遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ 作:柏田 雪貴
直したので再投稿です。
夜。とある倉庫。
「大人しく投降しなさーい! ここは完全に包囲されている!」
メガホンで拡張した日向の声が壁に開いた穴から響く。
「つうわけで。テメェら、虹花を返してもらおうか」
穴を開けた張本人、遊羽とその一行は、そこに乗り込んでいた。
「クソッ! 何でここがバレたんだ! おい、王サマ!」
狼狽する少年、ゾンビマスター。
『馬鹿な・・・・・・精霊を身に纏うなど・・・・・・』
そして、遊羽の姿を見て動揺する王、ドーハスーラ。
その言葉通り、遊羽はレヴを身に纏っていた。《融合》のカードを使って。
黒い軽装を付けたような四肢に、腰と背中から生える橙色の翼。全身の鱗。揺れ動く尻尾。
その右手には、彼の身長ほどの長さを誇る大剣。
「俺の相棒の能力だ。俺と融合できる。簡単に言うと、ゼアルみてぇなもんだな」
ジャンが自身を素材としたモンスターに乗り換えができるように、レヴも《融合》のカードによって、遊羽と融合することができるのだ。ディペのナイチンゲール化、オッドアイズは各形態の衣装など、一定の力を持った精霊には、そういった特殊能力が現れる。
「クソ、クソ、クソ! 何だよそれ! インチキじゃないかよ!」
「オレからすれば、人間を殺してアンデットにする方がインチキなんだがな・・・・・・」
ため息まじりで春樹が呟く。
「こうなったら、デュエルでカタを付けてやる! 勝って、キミ達もアンデッドにしてやるよ!」
「そうこなくっちゃな」
ゾンビマスターと遊羽がディスクを構える。
(これ、僕らがいる必要なかったんじゃ?)
「もしも敵が逃げたときのための保険だよ♪ あぁ見えて、遊羽は慎重なんだ」
戦の心の呟きに何気なく返す息吹。
「・・・・・・今、心を読んだよね?」
「いやぁ何のことかなぁ!!」
全力で己の失態をなかったことにする息吹。誤魔化されたわけではないが、デュエルが始まるので戦はとりあえず置いておくことにした。
「「デュエル!」」
ゾンビマスター
LP8000
如月遊羽
LP8000
「ボクが先攻だ! フィールド魔法、アンデットワールドを発動! これでここはボク達の楽園となる!」
倉庫内が不気味な空気で満たされ、おぞましい死体の世界となる。
「続けて、ユニゾンビを召喚!」
ユニゾンビ ☆3 チューナー 攻撃力1300
現れたのは、デュエットをするゾンビ二人組。元は2人3脚ゾンビだったが、ドーハスーラの力で強化されている。
「ユニゾンビの効果! 自身のレベルを一つ上げることで、デッキから真紅眼の不死竜を墓地へ送る!」
ユニゾンビ ☆3→4
「ボクはカードを一枚伏せて、ターンエンド!」
ゾンビマスター
LP8000 手札2
場 メイン:ユニゾンビ 魔法・罠:伏せカード フィールド:アンデットワールド
「俺のターン、ドロー!」
遊羽の現在のデッキは、以前彼が使っていたWWドラグニティザボルグを更に強化したものだ。
自分のために作ったドラゴンデッキではなく、自分以外のために作ったこのデッキの方が、今は合っていると考えたためだ。
そして、彼が全力を出すためでもある。
「ザボルグがアドバンス召喚できねぇのはキツいな。つうわけで、ツインツイスター発動! 伏せカードとアンデットワールドを破壊だ!」
「リバースカード、リターン・オブ・アンデット! ユニゾンビを除外して、墓地の真紅眼の不死竜を特殊召喚!」
真紅眼の不死竜 ☆7 守備力2000
不死の名の通り、墓地から蘇るレッドアイズ。
「・・・・・・おい。まさかテメェ、精霊を悪霊化してアンデットに変えたのか!?」
「そうだよ。こんな使えない通常モンスターも、今は立派なアンデットだ。全く、感謝してほしいよね」
ゾンビマスターの何気ない言葉に、遊羽の怒りが爆ぜた。
「テメェ! ドラゴンを、レッドアイズをアンデット化しただと!! 使えないカードだと!? 虹花の分も合わせて、俺はもう怒りが収まらねぇよ!!」
彼は、なるべく冷静でいようとしていた。心を乱せば、プレイミスに繋がる。もしそれが原因で虹花を助けられなければ、悔やんでも悔やみきれない。
だが、それすらも考えられない。
「ぶっ潰す! 来い、アイス・ベル! グラス・ベル!」
WW-アイス・ベル ☆3 チューナー 守備力1000
WW-グラス・ベル ☆4 守備力1500
アイス・ベルの効果でデッキのグラス・ベルと共に特殊召喚。遊羽の
「グラス・ベルの効果でデッキからスノウ・ベルを手札に加え、アイス・ベルの効果で500ダメージだ!」
「うぐっ!」
ゾンビマスター
LP8000→7500
「スノウ・ベルの効果で自身を特殊召喚! 更にスノウ・ベルとアイス・ベルをリリース! アドバンス召喚! 来い、轟雷帝ザボルグ!」
轟雷帝ザボルグ ☆8 攻撃力2800
現れ出でる、雷の化身。彼の怒りに共鳴するかの如く、電撃が標的を穿つ。・・・・・・
「ザボルグの効果で、お互いにエクストラデッキから八枚、墓地へ送る!」
ザボルグが自ら雷を浴び、その光が両者のエクストラデッキのカードを貫いた。
「俺は旧神ヌトスの効果発動! コイツが墓地へ送られた時、相手のカードを一枚破壊だ! 墓地で眠ってろ、レッドアイズ!」
怒りながらもドラゴンに対する心は忘れない遊羽。きっちりとレッドアイズに手を合わせる。
「俺はカードを一枚伏せ、ターンエンドだ」
如月遊羽
LP8000 手札1
場 メイン:WW-グラス・ベル 魔法・罠:伏せカード
「クソ、ボクのエクストラデッキをよくも! ボクのターン、ドロー!」
ゾンビマスターのエクストラデッキは残り二枚。恐らくアンデット化したモンスターだろう。
「二体のキメラフレシアの効果で、デッキからミラクルシンクロフュージョンを二枚、手札に加えるぜ」
「構わない! おろかな埋葬を発動! デッキから屍界のバンシーを墓地へ送る! その効果で、除外してデッキからアンデットワールドを発動する!」
再び倉庫が屍の世界に包まれる。
「そのカードは・・・・・・」
虹花だ。そのカードを見た瞬間、遊羽にはわかった。
「あ、気づいた? そうそう、これ、ボクのお嫁さん! カワイイでしょ!」
無邪気に笑う少年。しかし、遊羽の怒りは増すばかりだ。
「テメェ、勝手に
「え、知らないよ。そんなの。ボクが気に入ったんだ。ワザワザ王サマに頼んでアンデットにまでしてもらったんだ、あげないよ!」
完全に虹花をモノとして扱う少年。
「・・・・・・そうか」
絶対に殺す。
遊羽の心はそれで一杯になりそうだった。
「墓地のリターン・オブ・アンデットの効果発動! 除外されているユニゾンビをデッキに戻して、このカードをセットする! 不知火の隠者を通常召喚!」
不知火の隠者 ☆4 攻撃力500
「効果で自身をリリース! デッキからユニゾンビを特殊召喚!」
ユニゾンビ ☆3 チューナー 守備力0
「ユニゾンビの効果発動だ! グラス・ベルのレベルを一つ上げて、デッキからグローアップ・ブルームを墓地へ送る!」
WW-グラス・ベル ☆4→5
「それは、グローアップ・バルブ? 一体、今までどれだけの精霊を狩ってきたんだ?」
外野から観戦していた息吹が目ざとくカードを見極める。ソリティアで使うカードだから、尚更よくわかるのだろう。
「グローアップ・ブルームの効果! 除外することで、デッキからレベル5以上のアンデットを手札に加える! ただし、ボクのフィールドにアンデットワールドがあることで、代わりに特殊召喚できる! 出すのはボク達の王サマ、死霊王 ドーハスーラ!」
死霊王 ドーハスーラ ☆8 攻撃力2800
『フハハハハハハハ! 精霊を纏いし者よ、貴様もアンデットにしてやろう!』
終わりも始まりもない
「チッ、面倒なモンスターが出てきたな。悪霊が精霊のカードを使うとか、前代未聞だぜ」
「失礼な! ボクは死霊だ! 一度死んで、王サマによって蘇った選ばれし者! そこんじょそこらの悪霊なんかと一緒にするな!」
悪霊ではなく死霊。それを統べるのが死霊王であるのは必然と言える。
「ユニゾンビのもう一つの効果! 手札を一枚墓地に送って、グラス・ベルのレベルを一つ上げる!」
WW-グラス・ベル ☆5→6
一見無意味に見えるこの行動。だが、ドーハスーラによって意味を持つ。
「ドーハスーラの効果発動! アンデット族の効果が発動したことで、場のカード一枚を除外! 消え去れ、グラス・ベル!」
(アイス・ベルの効果で)呼ぶだけ呼んで好き勝手に(効果の対象として)使うだけ使ってやる事やり切ったらまた(竜の渓谷のコストとして)捨てるだけじゃ飽き足りなくてそんな事(除外)まで―――ただでさえ(アドバンス召喚で)
なんて声が聞こえてきそうな最後だった。
「更に、今コストにした馬頭鬼の効果発動! 墓地から除外して墓地の不知火の隠者を特殊召喚!」
不知火の隠者 ☆4 守備力0
「チューナーとそれ以外のモンスター・・・・・・まさか!!」
「おい何合いの手入れてるんだ戦? フラグを立ててんじゃねぇよ」
ついついやってしまった戦。悪意はない。
「ボクはユニゾンビで不知火の隠者をチューニング! シンクロ召喚! 真紅眼の不屍竜!」
真紅眼の不屍竜 ☆7 攻撃力2400
「テメェ・・・・・・レッドアイズのシンクロモンスターまで・・・・・・」
「ネクロドラゴンの効果! お互いのフィールドと墓地のアンデットモンスターの数だけ攻撃力があがる・・・・・・ありがと、ザボルグとか使ってくれて」
「な、しまった!」
ザボルグ自身を含め、十七枚も墓地にカードを増やしてしまった。こればかりはデッキの相性もあるが、今回はそれが悪すぎた。
遊羽の墓地にはツインツイスターのコスト含めて十二枚。少年は十一枚。フィールドきは二体のモンスター。合計二十五枚。よって攻撃力は・・・・・・
真紅眼の不屍竜 攻撃力2400→4900
「バトルだ! 行け、ネクロドラゴン! 奴を焼き尽くせ!」
ネクロドラゴンのブレスが遊羽を襲う。
「ぐぁっ!」
如月遊羽
LP8000→3100
「王サマ! 頼んだよ!」
『いいだろう。食らえ、アンデット・レイ!』
ドーハスーラの杖から光が放たれ、竜の身体を貫く。
「ぐうぅぅぅ!」
如月遊羽
LP3300→300
「ボクはこれでターンエンドだ! さぁ、キミのターンだよ?」
ゾンビマスター
LP7500 手札0
場 エクストラ:真紅眼の不屍竜 メイン:死霊王 ドーハスーラ 魔法・罠:伏せカード
「俺の、ターン!」
ゾンビマスターが悪霊、もとい死霊であるせいで、デュエルのダメージはそのまま遊羽の身体へのダメージとなっている。
残りライフ300。それがどれだけ危機的状況かは、火を見るよりファイアーだ。
「ドロー!」
それでも、遊羽は折れない。
少年は、彼の大切なものに手を出した。それは、遊羽の戦う理由となり、今は彼を支えている。
(コイツは、虹花を攫い、殺し、挙げ句モンスターにした。それだけで、十分!!)
十分、殺す理由となる。
「貪欲な壺を発動! 墓地のスノウ・ベル、ヌトス、ザボルグ、キメラフレシア二枚をデッキに戻し、カードを二枚ドロー」
ちょっとキモい壺にカードが入り、鼻からカードが飛び出る。
「俺はドラグニティ-ドゥクスを召喚! 効果発動!」
ドラグニティ-ドゥクス ☆4 攻撃力1500
『我が能力により、それを無効とする』
ドーハスーラの能力により、止められる。
「なら、俺はドラグニティの神槍を発動! ドゥクスに装備!」
ドラグニティ-ドゥクス 攻撃力1500→1900
「神槍の効果により、デッキからファランクスを装備し、特殊召喚!」
ドラグニティ-ファランクス ☆2 チューナー 守備力1100
「俺はファランクスでドゥクスをチューニング!」
2+4=6
「来い、ドラグニティナイト-ハールーン!」
ドラグニティナイト-ハールーン ☆6 チューナー 攻撃力1200
「ハールーンの効果発動! 墓地のファランクスを装備する!」
『無駄だ! 我が能力により除外する!』
だが、彼には前のターンに加えたカードがある。
「ミラクルシンクロフュージョンを発動! 墓地のWW-ウィンター・ベルとアイス・ベルを除外して、融合! 冬の鈴の音、氷の音! 今交わりて、凍てつく結晶となれ! 融合召喚! WW-クリスタル・ベル!」
WW-クリスタル・ベル ☆8 攻撃力2800
舞い踊る氷の女王。
遊羽の奥の手。春樹のスターヴと同じように、モンスターの力をコピーする融合モンスター。
「クリスタル・ベルの効果発動! 墓地の混沌幻魔アーミタイルを除外して、その名前と効果を得る! クリスタル・オーダー!」
遊羽は以前、このアーミタイルの悪霊と戦ったことがあった。これは、その時の戦利品だ。もちろんオリジナルではなくレプリカだが、戦力に変わりはない。
『ぬぅ、もう我が能力は使えぬ・・・・・・』
「ちょ、何やってんのさ王サマ!」
ゾンビマスターがドーハスーラに憤慨する。能力の発動タイミングを任せたのは他ならぬ彼なのだが。
「アーミタイルの効果は、俺のターンの間、自身の攻撃力を10000上げる効果だ」
「な、攻撃力を10000上げるだって!?」
WW-クリスタル・ベル 攻撃力2800→12800
オマケで戦闘破壊されない効果もあるが、今は重要じゃない。
「これでトドメだ。クリスタル・ベルでネクロドラゴンを攻撃! 混沌のクリスタル・ブレイク!」
クリスタル・ベルが氷の塊を作り上げ、それをネクロドラゴンに投げつける。
「う、うわあぁぁぁぁあ!」
『クッ、おのれぇぇぇぇぇえ!』
ゾンビマスター
LP7500→0
「うおっ!?」
閃光、爆発。
それが晴れた時には、彼らのデッキが落ちているのみだった。
(やった、のか・・・・・・?)
浮かび上がった疑問を無視し、遊羽はそれを拾い上げ、屍界のバンシーのカードを手に取る。
「・・・・・・来い、虹花」
彼が精霊の力を注ぎ込むと、カードから光が放たれ、人の形を作る。
「・・・・・・遊、羽?」
「虹花!」
白くなった髪。冷たい身体。薄い衣服。
それでも、彼の愛する真宮虹花だった。
「よかった・・・・・・無事で、本当によかった・・・・・・」
心底安心したような声を出すと、遊羽はそのまま倒れ込む。
「!? 遊羽!」
慌てて虹花が駆け寄ると、遊羽の融合が解け、レヴが代わりに顕現する。
『クッ、やはり遊羽への負担が大きかったか・・・・・・』
見ると、ゾンビマスターからのダメージで、遊羽はボロボロだった。
遠巻きに様子を窺っていた戦達も急いで合流する。
「ゆ、遊羽くん!?」
「如月!」
「遊羽!」
三者三様に名前を呼び、容態を確認する。
(マズい・・・・・・このままだと死ぬ)
そう判断した息吹は、腰のデッキケースからカードを一枚取り出し、遊羽のディスクにセットする。
『息吹殿、それは?』
「《超再生能力》だ。これで、死ぬことはないはずだ」
ディアン・ケトでもよかったが、生憎持ち合わせていなかった。
「よくわかりませんが・・・・・・とにかく、遊羽はもう大丈夫なんですか?」
「一応は、ね」
こうして、遊羽とその一行により、虹花が攫われた事件は解決した。
(ただ、このカード、使うと相手がドラゴンになっちゃうんだけど・・・・・・死ぬよりはいいと思ってね)
二人ほど、人間ではなくなったが。
リターン・オブ・アンデットを使わなかったのは理由がちゃんとありますのでそれは次回。