遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ   作:柏田 雪貴

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受験まで、後一週間もない、だと?

デュエルなしです。


息吹の思い

 家に着いた息吹は、玄関のドアを開け、そのまま靴を脱ぎ、リビングへ入る。

 

「お兄様? 何か煤けているのです」

 

 部屋へ入るなり先に帰っていた手鞠が息吹の顔を見て言う。

 

「いや~、ちょっとね♪ 手鞠も電撃と列車には気をつけなよ」

 

 おどけてそう言う息吹だが、どこか疲れが見える。

 

「じゃ、晩御飯できたら呼んで♪ オレはやることがあるからさ」

 

 疑問符を浮かべる手鞠を余所に、息吹は自室へ入った。

 

(遊兎のためのカード、いくつかピックアップしておかないとね♪)

 

 ベッドに腰掛け、カードの入ったケースや箱やストレージをそばにある机の上に並べていく。

 

(ソリティア用のカードは・・・・・・やめとこ。遊兎、頭悪いし)

 

 失礼なことを考えながら、カードを手に取る。

 

(通常モンスターはサポート多いな~。ペンデュラムもあるのか♪)

 

 少しでもシナジーのありそうなカードを見つけては集め、並べる。取捨選択をするのは後回しだ。このやり方だと、山になったカードが何かの拍子に崩れて大惨事になることが多いが、オッドアイズが隣で注意しているため可能性は低い。

 

『マスター、それ遊兎のためのだよね? なんでそこまでするの?』

 

 ふと疑問に思ったオッドアイズが訊くと、息吹は苦笑交じりに答える。

 

「中等部の頃、彼で結構遊んでたじゃない? それに少し負い目があってさー♪」

 

 いわゆる、いじめっ子の後悔というやつである。遊兎は気にしている素振りを見せないし実際気にしていないのだが、息吹なりのケジメだ。

 

「魔改造してでも強くなってもらわないと♪ ・・・・・・オレもいつまで持つかわからないし」

 

 後半部分が聞こえなかったオッドアイズが首を傾げるが、息吹は何でもないと笑顔を向けて誤魔化す。

 

(あ、通常モンスターのテーマとか出てたんだ。・・・・・・ていうか、モンスターがコイツだけなのか)

 

 カードを箱で買いはするものの、必要なカードだけ使って後は放置、というのが息吹のスタイルだ。遊羽はどんな相手とデュエルしてもいいようにある程度は覚えるのだが、息吹はそれをしない。そんなことをするならソリティアを優先するのが彼だ。

 

(魔術師にも通常モンスターっていたんだな。あ、レスキューラビットから星刻を出す、っていうの、一時期流行ってた気がする)

 

 9期のインフレの中、ペンデュラムが大暴れした時期の記憶を掘り起こした息吹。

 デュエルスクールでは少し前までプロデュエリストの使っていた『カゲトカゲ』と『エンペラーオーダー』のコンボが流行っていたりしたが、すぐに廃れた。所詮は焼き付け刃ということだ。

 

(レベル4で攻撃力2000のモンスター増えたな。・・・・・・遊兎は守備力0のしか使わないけど、何でだろ? あ、カメンレオンがいるからか)

 

 遊兎の持つ面倒くさがりな爬虫類族を思い出し、そこからさらにシナジーのあるカードを探す。

 

(『キングレムリン』、あと星8シンクロも入る。あ、『千眼の邪神教』と『ソイツ』ってレスキューラビットとカメンレオンとデブリ・ドラゴン、全部に対応してんじゃん)

 

 カードを漁っていると、新たな発見があったりするものだ。そしてそれについて考え出してしまい、気がつけばエラい時間が経っている、までがセット。

 

『ふぁ~、ねむぃ』

 

 段々退屈になってきたオッドアイズが欠伸を一つ。その拍子に、カードの束が一つ落ちる。

 

「『あっ』」

 

 咄嗟に手を伸ばしてしまい、それによって更にカードが散らばる。

 

『・・・・・・ごめんなさい』

 

 散乱したカードを拾いながら、シュンとなって謝るオッドアイズ。それに対し、息吹はカードを集めながら笑顔で答える。

 

「気にすんなって♪ どのカードかは覚えてるから、問題ないよ♪」

 

 幸い、束で落ちていたため大した問題ではない。オッドアイズは少し明るさを取り戻した。

 

「じゃ、続けるかな。オッドアイズ、飲み物でも持って来てくれない?」

 

『は~い♪』

 

 (息吹)に頼られたことで完全に元気になったオッドアイズは、鼻歌を歌いながら部屋を出る。

 

(あんまり落ち込んで欲しくないんだよね・・・・・・どうしたって、最期には悲しませちゃうんだし)

 

 精霊と人間の間に生まれた精人である息吹。

 だが、精霊としての力が強い父親を持ったことで、人間には過ぎた力も得てしまっている。カードの力を使う能力、他人の心を読む能力。過ぎた力は、息吹の身体を確実に蝕んでいる。

 

(成人はできるって言われたけど・・・・・・正直、怪しいなぁ)

 

 ならば、せめて自由に楽しく生きたい。誰かのために能力を使いたい。だから、自分はこんなに遊兎に力を貸しているのかもしれない、と先ほどのオッドアイズへの回答を心の中だけで締めくくる。

 

(オッドアイズと手鞠が双子で良かった。オレみたいなのは、一人で充分)

 

 手鞠とオッドアイズ。二人は息吹達の母から生まれた双子の姉妹だ。幸い、人間と精霊として生まれたため、息吹のような力もなければ、寿命も普通にある。

 

(というわけで、オレは精々楽しく生きるかな♪)

 

 どこからか分解されたカメラを取り出し、口角を上げる。

 

「じゃ~ん。ここに『時の機械-タイム・マシーン』のカードがあります♪」

 

 小型の黒い機械が出現し、その中に分解されたカメラを入れる。

 少し経ってからチーンという電子レンジのような音が鳴ると、中からカメラが飛び出した。

 

「ふんふん、中身は、って何この子可愛い♪ こっちはこの前のコスプレ美少女に、灰流うららと儚無みずき! ドラゴンの擬人化じゃないけど、これはいいものだ」

 

 壺感覚の評価をする息吹。

 

『マスター、なにしてるの?』

 

「うわっ! な、何でもないよ♪」

 

 慌ててカメラを隠し、オッドアイズからお茶の入ったコップを受け取る。

 

『手鞠が、そろそろご飯だって』

 

「ん、オッケ♪ 少ししたら行くよ」

 

 オッドアイズが部屋を出てから、息吹もカードを纏めてリビングに向かう。

 

 結局、遊兎のために選んだカードは百枚を超えていた。




遊兎を魔改造する予定だったんですが、息吹達の設定を出せるのがここしかなかったのでそれは次に。

次回は、多分三月になります。・・・・・・何か、この文章を書いた記憶が三回ほどあるんですが・・・・・・。
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