遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ   作:柏田 雪貴

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デュエルなしです。


二章
プロローグ


 都会と田舎の間のような町『アベシ』。町の名前なんて今まで出て無かっただろとかそういうツッコミは受け付けない。

 

 その町のデュエルスクールで先日行われた、中間テストトーナメントという頭がおかしいとしか思えないイベントが終わってから、数日後。

 

「おはよう、遊羽くん、真宮さん」

 

「よう、戦」

 

「おはようございます、遊民くん」

 

 今日も一緒に登校してきた遊羽と虹花に挨拶をする戦。

 

「あ、遊羽。お弁当を渡すのを忘れていましたね。どうぞ」

 

「いつもありがとな、虹花。昼休みが今から楽しみだ」

 

 席に着くなり自分のカバンから風呂敷包みを取り出した虹花は、そのままそれを遊羽に渡した。

 

「・・・・・・二人って、本当に仲がいいよね。結婚しないの?」

 

 そのやりとりを見た戦が、思ったことをそのまま口に出した。

 それに対し、呆れたような顔をする二人。

 

「何言ってんだ戦。まだあと二年足りないだろ?」

 

「そうですよ。私はもう結婚できますが、遊羽はまだできないんです」

 

「いや、言いたいのはそこじゃないんだけど・・・・・・」

 

 ツッコミ役の筈の虹花までそんなことを言うなんて、といった心境なのだろう。戦の首筋には冷や汗が浮かんでいる。

 

「遊民くんは高等部からここに来たんだったね。中等部の頃から二人はあんなだよ」

 

「・・・・・・うわぁ」

 

 解説をする遥。戦は何を言えばいいのかわからない、といった様子だ。

 

「慣れろ。それが一番だ」

 

 春樹もこの状況には慣れている。どちらかと言うと、これについて考える事をやめた、というのが近いかもしれない。

 

「皆さん、席に着いてください。ホームルームを始めます」

 

 そんな状況に異次元の女戦士に似ている担任の女教師が教室に入ってくる。戦は席につく事でその場をやり過ごした。そんな大層なことでも無かったのだが、動揺していた彼は気付かない。

 

「来週から夏休みとなりますが、羽目を外し過ぎないようにしてください。それと、如月くんは昼休みに校長室まで。先日のトーナメントの景品カードを渡すそうです」

 

 端的に要件だけを言われ、即解散となった。一年一組のホームルームはいつもこんなものだ。

 

「一時間目はエジプトのデュエル史か。確かヒエログラフの宿題があったな」

 

「う~ん。どう考えても。高校生のやることじゃないよね」

 

 去年までは一般高校にいた戦が軽く呟く。デュエルスクールはデュエルが全て、とでも言うようにデュエルについて学ぶ。エジプトが起源とされているデュエルモンスターズだ。そのエジプトについて学んでも、何ら不思議はない。無いったら無いのである。

 

『最近の学生は大変なのですな。拙者、精霊で良かったですぞ』

 

 戦の中でジャンク・ウォリアーの精霊たるジャンがこっそりと言う。

 

「こら、勝手に出てきちゃ駄目でしょ」

 

『呟くくらい、許して欲しいですぞ!』

 

 そう。戦の中で、だ。

 

 先日のトーナメントの最後のバトル。そこでぶつかり合った二人の精霊は力が強くなり、カードから離れて行動することができるようになったのである。

 加えて、精霊の見えない人間にも見えるように出来たり、物や人に触れるようになったりと、精霊としての格が上がったのだ。

 そして今は、レヴもジャンもそれぞれ主の中にいる。

 

『あらあら。精霊として強くなるのって大変なのね。私は遠慮したいわね』

 

「・・・・・・そうか」

 

 ディペがからかうようにジャンに言うと、少しだけ春樹が悲しそうな顔をする。ディペがそのままでいれば、ディペと自分は触れ合えない。そんなこと考えたのだろう。

 

『あ、ごめんなさい、春樹! 別に、春樹をどうでもいいと思っているわけではなくて・・・・・・』

 

「いや、わかっている。気にするな」

 

 春樹の様子からそれを察したディペ。あわててフォローをするが、春樹の雰囲気は変わらない。

 

「オレはディペの意志を優先する。お前は好きなようにしていいんだ」

 

『春樹・・・・・・』

 

 いいムードだが、精霊の見えない人からすれば、独り言を呟いている不審者な春樹であった。

 

ーーーーーーーーーー

 

 午前の授業が終わり、購買で遊戯王チップスとドローパンを買った戦。教室に戻り、自分の席につく。

 

(さて、何が出るかな?)

 

 競争率の高いこの二つだが、今日は運良く授業が早く終わったため、買うことができたのだ。開けるのが楽しみでならない。

 

(・・・・・・スクラップ・フィスト、だね)

 

 遊戯王チップスの方は彼の欲しいカードが出たようだ。スクラップ・フィストは入手が難しく、彼も一枚しか持っていなかったため、これは嬉しいラインナップだった。

 

『ドローパンの方は何が入っているのでしょうな? 早く開けてくだされ』

 

 昼休みの教室には人が少ない。それを良いことに、好き勝手言うジャン。

 以前まではパンの中にカードが入っていたドローパンだが、現在はパンを包む袋にカードが入った親切設計となっている。その袋を開け、戦はカードを取り出す。

 

「えーと、『暴走パック』・・・・・・?」

 

 中から出てきたのは、カード一枚ではなく、珍しい『パック型カードセット』だった。一パック十枚入り。

 

「地獄の暴走召喚に暴走召喚師アレイスター、暴走する魔力が二枚に暴走闘君が三枚、それと暴走魔法陣も三枚・・・・・・。うわぁ」

 

 パックの中身に恐怖すら覚える戦。

 アレイスター関連は使う予定がないが、地獄の暴走召喚と暴走闘君は彼のデッキにぴったりのカードだった。

 

『・・・・・・主殿、デッキの脳筋度合いが上がった気がしますぞ』

 

「うん、僕もそう思う」

 

 実際、戦は自分のデッキが脳筋であることは自覚しているが、それでも使いやすいのだから仕方がない。

 どうしたものかと校庭に視線を向けると

 

「今日こそ白黒はっきりつけようではないか! 我ら青眼クラブと!」

 

「我ら真紅眼クラブ、どちらが優れているのかを!」

 

「「「「「青眼! 青眼! 青眼!」」」」」

 

「「「「「真紅眼! 真紅眼! 真紅眼!」」」」」

 

 と、髪を白く染め、青いコンタクトレンズをした集団(恐らく青眼クラブ)と、髪を黒く染め、赤いコンタクトレンズをした集団(多分真紅眼クラブ)が向き合ってデュエルディスクを構えていた。

 デュエルが開始されれば、ワンキルの嵐が巻き起こるだろう。

 

 頭が痛い、というように眉間を抑える戦だった。




ドローパン 定価350円
遊戯王チップス 定価100円
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