遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ   作:柏田 雪貴

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冬休みなので書きたい放題。

デュエルなしです。


事件の後で

 朝の日差しに遊羽が目を覚ますと、そこは愛しのマイホーム。

 

(・・・・・・あれ、俺どうなったんだっけ?)

 

 寝起き故に朦朧とする意識をはっきりさせるべく、身体を起こそうとすると、右半身に冷たく気持ちいい感触がある。

 疑問に思い布団をどけてみれば、そこには髪の白くなった幼なじみ。

 

「・・・・・・何やってんだよ虹花ぁ・・・・・・」

 

 どこぞの団長のように叫びたい衝動を抑え、起こさないようにあくまで小声で呟く。

 

「・・・・・・すぅ、すぅ」

 

 とても癒される寝顔だ。触れたら壊れてしまいそうな程白い肌、透き通るように白い髪、そこから鎖骨までのラインと形の良い胸元・・・・・・。

 胸元?

 

「っ! 服ぐらい着ろよ」

 

 目を逸らさずに注意するが、寝ているため伝わらないだろう。

 

「ったく、寝ている間に俺が襲ったらどうするつもりだよ」

 

 無論、そんなことはしないが。具体的には後二年間。

 

「・・・・・・飯でも作るか」

 

 遊羽は虹花を起こさないようにゆっくりと布団を出ると、そのままダイニングのある一階へ降りた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「おはよう、遊羽」

 

「ああ、おはよう」

 

 聞こえてきた声に反射的に挨拶をする。キッチンで朝食を作っているらしい。

 

(・・・・・・誰が?)

 

 部屋にあるデュエルディスクを拾い、腕に装着。

 

 もし不審者ならば《満足アンカー》で強制的にデュエルをしかけ、お互いのカード効果が全て非表示になる《アンノウンパーツ》で困惑させたところを《電撃ビリビリヘルデュエルセット》で痛めつけ、最後には負けた相手の顔写真を撮って顔芸に変換してカードにする機能で一笑いする予定だ。遊羽は竜ではなく鬼かもしれない。

 

 だが、それをすることはなかった。

 

 

 キッチンでは、ドラグニティアームズーレヴァテインのレヴが、エプロンを着け、自身の好物である魚を焼いていた。因みに鮭。

 

 

「・・・・・・は?」

 

 あまりの光景に、五言でも七言でもなく絶句する遊羽。

 

「む? どうかしたのか?」

 

 棒立ちする遊羽に、レヴが訝しげな視線を向ける。

 

「いや、何してんだ?」

 

「料理だ。いくら待っても起きなかったのでな。朝食くらいならば私も作れる」

 

 レヴは完全に実体化し、右手に(フライパン)を、左手に(へら)を持っていた。

 

「ああ。昨日の出来事で、私の精霊としての力が強まったらしい。完全に実体化出来る様になった」

 

 なんでもなさそうに告げるレヴ。遊羽は自分の中でまだ寝ているものだと思っていたため、驚くばかりだ。

 ちょうどそのタイミングで、起きた虹花が階段を下りてきた。

 

「・・・・・・おはようございます、遊羽。レヴ」

 

「あ、ああ。おはよう虹花」

 

 まだ驚きが収まらないが、なんとか挨拶をする遊羽。

 

「って待て。何で虹花はレヴのことを!?」

 

 精霊の見えない彼女は、レヴの存在を知らないはずだ。何気なく挨拶していたので反応が遅れたが。

 

「昨日の夜、遊羽が寝ている間に説明してもらいました。遊羽が今までデッキを作る度にいなくなっていたのは、悪霊のカードを手に入れるためだったんですね」

 

 ギクリ、と遊羽の身体が強張る。

 

(やべ、怒られる)

 

 しかし、遊羽の予想とは異なり、虹花は遊羽を抱き締めた。

 

「・・・・・・え?」

 

 突然の行動に反応できない遊羽。その胸に、虹花は顔をうずめる。

 

「危ないことばかり、しないでください。遊羽がいなくなる度、心配していたんですよ、私」

 

 遊羽のことだから大丈夫だと思ってはいても、それでも虹花は心配していた。せめて、自分も連れて行って欲しかった。

 

「・・・・・・そか。なら、今度からは連れて行く。それでいいか?」

 

 そんな虹花の心をなんとなく感じた遊羽。それは、二人の付き合いの長さ故だろうか。

 

「ッ! はい!」

 

 虹花は、花が咲いたように笑顔になった。

 その笑顔に釣られ、遊羽も口角を上げる。

 

「・・・・・・朝食ができたぞ。冷めないうちに食べてくれ」

 

「「・・・・・・」」

 

 二人揃って赤面し、朝食が終わるまでは一言も発さなかった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 玄関を出て、二人並んで登校する。

 

 昨日のことを思えば、こうして二人揃って登校できるだけでも、かなり感慨深いものがある。

 

「・・・・・・遊羽。ありがとうございます」

 

「? 何がだ」

 

 唐突にお礼の言葉を述べた虹花に、遊羽は疑問で返す。

 

「こうして今、私が日常生活を送れているのは、遊羽のおかげです。そのことが、とても嬉しくて。つい、お礼を言ってしまいました」

 

 そう言ってはにかみながら笑う虹花に、遊羽は思わず見惚れる。

 

「ま、まぁ、虹花のためだ。他の奴だったら同じようにしていたかはわからない」

 

 遊羽が悪霊や闇のカードと戦うのは、ひとえに自分のためだ。自分の戦力が欲しいときに悪霊を狩って自分のものにし、自分の大切なものが傷つけられればやり返す。悪霊の被害があろうとも、自分に関係がなければ放置する。それが遊羽のスタンスだ。他人のために悪霊と戦うのは、精霊回収者にでも任せればいい。

 

「それに、虹花がアンデットになるのは止められなかった。アイツらの手も借りたし、俺もまだまだだな」

 

 別に、全て一人で解決しようだなんてことは思っていない。それでも、なるべく他人の手は借りないようにしたいというのが彼だ。

 

「・・・・・・そうですか。では、責任を取って結婚していただきます」

 

「おう、勿論だ。そんなの、当たり前のことだろ」

 

 登校中からバカップル丸出しの二人だった。

 

「そう言えば、私って学校に行っても問題ないんでしょうか? アンデットですよ」

 

「大丈夫だ。今は『修行に行く!』とか言って学校に来てないが、精霊で人間の姿になれる奴がいた」

 

 思い出される、《レスキュー・ラビット》の精霊の彼。

 

 息吹と一緒に精霊の姿の彼の両手両足を縛り、木の棒にぶら下げ、火にかけたあの日。

 

 動物の美容院に(無理矢理)連れて行き、バリカンでトラウマを植え付けたあの日。

 

 《ラッキーパンチ》のカードを試す、という名目の下、わざわざベヒーモスの悪霊を探してけしかけたあの日。

 

 とても楽しい思い出だ。本人にとってどうかはさて置く。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 学校につき、夏休み前の長ったらしい校長の言葉を聞き流した後の教室は、夏休みの話で一杯だった。

 

「遊羽くん遊羽くん」

 

「どうした戦」

 

 何やら紙片を握って遊羽に話しかける戦。

 

「実は、プロデュエリストのデュエルのチケットが当たったんだ。ショッピングモールの福引きで」

 

 その福引き券十五枚で一回できる。

 因みに、一等はシークレットレアの《灰流うらら》だったが、それは当たらなかった。

 

「へぇ。それがどうかしたのか?」

 

「チケットなんだけど、団体で六人までなんだ。一緒に行かない? もちろん真宮さんも」

 

 遊羽は基本的に他人のデュエルに興味がない。プロだろうと、それは同じこと。なので、断ろうとしたのだが・・・・・・。

 

「デュエルするのは凪風磨だよ」

「よし、行くぞ」

 

 その名前を聞くなりノータイムで了承する遊羽。

 

 凪風磨。遊羽を二度も破ったプロデュエリストだ。超強い。

 

「対戦相手は誰なんだ?」

 

 凪のこととなって、急に食い気味で話す遊羽。

 

「えーと、『手品師』って呼ばれるプロデュエリストだって。性別、年齢が一切不明の覆面プロデュエリスト」

 

 聞いたことのない名前に首を傾げる遊羽。そもそも、彼はあまりプロデュエリストを知らないのだが。

 

「まぁいいか。後は誰を誘うんだ?」

 

「四谷くんとか、永野さんだね。解説役としては四谷くんの方が適任かな」

 

「息吹は誘わないとして、後は・・・・・・先輩達を誘ってもいいか? 昨日のことでのお礼ってことで」

 

「うん、そうだね。何で龍塚くんを誘わないのかは聞かないでおくよ」

 

「そうしてくれ」

 

 チケットを受け取り、そこに書かれた日時を見ると、来週の日曜日となっている。

 

「じゃ、来週はよろしくな」

 

「うん。よろしく」 




次回はデュエルします。

『手品師』って誰でしょうねー。ちなみに、手品の英語はマジックです。
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