遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ 作:柏田 雪貴
Side遊羽
トーナメント二日目。
いつものように家まで迎え来た虹花に挨拶をする。
「おはよう、虹花。どした? 浮かない顔して」
「おはようございます、遊羽。昨日、遊民くんに負けたことが、意外と悔しくて」
・・・・・・戦に、負けた?
「え、戦の対戦相手って虹花だったのか」
「はい。遊羽は先に帰ってしまったので知らなかったんでしょうけど」
・・・・・・普通、そういうのってバラけるじゃん?
「なら、次勝てば戦とのデュエルか」
戦とちゃんとデュエルするのは、あの日以来だな。
「そういえば遊羽」
「ん? 何だ?」
「デュエルしていて、楽しいですか?」
? 何で?
「デュエルは勝つか負けるかだ。楽しむものじゃない」
俺の回答に、虹花少し悲しそうな顔をした。
「そうですか」
俺はその顔を見ていられなくて、話題を変えた。
「今日の俺の相手って誰なんだ?」
「・・・・・・行けばわかります。きっと、驚きますよ」
えぇ・・・・・・。マジで誰だよ・・・・・・。
ーーーーーーーーーー
それで、その対戦相手なんだが。
「よう、遊羽。久しぶり♪ 楽しんでる?」
まさか、コイツとはな。
「久しぶりだな、息吹。全然楽しくねぇよ」
龍塚 息吹。ワンキル・ソリティア研究会の会長にして、手鞠の兄。
そして、俺のライバル。
「え~! 久々のデュエルなんだから楽しもうよ♪」
『そうだよ~、楽しもうよ~』
そして、アイツの精霊。オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン。・・・・・・の、擬人化状態。
「テメー、相変わらずドラゴン擬人化派かよ」
擬人化して美少女になってるのが更に癪だ。
「そーゆー遊羽こそ、まだドラゴン擬人化否定派なの? 遅れてるね♪」
『時代遅れ~』
よし、ぶっ飛ばそう、コイツら。
『さぁ、デュエル開始です!』
永野、本当に何で男装してるんだ? それだけはわからん。
「「デュエル!」」
龍塚息吹
LP8000
如月遊羽
LP8000
「先攻はオレがもらうよ♪ オレのターン」
息吹が先攻? アイツのデッキは後攻有利のハズだが。
『油断するなよ、遊羽』
おう。わかってるって。
「オレは儀式魔法、高等儀式術を発動♪ デッキのオッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴンをリリースして、オッドアイズ・グラビティ・ドラゴンを儀式召喚!」
オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン ☆7 攻撃力2800
大地の力を持つ虹彩龍が現れる。
「チッ、ソイツかよ」
確か、バーンモンスターだったハズ。
『正確には、ライフコストを強要してくるモンスターだ』
解説どうも、レヴ。
「オレはこれでターンエンド♪」
龍塚息吹
LP8000 手札3
場 メイン:オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン
「俺のターン、ドロー!」
まずは、あのモンスターをなんとかしねぇと。下手すりゃこのターンでやられる。
「俺も高等儀式術を発動だ! デッキの青眼の白龍を墓地へ送り、儀式召喚するぜ。来い、ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン!」
ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン ☆8 攻撃力4000
「ライフ500払ってね~」
「わかってるぜ」
如月遊羽
LP8000→7500
「バトル! カオス・MAXの攻撃! カオスマキシマムバースト!」
カオス・MAXのブレスによって、グラビティが吹き飛ばされる。
龍塚息吹
LP8000→6800
「ハハハッ! 早速対処してきたね♪」
「俺はカードを伏せてターン終了だ」
如月遊羽
LP7500 手札3
場 メイン:ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン 伏せカード:一枚
「オレのターン、ドロー♪」
さて、次はどんなモンスターが来る?
「オレはオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンとEMオッドアイズ・ユニコーンで、ペンデュラムスケールをセッティング!」
ペンデュラムスケール 1ー8
「これでレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能! 感じろ、龍の息吹! 吹き荒れろ、俺の愛! ペンデュラム召喚! 来い、オッドアイズ・ファントム・ドラゴン! EMオッドアイズ・ライトフェニックス!」
オッドアイズ・ファントム・ドラゴン ☆7 攻撃力2500
EMオッドアイズ・ライトフェニックス ☆5 攻撃力2000
幻影の力を纏いし虹彩竜と二色の眼を持つ不死鳥が、天空の振り子から現れる。
「バトル! ファントムでカオス・MAXを攻撃! 夢幻のスパイラルフレイム!」
『おおっと! 龍塚くん、攻撃力の低いモンスターで攻撃したぞ? どういうことだ?』
チッ。永野め、余計なことを。
「レディースエ~ンドジェントルメ~ン! おっと、今回はボーイズエンドガールズかな♪ お楽しみの時間だ!」
コイツのエンタメが始まった。
「EMオッドアイズ・ユニコーンのP効果発動! オレのオッドアイズモンスターが攻撃した時、オレの場のEM一体の攻撃力分、その攻撃力を上げられるよ♪ ユニコーン・チャーム!」
PゾーンのEMオッドアイズ・ユニコーンの角から光が降り注ぎ、ファントムを包む。・・・・・・おいこらファントム。いくら影のモンスターだからって、露骨に嫌そうな顔をするな。
オッドアイズ・ファントム・ドラゴン 攻撃力2500→4500
ファントムのブレスにより、カオス・MAXが粉砕される。
如月遊羽
LP7500→7000
「更に、ファントムの効果だ♪ 相手に戦闘ダメージを与えた時、オレのPゾーンのオッドアイズの数×1200ダメージを与えるぜ! 幻視の力 アトミック・フォース!」
「うおッ!」
如月遊羽
LP7000→4600
「EMオッドアイズ・ライトフェニックスで追撃!」
「クソッ! 受けるぜ」
如月遊羽
LP4600→2600
「オレはこれでターンエンド!」
龍塚息吹
LP6800 手札0
場 メイン:オッドアイズ・ファントム・ドラゴン EMオッドアイズ・ライトフェニックス Pゾーン:オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン EMオッドアイズ・ユニコーン
「俺のターン!」
言いながら、デッキのカードを引き抜く。
そっちがペンデュラムなら、俺もだ!
「俺はドラゴン・目覚めの旋律を発動! 手札一枚をコストに、デッキからオッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴンと青眼の白龍を手札に加えるぜ」
行くぜ!
「俺はオッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴンと、超天新龍オッドアイズ・レボリューション・ドラゴンで、ペンデュラムスケールをセッティング!」
ペンデュラムスケール 0ー12
「これでレベル1から11のドラゴン族が同時に召喚可能! 刻め、魂の鼓動! 舞い踊れ、大いなる竜! ペンデュラム召喚! 来い、青眼の白龍! レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン!」
青眼の白龍 ☆8 攻撃力3000
レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン ☆10 攻撃力2800
「レダメの効果だ!墓地から青眼の白龍を特殊召喚!」
青眼の白龍 ☆8 攻撃力3000
「レベル8が二体。エクシーズか♪」
「俺は青眼の白龍二体を墓地に送る!」
「あれ?」
「融合召喚! 青眼の双爆裂龍!」
青眼の双爆裂龍 ☆10 攻撃力3000
二体分の首を持った白龍。
「へぇ。そんなモンスターまで入れてたんだ♪」
「あぁ。この状況にはピッタリだろ?」
だからオルタじゃなくてこっちにしたんだ。・・・・・・そう考えると、あそこまで無理して手に入れる必要もなかったような?
「バトル! 双爆裂龍の攻撃! ツインバーストストリーム!」
二つの首の片方が放ったブレスにより、幻影龍が吹き飛ぶ。
龍塚息吹
LP6800→6300
「もう一度だ! ツインバーストストリーム!」
もう片方がブレスを放つ。かと思いきや、また同じ首がブレスを放った。おい、もう片方サボんな! 楽するな!
龍塚息吹
LP6300→5300
「あ痛たたたた」
「まだだぜ! レダメの攻撃!」
攻撃名は考えてない!
龍塚息吹
LP5300→2500
「俺のターン終了だ」
如月遊羽
LP2600 手札0
場 エクストラ:青眼の双爆裂龍 メイン:レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン 伏せカード:一枚
「ライフが並んじゃったな♪ オレのターン!」
お互いに、手札は0。トップデックで勝敗が決まるか、それとも・・・・・・。
「お前が融合なら、オレも融合だ! オッドアイズ・フュージョン発動!」
あ。エクストラデッキで融合するとかいうヤベー奴じゃん。
「オレの場にモンスターが存在せず、相手の場にモンスターが二体以上いれば、エクストラデッキのモンスターも融合素材にできる!」
エクストラデッキからオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンとEMオッドアイズ・ライトフェニックスが渦に巻き込まれる。
「爆炎纏いし虹彩龍よ! 二色の不死鳥と交わり、雷の力を宿せ! 融合召喚! オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!」
オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン ☆7 守備力3000
雷を纏った虹彩龍が、渦から現れる。
「ボルテックスが特殊召喚に成功した時、相手のカード一枚を手札に戻す! ストームバニッシュ!」
二首の白龍が虹彩龍の翼から起こった風によって吹き飛ばされる。
「守備表示か? ずいぶん弱気だな?」
「そう挑発しなさんなって♪ これでオレはターンエンド」
龍塚息吹
LP2500 手札0
場 エクストラ:オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン
「俺のターン、ドロー!」
『気をつけろ遊羽。ボルテックスには効果の発動を無効にして破壊する効果がある』
っと、そうだったな。忘れてた。
「俺はレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの効果発動!」
「ボルテックスの効果発動! ファントムをデッキに戻して、それを無効にして破壊する! ボルテックス・ジャッジメント!」
レッドアイズが咆哮するも、ボルテックスの雷によって黒こげとなる。元々黒いからよくわかんねぇけど。
だが、これで邪魔するものはなくなった!
「俺は墓地の青眼の白龍とカオス・MAXを除外! 来い、終焉龍 カオス・エンペラー!」
終焉龍 カオス・エンペラー ☆8 攻撃力3000
「リバースカード、タイラント・ウィング! カオス・エンペラーに装備!」
終焉龍 カオス・エンペラー 攻撃力3000→3400
「バトルだ! カオス・エンペラーでボルテックスを攻撃!」
カオス・エンペラーが翼でボルテックスに往復ビンタをする。・・・・・・もう突っ込まねぇぞ。
「うおぅ!? まさかの やられ方!」
「俺はこれでターンエンド」
タイラント・ウィングが輝きを失い、カオス・エンペラーから崩れ落ちる。・・・・・・驚くな! そういう効果なだけだから! いちいち人の顔を見るな! 子供かッ!?
終焉龍 カオス・エンペラー 攻撃力3400→3000
如月遊羽
LP2600 手札0
場 メイン:終焉龍 カオス・エンペラー
「・・・・・・オレのターン!」
気合いと共にデッキからカードをドローする息吹。そして、俺を見るなりニカッと笑う。
「楽しいな、このデュエル♪」
・・・・・・楽しい?
「何の冗談だよ。デュエルは優劣を付けるもので、楽しむものじゃねぇだろ?」
「そう? その割には、口角が思いっきり上がってるよ♪」
そう言われ、思わず口元に手をやる。・・・・・・確かに、俺は笑っていた。
「・・・・・・へぇ。俺は今、楽しんでんのか。この状況を」
「そうみたいだな♪ オレは強欲で貪欲な壺を発動! デッキから十枚除外して、二枚ドローする♪」
ッ! ここでドローカードを!?
「来た! 出番だ、オッドアイズ!」
『待ちくたびれたよ、マスター!』
まさか、ここで引いたのか!? 精霊のカードを!!
「オレはセッティング済みのペンデュラムスケールで、ペンデュラム召喚! 来い、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ☆7 攻撃力2500
二色の眼を持つ虹彩龍が、フィールドを踏みしめる。
観客にはドラゴンに見えているが、精霊のみえる者には美少女に見えているという状態だ。
『いっくよー!』
「だが、その攻撃力じゃカオス・エンペラーは倒せないぜ」
「誰もカオス・エンペラーに攻撃するだなんて言ってないよ♪ 魔法カード、螺旋のストライクバーストを発動だ! カオス・エンペラーを破壊!」
オッドアイズのブレスによって、カオス・エンペラーが破壊される。
「バトル! オッドアイズでダイレクトアタック! 螺旋のストライクバースト!」
『がお~!』
観客にはオッドアイズがブレスで俺を攻撃しているように見えているだろうが、実際には美少女がブレスで俺を攻撃している。あんまり痛く感じないのはそのせいだろう。
如月遊羽
LP2600→100
「オレはこれでターンエンドだ♪」
ってヤベェ! ライフがもう100しかねぇ!
「・・・・・・俺のターン」
ここで、何か引ければ。アイツを、ドローできれば。
「ドロー!」
引いたカードは・・・・・・。
「ペンデュラム召喚! 来いッ! ドラグニティアームズ-レヴァテイン!」
ドラグニティアームズ-レヴァテイン ☆8 攻撃力2600
俺の相棒。俺の家族。俺が最も信頼するカード。
「頼むぜ、レヴ!」
『頼まれた!』
俺の出したモンスターに、息吹とオッドアイズが唖然とする。
『ここでレヴが来るか~』
「・・・・・・もしかしたら、とは思ってたけどね♪ あるんだろ、あのカードが!」
もちろんだ!
「レヴの効果発動! 墓地のドラグニティ-ブランディストックを装備! これで二回攻撃が可能!」
レヴの手に、青い槍が現れる。
「『・・・・・・行くぜ(ぞ)ッ!!』」
「レヴで攻撃! レヴァンティンスラッシュ!」
『ハアァァァァ!!』
レヴが青い軌跡を残しながらオッドアイズを斬りつける。
『あちゃ~。ごめんね、マスター』
「気にするなよ♪」
龍塚息吹
LP2500→2400
「もう一度だ! レヴで攻撃! レヴァンティンスラッシュ!」
『ハアァァッ!!』
レヴが青い槍を大きく振りかぶる。
「『これでトドメだ!』」
その槍が、息吹を貫いた。
龍塚息吹
LP2400→0
ーーーーーーーーーー
デュエルが終わった後
「おい、息吹」
俺は息吹の控え室まで来ていた。
「どうしたんだ、遊羽?」
『どうしたの~?』
「どういうことだ」
とぼけるな、と目で伝える。
「お前はワンキル・ソリティア研究会の会長だろ。もっと上手いデュエルが出来たハズだ」
俺の言葉に、軽く肩をすくめる息吹。
「オレはさ、お前に楽しんで欲しかったんだよ。遊羽」
・・・・・・俺に?
「お前、この学校でずっと一人だっただろ。精霊のことで、周りが全部敵だったハズだからね」
『・・・・・・息吹、君は、まさか』
「そう。オレはお前に楽しんでもらうために今日デュエルしていたんだ。お前からデュエルを楽しむ気持ちを奪ったのは、他ならぬオレ達だからね」
「・・・・・・」
「デュエルを楽しんでいたお前から、その気持ちを奪ったから。それを思い出させれば、贖罪になるかなって」
「・・・・・・お前は、そんなことで」
俺に、楽しんでもらうために、あんなデュエルを。
「まぁ、エンタメデュエルはいつもなんだけど」
「だよな」
そう言えばそうだった。危ない危ない。流されるところだった。
「・・・・・・今、俺の心を読んだか?」
「あ、ヤベッ」
お前、今ヤベェって。
「さ、さて。何のことかな~」
嘘つくの下手ッ!? 口笛下手ッ!?
「じゃ、じゃあオレはこの辺で! シーユーアゲイン!」
『し~ゆ~』
「あ、おい待てこらッ!」
って逃げ足速ッ!? 精霊共々速ッ!?
「・・・・・・ったく。アイツめ」
『良かったな、遊羽』
何がだよ、レヴ?
『これで君は、また楽しいデュエルが出来るようになった。恐らく、次のデュエルも』
・・・・・・そうか。
「今から楽しみだ。戦とのデュエル」
次回は戦のデュエルです。
前の遊羽のデュエルで、レヴの出番が消えたので今回は活躍してもらいました。