氷が溶けてきた頃、登録を済ませたキクヅキがやって来た。

「お疲れ様」

「大変ですよぉ、登録料とか何やらで小生の懐事情がピンチです」

「あー、初回は少しかかるからな」

 しかし、まさかそうなるとはタクミも考えてはいなかった。

「どうしましょう……」

「因みに、予算はいくらくらい残ってる?」

 キクヅキがパステルカラーの女の子らしい可愛らしい財布を取り出し中身を探る。

「えっと、千円と小銭がいくらか……くらいです」

「まぁ、それだけあればガンプラ一箱くらいなら大丈夫だろう。道具はニッパーなら制作コーナーにあるし、ガンプラは安いと悪い訳じゃないし。むしろ、安いということはパーツ数が少ないということで組み立て易いから好都合かもしれない」

「おぉ、なるほど! 災い転じて、塞翁が馬でありますな!」

 しょんぼりしていたキクヅキは一転、パッと明るくガンプラコーナーへと駆け出して行く。

 HGシリーズの標準的なガンプラならば高くても二千円代。なんなら自分が貯めていたポイントで値引き出来ると、タクミはキクヅキの後に続いた。

 キクヅキは棚の前でガンプラの箱を手に取っては側面の機体解説や組み上がりの写真を注視して棚に戻すを繰り返していた。

 タクミは声をかけようかとも思ったが自身で選んで微妙な思いをするのもまた一興と思い止まった。

「ナガツキ殿、オススメ等ありますか?」

「好きなの選んだらいいと思う。組み立ての難易度とはいえ多少の差だし、難易度というより手間に近い。まぁ、最近のキットなら組み上げるだけで見栄は良いからそういう事で選んでもいい」

「最近のキット、なるほど……」

(これは良く分かってない反応だな)

「最近のだと、HG○○ってなっているやつかHGUCでも番号が大きい程最新だ」

 そのやり取りから何度か買おうとして止めるといった動作を行い、一箱のガンプラを手に取る。

「これにするであります!」

 キクヅキの手にしている白い箱をタクミは覗き込む。

 パッケージに描かれた、モビルスーツと比較しても巨大なメイス、細身のシルエット、作中での搭乗者の顔。

「バルバトスか、ちょうどいいんじゃないか」

 HGIBOガンダムバルバトス第四形態。アニメ作品、機動戦士のガンダム鉄血オルフェンズに登場するモビルスーツである。HGIBOシリーズ最初のキットであり、主人公の機体ということで新規層が手に取りやすい様にか価格も押さえられている。もっとも価格が押さえられているのはHGIBO全体に言える事だが。

 バルバトス他、HGIBOのシリーズでは多くの機体に内部フレームを採用している。MGの様に魅せる為のモノではないが、作中宜しく可動と組み立て易さ、価格にその効果が発揮されている。鉄血のオルフェンズのモビルスーツは作中の設定もあり、大質量武器が装備されることも多い。バルバトスもパッケージにかかれているメイス、加えて太刀が付属している。

 更に、バルバトスは発掘された第一形態から装甲や武装を追加されていく。このHGIBOガンダムバルバトス第四形態は第一形態用の左腕が付属するためそれが再現可能であり、他のキットのパーツを利用すれば第一から第四までの形態を再現可能になる。

「アニメも少し見てて、バルバトスかっこよかったし! まぁ詳しくは知らないのでありますが……」

「別にいいんじゃないか? カッコいいから作る。十分だと思う」

「では小生はガンダムバルバトスでいきます!」

 そう言うとキクヅキはバルバトスの箱を持ったままレジまで駆け出す。

(あんまりは走ると転けるぞ)

 レジで会計を済ませ、ついでにこの店のポイントカードの説明を受けたキクヅキ。少々時間を取られたが、彼女を連れてタクミはガンプラ制作コーナーへと向かう。店頭で購入したキットはその場で制作することが出来る。休日には初心者の為の体験会が行われ、小学生等を対象にスタッフがレクチャーをしてくれる。

 今日はその日でもなければ、キクヅキは小学生でもないためスタッフによるレクチャーは受けられない。

 だが、ハサミとニッパーは制作コーナーに揃っている。スタッフ程上手くはないだろうがタクミの説明もある。

「とりあえず適当に座って」

「はいであります!」

 タクミに言われてキクヅキは手近な椅子に座る。タクミもその正面に腰掛ける。

 制作コーナーは長机にパイプ椅子といった簡単な感じで、机にはチェーンで繋がれたハサミとニッパーが備え付けられていた。イベント時など人が多い時は貸し出しもあるが、今は備え付けのモノで事足りる程の人数しか制作コーナーに居ない。

「じゃあまずは箱を開ける」

「はい!」

 手渡されたハサミでキクヅキは蓋を止めているビニールを切る。

(なんか、テープカットみたい)

 そんな感想を抱きつつキクヅキが箱を開けると小分けにされた袋が二つ、そして説明書が入っていた。

「とりあえず、ビニール袋をあけて中身が全部揃ってるか確認。不良品は滅多に無いから適当にでいいよ」

「うん、見た感じ大丈夫みたいです」

 説明書で確認したところ、HGIBOガンダムバルバトスには白いランナーが一枚、黒っぽいランナーが二枚、黄色と青色と赤色の小さなランナーがそれぞれ一枚ずつ。加えてポリエチレンのランナー。シールも問題なく揃っている。

「じゃあ、説明書の一番から作っていく。使うパーツは大まかに分けたランナーのアルファベットとそのランナーの中で更に細かく分けた番号とでパーツを探す」

「了解であります!」

 キクヅキは説明書とにらめっこをしながらパーツを探していく。バルバトスはHGのガンプラの中でもパーツ数が少ない方で難易度もさほど高くない、説明書に記載されたパーツ二つを見つけるのも容易だ。

「ありました!」

「そしたらまず、パーツとランナーが繋がっている場所“ゲート”をパーツ側に少し残す感じで切って」

「キレイに切らなくてもいいのですか?」

「ニッパーで一発でキレイに切るのは難しい。だから一回大まかに切って、後から整えてやる」

 タクミはニッパーでランナーからパーツを切り落として見せる。

「だいたい一ミリくらいを目安に残すようにする。太いパーツは一気にいくよりジワジワ力をかけた方が跡になりにくいから」

「了解であります!」

 キクヅキもそれを真似する。

「この柔らかいやつも?」

「あー、ポリキャップか。それはあまり表に出ないし、材質も違うから一度で根元を切るだけで」

「なるほどなるほど」

「余計に切らない様に気を付けて」

 キクヅキは指定されているパーツを切り終わると説明書を見ながら組み上げ始める。

「余談だから聞き流しててもいいんだけど、パーツ同士を繋げるための穴と軸があるじゃん、これの軸側の先を少し斜めに切っておくと後でパーツ同士を外しやすいよ。塗装前の仮組とか、あとはパーツを間違えて組み合わせた時の対策とか」

「はまらなくなったり……」

「まぁ、少しだけなら問題ないよ」

「あ、確かに問題ないです」

 制作コーナーにパチンパチンと小気味良いニッパーの音が響く。

 キクヅキの飲み込みが早いのか、バルバトスが初心者にも組み立てやすいキットなのか、タクミの手助けは最初のみで済んでいた。

 幾つかのパーツを組み上げ腕、脚、と人の形に近づく度に感嘆の声をあげるキクヅキがタクミには微笑ましく見えた。

「ちょっとトイレ行ってくる」

「了解でありますー」

 キクヅキを残し、タクミは席を立つ。

(さっきから、アイスコーヒー飲み過ぎたかもしれない……)

 GBNを始めたら席を立つのは難しい。今のうちにとガンプラコーナーを横目に見ながら廊下を歩く。

(キクヅキのガンプラはバルバトスで良いとして、やはりオプションセットもあった方が無難か)

 バルバトスはそのままでは太刀とメイスしか付属していない。バルバトスはそれで十分カッコいいのだが、ガンプラバトルでは中・遠距離に対応出来る武装も欲しくなるのは仕方ない。

(でも、いまからオプションセット組み上げるのもちょっと大変だしな……)

 左右二つのパーツを張り合わせるだけの武器も存在する。いわゆるモナカと言われるキット。確かに初心者のキクヅキには色々組み換えて遊べる楽しさを味わって貰いたくはあるものの、オプションセットは意外に値が張る。HGIBOは武装をオプションセットとして別売りにしているので価格もランナー数も抑えられている。

(また、今度で……いいか)

 必要とあれば部室のマウンテンサイクル、もといジャンクパーツを探せばバルバトスに使える武装もあるだろう。

(滑空砲か、マシンガンか、あんまりバルバトスにビームって似合わないんだよなぁ)

 思考の中でバルバトスの装備を換装する。

 そんな事を考えながら歩いてると、タクミに不意に誰かがぶつかる。

「あ、すみません」

 慌てて振り向けば、小学生くらいの女の子がガンプラの箱を抱えていた。

(ギラ・ドーガ……)

 女の子はだいたいキクヅキと同じような身長か、少し小さい感じで、整った顔立ちに店内の照明を反射して艶やめくロングヘアの黒髪。制服を着ているから私立の小学校か中学校か。

 親か兄弟に連れられて? どちらにせよタクミは微笑ましく思う。

「ご、めんなさいッ! 私が前を見ずに歩いていたせいで……」

「いや、こちらこそ」

 タクミもよそ見をしていたので、こうも謝られると申し訳なくなる。

「じ、GBN、です……か?」

 タクミのポケットから顔を覗かせていたダイバーギアを見つけて女の子が言う。

「まぁ、一応」

「わ、私もGBNやってるんです。もしディメンションで、偶然ガンプラバトルする事になったらよろしくお願いします」

「ああ、その時はよろしく」

「はいッ! では」

 女の子は一礼をして駆けていく。

「まぁ、仮にディメンションで会ってもダイバーネームわからないからよろしくも何も無いけどな」

 GBNではダイバーは自由に外見をカスタマイズしたアバターを使用することになる。ダイバーを見てもタクミと判断するのは難しいだろうし、逆の立場でもそうだ。

 タクミは自分がトイレに向かう途中だった事を思いだし脚を急かせた。

「あ、タクミ殿。もう、出来てますよ」

 大して時間をかけたつもりは無かったがタクミが机に戻った頃にはキクヅキはバルバトスの制作を終えた様で、借りてきたのか小さなハケとチリトリで片付けをしていた。

「言い忘れてたけどパーツをランナーから切り出したりするときは箱をの中でやると、破片が飛び散らなくて片付けの時に楽だよ」

「なるほど、次はやってみます!」

「じゃあ、GBN筐体でログインしようか」

「初陣でありますな!」

 GBN筐体はそこそこの稼働率だったが、平日ということもあり特に待ちもなく利用出来る様だった。

「タクミ殿はどの様なガンプラで行くのでありますか?」

「俺はとりあえず、コイツかな」

 タクミは鞄の中から百円均一ショップで売っている様なタッパーを取り出す。

「タッパーですか?」

「ガンプラを持ち運ぶ時は腕、脚、胴体、とパーツを大まかにわけてビニールの袋に入れると傷つきにくいから」

 そう言いながらタクミはパーツの入ったチャック付きのビニール袋をキクヅキの眼前に出してみせる。

「タッパーにビニール袋も百円均一で売っているし、わりと有用なモノが売っているんだ」

「そうなんですね。小生はこういうのはプラモデル屋さんで売っているとばかり」

「まぁ、そういう店もあるけどね」

 タクミは袋から取り出したパーツ同士を繋げモビルスーツの形を組み上げていく。

「ザク……、ですか?」

「ザクハーフキャノン。ザクにガトリングを付けたモビルスーツだよ」

「へー、ザクにも色々いるんですね」

「ザクⅡJ型にMS06K、ザクキャノンのランドセルを背負わせた機体で180mmキャノンかガトリングを装備してる。まぁ、本編の外伝の「ガンダムTheOrigin」の外伝でMSD(モビルスーツディスカバリー)の機体だからあまり知られてないかな。プラモデル的にはオリジンザクの胴体にキャノンの付いたランドセルを背負わせただけのバリエーションキットなんだけど、キャノンが付いていてそれまでの色を変えただけの様なカラバリキットよりもシルエットの差別化がされていて、更にこのキットのバリエーションとして頭や肩等が変更された、ザクキャノンテストタイプのキットも発売されたんだけど脚部の形状が微妙にザクキャノンに対して変更されていて惜しいんだ」

 タクミのハーフキャノンは機体のカラーリング等が変更されている。ただし、塗り替え等ではなく、同じランナーを流用している他のザクⅡのキットのモノを成形色のまま使用していた。その様はパッチワークの様であり、形はハーフキャノンのそのままでありながら乱雑な印象を受ける。

 武装はランドセルのガトリングに加えてMS用対艦ライフルと中・遠距離からの攻撃に特化している。機体本体はザクⅡと大して差がない事に加え、標準装備のヒートホークも腰部の装甲に装備しているので近接戦闘も苦手ではない。

 かねてから用意していたという事ではないが、とりあえず作ってみたハーフキャノンのランドセルとジャンクと化していたオリジンザクⅡ、ありあわせと言ってしまえばそれまでだがオリジンザクⅡのキット本来の出来の良さもありGBNでの使用にも問題ないだろう。

「タクミ殿はそのハーフキャノンでログインでありますか?」

「ああ、試運転兼ねてな」

 それはハーフキャノンの試運転に加えてタクミ自身がGBNへ慣れるための試運転も含まれていた。キクヅキにレクチャーするにしても、タクミ自身がバトルの勘を取り戻す必要がある。

 二人はそれぞれのガンプラを手に、GBNの筐体の置かれたコーナーへ脚を向ける。

 先ほどキクヅキのダイバーとしての登録を済ませた受付カウンターで簡単な手続きだけして筐体に向かう。筐体の中の椅子に座るとキクヅキは鞄の中からダイバーギア、及びバルバトスを取り出しGBN筐体にセットする。

「だいたい行けそうだな」

 様子を見ていたタクミが言う。

「わたし、ゲームの説明書とか読まないタチですから」

 確かに、それっぽい。出会って然程時間は経っていないが、タクミはキクヅキの事をそう認識していた。

 タクミはスタッフに代わり軽く説明しようかと考えていたが、この様子ならばその必要は無さそうだ。

「なら、次はディメンションで会おう」

「了解であります」

 




 ガンプラ買いに行って作って。バトルせずに一話が終わってしまいました。でも、ガンプラ買いに行くのって凄い楽しいと思うんですよ。次はどのガンプラを作ろうか、どんな改造機体にしてやろうかと。

 感想・批評等ございましたら、お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。