遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ 作:柏田 雪貴
戦達が虹花の捜索を開始した翌日。
何も手掛かりを得られなかった彼らだが、それでも悪霊との戦いに備えるべく、お互いにデュエルをすることにした。
悪霊は基本的に夜に行動するので、昼は特訓、ということになったのだ。
「よし、それじゃあ始めるッスよ」
「うん。よろしくお願いします」
響と戦が、第二デュエル場で向かい合ってディスクを構える。
「「デュエル!」」
遊民戦
LP8000
水瀬響
LP8000
「後輩優先ってことで、先攻はあげるッス」
「ありがとうございます。僕のターン」
外野には、遊羽と日向がいる。今日も学校を休んで虹花を探しに行きたいが、自重したようだ。
「遊羽。あの戦って子、強いのか?」
「見てりゃわかる。それと、トーナメントの二位はアイツだぞ?」
遊羽の言葉に驚いた様子の日向。
「あんなひ弱そうな子が二位かー。虹花ちゃんは?」
「アイツに負けてる」
「なっ!?」
日向の認識では、虹花はかなり強い部類に入る。プロには届かないにしても、三年生相手にも十分渡りあえる、そう思っていた。
「あんまり、アイツを見くびらねぇ方がいいぞ?」
少し口角をあげながらそう言うと、遊羽は観戦モードに入った。
日向も見た方が早いと判断したのか、デュエルに集中する。
「ワン・フォー・ワンを発動! 手札一枚をコストに、デッキからチューニング・サポーターを特殊召喚!」
チューニング・サポーター ☆1 守備力300
「ってことは、シンクロデッキッスね」
誰に言うでもなく呟く響。
「機械複製術を発動! デッキからチューニング・サポーターを更に二体特殊召喚!」
チューニング・サポーター ☆1 守備力300
「調律を発動! デッキからジャンク・シンクロンを手札に加えて、通常召喚!」
ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300
蘇生効果は使わないようだ。
「チューニング・サポーターは、シンクロ素材となる時、レベル2として扱える! ジャンク・シンクロンで、チューニング・サポーター三体ををチューニング!」
3+1+1+2=7
「シンクロ召喚! おいで、パワー・ツール・ドラゴン!」
パワー・ツール・ドラゴン ☆7 攻撃力2300
「チューニング・サポーター達の効果で三枚ドロー! パワー・ツールの効果で、デッキの装備魔法三枚から、ランダムに一枚手札に加えるよ。アームズ・セレクト!」
提示されたのは、三枚の団結の力。選ぶとかランダムとかの要素は一切ない。パワー・ツールではよくあることだ。
「カードを三枚伏せて、ターンエンド」
遊民戦
LP8000 手札4
場 エクストラ:パワー・ツール・ドラゴン 伏せカード:三枚
「うわ、手札多いッスね・・・・・・。実質手札消費一枚ッスよ。自分のターン、ドローッス」
戦のデッキのぶん回り様に若干引き気味の響。しかし、彼女は二年生最強のデュエリスト。
「強欲で貪欲な壺を使って、カードを二枚ドローッス」
除外される十枚。
「E・HERO ソリッドマンを召喚ッス。効果で手札からE・HERO シャドー・ミストを特殊召喚ッス」
E・HERO ソリッドマン ☆4 攻撃力1300
E・HERO シャドー・ミスト ☆4 守備力1500
「シャドー・ミストの効果で、デッキからマスク・チェンジ・セカンドを手札に加えるッスよ。そのまま発動ッス!」
シャドー・ミストが仮面を被り、姿を変える。
何故セカンドかは後でわかる。
「変身召喚! M・HERO ダークロウ!」
M・HERO ダークロウ ☆6 攻撃力2400
見た目や効果が完全に悪役なヒーロー。怖い。
「摩天楼 -スカイスクレイパー-を発動ッス!」
デュエル場にビル群が生え、何故か夜になる。屋内なのに。
「兄妹そろってHERO。兄妹デュエリストって、デッキが似るのか?」
龍塚兄妹を思い出し、そんなことを呟く遊羽。
「いや、おれはシャドー・ミストとM・HEROだけだね。どうにも、邪神をデッキに入れてからドローできなくなっちゃって」
それを否定する日向。彼のデッキは、シルクハットなどのカードはあったものの、HEROのデッキだった。
彼らは知らないが、精霊と闇のカードは相性が悪く、彼らのHEROには下位精霊が宿っている。邪神は少ないが闇を宿している。それによって、日向はHERO達が引けなくなったのだ。
「ふぅん。それで、モンスターゲートで無理矢理出していると」
「そ。まぁ、何故かいつもデッキ枚数が危うくなるんだけど」
それもまた、HERO達の機嫌が悪いせいなのだが。
「バトル! ソリッドマンでパワー・ツールに攻撃ッス!」
『え、ウソん!?』という顔で驚くソリッドマン。パワー・ツールと響を交互に見る。
「摩天楼 -スカイスクレイパー-の効果で、攻撃力が1000上がるッスよ!」
E・HERO ソリッドマン 攻撃力1300→2300
攻撃力が上がり、ホッと一息ついた。が、それでも相打ちであることに気付き、涙目でパワー・ツールに特攻、爆発。
「「・・・・・・」」
何とも言えない、と言った表情の外野二人。命がけで戦うのがヒーローだと言われればそれまでだが、流石にあれはないだろうという気持ちもある。
「ダークロウでダイレクトアタックするッスよ!」
「リバースカード、ガード・ブロック! 戦闘ダメージを0にして、カードを一枚ドローするよ」
ダークロウが某ライダーのようにキックを放つも、現れた壁によって防がれる。あ、そのまま地面に落ちた。足を抱えてる。痛いのか? 床をタップしてギブアップの意思表示。プロレスか。
「カードを一枚伏せて、ターンエンドッス」
水瀬響
LP8000 手札2
場 エクストラ:M・HERO ダークロウ 伏せカード:一枚 フィールド:摩天楼 -スカイスクレイパー-
「僕のターン、ドロー!」
これで戦の手札は六枚。ダメージを受けていないことと伏せカードの枚数から、今日も彼のデッキは絶好調のようだ。
「魔法カード、ライトニング・ボルテックス! 手札一枚をコストに、ダークロウを破壊!」
「ッ! しまったッス!」
足を抱えてるところに運悪く雷が落ちる。それにより、ダークロウは黒こげとなった。元から黒いのでよくわからないが。
「墓地のラッシュ・ウォリアーの効果で、除外して墓地のジャンク・シンクロンを回収。おろかな埋葬発動! デッキのドッペル・ウォリアーを墓地に送るよ」
調律で墓地に送られていたラッシュ。手札にあったら脳筋パンチの後押しをしていただろう。
「ジャンク・シンクロンを通常召喚! 効果でドッペル・ウォリアーを特殊召喚!」
ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300
ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800
「ジャンク・シンクロンでドッペル・ウォリアーをチューニング!」
3+2=5
「集いし星が、鋼に打ち勝つ戦士となる! シンクロ召喚! おいで、ジャンク・ウォリアー!」
『今日も今日とて主殿のため、粉骨砕身の覚悟で臨みますぞ!』
ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300
「精霊ッスね」
元気にフィールドを飛び回るジャン。虹花が誘拐されていることを忘れそうになるくらい普段通りだ。
「ジャンク・ウォリアーの効果をチェーン1、ドッペル・ウォリアーの効果をチェーン2、更にリバースカード、暴走闘君! チェーン3! チェーン4以降だから、奇跡の蘇生を発動できる! 発動!」
チェーンに次ぐチェーンにより、デッキにピン差しの奇跡の蘇生を発動させる戦。蘇生させるのは、ワン・フォー・ワンのコストになったカード。
「墓地からザ・カリキュレーターを特殊召喚!」
ザ・カリキュレーター ☆2 攻撃力?
現れたのはない最強の電子卓上計算機。
「そのカードはっ!?」
「ザ・カリキュレーターの攻撃力は、フィールドのモンスターのレベル×300アップする!」
ザ・カリキュレーター 攻撃力?→2100
「ドッペル・ウォリアーの効果でドッペル・トークンを二体特殊召喚! 暴走闘君の効果で、攻撃力が1000アップ!」
ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400→1400
ザ・カリキュレーター 攻撃力2100→2700
「ジャンク・ウォリアーの効果! 攻撃力がレベル2以下のモンスターの攻撃力分アップ!」
ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→7800
『漲ってきましたぞ~!!』
ラッシュなしでこの攻撃力。電卓強い。
「バトル! ジャンク・ウォリアーで攻撃! スクラップ・フィスト!」
「リバースカード、威嚇する咆哮ッス! そんなの食らったら、一溜まりもないッスよ!」
「・・・・・・いいね」
あまりの脳筋さに軽く悲鳴を上げる響。その悲鳴に無自覚ながらもドS故の快感を覚える戦。ちょっと危ない。
「カードを伏せて、ターンエンド」
遊民戦
LP8000 手札2
場 エクストラ:ジャンク・ウォリアー メイン:ザ・カリキュレーター ドッペル・トークン ドッペル・トークン 魔法・罠:暴走闘君 伏せカード:二枚
(団結の力はまだ握ってるんスかね? 装備しなかったのに、何か意味が・・・・・・?)
実際はライトニング・ボルテックスのコストで除外されている。
「自分のターン、ドローッス!」
引いたカードを確認。響の口元に、笑みが現れる。
「まずはミラクルフュージョンを発動ッス! 墓地のソリッドマンとシャドー・ミストを除外することで融合を行うッス!」
フィールドに渦が現れ、そこに飛び込むソリッドマンとシャドー・ミスト。
「融合召喚! E・HEROエスクリダオ!」
E・HERO エスクリダオ ☆8 攻撃力2500
現れた闇のヒーロー。
「更に装備魔法、魔界の足枷を発動するッスよ!」
「それで、ジャンク・ウォリアーの攻撃力を100にするのか・・・・・・」
困惑しながらも遊羽は響の狙いを予想する。しかし、それは裏切られる結果となった。
「対象はエスクリダオッス」
「「・・・・・・え??」」
E・HERO エスクリダオ 攻撃力2500→100
エスクリダオの足に重い鉄球付きの足枷が取り付けられる。彼が何か悪いことをしただろうか? 登場三秒で足枷を付けられるヒーローとは如何なものか。闇属性なのが悪いのか。
予想を裏切られた遊羽と、彼女のプレイングを理解できない戦。そんな中、日向だけが状況を正確に把握していた。
(さて、自慢の妹のコンボだ。刮目しろよ?)
「魔法カード、スカイスクレイパー・シュートを発動するッス!」
「あ、そのカードは!?」
「え、何? 説明を」
事態を察し、度肝を抜かれたような顔をする遊羽。まだ自分の危機を理解していない戦。その顔は、対照的だった。
「スカイスクレイパー・シュートは、自分のE・HERO融合モンスターより攻撃力が高い相手モンスター全てを破壊し、攻撃力が一番高いモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与えるカードッス」
エスクリダオの攻撃力は現在100。戦のモンスターは全滅することになる。
「ナニソレ!?」
エスクリダオが摩天楼のビルの一番高い場所に立ち、重い足枷のせいでバランスを崩して落下。それに巻き込まれたジャン達が破壊される。
『納得いきませんぞ~!!』
ジャンの断末魔の叫びも虚しく、爆発。衝撃の余波で戦にダメージが飛ぶ。
遊民戦
LP8000→5700
「・・・・・・酷いコンボだ。俺のドラゴンデッキに対しても有効だしな」
渋い顔でフィールドを見つめる遊羽。日向はドヤ顔だ。
「墓地のシャッフル・リボーンの効果発動ッス! 魔界の足枷をデッキに戻して、一枚ドローッスよ」
マスク・チェンジ・セカンドのコストにしたカードだ。このためにセカンドをサーチしたのだ!
E・HERO エスクリダオ 攻撃力100→2500
足枷が外れ、本来の力を取り戻すエスクリダオ。まぁ、主によって封じられた力だが。
「バトル! エスクリダオでダイレクトアタック!」
エスクリダオが闇を放ち、戦を穿つ。
「あ痛たたた・・・・・・」
遊民戦
LP5700→3200
「カードを一枚セット。ターンエンドッス」
水瀬響
LP8000 手札0
場 エクストラ:E・HERO エスクリダオ 伏せカード:一枚
「僕のターン、ドロー!」
ターンが戦に移る。
『主殿主殿』
「? どうしたの、ジャン」
『あの下位精霊にぶつかったおかげで、よくわからない能力を手に入れましたぞ』
その能力とやらの詳細を耳打ちされた戦。ビミョーなその内容に困った顔をする。
『頼みましたぞ!』
「あー、うん・・・・・・」
どうしたものかと悩む戦。しかし、何か思いついたらしく、ディスクを操作し始める。
「リバースカード、戦線復帰。ジャンをもう一度場に特殊召喚!」
ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300
『ふっかぁつ! ですぞ!』
いつものようにハイテンションなジャン。
「魔法カード、融合を発動!」
「なっ、融合ッスか!?」
響が驚くのも当然だろう。戦が融合召喚を使うのは初めてなのだから。
「手札のユーフォロイドと場のジャンで融合召喚! おいで、ユーフォロイド・ファイター!」
ユーフォロイド・ファイター ☆10 攻撃力?
現れたのは、ユーフォロイドに乗るジャン。
『ゲットライド、ですぞ!』
それはトラップカードだ。
「な、何スかそのカード!?」
ユーフォロイド・ファイター。このカードは融合素材となった戦士族モンスターがユーフォロイドに乗っかっただけのモンスター! ハンバーガーが乗っかったこともあったらしい。
「ユーフォロイド・ファイターの攻撃力は、融合素材のモンスターの元々の攻撃力の合計になるよ!」
ユーフォロイド・ファイター 攻撃力?→3500
そう、攻撃力までもが乗っかっただけ! 戦士族モンスターがフェイバリットのデュエリストはだいたいやる。
「装備魔法、巨大化を発動! ユーフォロイド・ファイターの攻撃力が倍になる!」
ユーフォロイド・ファイター 攻撃力3500→7000
ユーフォロイド・ファイターの効果は、自身の元々の攻撃力を変化させる効果。巨大化も適用される。
「まだまだ! リバースカードオープン! 速攻魔法、リミッター解除! 攻撃力が更に倍になるよ!」
ユーフォロイド・ファイター攻撃力7000→14000
「な、何つう攻撃力ッスか!? 脳筋すぎるッスよ!」
その悲鳴に、無自覚ながらも確かな快楽を覚える戦。もうコイツダメかもしれない。
「バトル! ユーフォロイド・ファイターでエスクリダオを攻撃! スクラップ・ユーフォアタック!」
『ぶっちゃけ機械族にすれば誰でもよかったとか言っちゃダメですぞ!』
そんな叫びと共にエスクリダオにそのなんとかアタックを行うジャン。ただの特攻である。
水瀬響
LP8000→0
「・・・・・・何か、自分のコンボとか、脳筋の前では無力ッスね」
デュエルに負け、幾分かトーンの下がった声で呟く響。それはまるで、戦と戦ったデュエリストの心全てを代弁しているかのようだった。
「ま、しょうがないさ。気にしないほうがいいぞ。ところで遊民くん、次はおれとやらない?」
「先輩が気にしてるんじゃねぇか」
コントのようなやりとりと共に両者に声をかける外野達。
『ジャン、新能力とは何だったのだ?』
『フフーン。なんと、拙者を素材としたモンスターに乗り移ることができるようになりましたぞ!』
そう、単なる移り変わりだ。
例えばジャンを素材としてパワーコード・トーカーをリンク召喚すれば、パワーコード・トーカーにジャンが入っている状態となる。その場合、マフラーなどの装飾品がモンスターに現れるらしい。
『なるほど。それで、デュエルの結果には?』
『全くと言っていいほど関係ありませんな』
実際は精霊がいることでドロー力が上がったりするのだが、彼らは無自覚である。
「さて、それじゃあ遊民くん。覚悟はいいかな?」
「えーと、お手柔らかに?」
妹の敵討ちに燃える日向。脳筋対策について真剣に考え始めた響。
そんな二人を見て、遊羽はため息をつくのだった。
次回、戦vs日向。
戦くん、脳筋すぎ・・・・・・。リスペクトしながらも根幹は揺らがないようです。