遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ   作:柏田 雪貴

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今回、自分で書いててかなりクサいなと思いました。

デュエルなしです。


異変

(遊羽くんと真宮さんは休みかな? 今日は来てないみたいだけど・・・・・・)

 

 戦がスクラップ・フィストと暴走パックを手に入れた翌日。遊羽と虹花の姿は学校になかった。

 

「おはよう遊民くん。どうしたんだい?」

 

 二人を心配していた戦に、登校してきた男装女子が声をかけた。

 

「おはよう、永野さん。遊羽くんと真宮さんが来てないみたいなんだ。いつもはこれくらいの時間に来るのに」

 

 本当に心配そうに言う戦。遥は二人の登校時間を把握しているらしき戦に若干恐れを抱く。

 

「それで?」

 

「いや、女子同士で何か連絡とかなかったかな、と思って」

 

 サラリと遥が隠していることを会話に出す戦。遥は焦って声を荒げる。

 

「ちょ、遊民くん!? 何でそれを言っちゃうのさ! 他の人にバレたらどうするんだい!?」

 

 突然声を荒げた(戦の主観)遥に、キョトンとする戦。

 

「え、だってクラスの全員が気付いてるよ? それに、皆なら聞こえないフリくらいしてくれるし」

 

「な!?」

 

 本人以外が知らなかった事実を暴露してしまう戦。クラスの面々も『あちゃー、とうとう言っちゃったかー』とは思ったが、顔に出したのは数名だ。何このクラス超優しい。

 しかし、その数名の反応に気付いてしまう遥。デュエリストは洞察力が鋭いのだ。

 

「ふえ!? ふえぇえ!?」

 

「? どうしたの、永野さん」

 

 顔を赤くして思い切り動揺する遥。自分のせいとは欠片も気づかない戦。

 

(何だろう、動揺している永野さんを見てると、凄く興奮する)

 

 いじめられっ子だったため気付かれていないが、彼はかなりのSである。本人が自覚していないからさらにタチが悪い。

 

「あ、ごめんね。まさか、周りが気付いていることに気付いてないとは思わなくて・・・・・・」

 

 無自覚にトドメを刺した戦。

 

「ふえぇぇえ!? ・・・・・・ちょっと、一人にして・・・・・・」

 

 とうとう限界を超えたのか、自分の席に突っ伏する遥。そんな姿にすら快感を覚える戦。

 

 天然ドS少年、遊民戦の誕生だった。

 

ーーーーーーーーーー

 

 昼休みになり、早速購買に走る戦。お目当てはドローパンと遊戯王チップスだ。

 

「ラッキー、二日連続で買えた」

 

 そう言いながら最後のドローパンに手を伸ばす戦。しかし、ドローパンを掴んだのは彼一人ではなかった。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 戦の視線の先には、二年生とおぼしき女子生徒がいた。

 

「・・・・・・何スか? 最近の後輩は譲り合いの精神がないッスね。こういう時は先輩に譲るものッスよ」

 

 戦はただ驚いて固まっていただけだったのだが、女子生徒の態度に少し怒りを覚える。

 

「先輩こそ、可愛い後輩に譲ってくれませんか? ほら、先輩の方が大人でしょう?」

 

 ニコニコと、笑顔で圧力をかける戦。不機嫌そうに彼を睨む女子生徒。

 緊迫した空気を破ったのは、同時に鳴った二人のケータイの着信音だった。

 

「・・・・・・ここは半分にしませんか? カードについては後にして」

 

「・・・・・・そうッスね。このままだと、他の人の迷惑にもなるッスから」

 

 そう言って、どちらともなくドローパンから手を離し、ケータイの確認をする。

 

「「ッ!? 遊羽(くん)から!? ・・・・・・え?」」

 

 再び顔を見合わせる二人。

 どちらも、面白いくらいにポカンとしていた。

 

ーーーーーーーーーー

 

 放課後。

 

「すいませんでした。遊羽くんの知り合いとは知らずに」

 

「いや、こちらこそ申し訳ないッス。自分も大人気なかったッス。カードは君のでいいッスよ」

 

「ありがとうございます」

 

 遊羽のメールに書いてあった場所、学校の図書室。その席の一つで謝罪しあう二人。

 

「へぇ。何か面白いことがあったみたいだね♪ 後で聞かせてよ」

 

『聞かせて聞かせて~』

 

 そこには、彼ら以外の面々もいた。

 

「会長、うるさいんだが」

 

『あらあら。一応上司よ、春樹』

 

『さすがは主殿、何気なく女子の手を握るとは・・・・・・』

 

「何か響が謝るのを見るの、久々だなぁ。精霊もたくさんいるし」

 

 ワンキル・ソリティア研究会の会長、副会長。彼らの精霊。さらに三年生。

 息吹、春樹、オッドアイズ、ディペ、日向である。手鞠は息吹が帰らせた。メールにそう書いてあったからだ。

 

「自己紹介がまだだったッスね。自分は水瀬響ッス」

 

「あ、僕は遊民戦です。よろしくお願いします」

 

 先ほどの険悪ムードがウソのように握手を交わす二人。むしろ、一度ぶつかり合ったからこそ、お互い素直になれたのかもしれない。

 

「お、揃ってるな。ちょと集まってくれ」

 

 図書室のドアが開き、そこから遊羽が現れる。その後ろにはレヴも付いている。

 

「それで? 今日はどうしたんだ、遊羽♪」

 

「それを今から説明する」

 

 かなり真面目な様子の遊羽に、息吹は一瞬目を見開いた後、顔を引き締める。

 

「昨日、虹花が死んだ」

 

「「「「「『『『・・・・・・は!?』』』」」」」」

 

 異口同音に驚きの声を上げる。

 

「・・・・・・それ、本当?」

 

「正確には、人間として死んだ」

 

 いち早く驚きから復活した息吹の質問に、詳しい説明を開始する遊羽。

 

「レヴの羽には、持ち主の居場所を知らせる能力がある。昨日、虹花に持たせていた羽からの反応がなくなった。つまり、虹花は死んだってことになる」

 

「ちょっと待って! その羽を落としたっていう可能性は?」

 

 戦が混乱しながらも問いかける。他の息吹以外の面子は、上手く状況が飲み込めていない様だ。

 

『落としたらそれはそれでわかる。反応がなくなる、というのは持ち主が死ぬ以外にない』

 

『レヴ殿まで、何を言い出すのですかな? それならば、何故そんなに冷静でいられるのですな?』

 

 戦が動揺したことによって、逆に冷静になったジャン。

 

「確かに、もし真宮が死んだのなら、もう少し動揺すると思うのだが?」

 

『何か事情があるのね。説明を続けて』

 

 ジャンに続いて冷静さを取り戻した春樹とディペ。

 

「ああ。羽の反応が消えたのは、家の近所の公園だ。そこに、悪霊の気配があった」

 

「悪霊ッスか?」

 

 聞き慣れない単語に、首を傾げる響。

 

「悪霊っていうのは、精霊が人間の負の感情を受けて闇落ちした状態、ていうのがわかりやすいかな」

 

 解説する息吹。なお、水瀬兄妹は精霊が見える。今更か。

 

『さらに、そこには彼女の死体も無かった。この手口は、アンデットモンスターの仕業だと推測できる。更に、反応が消えた数時間後に反応が戻った』

 

「なるほど。言いたいことはよくわかった。つまり、虹花ちゃんを助けたいっつう話だな?」

 

 レヴの言葉で事態を把握した日向。しかし、まだ理解できていない者もいた。主にオッドアイズ。

 

「つまり、だ。アンデットモンスターの仕業なら、虹花は魂だけの状態か、ゾンビにされてるか、はたまたそれ以外か。まぁ、生きていることは確かだ。一度死んだけどな。なら、悪霊から虹花を取り戻したい」

 

 そういう訳だから、と遊羽はつづける。

 

「お前らの力を貸して欲しい。頼む」

 

 そう言い、頭を下げる遊羽。

 

 そんな彼に、肯定の声が掛けられる。

 

「当たり前でしょ。真宮さんを助けなくちゃ」

 

「ま、遊羽の頼みなら尚更♪」

 

「如月に貸しを作っておいて、損はないだろう」

 

「可愛い後輩のためッスからね。頑張るッスよ!」

 

「遊羽が他人を頼るなんて日が来るとはなぁ」

 

 かなり突飛な展開に、それでも協力すると言う彼ら。

 

『虹花殿も主殿のお仲間。力を貸すのは当然ですぞ!』

 

『あらあら。春樹ったら素直じゃないわね』

 

『よくわかんないけど、マスターのためなら♪』

 

 精霊達も、主に従う。若干一名(?)状況を理解していないが。

 

「・・・・・・ありがとう」

 

『感謝する』

 

 顔を上げ、少し笑う遊羽。

 その直後、力が抜けたように倒れる。

 

『遊羽!』

 

 それを支えるレヴ。よく見れば、遊羽の顔は疲労の色が濃い。

 

『すまない。先程、羽の反応が戻るまで、ずっと町を走り回っていたんだ。その羽も、虹花の手元にはないようだ』

 

 つまり、虹花を殺して攫ったモンスターが、羽に気付いたということだ。

 

「悪い、レヴ。・・・・・・そういうことだ。虹花を探すのを手伝ってくれ」

 

 その言葉に、もう一度頷く彼ら。

 

「じゃあ、早速探しに行こう! 遊羽くんは休んでて。結構疲れてるでしょ?」

 

「そうだな。悪い」

 

 そうして、遊羽は図書室にレヴと共に残った。

 その手には、公園で拾った虹花のデッキが握られていた・・・・・・。

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

(あれ、ここは・・・・・・?)

 

 虹花が目を覚ましたのは、倉庫のような場所だった。

 

(確か、生徒会の仕事が終わって、帰り道に、少年に会って・・・・・・)

 

 その場面を思い出す虹花。

 

『キミ、すごくキレイだね! それにカワイイ! そうだ、キミをボクのお嫁さんにしよう! だから・・・・・・』

 

 そう、思い出してしまった。

 

『だから、死んで?』

 

「ッ!!」

 

 そう、自分は死んだのだ。

 彼の手によって、殺されたのだ。

 

「私、わたしは・・・・・・ッ!!」

 

「あ、目が覚めた!」

 

 突然聞こえた声に、虹花は恐怖する。

 それが、自分を殺した少年のものだったからだ。

 

「やっぱりキレイだね! その服も、とても似合ってるよ!」

 

 そう言いながら無邪気に笑う少年。

 

(ッ、怖い・・・・・・!!)

 

 思わず後ずさる虹花。自分を殺した相手が目の前にいるのだから、恐怖するのは当然だろう。

 

『待て。まだネクロナイズは完了していない』

 

 倉庫の奥から響く声。それはまるで、地の底から響いたように聞こえた。

 

「そうだったね。早くしてよ、王サマ」

 

『そう急かすな。これはそう簡単なものではない』

 

 彼らの会話から、虹花は状況を判断しようとする。

 しかし、抵抗虚しく、次の瞬間には気を失ってしまった。




唐突に死んだ虹花。
アンデットモンスターの王サマ・・・・・・誰でしょうかね?
次回はデュエルする予定です。
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