遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ 作:柏田 雪貴
デュエル回です。
日向と星河が遊兎とデュエルした翌日。
「じゃー行ってくるわー」
五つ上の姉に挨拶をし、孝之は家を出る。
デュエルスクールに向けて数分歩き、そこでふと立ち止まる。
(ん? カード?)
屈んで落ちているカードを拾い、何ともなしに見る。
(赤い竜・・・・・・レベルが書いてないな。エラーカードか?)
強力な効果だが、レベルが書いてないことから誰かが作ったオリカだろうと結論づけた孝之は、後でセキュリティにでも届けようと腰のデッキケースに入れる。
(あ、やっべ。そろそろ時間だ)
腕時計を確認し、始業時間に遅れないよう全力疾走する孝之。
学校に着く頃には、そのカードのことも忘れていた。
ーーーーーーーーーー
そして、放課後。
授業で当てられる度に間違える遊兎をいつも通りにからかった息吹は、そのまま遊兎を連れてワンキル・ソリティア研究会の部室へ強制連行した。
「だから自分で歩くから襟を離sうわ待て階段はあだだだだだだだだ!」
廊下に響く、遊兎の悲鳴。ここ最近の恒例行事となったそれを、遠巻きに眺める生徒達。
何故助けないのかという話だが、ワンキル・ソリティア研究会はキチガイ揃いだというのは周知の事実。彼らの邪魔でもしようものなら、どうなるのかわからない。会長となれば尚更だ。というのが一般的な生徒の心情である。
「た~のも~♪」
自らが会長を勤める部室を、何故か道場破りのように蹴り壊しながら入る息吹。どういうことかと言うと、彼の頭がおかしいだけの一言だ。
「ちょっ、何で今壊した!?」
カードを並べ、デッキの調整をしていた孝之が声を上げるが、息吹は何でもないかのようにあっけらかんと答える。
「何かノリで♪」
「ならしょうがない」
これが通じるのがワンキル・ソリティア研究会である。
「どうした、会長。月見を連れて」
「あ、春樹。お久~♪」
椅子に座り、本を読んでいた男子生徒が顔を上げる。
四谷 春樹。ワンキル・ソリティア研究会の副会長だ。
何故一年生の息吹や春樹が会長や副会長をしているのかというと、彼らの先輩が『事務仕事とか責任取るのとか部費の計算とか面倒くさい』という理由で押し付けられた、という理由だったりする。
「何読んでたのさ?」
「『不動性ソリティア理論』だが?」
表紙を掲げ、当然だと言わんばかりの顔をする春樹に、息吹は苦笑するしかない。
「で、孝之先輩? 遊兎の相手をお願いしたいんだけど♪」
「わりぃ、ちょっと待っててくれ。今調整中なんだ」
後輩に負ける訳にはいかないためか、かなり真剣にカードと睨めっこする孝之に、息吹はヤレヤレと肩をすくめ、丁度視線の先にいた春樹に狙いを定める。
「春樹、遊兎の相手をしてくれない? どうせ暇だろ♪」
「読書していることと暇が同じだと言われている気がするが、まあいいだろう」
本を机に置き、腰を上げる春樹。階段にやられて部屋の入り口で伸びている遊兎にも会話は聞こえており、痛む身体を起こしてディスクを構えた。
「
「そうか。オレは四谷春樹だ」
お互いに自己紹介を済ませ、後は戦うのみだ。
「「デュエル!」」
月見遊兎
LP8000
四谷春樹
LP8000
「
ライドロン ☆4 攻撃力2000
(珍しく初手にレスキューラビットが無かったのか?)
デュエルを眺めていた息吹はそんなことを考えるが、そもそも毎回引けている遊兎がおかしいのだと気づき、そんなものかと一人納得する。
「そしてセイバーザウルスを通常召喚!」
セイバーザウルス ☆4 攻撃力1900
電脳ライオンのとなりに現れる、凶暴そうな恐竜。
「二体のモンスターでオーバーレイ! エクシーズ召喚! 来てくれ、フレシアの蠱惑魔!」
フレシアの蠱惑魔 ★4 守備力2500
セラの蠱惑魔を除け者にした四人(人じゃないけど)の蠱惑魔が集まり、一体のモンスターと化す。
「カードを伏せる!
月見遊兎
LP8000 手札2
場 エクストラ:フレシアの蠱惑魔 魔法・罠:伏せカード
「オレのターン、ドロー。まずは手札のLL-ターコイズ・ワーブラーの効果発動。手札のLL-コバルト・スパローと共に特殊召喚」
LL-ターコイズ・ワーブラー ☆1 守備力100
LL-コバルト・スパロー ☆1 守備力100
「コバルト・スパローの効果発動。デッキより、LL-ターコイズ・ワーブラーを手札に加える」
「それにチェーンして、フレシアの蠱惑魔の効果発動だ! オーバーレイユニットを一つ使い、デッキから狡猾な落とし穴を墓地に送る! この効果は、狡猾な落とし穴と同じになる!」
登場と同時に落とし穴に落ちる小鳥達。羽があるので本来落ちたりはしないのだが、フレシアが発する甘い香りでフラついていたようだ。
「LL-ターコイズ・ワーブラーの効果発動。特殊召喚」
LL-ターコイズ・ワーブラー ☆1 守備力100
再び現れる小鳥。まだ甘い香りが抜けきっていないのか、若干フラついている。
「続けて、簡易融合を発動。1000ライフポイントを支払い、エクストラデッキよりLL-インディペンデント・ナイチンゲールを特殊召喚。来い、ディペ」
LL-インディペンデント・ナイチンゲール ☆1 攻撃力1000→1500
『ふふふ、出番ね』
ふわりと舞うようにフィールドに現れたのは、春樹の精霊、ディペ。口元を隠したその佇まいは、淑女のそれだ。
『あ、おばさ~ん♪』
『誰がおばさんですって!』
その笑みは、オッドアイズの一言で瓦解したが。
「ワン・フォー・ワンを発動。手札のドット・スケーパーをコストに、デッキからLL-サファイア・スワローを特殊召喚。コストになったドット・スケーパーの効果発動。特殊召喚」
LL-サファイア・スワロー ☆1 守備力0
ドット・スケーパー ☆1 守備力2100
「金華猫を召喚。効果により、墓地のLL-コバルト・スパローを特殊召喚」
金華猫 ☆1 攻撃力400
LL-コバルト・スパロー ☆1 守備力100
フィールドに並ぶ、六体のレベル1モンスター。新ルールでも中々見られない光景だ。
「ディペの効果発動。相手にレベル×500ポイントダメージ」
『安心しなさい、少しチクッとするだけよ』
ディペが腕を振るうと、無数の羽が遊兎に向けて飛ぶ。
月見遊兎
LP8000→7500
「地味に痛ぇ・・・・・・」
「本番はここからだ。オレは六体のレベル1モンスターでオーバーレイ」
「な、六体エクシーズ!?」
マスタールール3では、出来なかった芸当。
「エクシーズ召喚。LL-アセンブリー・ナイチンゲール」
LL-アセンブリー・ナイチンゲール ★1 攻撃力0
『どうかしら? 綺麗でしょう』
ディペが自慢気にオッドアイズに身体を向けるが、精神年齢の低いオッドアイズは首を傾げるばかりだ。
「六体素材で出したモンスターが、攻撃力0?」
そのステータスに遊兎も首を傾げる。だが、その分何かあるであろうことは、ここ数日で学んでいる。
「オーバーレイユニットとなったLL-サファイア・スワローの効果発動。墓地のLL-ターコイズ・ワーブラーをエクシーズ素材に加える」
「ッ! エクシーズ素材になった時の効果もあるのか!」
続けて起こる初めてのことに驚愕する遊兎。勉強不足が露呈している。
「そして、LL-アセンブリー・ナイチンゲールの効果。オーバーレイユニットの数×200ポイント、攻撃力がアップする」
LL-アセンブリー・ナイチンゲール 攻撃力0→1400
「そして、その数だけ直接攻撃が可能だ」
「ッ!? 手札のエフェクト・ヴェーラーの効果発動! そのアセなんとかの効果を無効にする!」
慌てて手札誘発を使う遊兎。それに対し、春樹は淡々とした声で告げる。
「LL-コバルト・スパローをエクシーズ素材としたモンスターは、相手の効果の対象にならない」
『ごめんなさいね、効かないの』
飛んできた中性的なモンスターを、ヒラヒラと手を振って追い返すディペ。淑女の余裕、といった様子だ。
「バトル。ディペでダイレクトアタック。七連打」
『ほらほら、行くわよ?』
月見遊兎
LP7500→6100→4700→3300→1900→500→0
「うわああぁ!」
連続して飛来する羽を受け、遊兎が悲鳴を上げる。
一方的な展開で終わったデュエルに息吹が嘆息しながら春樹に言う。
「芸がないなぁ♪
「いや、機界戦士をピン挿ししておけばシンクロもできるし、サイキック・リフレクターも入れれば/バスターも狙える。WWも入れられるし、SRも難しいが入らないこともない。デッキ構築の幅があって、かなり楽しいぞ」
本当に楽しそうに言う春樹に、息吹は少々面食らいながらも頷いた。
「まぁ、楽しむのはいいことだ♪ さて、そろそろデッキ調整終わった? 先輩」
息吹が目を向けた先にいるのは、既にデッキ調整を終え、デュエルの観戦に徹していた孝之。
「バッチグーだぜ。あ、もうこれ古いか? チョベリグ!」
「先輩、それも死語だって・・・・・・」
サムズアップしながら言う孝之に呆れた視線を浴びせながら、息吹は遊兎がデュエルするためにスペースを空ける。
「昨日から待たせたな。じゃ、始めるか」
「よ、よろしくお願いします」
何故か敬語になる遊兎に苦笑を浮かべながら、孝之もデュエルディスクを構えた。
「「デュエル!」」
瑞浪孝之
LP8000
月見遊兎
LP8000
孝之「それでは後書きのコーナー! 今回全然謎じゃない謎のカードを手に入れた孝之です!」
星河「銀河眼倶楽部の活動で本編に出れなかった星河だ」
孝之「では早速。今日の最強カードはこれっ!」
LL-アセンブリー・ナイチンゲール
孝之「いやー、見事なワンキルでしたね! LL、皆さんも組んでみてはいかがですか?」
星河「販促活動をするな。効果の説明をしろ」
孝之「いや、本編で全部言われちゃったじゃん? あ、一応防御用の効果もあるぜよ」
星河「だから解説をしろと・・・・・・」
孝之「てか、本当にできたんだな、銀河眼倶楽部」
星河「ああ。俺が倶楽部長だ」
孝之「・・・・・・マジっすか」
星河「今度青眼倶楽部に殴り込む予定だ」
孝之「青眼使いの人逃げて! 超逃げて!」