遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ   作:柏田 雪貴

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夏休み中にデュエルって、どう持っていけばいいんだよ!

という訳で、デュエルなしです。


デッキ調整

 遊羽から家へ来るよう連絡を受けた戦は、彼の家に向かっていた。

 道を歩いていると、後ろからDホイールの走る音。

 

「おー、遊民くんじゃん。きみも遊羽に呼ばれたの?」

 

 戦の横で止まり、彼に話しかけてきたのは日向だ。後ろに響も乗っている。

 

「そうですよ。僕も、っていうことは水瀬先輩も?」

 

「おう。急にどうしたんだか」

 

 やれやれと肩をすくめる日向。それでも、後輩のために急いで集まっているのだから、彼のお人好しさがわかる。

 

「兄さん、道で止まるのはどうかと思うッスよ」

 

「お、それもそうか。悪り、先行くわ」

 

「いえ、お構いなく」

 

 響からの注意を受け、申し訳なさそうに走り去る日向。

 

『主殿主殿』

 

(どうしたの、ジャン?)

 

 日向が見えなくなった後、ジャンが心の中から戦に話しかける。

 

『日向殿はM・HEROを使っていてバイクに乗っているのですな。HERO達もバイクに乗るのですかな? それとも日向殿も《マスク・チェンジ》を使ってM・HEROになったりは』

 

(それ以上何も言わないでね、ジャン)

 

 無自覚に危ない橋を渡るジャンに、戦は心の中で溜め息をつきたくなった。

 

(それよりも、遅れないように急ごう)

 

『ならば主殿。今度こそ拙者に幻影翼を付けて主殿を抱えて』

 

(やらないからね?)

 

 未だに翼の件を引きずっているジャンに、戦はとうとう溜め息をついた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 遊羽の家の前に着き、インターホンを鳴らす。

 

「開いてるッスよ」

 

 中から響の声が聞こえてくる。戦は遠慮なく扉を開けた。

 

「お邪魔します」

 

『お邪魔しますぞ』

 

 家の中に入り、そのままリビングまで移動する。そこでは、虹花と日向がテーブルデュエルをしていた。

 

「ドラゴノイドトークン二体とマシュマロンをリリース! 邪神アバターをアドバンス召喚!」

 

「それにチェーンして、リターン・オブ・アンデットを発動です! 墓地から死霊王 ドーハスーラを特殊召喚します!」

 

 アバターの強制効果の発動に合わせてドーハスーラの効果が発動し、早速除外される暗黒の太陽。ドーハスーラとしても、自分を食った存在とは同じフィールドに長くいたくはないだろう。

 

「私のターンです! ドーハスーラとネクロドラゴンでダイレクトアタックです!」

 

「うわ~負けた~」

 

 勝ったのは虹花。その結果に、思わず戦は目を見張る。

 

(少なくとも、水瀬先輩は三年生でプロデュエリストのはず。それに勝った真宮さんって・・・・・・)

 

 以前の彼女とは違う。それをデュエリストの勘でなんとなく察した戦。

 

 そして、彼女の使ったカード達。

 

(・・・・・・真宮さんなりに、思うところがあったんだろうね)

 

 それについて、あえて何か訊くつもりはない。それは、戦の優しさだった。

 

「あ、すみません、遊民くん。ほったらかしちゃいましたね」

 

「ううん、気にしないで。ところで、遊羽くんは?」

 

 こちらに気づいた虹花。戦を呼んだ彼の居場所を訊ねると、虹花がダイニングを指差す。

 そこでは、遊羽が電話をしていた。

 

「だーかーら!! 何で俺に電話すんだよホッさん! 何、モリンフェンから仕事回された!? あいつ唯一神なのかよ! あ゛!? ウ●チホープが儀式デッキでいじめる!? e・ローがヲーを使ってくる!? 知らねぇよ!! アンタ出すとか無茶言うな! 《ファントム・オブ・カオス》でのコピーもできねぇし《真実の名》でも特殊召喚できねぇだろ! 相手が有り得ねぇ程度の確率でデッキに入れてたら《天声の服従》でギリギリ出せるくらいだ! つかリリース素材(三幻神)ごと出回ってねぇよ!」

 

 ゼエゼエと肩で息をしながら電話を切った遊羽。そのただならぬ様子に部屋中のメンバー全員から視線を受けることになる。

 

「・・・・・・ふぅ。悪い、大声出しちまった」

 

 何事もなかったかのようにリビングに戻る遊羽。当然のように虹花の隣に座るのを見て、戦もクッションの上に腰掛ける。

 

「虹花が新しくデッキを作ったんだ。で、戦にも相手を頼みたくてな」

 

「あ、やっぱり真宮さん関連なんだ・・・・・・」

 

 彼が収集をかけるとしたら、世界の危機か仲間に関連することくらいだ。後はほとんど自分で解決してしまう。

 

「すみません、まだ上手くデッキを使いこなせてなくて・・・・・・」

 

 そう言いながら、虹花は先ほどテーブルデュエルに使っていた机の上に、自らのデッキを広げる。

 

「え、ちょっと!?」

 

「何でデッキを広げてるんスか!?」

 

 突然の行動に止めようとする水瀬兄妹。デッキとは、デュエリストの魂。そう簡単に見せていいものではない。

 しかし、その二人を遊羽が制する。

 

「まだ完成したわけじゃねぇから構わねぇ。というか、このデッキの完成度を上げるために意見を聞きたい」

 

 そう言われ、一応納得した二人は広げられたカードに目を向ける。

 《死霊王 ドーハスーラ》《屍界のバンシー》《グローアップ・ブルーム》《真紅眼の不死竜》《邪神機-獄炎》《馬頭鬼》《牛頭鬼》《ピラミッド・タートル》などのアンデットモンスター、《アンデット・ネクロナイズ》《アンデット・ストラグル》《アンデットワールド》《リターン・オブ・アンデット》等のアンデットサポート、《クリバンデット》《針虫の巣窟》といった墓地を肥やすカード。

 そして、《EM五虹の魔術師》だった。

 

「やっぱ入ってるんだな、このカード」

 

「そうッスね。まぁ、虹花ちゃんの代名詞みたいなカードッスからね」

 

 懐かしさを覚えながら、三枚ある五虹の魔術師の内二枚をそれぞれ手に取る水瀬兄妹。効果の確認のためだ。

 

「このペンデュラム効果って、スピリットモンスターが手札に戻ることもないのか。あ、じゃあこのカードを入れようぜ」

 

 そう言いながら日向はケータイで出したカードの画像を虹花と遊羽に見せる。

 

 

 

天岩戸

地属性/レベル4/岩石族

スピリット/効果

ATK1900 DEF1200

 

このカードは特殊召喚できない。①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いにスピリットモンスター以外のモンスターの効果を発動できない。②:このカードが召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに発動する。このカードを持ち主の手札に戻す。

 

 

 

「《天岩戸》・・・・・・?」

 

「五虹の魔術師の0枚効果と同じ効果を適用するカードですか・・・・・・」

 

 見覚えのないマイナーカードに眉をひそめた二人。

 

「でも、この効果なら他のスピリットモンスターにした方がいいと思うよ」

 

 その二人の後ろからケータイを覗き込んだ戦が意見を言う。確かに、この効果のためだけにデッキに入れてもシナジーもなければアンデットワールドでアンデットにしてもスピリットであるために蘇生もできない。イマイチ虹花のデッキとは噛み合わない。

 

「使えないッスね、兄さん。虹花ちゃん、これなんかどうッスか?」

 

 日向に冷ややかな目線を向けながらをどかした響は、自らのケータイを差し出す。

 

 

 

王墓の罠

通常罠

 

カードテキスト

①:相手の墓地から自分フィールドにアンデット族モンスターが特殊召喚された時、フィールドのカード2枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

 

 

 

「お、このカードは良さそうだな」

 

「はい。ネクロドラゴンとのシナジーもありますし、ただ《死者蘇生》を使うだけでも発動できます」

 

「破壊するカードの指定がないから、五虹の魔術師の破壊もできるね」

 

 五虹の魔術師のデメリット効果を破壊することで回避できる。一枚で二枚のカードを破壊できるのも魅力だ。

 

「うわ、兄さん!?」

 

「な、ならこのカードは?」

 

 

 

ユニゾン・チューン

速攻魔法

 

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。①:自分または相手の墓地のチューナー1体と、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。対象の墓地のモンスターを除外する。その後、対象のフィールドのモンスターはターン終了時まで、除外したモンスターと同じレベルになり、チューナーとして扱う。

 

 

 

 先輩としての危機を感じた日向が響をどかしながらケータイを突き出す。もはやアンデットにも関係のないカードだが、恐らくアンデットモンスターから関連画像で検索したのだろう。

 

「ワザとやってんのか、先輩?」

 

「・・・・・・このモンスターが移っているので嫌です」

 

 遊羽には睨まれ、虹花からは心底嫌そうな顔を頂戴する結果となった。そもそも、《ゾンビ・マスター》が移っている時点で彼らは嫌悪感しか抱かない。虹花は《リターン・オブ・アンデット》を使うのにも苦労しているのだから。

 

「おい兄。ちょっと向こう行ってろッス」

 

 珍しく怒りの宿った声を出す響。そのガチトーンにビビったのか、日向は大人しく部屋の隅で『の』の字を書くことにした。

 

「僕、フォローしてくるよ」

 

 そう言って、戦は日向のそばへ近寄り、デッキの相談を持ちかける。

 

「僕のデッキを見てもらえますか?」

 

「・・・・・・おれで、いいのか?」

 

 かなりどんよりとした空気を醸し出す日向だが、そんなことはお構いなしと言わんばかりにいつものニコニコ笑顔だ。

 

「はい。お願いします」

 

 暗い空気のまま戦のデッキを見、改善点やお勧めのカードなどを挙げる日向。それをどこからか取り出したメモを片手に書き取る戦。

 そうしていく内に、徐々に日向の雰囲気も明るくなっていった。

 

 一方、虹花のデッキも順調なようで、三人で意見を出し合っている。

 

『平和だな・・・・・・』

 

『平和ですなぁ・・・・・・』

 

 すっかり蚊帳の外な精霊二人は、そんな彼らを見守るのだった。




次回はデュエルします。
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