遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ 作:柏田 雪貴
テスト勉強だなんだで全然執筆できませんでした。
他の作品の感想欄で見かけた? バカな。
というわけで、かなりのボリュームとなっています。初めて一万文字を越えました。
兎との再会
デュエルスクール、アベシ校。
そこの一年三組の教室に入ろうとした龍塚 息吹は、反対側の教室の入り口に見慣れた人物を見つけ、そちらに方向を変えた。
「おはよ~星河先輩♪ この教室に何か用事?」
銀 星河(しろがね せいが)。ワンキル・ソリティア研究会に所属している三年生だ。
「あぁ。ちょっと転校生の案内をな」
星河が後ろを見やると、そこには息吹にとって懐かしい白髪の少年がいた。
「あっれ~、遊兎じゃんか♪ 戻って来てたのか」
「げっ、息吹!? お前と同じクラスかよ!?」
彼の名前は月見 遊兎(つきみ ゆうと)。レスキューラビットの精霊の彼だが、とある事情によって人間の姿では精霊を見ることができないという希有な存在だ。
「何だ、知り合いか?」
『星河の手を煩わせるとは、どういうつもりだ? 何か狙いでも・・・・・・』
星河の精霊の一体、銀河眼の光子竜が呟くが、遊兎には聞こえない。
「フォトン、流石にそれは考え過ぎだ」
それを星河が小声で否定すると、フォトンは渋々ながらも星河の中に引っ込む。
(・・・・・・この人、何を考えているのか読めないから怖いんだよな~。精霊も沢山いるみたいだし、良い人なんだけど)
息吹が軽く思考の渦に浸かっていると、精霊であるオッドアイズが心配したようき話しかける。
『かんがえごと~?』
(ま、そんなとこさ♪ オッドアイズは気にしなくていいよ)
彼の答えに安心したのか、オッドアイズもまた息吹の中に入っていった。
「で、遊兎? オレと同じクラスだと、何か不満?」
そのやりとりに遊兎が首を傾げたのを見て、改めて息吹は彼に尋ねた。
「
「その結果、転校生扱いされた、と」
「う、うるせぇ! 構えろ! 積年の恨み、今ここで晴らしてやるぜ!」
デュエルディスクを展開し、デッキをセット。ディスクを構えて息吹を睨みつける彼だったが、その肩に手が置かれる。
「今は朝の登校時間だぞ。もうすぐホームルームも始まる。やるなら昼休みか放課後にしなよ」
「・・・・・・あ」
完全に頭から消えていた。星河の指摘にそんな表情を一瞬浮かべ、慌てて周りを見回す彼。
「何あの子可愛い~」「転校生かな?」「白髪だし、不良なのか?」「物騒だなぁ」「あれ、月見じゃね? 中等部のころ同じクラスだったから覚えてるわ」「あー、いたなーそんな奴」「『突っ張ることが男の唯一の勲章なんだ!』とか言ってたな」等々、周りにはたくさんの生徒達が。
「お、覚えてろよ!!」
顔を真っ赤にしながら、三下のような捨て台詞を吐いて教室に逃げ込む遊兎。
それを見て、息吹と星河は同時に呟いた。
「「そこ、オレ/息吹と同じ教室だけどね/な」」
ーーーーーーーーーー
遊兎と教室で短い別れを惜しんだ再会を果たした後、昼休みまでの授業の間ずっと睨んでくる遊兎に気づきながらも授業中故に無視せざるを得ないという精神を削る苦行を耐え抜いた息吹は、チャイムと同時に購買に向かうべく席を立った。
「あ、おい待て息吹!
購買への最短ルートは、教室の窓から飛び降りて外廊下を走るルートだ。それをやると先生にいい顔をされないため、普段使う生徒は少ないのだが、彼はその少ない方に分類される。
無傷で着地した息吹は、そのまま秒速10mで購買まで走った。できるのかって? できるさ。だってデュエリストだから。
購買に辿り着くと、彼は一目散に積まれたパンの前まで走る。
「最強デュエリストのデュエルは全て必然!
ドローカードさえも、デュエリストが創造する!
シャイニング・ドロー!」
かっとビングな詠唱と共に、積まれたドローパンから一つドローする息吹。その後、普通にもう一つ手に取って、隣の棚からプリンを一つカゴに入れると、レジに進んだ。
「というわけで、お会計お願いしま~す♪」
「はい、ドローパン二つとプリンね。700円だよ」
「あ、あとファミチキください」
「じゃあ合計1000円だね」
「釣りはいらねぇ!」
アホなやりとりの後、千円札をレジのおばちゃんに渡す息吹。そりゃあお釣りはいらないだろうよ。
「あれ、龍塚くん? そんなに急いでどうしたの?」
遅れながらも購買を訪れた戦が、走って購買から出ようとする息吹に、思わず声をかける。
「助けて! 悪い奴に追われてるんだ!」
「その悪い奴って強いの? だったら
あながち間違ってない息吹の発言に、笑顔でバトルフリークなコメントを返す戦。
「う~ん、どうだろ? 修行してきた~とか言ってたけど、強くなったのかはわかんない」
「じゃあいっか。引き止めてごめんね」
「別にいいぜ♪ それじゃ」
手刀を切って、そのまま走り去る息吹。
その後ろ姿を見届けた戦は、ドローパンをドローした後、遊戯王チップスをカゴに入れて会計に進んだ。
ーーーーーーーーーー
「クソ、どこ行った!?」
遊兎はというと、息吹が走っていったのとは反対方向に駆けていた。
つまり、彼は方向音痴なのだ。
しかし、今回ばかりはその方向音痴さが彼に幸いした。
「見つけたぞ、息吹!」
「げっ、何故!?」
運良く息吹とエンカウントした遊兎。そのまま息吹と併走する。
「どこ向かってるんだよ!?」
「何で着いてくるのさ!?」
「
「ご飯食べ終わるまで待って!?」
「いいよ!!」
「じゃあ逃げる必要なかったじゃん!?」
とまあ、またアホなコントをやった後、走っている内に辿り着いてしまった体育館の裏にあるベンチに腰掛ける。
「じゃ、いただきま~す」
そう言ってドローパンをかじる息吹。
「
それを見て、腹から音を出しながら、少し後悔するような顔をする遊兎。その眼前に、ドローパンが一つ、差し出された。
「あ、どうもありがとうございます」
何故か敬語でお礼を言って、それを食べる自称
「ん? どしたの」
「いや、パンありがとうって」
「え、誰から?」
「え?」
驚いて遊兎が息吹とは逆の自分の隣に顔を向けると、そこには彼の想い人が。
「・・・・・・ん。遊兎、久し振り」
「っ、彩葉!?」
桜色の髪を短めのツインテールに纏めた、童顔の少女。
花園 彩葉だ。前期中間テストトーナメントにて、戦とデュエルをした少女。久し振りの登場だ。
「どっ、どうしてここに!?」
「遊兎が、こっちに走っていくのが見えたから・・・・・・嫌、だった?」
無表情に、小首を傾げる彩葉。その仕草に、遊兎の心がズッキューンと打ち抜かれる。
「い、嫌じゃねぇに決まってらぁ!」
胸を張り、何故か得意気に言う遊兎。そんな彼を、微笑まし気に見つめる彩葉。
「・・・・・・オレ、おジャマ? おジャマトマト? 帰っていい?」
そんな桃色の空気の横で、居心地の悪そうにしている息吹。遊羽達の夫婦のようなやりとりとは違い、どこか初々しい彼らのやりとりに対しては、彼も耐性がないようだ。
「うわぁ!? た、食べ終わったのか? よし、デュエルだ!!」
動揺しながらも、デュエルに話を切り替えることでその場を乗り切ろうとする遊兎。息吹も賛成を表すかのようにデュエルディスクを構える。
(久々だな~、遊兎とのデュエル。ま、どうせ大して変わってないんだろうけど)
少し面倒くさ気な息吹に対して、遊兎はやる気満々といった様子だ。
(彩葉の前だし、負けられねぇ! リベンジだ!)
「「デュエル!」」
月見遊兎
LP8000
龍塚息吹
LP8000
「
レスキューラビット ☆4 攻撃力300
ヘルメットを被ったウサギのモンスター。遊兎のデッキのキーとなるカードだ。
「効果発動だ! 除外して、デッキからレベル4以下の同名の通常モンスター二体を特殊召喚する! 来てくれ、セイバーザウルス!」
セイバーザウルス ☆4 攻撃力1900
ウサギが助けを呼ぶと、デッキから獰猛そうな恐竜が二体飛び出す。お前がレスキューを求めるのか。
「
フレシアの蠱惑魔 ★4 守備力2500
蠱惑魔達が一つの花に集まり、一体のモンスターとなる。
「・・・・・・ん。覚えておく」
デュエルを見守っていた彩葉から不穏な言葉が発せられたが、デュエルに集中している遊兎には聞こえない。
「
月見遊兎
LP8000 手札4
場 エクストラ:フレシアの蠱惑魔
「オレのターン、ドロー」
引いたカードを手札に加え、フィールドと手札とを交互に見る息吹。
(あの蠱惑魔、フリチェで落とし穴打ってくるからな~。狡猾な落とし穴は飛んでくるだろうし、除外される奈落もキツいんだよねぇ)
『だいじょうぶ、マスター?』
大丈夫、と答える代わりに、息吹は手札のカードを引き抜いた。
「スケール0の、オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴンと、スケール8の、EMオッドアイズ・ユニコーンで、ペンデュラムスケールをセッティング♪」
Pスケール 0ー8
「感じろ、龍の息吹! 吹き荒れろ、俺の愛! ペンデュラム召喚! 来い、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン! オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン! オッドアイズ・ファントム・ドラゴン!」
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ☆7 攻撃力2500
オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン ☆5 攻撃力1200
オッドアイズ・ファントム・ドラゴン ☆7 攻撃力2500
『いっくよ~♪』
フィールドに現れた、二体の龍と美少女。尚、遊兎と彩葉には三体のドラゴンに見えている。
フレシアに向けてピースサインを送るオッドアイズを見て気持ちが和んだ息吹は、幾らかリラックスした様子でデュエルを続けた。
「フレシアの蠱惑魔の効果発動! オーバーレイユニットを一つ使って、デッキから狡猾な落とし穴を墓地に送る! この効果は、狡猾な落とし穴と同じ効果になる! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンと、オッドアイズ・ファントム・ドラゴンには退場してもらうぜ!」
「それにチェーンして、オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンの効果発動! 1ターンに一度、エクストラデッキから特殊召喚されたモンスター一体の効果を無効にする♪
「なら、手札のエフェクト・ヴェーラーの効果発動! ペルソナの効果を無効だ!」
ペルソナが紋章を描き、それをフレシアの蠱惑魔に飛ばすが、現れた性別不詳モンスターにより邪魔され、ペルソナ以外のオッドアイズが落とし穴に落ちた。
『うわ~! なにこれ~!?』
バイバーイ! と手をふる蠱惑魔達。ピースサインのお返しのつもりらしいが、この絵図では馬鹿にしているようにしか見えない。
「問題ないね! オレはEMドクロバット・ジョーカーを召喚!」
EMドクロバット・ジョーカー ☆4 攻撃力1800
ノリノリでフィールドに現れたのは、ドクロを模したシルクハットを被った、奇抜なピエロ。
「ドクロバット・ジョーカーの効果発動だ。オレはデッキから、超天新龍オッドアイズ・レボリューション・ドラゴンを手札に加えるよ♪」
ピエロがどこからかトランプを取り出すと、そのカードの表面を全て遊兎と彩葉に見せる。どれも異なる種類のトランプであることを遊兎達が認識したことを確認すると、おもむろにシャッフルした。その中から無造作に一枚引き抜くと、何とレボリューション・ドラゴンのカードになっている。それを息吹に手渡すドクロバット・ジョーカー。最後に軽くお辞儀した。
ドクロバット・ジョーカーの手品を見て、思わず拍手をする遊兎と彩葉。
(妙な所だけ純粋なんだよな~)
ジョーカーの演出に苦笑しながらもカードを受け取った息吹。
気を取り直して、デュエルを再開する。
「バトルだ。オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンで、フレシアの蠱惑魔を攻撃!」
「けど、フレシアの方が守備力は上・・・・・・」
「それはどうかな? (一回言ってみたかったんだよね、このセリフ♪)PゾーンのEMオッドアイズ・ユニコーンの効果発動! オッドアイズが攻撃した時、他のEM一体の攻撃力分、その攻撃力をアップする♪ ユニコーン・チャーム!」
オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン 攻撃力1200→3000
以前に遊羽とのデュエルでも使ったコンボ。息吹としては一度見せたコンボをもう一度使うのは不本意だったが、彩葉の様子を見るに、覚えていないらしい。
そのことに安心するべきか、呆れるべきか、彼は少し迷ってから安心する方を選んだ。
「やれ、ペルソナ! ヘッドバット!」
一瞬ペルソナが『え?』という顔で息吹を見たが、言われた通りに頭突きをしようとするも、どの蠱惑魔に攻撃するべきかがわからない。なので、地面から見えていたアリジゴクにヘッドバットをする結果となった。トリオンの蠱惑魔が泣きながら、他の蠱惑魔達はそんな彼女(?)を慰めながら破壊された。
オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン 攻撃力3000→1200
「続けて、ドクロバット・ジョーカーで攻撃! トラップ・トランプ!」
高笑いと共に遊兎にトランプを投げるジョーカー。そのトランプは遊兎に張り付くと、小規模な爆発を起こした。
月見遊兎
LP8000→6200
「オレはこれでターンエンド♪」
龍塚息吹
LP8000 手札1
場 メイン:オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン EMドクロバット・ジョーカー Pゾーン:EMオッドアイズ・ユニコーン オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン
「
(う~ん、これは意外と困るな~)
ペンデュラムモンスターはエクストラデッキからの特殊召喚はできるが、墓地からの蘇生手段はあまり多くない。レボリューションは元々自身の効果以外では特殊召喚できないが、それよりもサーチができなくなったことの方が辛い。
「装備魔法、D・D・Rを発動! 手札を一枚コストに、除外されているモンスター一体を特殊召喚して、このカードを装備する! 戻れ、
レスキューラビット ☆4 攻撃力300
「
機界騎士アヴラム ☆4 攻撃力2000
(攻撃力2000の通常モンスターが二体・・・・・・ん? 攻撃力2000以上の光属性モンスターが二体? え、まさか・・・・・・)
彼の先輩、銀 星河の愛用しているモンスターの一体。そのドラゴンの召喚条件と、ピッタリ合うモンスターだ。
「開け、強さを求めるサーキット!
銀河眼の煌星竜 link2 攻撃力2000
騎士達が八つの矢印の付いた門に吸い込まれると、門から恒星の輝きを纏った竜が現れる。
「ソルフレアの効果発動だ! 墓地の銀河眼の光子竜を手札に加える!」
「(なるほど、さっきの手札抹殺か♪)通せないな、ペルソナの効果発動! ソルフレアの効果を無効にする!
ソルフレアの雄叫びに応え、墓地銀河眼の光子竜が手札に戻ろうとしたが、ペルソナの描いた紋章によって雄叫びごとかき消される。
(それにしても・・・・・・)
この二枚を遊兎が使っていたのを息吹は見たことがない。
「修行の成果って、これのことか♪」
「いや、これは朝に星河先輩がくれた。布教用だとよ」
「何やってんの先輩!?」
驚いてから、銀河眼の光子竜をこよなく愛する星河なら布教用にカードを持っていてもおかしくはない、と思い直した息吹。事実、遊兎の《銀河眼の光子竜》はノーマルカード、以前に再録されたものだ。
「続けるぜ。貪欲な壺を発動! アヴラム二枚、フレシア、銀河眼の光子竜、エフェクト・ヴェーラーをデッキに戻して、二枚ドロー!
究極伝導恐獣 ☆10 攻撃力3500
突如大地が割れたかと思うと、そこから巨大な
「・・・・・・ん。この子も覚えておく」
またも不穏な言葉を発する彩葉。何を基準にしているのかわからないが、このカード達を覚えようとしているようだ。
「バトルだ! 究極伝導恐獣でペルソナを攻撃!
何とも格好いい攻撃名と共に、究極伝導恐獣が火花を撒き散らしながらペルソナを喰らう。
「
龍塚息吹
LP8000→5700
捕食され、エクストラデッキに行くペルソナ。ちょっとグロテスクだ。
『・・・・・・うわ~』
その光景に恐怖を覚えたのか、オッドアイズが息吹の後ろに隠れる。その愛らしさに息吹の頬が緩むが、遊兎と彩葉に彼女は見えていないため、ただ息吹がニヤけただけに見える。
「何だよ、急にニヤニヤして。気持ち悪いぞ」
「何でもないよ♪ さ、デュエルを続けよう」
真顔に戻り、フィールドに目を戻す息吹。
「究極伝導恐獣は、相手モンスター全てに攻撃できる! 今度はジョーカーに攻撃だ!
陽気に逃げ回るジョーカーを踏んで逃げられなくし、究極伝導恐獣がピエロを喰らう。
「あ・・・・・・」
その光景に、今度は彩葉が声を小さく上げる。先程の手品を気に入っていたため、破壊されて欲しくなかったのだ。召喚時の効果のため、恐らくこのデュエルではもう見れなかっただろうが。
龍塚息吹
LP5700→4000
「どうだ! これが
自慢気に胸を張る遊兎。だが、究極伝導恐獣はそんな彼がお気に召さなかったらしく、軽く彼の頭を咥えた。
「う、うわぁっ!? 離せ!! ちょ、うわああぁぁぁぁぁあ!?」
そのまま大きく持ち上げられ、そのままゴックン・・・・・・とはいかず、ゆっくり下ろされる。
「び、ビビった・・・・・・寿命が縮んだだろうが!」
抗議の声を上げる遊兎。しかし、究極伝導恐獣が軽く睨むと、小さく悲鳴を漏らして黙った。
「キミねぇ・・・・・・自分のモンスターに遊ばれるって、どうなの?」
「う、うるせぇ! デュエル続行だぁ! ソルフレアでダイレクトアタック!」
ソルフレアが恒星の輝きを持つブレスを放ち、それが息吹の身体を焼く。
「あちちっ!?」
龍塚息吹
LP4000→2000
「よし!
月見遊兎
LP6200 手札0
場 エクストラ:銀河眼の煌星竜 メイン:究極伝導恐獣 魔法・罠:伏せカード
「やるな! 伊達に修行してきたわけじゃないってことか♪」
心底愉快そうに笑いながら、息吹はデッキからカードを引き抜く。
「オレのターン! 先ずは、強欲で貪欲な壺を発動! デッキから十枚除外して、二枚ドロー!」
ドローしたカードを確認し、笑みを濃くする息吹。
「ペンデュラム・コールを発動! 手札一枚をコストに、デッキから相克の魔術師と、貴竜の魔術師を手札に加える! 更に、Pゾーンのファンタズマの効果発動! 貴竜の魔術師をコストに、エクストラデッキのドラゴン族Pモンスターを手札に戻す♪ 戻れ、オッドアイズ!」
光の柱の中でファンタズマの翼が煌めくと、そこからオッドアイズのカードが舞い落ちる。
「ペンデュラム召喚! 来い、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン! 真紅眼の黒竜! エクストラデッキから、オッドアイズ・ファントム・ドラゴン!」
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ☆7 攻撃力2500
真紅眼の黒竜 ☆7 攻撃力2400
オッドアイズ・ファントム・ドラゴン ☆7 攻撃力2500
天空に開いた穴から三体の龍がフィールドに登場する。
『またまた登場だよ~!』
内一体は美少女だが。
「墓地の貴竜の魔術師の効果発動! ファントムのレベルを三つ下げることで、手札から特殊召喚だ♪」
貴竜の魔術師 ☆3 チューナー 守備力1400
オッドアイズ・ファントム・ドラゴン ☆7→3
先程ファンタズマのコストで墓地に送られたモンスターの早々の帰還だ。
「行くぜ♪ レベル4になったファントムに、レベル3の貴竜の魔術師をチューニング!」
3+4=7
「シンクロ召喚! オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!」
オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン ☆7 攻撃力2500
「メテオバーストの効果発動! Pゾーンのファンタズマを特殊召喚だ♪」
オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン ☆8 攻撃力3000
「何だその効果! インチキ臭ぇ!」
光の柱をぶち壊して現れた龍を見て、遊兎は不満気に叫ぶ。
「まだまだ行くぜ! メテオバーストと真紅眼の黒竜で、オーバーレイ!」
フィールドに黒い渦が現れ、その中、二体の龍が吸い込まれる。
「エクシーズ召喚! 真紅眼の鋼炎竜!」
真紅眼の鋼炎竜 ★7 攻撃力2800
鋼と炎を纏った、真紅眼の龍。
「今度はエクシーズ召喚か!」
「いや、まだ続くぜ♪ オレは相克の魔術師をPスケールにセット!」
光の柱に新たに魔術師が置かれ、ファンタズマが壊した柱を直そうとしたが、早々に諦めて柱の中に収まった。
「そしてP効果発動! このターン、フレアメタルはレベル7としてエクシーズ素材にできる! オレはフレアメタルとオッドアイズで、オーバーレイ!」
『いっくよ~!』
再び現れる黒い渦。その中に飛び込むオッドアイズと、仕方ないか、という雰囲気で吸い込まれるフレアメタル。
「輝け、二色の眼! 烈火の力を身に纏い、天の焔で全てを焼き尽くせ! エクシーズ召喚! 現れろ、覇王烈竜 オッドアイズ・レイジング・ドラゴン!」
覇王烈竜 オッドアイズ・レイジング・ドラゴン ★7 攻撃力3000
『じゃ~ん♪ レイジングコスチューム!』
キュピ! と決めポーズをとるオッドアイズ。何度目かわからないが、遊兎と彩葉には見えていない。
「またエクシーズか!? 一体どれだけ変化するんだ!」
驚愕と共に叫ぶ遊兎に、息吹が得意気に言う。
「
それぞれ名前にアイズを冠するモンスター達だが、一番召喚方が多いのはオッドアイズだ。
その分、一番可能性を持ち、勝利へのルートを多く有するとも言える。
「レイジングの効果発動だ! オーバーレイユニットを一つ使い、相手の場のカード全てを破壊する! そして、破壊したカード×200の攻撃力を得る!
『ぜ~んぶ、おそうじです!』
無邪気に災害を振りかざすオッドアイズ。遊兎と彩葉には災い呼ぶ烈火の龍がフィールドを焼け野原にしているようにしか見えていない。
「リバースカード、ダメージ・ダイエット! このターン受けるダメージを、全て半分にする!」
抵抗したものの、オッドアイズによる殺戮に一気に劣勢に立たされる遊兎。しかし、本人(龍?)は破壊を自身の力に変える。
覇王烈竜 オッドアイズ・レイジング・ドラゴン 攻撃力3000→3600
「バトルだ♪ よろしく、オッドアイズ! ブレイク・オブ・テンペスト!」
『えいや~!』
可愛らしい掛け声と共に放たれるブレス。しかし威力はシャレにならない。
「あちちち、熱、あっつ!」
月見遊兎
LP6200→4400
ソルフレアよりも数割増しで熱い焔が遊兎を焼く。
「レイジングは一度のバトルフェイズに二回攻撃できる! もう一度攻撃だ、オッドアイズ!」
「な!? これ以上は兎の丸焼きになっちまう!」
『おいしそう~!』
レイジングの効果に危機感を覚えて放った言葉だったが、オッドアイズが異様な食いつきを見せた。
月見遊兎
LP4400→2600
「ファンタズマでダイレクトアタックだ!」
ファンタズマが飛翔し、遊兎に突撃。その翼で切り裂く。
「うおっ!?」
月見遊兎
LP2600→1100
「決め切れなかったか♪ ターンエンドだ」
覇王烈竜 オッドアイズ・レイジング・ドラゴン 攻撃力3400→3000
龍塚息吹
LP4000 手札0
場 エクストラ:覇王烈竜 オッドアイズ・レイジング・ドラゴン メイン:オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン Pゾーン:相克の魔術師 EMオッドアイズ・ユニコーン
「行くぜ、
レスキューラビット ☆4 攻撃力300
再び現れる、ヘルメットを被ったウサギ。早速助けを呼び、デッキから二体のモンスターが飛び出す。
メガロスマッシャーX ☆4 攻撃力2000
「
古代より蘇った恐竜が光となって黒い渦に呑み込まれ、新たな竜に姿を変える。
「闇より出でし反逆の牙! 自由を求めし漆黒の翼! エクシーズ召喚! 来てくれ、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!」
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ★4 攻撃力2500
黒い身体に、特徴的な牙と翼。その姿からは、言葉に出来ない力を感じる。
(何だろう・・・・・・凄く反転世界を打ちたい)
謎の欲求が息吹を襲うが、彼のデッキに反転世界は入っていないため、泣く泣く断念した。
「ダーク・リベリオンの効果発動! エクシーズ素材を二つ使って、レイジングの攻撃力を半分にする! そして、その分の攻撃力を、自身の攻撃力に加える! ハーフ・エンハンス!」
ダーク・リベリオンの翼から稲妻が放たれ、オッドアイズに降りかかる。
『うぅ~、しびれるよぉ~』
覇王烈竜 オッドアイズ・レイジング・ドラゴン 攻撃力3000→1500
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500→4000
稲妻によってオッドアイズの攻撃力が下がり、そこから吸収した力によってダーク・リベリオンの攻撃力が上がる。
「バトルだ! ダーク・リベリオンでレイジングを攻撃! リベリオン・ファング!」
遊兎の命を受けたダーク・リベリオンがオッドアイズに噛みつく。
『きゃあ! わたし、おいしくないよ~!』
オッドアイズがもがいてジタバタするが、抵抗虚しく破壊される。遊兎と彩葉の視点では、レイジングが暴れているように見えていたため、ダーク・リベリオンが破壊されるんじゃないかと内心不安だった。
龍塚息吹
LP4000→1500
「これで
月見遊兎
LP1100 手札0
場 エクストラ:ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン
「オレのターン、ドロー!」
カードを引いてから、息吹はエクストラデッキを確認する。記憶の通り、表のPモンスターは十分にいる。遊兎は知らなかった様だが、ファンタズマには相手モンスターに攻撃する時にエクストラデッキの表のオッドアイズの数だけ攻撃力を下げる効果がある。
「バトルだ♪ オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴンで攻撃! ファンタスティック・フォース!」
「けど、攻撃力はこっちの方が上!」
「ファンタズマの効果発動! 相手モンスターを攻撃するとき、エクストラデッキの表側のオッドアイズの数だけ、攻撃力を下げる!」
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力4000→0
ファンタズマが羽ばたき、その翼から放たれた光がダーク・リベリオンごと遊兎を貫く。
月見遊兎
LP1100→0
「だー! くっそ、また負けた! もう一回だ!」
「まぁ落ち着きなって♪ 先ずは自分のデッキを使いこなしてから言いなよ」
悔しがり、もう一戦せがむ遊兎に、息吹が窘めるように言う。
「あ? どういうことだよ」
息吹の言葉に、怪訝そうに言い返す。
「究極伝導恐獣の効果って、相手ターンにも発動できるんだぜ♪ つまり、キミはオレのエクシーズ召喚を止められたってワケさ」
「なっ!?」
驚いてカードを確認してみると、確かに『1ターンに1度、自分・相手のメインフェイズに発動できる。』と書いてある。
「つまり、キミは初勝利の機会を逃したってこと♪ いや~、惜しいことしたねぇ♪」
「うっ!? なら、尚更もう一回だ! 今度はプレイミスしないで勝って、」
そこで鳴り響く予鈴。昼休みが終わるまで、後五分だ。
「遊兎、戻ろう?」
少し外から二人のやり取りを見守っていた彩葉が、遊兎の手を取って促す。
「(手、繋いで・・・・・・)お、おう」
顔を赤くしながら、二人並んで歩く遊兎と彩葉。
(・・・・・・ま、今は邪魔しないであげよう♪)
二人の初々しいやり取りを見ながら、息吹はわざわざ遠回りして教室に戻った。
それで次の授業に遅れることとなったのだが。
今回から三章となります。
息吹と新キャラである遊兎くんが中心の章となる予定です。