ガンダムビルドダイバーズ ミーティア   作:ウーパールーパー

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ダブルオーを製作したキクヅキとタクミはその試運転をするべくGBNをプレイする。途中知り合った仮面の男「キョウヤ」達と連戦ミッションに挑む。


フレンズ

 連戦ミッションは容易に進んだ。何より九機という数の暴力は単純であり強力だった。寄せ集めに近いチームでは細かな連携は不可能に近い。戦闘開始と共に火力で圧しきる。幸い白兵戦に特化し過ぎた機体は居ないので、横一列に並んで引き金を引くだけで火砲の壁が相手を包み込むことになる。

「タクミ殿。連戦ミッションって思ったより簡単ですね」

「まぁ、これだけ人数揃えたらな」

 このミッションの想定人数は五人程度。二倍の戦力で挑めばこうもなる。

 現在、インターミッションエリアで休憩中。各自機体の整備や武装の変更等を行っている。

 タクミとキクヅキは特にやることがないため、戦いにより廃墟と化したという設定の街を眺めていた。

「ダブルオーの調子はどうだ?」

「悪くないです! 武器も使いやすくていい感じであります!」

「なら、よかった」

 タクミも自分で勧めた手前、使いにくいといわれると悲しい。

「あの“トランザム”ってのはよくわからないのですが……」

「あれは必殺技みたいなモノだからな」

 OOを視聴中のキクヅキに対し、赤くなるだの、速くなるだの、ネタバレにならない程度に説明する。

「必殺技!」

 その言葉にキクヅキが目を輝かせながら食い付く。

「作中と同じで一時的に出力を上げることはできる。ただ、今は使わない方がいい」

「そう、なんですか?」

「必殺技は多くのリソースをつぎ込む。決まれば文字通り必殺となるが、隙も生じやすい。特にトランザムは使いどころがむずかしいからな。下手に使うと相手を倒すより先にスタミナが切れかねない」

「り、了解であります」

 残念そうにショボくれるキクヅキを見ながらタクミは罪悪感にかられるが、トランザムの発動タイミングが難しいのも事実だ。タクミにはGPDの経験があるが、戦い慣れをしていないキクヅキにそれを計るのは難しいだろう。

「まぁ、GBNに慣れたら使っていけばいいさ」

「はいッ!」

 そうこうしている内にインターバルも終わる。機体の調整を終えて呼びにきたミナに連れられ、二人はチームのところまで戻った。

 

 

 

 

「敵が強くなってきましたね……」

 ミナが呟く。

 チームはメンバーを幾人かに分け、分隊単位で対応に当たらせている。

「流石に連戦ミッションだな。だが」

 ザクの身の丈程の盾から突き出したマシンガンが上空の敵機を捉え蜂の巣にした。

「流石ですタクミ殿!」

 ミナ、タクミ、キクヅキの分隊は多少進撃が遅いものの確実に前進している。コンビネーションを考慮に入れていないチームなら十分な戦果だろう。

「今のがデスバーディ、その前はデスビースト。Gガンの敵機体ばかりだな」

 タクミが顎に手をあて思案に入る。

「となると、ボス機体はデビルガンダムでしょうか?」

 ミナの言うように、順当にいけばデビルガンダム。次点でデビルガンダム四天王、グランドマスターガンダムか。

「ミッション毎にボスと途中のステージは固定されてるみたいですし、デスアーミーが出てきたらボスは大方デビルガンダムと攻略サイトにも」

「タクミ殿、デビルガンダムって何でありますか?」

「あぁ、悪の親玉見たいな、デカくてクソ強いガンダム」

「成る程、了解であります!」

 だいたいの内容は伝わったのか頷くキクヅキ。

「アバウトですね」

「以心伝心ですから」

 キクヅキはミナに対しモニター越しに、ふんすと鼻息を鳴らす。

「まぁ、百聞は一見にしかず。ボスが出て来たらわかるさ」

 タクミが言う。

 このエリアの敵は掃討したのかバトル終了のアナウンスが各自のコックピットのメインモニターに表示されている。

 予定では次のステージがボスのはずだ。

「第三部隊、損害等は大丈夫ですか?」

 通信画面にキョウヤの仮面を纏った顔が映る。

「特に問題は無い」

 タクミが答える。ザク、ダブルオー、ギラ・ドーガの三機とも目立ったダメージも無い。このまま最終ステージに突入出来る様なコンディションだ。

「了解、じゃあ。全機最終ステージへ突撃せよ!」

 キョウヤの掛け声と共に九機のモビルスーツ全てがブースターに火をつける。流星の様に尾を引きジャンプ、戦闘エリアに入るまでは敵と遭遇する事は無い。隠密性より移動の速度を優先する機動。

「各部隊は別方向からボス機体を攻撃」

 キョウヤから送られてきたデータがサブモニターに展開する。そこには各機の動きが示されていた。

「メルシュトローム作戦ですね」

「だな」

「め、めるしゅとろーむ、でありますか?」

 作戦内容を見てすぐさま理解するミナとタクミ、対してキクヅキは頭の上に疑問符を浮かべる。

「メイルシュトローム、渦巻きって意味だよ。三方向から同時に攻撃する。Zガンダムでエゥーゴがとった作戦だけど、まぁ、今回は三方向から同時攻撃って事で」

「なるほど、了解であります!」

 各機が戦闘エリアに入る。

 ステージは先程までの市街地からなだらかな丘や小川のある地形へと変わっていく。

 三つの集団に対し、敵もそれぞれに対応する。やはり参加人数が多くなると敵側も強化されるようだ。それに伴い報酬も多くなっているので、総合的に見ればバランス自体はあまり変わらない。

 エリアに入って数秒、コックピットに鳴り響くアラーム。

「敵っ!?」

 素早く反応を見せたのはキクヅキのダブルオー。GNソードⅡの牽制が敵の居る方角へと放たれる。

「いきなりお出ましか」

 ザクハードガードがシールドを正面に構え、ギラ・ドーガがその後方で屈む。

 射線は散乱し正確性は無い。キクヅキの牽制と同じく大まかな位置だけしか判明していないのだろう。

「俺が突撃する。キクヅキは後ろに、ミナは援護を頼む」

「わかりました」

「了解であります!」

 ザク・ハードガードが盾を掲げて突撃。ギラ・ドーガがビーム・マシンガンを乱射し、それを援護をする。ペレット状のビームの掃射は敵機の破壊には至らないまでも、反撃する力を削ぐには十分な威力を発揮し得る。

 無数のビームが飛び交う中、勝負はこの数秒で決する。

 敵の姿は見えた。デスアーミーが三機、金棒型ビームライフルを構え丘陵地帯の溝に伏せている。

「てりゃぁぁぁあ!」

 ザクの影からダブルオーが飛び出し、手近な敵をまず一機。GNソードⅡがデスアーミーの胸部装甲を貫く。

 ダブルオーはそのままGNソードⅡをライフルモードに切り替える。

「もひとつ!」

 貫いた敵機を盾に、閃光が走り、至近距離からのビームで二機目のデスアーミーを屠る。

「とりあえず片付いたな」

 タクミがヒートホークを構えたままのザクで言う。

「やりましたね」

 敵機の残骸を確認しながらミナも合流する。

「ああ、なんとかな。けど……」

 見ればザクハードガードが右足に被弾していた。ダメージとしては軽度なモノだが機動力が落ちるのは否めない。

「あとはボス機体だ。俺は後から追い付くから先に行ってくれ」

「し、小生は残ります! まだ一人では不安なので」

 モニター越しにキクヅキがビシッと挙手しているのが見える。

「そうですね。ボス攻略にはやはり戦力が必要……」

 ミナは腕を組考える。合理的に考えるならば他のダイバーと合流した方がよいだろう。

「わかりました。私は先行します。タクさんもキクヅキさんも必ず追い付いて来てくださいね」

 そう言うとミナはギラ・ドーガがブースターを点火した。

 

 

 

「お待たせしました」

 ミナが合流した時には既にチームの先鋒がボス機体と接触。予想通りと言うか、案の定ボスはデビルガンダムだった。

「あれ、あとの二人は?」

 通信の主はキョウヤ。

 出撃前にミナはよく見ていなかったが、彼の機体『エビルハウンド』は見た目は黒いAGE-2。ハイパードッズライフルの見た目も変更され、機体色と合わせ、一見してダークハウンドにも見えるが、四枚の翼の様なバインダー等がノーマルの改造機なのだと推測させる。

「タクさんとキクヅキさんは後から来ます」

「うーん……。わかった、取り敢えず目の前の事から解決していこう」

 エビルハウンドとギラ・ドーガも戦列に参加する。

 確かに二機が戦闘に参加出来ないことで戦力の低下はあった。だが、もとよりオーバーキル気味な参加機体数である。デビルガンダムの放つ無数の触手もそれを超える弾丸の暴風が圧倒する。

 Gガンダム作中で猛威をふるった機体が初心者向けレイドボスとは言え蹂躙されていく様は正に数の暴力と言う他に無い。

「……おかげで楽できたよ」

 デビルガンダムも既に虫の息かという頃。モニター越し、仮面を付けたキョウヤの口角が上がる。

 エビルハウンドが一転。

 ロングライフルの銃口をギラ・ドーガに向けた。

「えっ?」

 咄嗟に身を引いたギラ・ドーガの鼻先を閃光が掠める。

 それと同時にキョウヤがもとから引き連れていた二人が味方機三機を不意打ちで攻撃する。

「なんでッ!?」

 スラスターを吹かし、バックステップでエビルハウンドと距離を空けながらミナが問う。

「簡単な事だよ、人数が増えれば獲られるポイントも増える。しかし、ポイントは参加者で頭割りだ。なら参加者が少なくなればいい」

 エビルハウンドは小型シールドに内蔵されたビームサーベルを抜刀する。

「大人数で参加して攻略寸前で参加者を減らす。当然、大量のポイントも僕らのものになる」

「そんな事を……」

「最高効率を目指すとこうなる」

「素性を隠す為の仮面と名前というわけですか」

 プレイヤーに出回っている仮面ならアバターごとの見かけは誤魔化せる。ダイバーネームも現行最強とうたわれるチャンピオン(クジョウ・キョウヤ)の名前。GBNでは目立つが故にありふれたダイバー。

「貴方はそれでもダイバーなのですかッ」

「ゲーマーさ、どうしようもなく」

 エビルハウンドの斬撃をギラ・ドーガはビームアックスで受け止める。ビーム刃のつばぜり合いに閃光が走る。

「パワーで押されているッ?」

 徐々にではあるが、エビルハウンドがギラ・ドーガを圧倒していく。

「ブレイクデカールって知ってるかい?」

「貴方はどこまでっ」

 エビルハウンドが押しきり、携えたビームアックスごとギラ・ドーガの左腕を切り裂く。

「くッ!」

 ビームライフルから光弾をばらまきギラ・ドーガはエビルハウンドと距離をとる。この場にはキョウヤの仲間しか残っていない。数の優位からくる余裕か、キョウヤはソレを許した。

「さて、そろそろ君にも退場してもらおうか。なに、ポイントは僕らが有効に活用するさ」

 エビルハウンドがロングライフルを構える。

 万事休す。

 ミナが反射的にぎゅっと目を瞑る。

 銃口から走る閃光がギラ・ドーガを貫くかに見えた。

 だが、空気中を伝わる衝撃に機体が震えるだけでダメージは無い。

 外した? この距離で?

 開いたミナの量の目に映るのはモビルスーツの背中。見馴れたシルエットではなかったが直ぐに理解できた。

「タクさんッ……!」

「なんとか間に合った……ってところか」

 ザクハードガード。その装備したモビルスーツ大はあるシールドがロングライフルの一射を遮っていた。

「追い付いてしまったか。でもこれでも三対三。ブレイクデカールで強化された僕らの方が優位だッ!」

 キョウヤのもとに仲間が集まる。濃いグレーのクランシェが二機。恐らくこの二機もブレイクデカールで強化されているのだろう。

「キクヅキッ!」

「了解であります、トランザムッ!」

 空から落ちてきた紅い何かが片方のクランシェを貫く。

 それは高濃度圧縮粒子を解放したダブルオーの姿。

 加速によりもはや質量弾と化したダブルオーのGNソードⅡがクランシェの胸部に深々と突き立てられ地面に縫い付けられている。

「クソッ、だからなんだってんだ! こちとらブレイクデカールだ!」

 敵はデカールの影響か威力を増したドッズライフルを乱射しながらビームサーベルを抜き放つ。

「たかがトランザ――」

 全てを言い終える前に投擲されたGNサーベルがクランシェの頭部を貫く。

 たかがメインカメラ。そうは言うものの失った代償は大きい。こと素早く反応が求められる白兵戦においては尚更。

 姿勢を低く、闇雲に放たれるドッズライフルを滑るように回避しながらダブルオーがクランシェに肉薄、二振り目のGNサーベルがクランシェの頭頂部から縦に突き立てられる。

「見事だ」

 味方機を瞬く間に撃墜されたというのにキョウヤにはまだ余裕があるように見えた。

「だが、彼等二人のブレイクデカールは廉価版。いわば劣化コピーと言ったところか。むしろこれで僕はポイントを総取り出来る様になった」

 エビルハウンドはダブルオーと距離を取りロングライフルを放つ。

「ダブルオー以外は手負いだ。つまり君を倒せば僕の勝ちは堅い」

 キクヅキもギリギリのところでビームをかわす。トランザムを使ってでも避けきれない。ブレイクデカールの力は本物ということだろう。

「しかも、ダイバーが素人ではな!」

 ロングライフルの一射をかわしたところを狙う二射目がダブルオーに直撃する。

「やったか……」

 しかし、キクヅキのダブルオーは動きを止めない。

「光の翼だと!?」

 キョウヤの眼前、メインモニターには背中から翼を生やすダブルオーが映る。

「そのバックパック……プラフスキーウイングか!」

 タクミがポン付けしたユニバースブースターがトランザムの圧縮粒子を受け、光の翼にも似たGN粒子の翼を形成していた。

「翼が生えたくらいで」

 光の翼が視覚的に圧倒するが、それは単なる見かけ倒しではない。現にギリギリでかわしていたロングライフルの射線が徐々に引き離されていく。

「ならば!」

 エビルハウンドがロングライフルを捨てた。リアアーマーに装備されたビームサーベルを二基、両の手で束ねるように上段に構える。

 “EXカリバー”クジョウ・キョウヤ(チャンピオン)の必殺技であり、それを模したエビルハウンドの必殺技でもある。束ねられたビームサーベルは本来の出力を超え、長大な光の剣へと変わる。

「必殺技は多くリソースをつぎ込む……」

 キクヅキはタクミの言葉を反芻(はんすう)する。

 つまり、これはチャンスだ。ダブルオーは軌道を曲げ、エビルハウンドとの距離を詰めにかかる。

「墜ちろ!」

 赤く輝く光の束がダブルオー目掛け振りおろされる。

「隙も生じやすい!」

 対峙するキクヅキは避けない。エビルハウンドへの一直線の軌道をそのままに、ダブルオーのGNフィールドを両掌に集中。

 白羽取りの要領で光の剣を払って見せる。

「馬鹿な!」

 その場にいたキクヅキ以外全員がキョウヤと同じ感想を抱く。

「てりゃぁぁぁぁ!」

 必殺技を放ち、一瞬動きの止まったエビルハウンドの首をGN粒子を纏った貫手が襲う。

 キクヅキは自分でガンプラを作ってわかった事があった。

 モビルスーツは、ガンプラは関節が弱点と成り得る。可動する部位である以上、完全に覆うことが難しく、はめ合わせる都合上外れやすい。

 ブレイクデカールで強化されたガンプラと言えど、弱い部分に渾身の一撃を受ければただでは済まない。

 首のパーツが引きちぎれ頭部が宙に舞う。

 予想外のダメージに一瞬怯むキョウヤ、その隙にエビルハウンドの腹部にダブルオーの膝が食い込む。

 ダブルオーの膝蹴りは装甲にこそ深刻なダメージを与えたように見えないが、変形用のフレームが悲鳴を上げる。

「クソッ! 何故だ、あり得ない、こんな結末ッ」

 エビルハウンドのコックピットに鳴り響くアラートにキョウヤが叫ぶ。

 辛うじて撃墜されていないものの戦闘を続行出来る機体状況ではない。

 ログアウト。

 エビルハウンドのシルエットにノイズが走り消滅した。

 

 

 

 キョウヤ達を廃した後はデビルガンダムに止めを刺すだけで連戦ミッションは終了した。

 ポイントはログアウトしていないメンバーでヤマワケする形になり、タクミ、キクヅキ、ミナの三人で山分けする事になる。ミナは遠慮していたが、タクミに「君が貰わなかったからといってどうこうなる問題でもないし、貰っておくと良いよ」と言われ遠慮がちに貰っておく事にした。

「なんか大変でしたね」

 ミナが言う。

 ロビーまで戻ってきた三人はベンチに腰掛けていた。バーチャルリアリティであるGBNでは肉体的な披露は無い。今回の場合は精神的に疲れたといった感じか。

「最初は難易度を下げるためだったんだけどな」

 タクミが苦笑いを見せる。

「でもタクミ殿がダブルオーに付けてくれた羽根大活躍でありました!」

 そういう意味では、意味ダブルオーの試運転という当初の目的は達せられたと言える。

「お二人はリアルで知り合いなんですか?」

「まぁな」

「あ、あの、あんなことの後でアレなんですが、私とフレンドになっていただけないでしょうかッ!?」

 緊張からかスカートの裾をぎゅっと握るミナ。

「フレンド? 友達でありますか?」

「フレンド登録。まぁ、よく一緒に遊ぶ仲間みたいなものだよ」

 この手のゲームに関する知識が少なかったのか、キクヅキは成る程と手を叩く。

「俺で良ければ、よろしく」

「なら、小生もよろしくであります!」

「よ、よろしくお願いいたします!」

 

 

 




 この幾人ものダイバーが存在する戦場(ディメンション)で巡り会う、その可能性は決して高くない。ならば戦友よ、これは最早運命と言っても過言ではない。

次回「めぐりあい」

 
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