遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ   作:柏田 雪貴

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受験オワタ! ・・・・・・ええ、終わりました。

デュエル回です。


それぞれのデッキ

「だーっ! こんだけカードがあると、ワケわかんねぇ!」

 

 翌日の放課後。

 頭を抱えながら机に突っ伏し叫ぶ遊兎に、息吹がニヤニヤしながら言う。

 

「そう焦らずに♪ 花園さんを守れるくらい強くなるんだろ? なら頑張らないと」

 

 ワンキル・ソリティア研究会の部員から『いい加減部室開けてソリティアさせろ! 1日1ソリティアしないと体調悪くなるんだよ!』と末期なお言葉を頂戴した息吹は、一年三組の教室で遊兎のデッキ作りに手を貸していた。

 

「・・・・・・よし! とりあえずこれで完成だ!」

 

「なら今度はデュエル(いじめ)のお時間です♪」

 

 息吹が構えると、遊兎のディスクが強制デュエルモードに移行し、デュエルが始まる。

 

「えっ、ちょっと待っt「デュエル!」」

 

 この後、デュエルしては負け、デッキを組み直し、そしてまたデュエルしては負けを繰り返す。これが、息吹によるスパルタな魔改造だ。息吹が所持しているドラゴンデッキ全部の調整をしたいとかそんな理由はなきにしもあらずだ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「できたー!」

 

 所変わって、一年一組の教室。

 

 両手を挙げた後脱力したように突っ伏した遥に、そばで見ていた戦は声をかけた。

 

「完成したんだ。永野さんの本来のデッキ」

 

 林間学校では【EMエクゾディア】を使っていた遥だが、本来のデッキは【ファンカスノーレ】だ。何でも、入学早々に先輩とデュエルして先攻で全ハンデスをした結果相手の手札が『ジャックポット7』三枚と『シエンの間者』、『強制転移』だったらしい。それ以来、そのデッキは完成するまで封印し、代わりにその先輩に勧められたエクゾディアを使っていた、という経緯があったりする。

 

「じゃ、早速デュエルしようか」

 

「うん、お願いするねー」

 

 出来立てのデッキをディスクにセットし、構える遥。

 

「「デュエル!」」

 

永野遥

LP8000

 

遊民戦

LP8000

 

「ボクのターン! まずはおろかな埋葬を発動だよー。デッキから天魔神 ノーレラスを墓地に送るね。さらに魔界発現世行きデスガイドを召喚するよー!」

 

魔界発現世行きデスガイド ☆3 攻撃力1000

 

「デスガイドの効果で、デッキから魔サイの戦士を特殊召喚!」

 

魔サイの戦士 ☆3 守備力900

 

「行くよー、二体のモンスターでオーバーレイ! お願いダンテ」

 

彼岸の旅人ダンテ ★3 守備力2500

 

『ふむ、あれが遊戯王界のマツ●ュンですな・・・・・・おっと、伏せ字にされてしまいましたぞ』

 

 黙れ馬鹿。

 

「ダンテの効果発動だよ。オーバーレイユニットを一つ使って、デッキから三枚を墓地に送るねー。それと手札のグラバースニッチをコストに、ダンテでオーバーレイするよ! 来て、ベアトリーチェ!」

 

永遠の淑女ベアトリーチェ ★6 守備力2800

 

『淑女というよりは熟jいや何でもございませぬ』

 

 またも余計なことを言いかけたジャンが戦に睨まれ、おし黙る。

 

「ベアトリーチェの効果で、オーバーレイユニットを一つ使って、デッキからヘルウェイ・パトロールを墓地に送るね。そして効果発動だよ! 手札からファントム・オブ・カオスを特殊召喚!」

 

ファントム・オブ・カオス ☆4 攻撃力0

 

「うーん、もうコンボが決まるね」

 

 完成して初めて回す筈なのに異様な回転力を持つデッキに、戦は苦笑に近い笑みを浮かべる。

 

「ファントム・オブ・カオスの効果で、墓地のノーレラスを除外して効果を得るよー。そして、ノーレラスの効果発動! ライフを1000払って、お互いの場のカードと手札を全部墓地に送るよ。ボクは一枚ドローするけどね」

 

永野遥

LP8000→7000

 

 黒いスライムのような液体が天魔神の姿を取ると、お互いの手札を全て溶かす。

 

「ボクはこれでターンエンドだよー」

 

永野遥

LP7000 手札1

場 なし

 

「じゃあ僕のターン。墓地のラッシュ・ウォリアーの効果で、除外して墓地のジャンク・シンクロンを回収するよ。そして通常召喚! おいで、ジャンク・シンクロン」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

「効果で墓地のドッペル・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

(つまり、ボクがもしファンカスノーネを決めていなかったら、ほぼワンキルされてたってことだよね・・・・・・)

 

 展開されるカードからその未来を想像し、軽く身震いする遥。その姿に、戦は無自覚に笑みを浮かべた。

 

「手札一枚をコストに、墓地のジェット・シンクロンの効果発動! 特殊召喚! 更に墓地のボルト・ヘッジホッグの効果発動! 場にチューナーがいることで、特殊召喚!」

 

ジェット・シンクロン ☆1 チューナー 守備力0

 

ボルト・ヘッジホッグ ☆2 守備力800

 

 戦が手札を墓地に置くと扇風機のような調律機がフィールドを飛び回り、機械のハリネズミを引っ張り出す。

 

「現れろ、強きを挫くサーキット! ジェット・シンクロンとボルト・ヘッジホッグをリンクマーカーにセット、リンク召喚! 落消しのパズロミノ!」

 

落消しのパズロミノ link2 攻撃力1300

 

「? 何そのカード」

 

 パズロミノを知らなかったらしい遥がキョトンとした顔をするが、戦はそれを可愛いなーと見ながらまぁ待ってとジェスチャーする。

 

「ジャンク・シンクロンでドッペル・ウォリアーをチューニング! 集いし星が、鋼に打ち勝つ戦士となる! シンクロ召喚! 来い、ジャンク・ウォリアー!」

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

『いやー、拙者出番が多くて困りますなぁ』

 

 今度ヤリザ殿とニサシ殿に自慢しますかな、と口の中で呟いた後、パズロミノの効果でデフォルメされ近くに現れたドッペル・トークンの力を集め、身体の大きさと反比例した攻撃力を得る。

 

ジャンク・ウォリアー ☆5→1 攻撃力2300→5400

 

ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400

 

「えっ、攻撃力5400!?」

 

「そんなに驚くこと? 僕はこの前、攻撃力480000を見たよ」

 

 夏休み中の出来事で感覚が麻痺しているらしい戦。遥はどこからツッコミを入れればいいのかと困り顔だ。

 

「再び現れろ、強きを挫くサーキット! パズロミノとドッペル・トークン二体をリンクマーカーにセット、リンク召喚! パワーコード・トーカー!」

 

パワーコード・トーカー link3 攻撃力2300

 

 パズロミノと小さな兵隊たちが門をくぐると、入れ替わりに赤い電脳戦士が飛び出し、ジャンク・ウォリアーがリンク先にいない(リリースできない)とわかると目に見えて落ち込む。

 

「じゃあ、バトルに入るね」

 

「ちょ、ちょっと待って! まだこのデッキの隠されたギミックを出してない!」

 

 腕をブンブン振り、ついでに胸の二つのアバターを揺らしながら待ったをかける遥に、戦はいい笑顔で(無慈悲に)告げる。

 

「ヤダ」

 

「そんな~」

 

 『すみませぬな、次回以降に頑張ってくだされ』とスクラップ・フィストを放つジャンと『まぁ気を落としなさんな』と肩に右手を置くとそのまま左手で殴るパワーコード・トーカー。

 

永野遥

LP7000→1600→0

 

「うぅ~! せっかく色々考えたのにー! 煌々たる逆転の女神とシラユキのギミックとか、ベアトリーチェ立てるためのヒーローギミックとか!」

 

 泣き崩れる遥。さすがにやり過ぎたと感じたのか、戦は優しい笑みで遥に手を差し出す。

 

「じゃあ、それを全部僕に見せてよ。もう一回、何回でもデュエルしてさ」

 

「・・・・・・ぅん」

 

 その手を顔を赤くしながら取り、もう一度ディスクを構える遥。

 

(さて・・・・・・後何回ワンキルしようかな)

 

 数分後、またもワンキルされた遥の泣き声が、息吹と遊兎の耳に届いた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 同時刻、図書室。

 

「一応完成、だな」

 

 カードを机の上に広げた遊羽は、軽く伸びをしながら呟く。

 

 机の上に並んだカードの中には、『バスター・ブレイダー』や『破壊剣の使い手-バスター・ブレイダー』といった彼らしからぬカードが混じっていた。

 

「お疲れ様です。・・・・・・遊羽、どうしたんですか? そのカード」

 

 隣で本を読んでいた虹花がそのカードたちに気付き、思わずといった様子で訊く。

 

「いや、俺もカードを選んでられないな、と思ってさ」

 

 異世界での一見で、己の無力さを痛感した遊羽は、もう少し他のものに目を向けてみることにした。彼の新しいデッキは、その現れだ。

 このままでは、虹花を守れない。そのことがわかった今、手段(カード)を選んでいる場合ではない。故に、簡易ロックを掛けられ、ドラグニティと相性のいいバスター・ブレイダーをデッキに組み込んだのだ。ドラゴエクィテスのカードを見ていたら思いついた、というのは本人の弁。抜いたWWやザボルグのカードはいつでも入れ替えらえるようにデッキケースの中に入れてある。

 

「そう、ですか・・・・・・」

 

 短い言葉で彼の言いたいことを察した虹花は、少し辛そうな表情をして、遊羽を見る。

 

「遊羽。私のためでも、無理はしないでくださいね」

 

 その言葉に、遊羽は「できるかぎりは」と目で答える。

 

「でも、もう虹花を失いたくないんだ。だから虹花、自分を犠牲に、なんて考えはやめてくれよ」

 

 虹花の目を真っ直ぐ見つめ、言葉を紡ぐ。

 

 一度は失ってしまった、大切な人。もう二度と失いたくない。

 

 そんな想いのこもった言葉に、虹花は顔を赤に染めながらも頷く。

 

「はい、わかってます。でも、遊羽―――」

 

「ああ、だから虹花―――」

 

 

「何かあった時は、虹花は自分を優先してくれ。俺も虹花を優先するから」

「何かあった時は、遊羽は自分を優先してください。私も、遊羽を優先しますから」

 

 

「「・・・・・・え?」」

 

 重なった、二つの言葉。お互いに見つめ合い、真剣な表情になる。

 

「おいおい、冗談キツいぜ虹花? 俺は虹花を優先するから、虹花も自分を優先してくれ」

 

「遊羽こそ、何を言ってるんですか? 遊羽は自分を優先してください。私も、遊羽を優先します」

 

 互いに、譲るつもりはない。そのことをお互いがわかるには、そのやり取りだけで十分だった。

 

「ふざけんな。虹花のいない人生なんざいらねぇ。虹花が死ぬんだったら、俺が死ぬ!」

 

「私だって、遊羽なしの生活なんてお断りです! それに、私はアンデットです。何かあっても、生き残れるはずです!」

 

「万が一があるだろ! それで虹花を失ったとしたら、俺は悔やんでも悔やみきれない!」

 

「それでも、遊羽が死ぬくらいだったら、私が死んだ方がましです!」

 

「虹花の分からず屋!」

 

「遊羽の意地っ張り!」

 

「「フン!」」

 

 互いにそっぽを向き、目を合わせないようにする。

 

 結局、その日はそれ以上会話をしないまま、そしてお互いに顔を合わせないまま、二人で並んでそれぞれの家に帰った。




無事(?)受験が終わったので、これからドンドン投稿していく予定です。よろしくお願いします。
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