今回から短くなります。
「タクミ殿、ダブルオーガンダム完成したであります」
放課後、二人で使うにはちょうどいい広さの部室でキクヅキは鞄からタッパーを一つ取り出した。
中身は大まかに分割されたガンプラのパーツで、キクヅキは胴体に手足を組み付けて一機の機体を形作る。
ダブルオーガンダム。
それはキクヅキにとっては二作目の作品であり、先に作ったバルバトスとは違った毛色の近接格闘用の機体だ。
「上手くできてるじゃないか」
「ありがとうございます!」
ゲート処理、シール貼り、パッケージに書かれた色を塗らなくても設定に近い仕上がりに近い、丁寧に作られているのがわかる。
ダブルオーガンダムを勧めたのはタクミだが、正直なところ、数日でキットを購入し制作して持ってくるとは思わなかった。
「タクミ殿ー、これはなんですか?」
キクヅキは机の上に置かれていた、OPP袋に小分けされたガンプラのパーツをつまみ上げる。
「あぁ、ジャンクパーツな」
「
「それ組上がってるだろ?」
「あ、確かに!」
袋の中のパーツは頭部なら頭部、脚部なら脚部と多少足りないパーツはあるものの部位単位で組上がっていた。
「大体は中古品とか、ショップで完成品のプラモデルの買い取りとかやってる店もあるんだよ」
「へー」
「パーツを組み合わせて改造ガンプラを作るための材料にしたりするんだ。一部のパーツだけが欲しい時とかに便利なんだよ。キットを一箱買うより安いし、買っても丸々使わないし」
「そ、その改造ガンプラってわたしにも作れますか?」
キクヅキの言葉にタクミは少し考える。
「まぁ、簡単なところからなら」
そして、そう答えた。
「一番簡単なところなら、まずは武装を別のガンプラに持たせてみる。劇中にもガンダムのビームライフルを持ったジムが登場したりする。自分のバトルスタイルに合わせて武装を交換するだけでも十分に専用機感は出る」
「なるほど!」
とはいえ、現在キクヅキの持っているガンプラはバルバトスとダブルオーガンダムの二種類のみ。交換くらいなら出来るが、いささか寂しい。
「たしか、部室の
タクミは部室の棚から段ボール箱を持ち上げ、机の上に置く。
マウンテンサイクルとは
「わー! パーツいっぱいありますね!」
「これはこの部で部員達が集めてきたジャンクパーツだ。キットの余剰パーツだったら、組み立てた後に壊れてしまったり、パーツを無くして組上がらなかったり。要は不要になったパーツを持ち寄ってきたんだが」
今はもう部員もタクミ一人。そもそも不要で集まったパーツ、キクヅキが使っても文句をいう様な人間は居ない。
「武器とかは案外そのまま入ってたりするからな」
タクミは箱の中をあさりビームライフルを一丁取り出す。
元はHGCEエールストライクのモノだろう。大方作ったがガンプラの置き場を無くしたか、別の武装を新造したために不要になったか。
「おおぉー」
キクヅキが感嘆の声を上げる。
SEEDとOOで作品は違うがガンプラならばあり得ない組み合わせではない。
「あと、簡単なところだと背負いものを付け替えるくらいか」
「背負いもの……でありますか?」
「ガンダムの背中の武装とか特徴的なパーツのこと、ガンプラって背中のパーツが胴体とは別パーツになってるだろ? それを別の機体に取り付ける。ガンプラのパーツを付け替えたり組み合わせたり、狭義的にミキシングって呼ばれてる方法なんだけど」
タクミはガンプラの飾ってある棚からHGACウイングガンダムを手にとる。
「例えばこのウイングガンダムだと」
背中の特徴的な翼はガンプラでも再現されている。
「背中のウイングとその基部、バックパックが胴体に三ミリ軸二本で接続されている」
俗に言う共通二軸。
「タクミ殿。小生のダブルオーにはその二つの穴は無いのですが……」
キクヅキのダブルオーガンダムはAGP以前のキットであり、そういった規格は適用されていないが、一部胴体の接続などのボールジョイント、三ミリ軸接続などは他のキットとも互換性はあるが。
「ダブルオーはオーライザーと合体するからな」
タクミがジャンクパーツの中から適当なパーツを取り出してダブルオーの背中に取り付ける。
「背中に三ミリ軸の穴が一つ開いてる」
「おぉー、これで小生のダブルオーにも翼が!」
「なんだ、翼付けるのか?」
「ダメ、ですか?」
「いや、何をどう取り付けるかはキクヅキの自由だ。小改造くらいなら手伝うし」
不安気だったキクヅキの表情がパァっと明るくなる。コロコロと表情を変える様は見ていて飽きないな、と短い付き合いながらタクミは思った。
翼という案だが、方向性0の状態でミキシングを進める訳には行かない。そういう意味では有難い。
(翼といえば目下のウイングガンダム。フリーダムという手もあるか……。しかし)
「だったら、こう、なんかズバーって感じのが」
体全体を使ったジェスチャーを交えながらキクヅキは説明する。
(ズバー、って……。ズバーっていうことは普通の羽根ではないのか? OOの作中でならばGNフェザーの様な感じか。とはいえ)
タクミはきれいに整頓されたとは言い難いジャンクパーツ入れの中から使えそうなモノを探す。
語感からGNフェザー、光の翼の様なモノ。ポン付けするにはデスティニーかV2ガンダム。HGCストライクフリーダムも一応光の翼か。
とはいえ都合よくそういったパーツがジャンクに落ちてるとも限らない。ジャンクパーツが改造で余剰となったモノや破損してしまったモノである以上、光の翼の様な特徴的なパーツが余ることは考えにくく、あったとして完全な状態とは限らない。
「コレは……」
パーツを物色するタクミの手が止まる。
「白い……なにかであります」
タクミの横からダンボールを覗き込むキクヅキが感想を口にする。
タクミが掴んでいたのは白いパーツ。グレーのフレームの様なモノも見える。なにかしら組み上げられたパーツに見えるがキクヅキにはもちろん見当がつかない。
「ユニバースブースターの残骸だな」
「ユニバースブースターでありますか?」
よく見れば戦闘機の機首の様なパーツがあり、加えて特徴的な濃いピンク色のクリアパーツがついている。
「スタービルドストライクのストライカーとなる支援機なんだが、まぁ、翼のはえるユニットと思ってて大丈夫だよ」
キクヅキはタクミに手渡されたユニバースブースターを色々な方向から眺めてみる。
ジャンクパーツとなっていたユニバースブースターには本来ついているはずのスタービームキャノン及びそれを接続するアームが無く、それに加えてディスチャージシステムの一環であるアブゾーブシールドも無い。光の翼の発振機としてなら使えるだろう。
「これを背中に取り付けるんですか?」
HGCEストライクガンダムのストライカーも三ミリの一軸による接続だ。しかし、ダブルオーガンダムの三ミリ穴はその外観上、奥まった場所に配置されておりそのまま取り付けるのは不可能。
「ジョイントパーツを足してもいいんだが、今回はランナーの切れ端を使う」
タクミはダンボールから適当なランナーを取り出すと適当な長さにニッパーで切り取る。
「ランナーの中には三ミリの太さの円柱状のモノがあるから、三ミリ穴同士取り敢えずのジョイントに使える事もある」
実際にダブルオーの背中のジョイントにランナーを差し込み寸法を合わせながらパチパチと切り積めていく。
「こんなモノかな」
「おぉー」
長さにして三センチほど、あまり格好はつかないがユニバースブースターのジャンクとダブルオーを接続するパーツが出来上がった。
「ダブルオー側の穴は径が少し三ミリより大きいから、このままだとユルくなる。今はこのビニール片を噛ませることで誤魔化すけど、後からジョイントを作り込んだりするなら三ミリ軸に接着剤を塗って軸を太らせるとかすればいい」
「が、がんばります」
「その時はまぁ手伝うよ」
「お願いします」
元々、白と青を基調としたダブルオーに白いユニバースブースターはさほど違和感はない。バックパックを重ねる事になるが、ダブルオーライザー形態を考えれば比較的スッキリした印象。
「後は色を変えたりだけど」
「取り敢えず、このガンプラを試してみたいであります!」
「まぁ、確かに塗装するにしても準備がいるからな。試作したガンプラを動かしてみてから方向性を決めるのもアリか」
キクヅキにとってはミキシングという改造に対する試作ガンプラでもある。一度GBNで使用してみるというのも必要かもしれないとタクミは考えた。
「はい、GBNをやりに行きましょう!」
善は急げと、キクヅキに引っ張られるようなかたちでタクミはショップへと向かった。
「タクミ殿はやっぱりザクですか?」
「まぁ、ザクの改造機ではあるんだが、ハーフキャノンじゃないよ」
GBNのログインロビーでケモミミの少女と鮮やかな青色の連邦軍の制服を着た青年が談笑する。
タクミとキクヅキだ。キクヅキのアバターはケモミミと尻尾に丈の短いワンピースと、カスタムされたモノ。対して、
キクヅキは言わずもがな、タクミもステータス的にも初心者といっても差し支えない二人は所属するフォースもフォースネストも無い為、基本的に出撃時以外はロビーで過ごす事となっていた。
「とりあえずカウンターでミッションを漁るか」
「はい!」
ミッションカウンターに向かうタクミにキクヅキがトテトテとついていく。
二人の目的はキクヅキのダブルオーを使い戦う事。GBNで受ける事のできるミッションは単なるお使いの様なモノやアイテムの納品、宝探し的なモノ等々様々である。中でも今回の目的に合うのは連戦ミッションだろう。初日にキクヅキが挑戦したのも連戦だったが、あちらは初心者がまずはゲームになれるための簡単なモノ。今回挑もうとするミッションは難易度が上がっている。
「もう少し、人数が欲しい所だけど……」
今回のミッションでは参加人数が少なければ少ない程にボーナスが獲得できる。
だが、二機ではいささか戦力が足りなく感じる。
「あのー、よかったら僕らと一緒に行きませんか?」
タクミに声をかけてきたのは仮面を着けた男性のアバター。
「タクミ殿、仮面ですよ。怪しいです……」
「いや、仮面はガンダムではよくあるアイテムだし珍しいモノでもないよ」
「そ、そうでありますか……」
訝しむキクヅキをよそにタクミは話を進める。
話を聞くと彼らも連戦ミッションに参加したいが戦力に不安があり人数を揃えたいと言う。
「俺たちは初心者なんで強くないですけど大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、僕らも人数がいた方が楽しいしね」
仮面の男は優しげな声でそう話す。
まぁ、戦いは数だ。不要なら話し掛けはしないだろう。タクミはそう思った。
「僕はキョウヤよろしく」
「タクですよろしくお願いします」
タクミ仮面の男の差し出した手を握り返す。
キョウヤ達に合流したことで、野良パーティではあるが総勢九機の小隊となる。
今回のミッションは開始地点まではNPCの輸送機で移動、出撃し、電撃作戦という体でステージごとの敵を突破しボスを撃破を目指す。
初心者には少し難しいかも知れないが、今の部隊規模なら然程苦ではない。
出撃が輸送機からということで、小隊各機が格納庫に押し込められての移動になっていた。
「タクさんはザクの改造機なんですね」
コックピットで待機するタクミのモニターに通信が入る。少女ながら凛とした表情をしたロングヘアーのアバターだ。
彼女の乗機はギラ・ドーガ。改造等は施されていないが丁寧に作られているのが見て取れる。
「あ、私、ミナっていいます。お二人と同じで野良パーティとして参加してます。よろしくお願いします」
「タクです、よろしく。ベースはオリジンザクで、ジムガードカスタムを意識してる」
タクミの言う様にザクは全身を隠せる程の盾を持ち、肩越しに背中から伸びるアームで保持していた。
「アームの基部はハーフキャノンですよね?」
「ああ、ちょうど接続部の平軸が同じだったから。片腕だとどうしても保持しにくいしな」
「あー、ガードカスタムとかそうですよね」
「盾自体は軽いから補助さえあれば片手で保持できるし」
「タクミ殿、出撃ですよ!」
キクヅキにさえぎられ、タクミは出撃前だった事を思い出す。
「あ、ああ」
輸送機は既に目標エリアまで到達していた。
ハッチが開きモビルスーツが降下していく。
「ザクハードガード、タク出る」
「ギラ・ドーガ、ミナ機。降下します」
「キクヅキ行きます!」
タク、ミナ、キクヅキの三機も
次回「フレンズ」