遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ 作:柏田 雪貴
Side遊羽
夜。他の生徒が寝静まった頃。
俺は一人ベランダで黄昏ていた。
「遅ぇな、レヴ」
遅くなる前に帰ってくると言っていたのに、もう夜だ。精霊にとってはまだ遅い時間じゃないのか?
「・・・・・・何か、あったのか」
心配だ。探しに行くか?
『・・・・・・ただいま、遊羽』
「レヴ! 遅いぞ、って、え?」
声のした方に振り返ってみれば、レヴがどんよりした空気と共に佇んでいた。
「どうしたんだ? やっぱり何かあったのか?」
余計心配になって訊いてみた。
『いや、問題ない』
いやいや、そんな空気で言われてもな・・・・・・。
「何かあったなら話してくれよ、レヴ」
『・・・・・・なぁ、遊羽』
俺は大人しく続きを待つ。
『・・・・・・私の出番、少なくないか?』
・・・・・・は?
「え、そんなことか?」
『何を言っている。重要なことだ』
はぁ~~~。そんなことかよ。心配して損した気分だぜ。
「俺としては、お前は家族みたいなものだ」
『ああ。私も遊羽を家族だと思っている』
「そんな家族を、戦いに出したいか?」
『・・・・・・そうか』
俺の言いたいことが伝わったらしい。
『それを聞いた安心した。私は遊羽の役に立てていないのではないかと思ってしまってな』
「役に立つ立たないじゃねぇだろ、家族ってものは」
『そうだな』
・・・・・・ヤバい。くっさいこと言ってしまった。後で後悔しそうだ。具体的には布団の中で。
遊羽SideOut
ーーーーーーーーーー
Side戦
「あ~、寒いな」
夜。皆が寝静まった頃。
布団に入って寝ようとしたんだけど、どうにも寒くて寝れなかった。
「・・・・・・お風呂行こ」
先程入ったばかりだけど、寒いんだから仕方ない。僕は布団から出た。
「あれ? 永野さんもお風呂かな」
部屋は班ごとだ。如月くんはさっきからベランダで黄昏てるからいいにしても、永野さんの布団も空っぽだった。真宮さんと四谷くんはぐっすり寝ている。・・・・・・寒くなったのって如月くんが窓を開けてベランダに出たからかな。
「それよりお風呂っと」
僕は部屋を出て大浴場に向かう。
「あれ、先生」
「遊民さんですか。あなたもお風呂に?」
大浴場の前のマッサージチェアに、異次元の女戦士似の先生が座っていた。
「はい。どうにも寒くって」
「そうですか。永野くんも入っていますから、仲良くしてくださいね」
あれ? 僕、そう言えば永野さんに負けたような? 早速、如月くんとの約束破っちゃったような?
・・・・・・あれはノーカンだね。運命力も実力の内とか僕知らない。あのままだと毎ターン五枚ドローとかしそうだし。
脱衣場で服を脱ぎ、腰にタオルを巻く。永野さんいるし。
ということで、準備オーケー。
ガラガラガラ
「あ、永野さん。やっぱりいたんだ」
僕は永野さんの隣に腰を下ろした。
「・・・・・・は? え? え?」
あれ? よく見れば、永野さんの胸にラーの翼神竜が二つ・・・・・・。
「うわあああぁぁぁぁあああ!?」
お風呂に永野さんの悲鳴が響き渡った。
戦SideOut
ーーーーーーーーーー
遊羽Side
戦と永野がいない。ま、風呂にでも行ったんだろう。
・・・・・・部屋の隅でジャンが落ち込んでんだけど。床に『の』の字書いてるんだけど。
「あーっと、何かあったのか、ジャン」
さすがにスルーできずに声を掛けた。
『聞いてくだされ遊羽殿ぉぉぉお!』
ヤッベこれ長くなる。
ーーーーーーーーーー
一時間後
・・・・・・話をまとめると、自分が帰って来たのに主がいなくて寂しいし、部屋の過半数がいなくて怖いしと、踏んだり蹴ったりだったらしい。この話に一時間かかった。嘘だろありえねぇ。
「俺らはベランダにいたぞ」
『何やらくっさいことを言っておりましたな』
「グハァッ」
お前ら、まだ布団の中じゃねぇぞ・・・・・・。
『ゆ、遊羽殿ぉぉぉお!?』
『希望の花が咲いているな』
羞恥心を誤魔化すために鉄華団団長の力を借りた俺は、気を取り直してジャンに向き合う。
「戦ならたぶん風呂だぞ。それまで待ったらどうだ?」
『なんと! 背中を流しに行かねば!』
「さわれねぇだろ」
『風呂くらいゆっくりさせてやってはどうだ?』
同じくさわれない俺の代わりにレヴがジャンを止める。・・・・・・精霊同士だとさわれるのな。
遊羽SideOut
ーーーーーーーーーー
Side戦
「あぅ・・・・・・もうお嫁に行けない・・・・・・」
お風呂の隅で『の』の字を書く永野さん。一時間前からずっとあんな感じだ。
・・・・・・男装していたのが悪いとか、口が裂けても言えないね。
「貰い手がいなくても、僕で良ければもらうから」
元いじめられっ子でパッとしない外見の僕で良ければ、だけど。
「・・・・・・ホント?」
「うん」
とりあえず安心させないと。先生を呼ばれたら退学は確実だ。
「・・・・・・うぅ。ま、嘘泣きだけどね!」
元気になったらしい永野さん。目の下のあれは涙じゃなくてお湯なんだろう。頬が赤い気がするのも、のぼせたからなんだろう。
「それにしても、何で男湯に?」
「・・・・・・先生がいて、女湯に入れなくてね」
・・・・・・異次元の女戦士似の先生。元凶はあなたですか。
「というか、先生方は君の男装を知らないの?」
「校長先生しか知らないよ」
・・・・・・僕が全て悪いわけじゃなさそうだ。良かった。
「というか、何でキミはそんなに落ち着いているのッ!?」
ちょっと正気に戻っちゃったらしく、耳まで真っ赤に染まる。真紅眼もびっくりなくらいの赤さだ。
「自分より取り乱してる人がいると、冷静になれるものだよ?」
「あれぇ私がおかしいのかな!?」
「おかしい・・・・・・こんなの絶対おかしい・・・・・・」とか呟く永野さん。・・・・・・そういえば、僕ずっと永野『さん』って呼んでたな。
「・・・・・・どっかで気づいてたみたい」
「嘘ッ!?」
他の人にはバレてない・・・・・・といいなぁ。
「じゃ、そろそろ僕出るね」
「えッ!?」
「いや、僕ここにいちゃマズいでしょ」
先生が見回りに来たら退学決定だし。
「それじゃ、ごゆっくり」
・・・・・・もう一時間だから、ごゆっくりはおかしかったかな。
次回予告が思いつかないのでちょっとした小ネタを。
レヴ『なぁ遊羽』
遊羽「なんだ?」
レヴ『この小説って作者がドラグニティ使いたいから書いたのだったな』
遊羽「そうだな」
レヴ『なら私の出番が一回も無いのは、さすがにおかしくないか?』
遊羽「・・・・・・作者が書いてる内に、こんな展開かっこいいかな、とかやってたら、出番がなくなったみたいだな」
レヴ『・・・・・・』
ジャン『ゆーて拙者も出番一回ですぞ』
遊羽「お前、一人称『拙者』かよ」