遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ   作:柏田 雪貴

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今回、結構シリアス要素が強いです。


彼らの馴れ初め

 遊羽と虹花がケンカ(?)をした、翌日。

 

「えーっと、遊羽君。何があったのか、訊いた方がいい?」

 

「ああ、そうしてくれると助かる」

 

 朝からまた二人揃って登校したにも関わらず険悪なムードで一言も喋らない二人に耐えかねた戦が、放課後になってようやく遊羽に訊いた。

 

 大体の話を聞いた戦は、何とも言えない表情をする。

 

「なにそれ、夫婦漫才?」

 

「は?」

 

 マジトーンで言う戦に、マジトーンで返す遊羽。

 

「というか、オレたちまで呼ぶほどのことなの?」

 

「惚気にしか聞こえねぇぞ・・・・・・」

 

 戦に呼ばれた息吹と遊兎が、呆れたように言う。

 

「つーか、遊羽は(オレ)に何の反応もなしかよ!?」

 

「スマン、今それどころじゃねぇんだ」

 

「『それ』って何だよ、『それ』って!?」

 

 ショックを受ける遊兎に、面倒くさそうな視線を向ける遊羽。

 

「思えば、今までケンカらしいケンカなんて、したことなかったからな・・・・・・どうすればいいのか、全然わかんねぇ」

 

 遊羽はただ事実を言っているだけなのだが、惚気にしか聞こえない。

 

「というか、二人は何でそんな仲になったのさ?」

 

 息吹の言葉に、戦と遊兎も頷く。息吹と遊兎は中等部から、戦は高等部からデュエルスクールに入ったため、初等部のころの遊羽を知らないのだ。

 

「・・・・・・そうだな。じゃあ、話すとするか」

 

 そう前置きして、遊羽は話し始めた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 初等部に入るよりも前。遊羽と虹花が幼稚園にいたころ。

 

 虹花は、道で拾ったEM五虹の魔術師のカードを気に入り、使っていた。それは、パックを開けた人がハズレ枠だとその場で捨てたカードだったのだが、それを知らない彼女は運命のようなものを感じていた。

 

「返して! 返してよ! わたしのカード!」

 

「うるせぇ! こんなくずカード、ない方がいいだろ!」

 

 しかし、当時弱かった彼女がそのカードを使いこなせるはずもなく、弱いカードを使い続ける彼女に周りの子供は苛立ちを感じていた。

 まだ彼らは幼稚園児。火力が全て、青眼の白龍が最強というのが彼らの間の共通認識だった。そのため、相手を妨害するようなカードや、EM五虹の魔術師のようなコントロール系のカードは、価値を見出されていなかった。むしろ、それがあるから弱いのだと思われていた。

 

「おれがこのカードは捨てておいてやるから、おまえは他のカードを使え! いいな!」

 

 そして、一人の男子が虹花のカードを掛けてデュエルし、勝利。五虹の魔術師を捨てようとした。

 

「うっ、ぐす、ぅああぁぁぁあん!」

 

 まだ彼らは幼稚園児。抵抗できるような力なんて、当然なかった。

 

 ―――彼を除いては。

 

「おい、デュエルしろよ」

 

 虹花が泣いているのを聞いた遊羽は、その男子に突撃、デュエル。その場でワンターンキルをし、五虹の魔術師を奪い返した。

 

「っ、うぅ、ぐす」

 

 何もできずにただ泣いていた虹花の前に、一枚のカードが差し出される。

 

「・・・・・・ぇ?」

 

 彼女が失った、五虹の魔術師のカード。それを持つ、彼女の幼なじみ。

 

「何だよ、泣いてるなら、返さないぞ」

 

 遊羽は、虹花が泣いていることが許せなかった。泣き止んで欲しくて、カードを取り戻した。

 

「ぁ、ありがとう・・・・・・」

 

 お礼を言い、カードを受け取ってまた泣き始めてしまう虹花。

 

「お、おい。泣くなよ、泣かないでくれ」

 

 どうしていいかわからず、慌てふためく遊羽に、虹花が涙を浮かべたままクスリと笑う。

 

「ゆうはは、わたしの・・・・・・王子様だね」

 

「え、王子? 劇の話?」

 

 この出来事の少し前、学芸会で劇をやり、そのときの姫役が虹花、それを助ける王子役が遊羽だったのだ。遊羽の両親は似合わないと苦笑していたが。

 

「ううん、なんでもない」

 

 泣き止み、笑って答える虹花。遊羽も、彼女に笑顔を向けた。

 

 この出来事以来、虹花は遊羽にべったりになった。それは初等部に入ってからも同じで、遊羽と虹花は殆どずっと一緒にいた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「そんなことがあったんだね・・・・・・」

 

「仲良しさんなのです!」

 

 同時刻、図書室。

 虹花もまた、遊羽との馴れ初めを語っていた。

 

「はい。いつ思い出しても、頬が緩んでしまいます」

 

 ニヤついてしまう口元を隠す虹花を暖かい目で見る遥と、興味深々な様子の手鞠、いつも通りぼんやりとしている彩葉。

 

「でも、去年は研究会と全面戦争したりとか、何か怖い話しか聞かないけど・・・・・・」

 

 遥の言葉に、彩葉が続ける。

 

「ん、それは、周りにいた皆のせい。如月が悪いわけじゃない」

 

 遊羽をかばうような発言をする彩葉に、遥が驚いたように目を見開き、そして納得したように頷く。

 

「そっか、花園さんは初等部からいたんだよね。忘れてたよー」

 

 少しシリアスな空気を和めませるためにわざといつもの口調で話す遥。その気遣いに感謝しながらも、話を続けようと虹花が口を開く。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 初等部からデュエルスクールにいる人数というのは少なく、ほとんどは中等部や高等部からデュエルスクールに入る。そのため、当時精霊を持つデュエリストは遊羽のみであり、精霊の存在もそんなに認知されていなかった。

 

「これでトドメだ! ヴァジュランダでマシンナーズ・フォートレスに攻撃!」

 

「うわぁあ!」

 

 精霊の力によってある程度手に入るカードが安定する遊羽が最強になるのは、ほぼ必然的なことだった。

 しかし、それを許せないのが子供心である。

 

「また如月の勝ちかよ! イカサマでもしてんじゃねぇのか!?」

 

「おい、止めろって」

 

 遊羽とデュエルしていた相手の生徒が止めるも、その男子生徒は暴言を吐き続けた。

 

「そもそも、精霊なんているわけがねぇ! 頭イってんじゃねぇのか!?」

 

 その男子は、虹花から五虹の魔術師を奪った子だった。彼としては好きな子のためにしたことが遊羽によって邪魔され、その上自分ではなく遊羽と一緒にいることが許せなかった。

 そのため、彼の地雷を踏んだことに気づかなかった。

 

「お前、今何て言った?」

 

「精霊なんていねぇっつったんだよ妄想野郎!」

 

「テメェ!」

 

 遊羽にとって、レヴは父親のようなものだった。仕事だの旅行だので家にいない両親よりも、そばにいてくれる精霊こそが家族だった。

 家族を否定されて、憤らない者はいない。

 

 たちまち、遊羽はその男子をデュエルで倒した。しかし、それが火種となって、レヴを否定する者、遊羽がイカサマしていると囁く者、彼は頭がおかしいと笑う者が出始めた。

 元々、彼らは遊羽をよく思っていなかったのだ。何度デュエルしても勝てない相手、美少女を侍らせる羨望の対象。遊羽はそれらを気にしていなかったが、虹花の悪口まで言われ始めると激怒し、片っ端からデュエルで黙らせた。

 遊羽にとって、それは不思議な感覚だった。欲しいカードが引ける、相手の狙いが直感でわかる。ただ本能のままにデュエルするだけで、勝利することができた。

 それでも、虹花に対する暴言は止まなかった。むしろ、遊羽が躍起になったことで、それは増していった。

 

「虹花。しばらく、そばにいないでくれ」

 

「・・・・・・わかりました」

 

 遊羽は孤独となり、虹花への暴言は消えた。代わりに、遊羽への当たりが強くなっていった。

 彼らも、ただ意地になっていただけだった。今更引けない、ここで引いたら遊羽からの報復が来る。彼らが戦う理由は、次第に保身のためになっていった。

 

 そして、初等部を卒業する直前。

 

「遊羽。デュエルをしましょう」

 

「・・・・・・ああ、わかった」

 

 遊羽は察した。虹花もそっち側へ行ったのか(敵になったのか)、と。

 

「ドラグニティナイト-ヴァジュランダで攻撃!」

 

「トラップカード、くず鉄かかしです。そして、私の場にカードが伏せられたことで、墓地のEM五虹の魔術師の効果を発動します!」

 

 デュエルは激化し、虹花は『ダーク・シムルグ』、『魔封じの芳香』、『EM五虹の魔術師』のロックを完成させた。

 

「ダーク・シムルグでダイレクトアタックです!」

 

如月遊羽

LP2800→100

 

(これで、遊羽に勝てる!)

 

「バトルは終わりか? 手札からトラップ発動! 拮抗勝負! 一枚残して全部除外しろッ!」

 

「そんな!」

 

 虹花の場に残ったのはEM五虹の魔術師のみ。虹花は涙を流し、言った。

 

「これじゃあ、遊羽に勝てない・・・・・・」

 

(やっぱり、そうか)

 

 遊羽は自分の推測が正しいと感じた。大方、デュエルで遊羽に勝てば、また仲間に入れてやるとでも言われ、それを信じたのだろう。

 

「これじゃあ、遊羽のそばにいられない・・・・・・!」

 

(え?)

 

 遊羽は耳を疑い、そして虹花を疑った。

 

「このカードで、勝たないとなのに、じゃないと、遊羽が、私を、見捨て、」

 

 その場に崩れ落ち泣き叫ぶ虹花に、遊羽は手の平に爪を食い込ませる。

 

(騙されるな、これは演技だ。俺に勝つための、卑怯な!)

 

 そして、遊羽は思い出す。幼稚園の学芸会での劇。虹花は余り上手とは言えなかった。それでも、本人が強く希望したので姫役となったのだ。

 

「嫌、嫌です! 遊羽のそばに、ずっと、いっしょに」

 

 気がつけば、遊羽は虹花の前に屈んでいた。

 

「え・・・・・・?」

 

「悪かった、遠ざけたりして」

 

 虹花の目を真っ直ぐ見つめ、言葉を紡ぐ。

 

「ずっと一緒にいてやるから、泣かないでくれ」

 

 遊羽は、ただ、虹花に泣いて欲しくなかった。だから、あの時もカードを取り返した。ただ、それだけだった。

 

「遊羽!」

 

 涙をこぼしながら、虹花は遊羽に抱きついた。

 

「ずっと、一緒にいてくれますか?」

 

「ああ。もちろんだ」

 

「結婚も、してくれますか?」

 

「ああ。その年になったらな」

 

「見捨てたり、しませんか?」

 

「しねぇな。むしろ俺が見捨てられないか心配なくらいだ」

 

 冗談めかしてそう言うと、虹花は少しだけ笑い、そして泣いた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「うぇっぷ。飲みすぎた」

 

 そう言いながら、息吹は積み上がったブルーアイズ・カオス・MAX・コーヒーの空き缶を数える息吹。「うへぇ全部で4000円分だ」と呟きながら顔をしかめる。

 

「凄い甘い話だったね」

 

 戦も甘さを緩和するために・X・(エクシード)ポテトを口に運びながら言う。・X・(エクシード)ポテトとはその名の通り断面がXの形をしたフライドポテトであり詳しくはWebへ。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 遊兎は甘さに耐えられなかったらしく、机に突っ伏し無言を貫く。

 

「まあ、よくある話だろ。それこそ他のssでも漁れば「ストップ。危ないからやめようぜ♪」」

 

 何か言いかけた遊羽を遮る息吹。謎の電波でもキャッチしたのだろうか。

 

「というか、それまだ小学生のときの話だよね? 最近の恋愛モノでも中々ないよ、そんな激甘な話」

 

「あー、まあ周りからの悪意だ何だで精神が成長する必要があったからな。じゃなきゃ俺の心は今頃マインドクラッシュして廃人にでもなってるだろうよ」

 

 ガリガリと頭を掻きながら答える遊羽に、戦と息吹が少し引く。

 

『その分、遊羽は未だに子供っぽいところがあるからな。ズレがあるのは仕方のないことだ』

 

 途中から顕現し遊羽のそばに立っていたレヴが解説すると、なるほどと一同が頷く。

 

『それにしても、ハードな人生を送っていますな。拙者だったら『ジャンク・ウォリアー。抵抗します。拳で』と学校をスクラップ・フィストしていますぞ』

 

 同じく戦のそばに顕現したジャンが言いながら拳を打ちつけ、力を入れ過ぎたのか痛みに悶絶しながら床を転がり回りレヴにぶつかり嫌な顔をされる。

 

「あ、オレそろそろ帰らないと。AmaZ-ONEで新しくカードを買ったんだった」

 

 今日もどこかを生身で走っているであろうAmaZ-ONEの宅配お爺ちゃんに心の中で敬礼しながら息吹が席を立つ。ちなみに買ったカードは『No.25 重装光学撮影機フォーカス・フォース』だ。教室を出る息吹の後ろでオッドアイズが『ゾンビのおっはな♪ ゾンビのおっはな♪』とスキップしているのは何の関係もないと信じたい。

 

「・・・・・・じゃあ、僕らもそろそろ帰ろうか」

 

「そうだな」

 

 息吹に続いて、戦と遊兎も教室を出る。

 

「あー、悪い。俺はちょっと寄るところがあってな」

 

 遊羽は少し言い難そうに頬を掻きながら言うと、戦は少し微笑み、遊兎は疑問符を浮かべた。

 

(さて・・・・・・俺も腹を括るか)

 

 一人、戦たちとは違う方向に歩き出した遊羽。

 

 図書室は一階にある。遊羽がそこに向かうために三階から二階に下り、一階へ向かうべくさらに階段を下りようとすると、逆に階段を上がってきた人物と鉢合わせる。

 

「虹花」

 

「遊羽・・・・・・」

 

 お互いに名前を呼び合い、見つめ合う。

 

「悪かった」

 

「ごめんなさい」

 

 そして、同時に頭を下げた。

 

 そのことに驚き、再び見つめ合って笑う。

 

「戦たちと昔のことを話してたら、ケンカしてる場合じゃねぇなと思ってさ。悪かった」

 

「奇遇ですね。私も遥ちゃんたちと昔話をしていたんです。そうしたら、仲直りしたくなったんです」

 

 笑みを浮かべながら話す二人。

 

「どっちを優先とかじゃなくて、どっちも優先すればいいだけの話だったな」

 

「そうですね。盲点でした」

 

 そうして、二人は仲直りをした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 ここからは、完全に余談である。

 

 遊羽と虹花がイチャコラしていた階段の前の部屋では、一つの部活が活動していた。

 

 そう、ワンキル・ソリティア研究会である。

 

「マジシャン・オブ・ブラックカオス・MAX・コーヒー追加でー」

 

「リア充爆発しろ」

 

「副部長! ここに『スフィア・ボム球体時限爆弾』があるのですが、投げてきても!?」

 

「やめろよーwww今ビデオにwww収めてるところwwwだからwww」

 

「ちょwおまwwオレの『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』がww」

 

「うっさい馬鹿、その『ブローバック・ドラゴン』しまえや」

 

「くっ、このままでは『オルフェゴール・ガラテア』の効果で俺の『オルフェゴール・バベル』がウェイクアップしちまうぜ・・・・・・」

 

 と、カオスな状況になっていた。

 

「はぁ・・・・・・何故こうも此処は馬鹿が多いんだ・・・・・・」

 

 溜め息をつきながら額を手で押さえかぶりを振る星河。

 

「カメラは一眼レフだろう。スマホじゃ画像が粗い」

 

「アンタも同じようなもんじゃないのっ!」

 

 研究会の良心、結希がツッコミを入れると、今度は孝之が遊羽たちに対して溜め息をつく。

 

「まったく、オレたちが超重武者マエカガ-meになっちまうじゃねぇか」

 

「ホントどっから仕入れてくんのよ、その知識!」

 

「ネタ元を出していいのか?」

 

「そういう話じゃないわ!」

 

 「誰かハリセン頂戴・・・・・・先端に柚子が付いてるやつ・・・・・・」と痛む頭を押さえる結希に星河が心配そうに声をかける。

 

「頭痛か? 早く寝た方がいいぞ」

 

「寝不足じゃないわよ!」

 

 今度は腹痛が彼女を襲いそうな日々である。




すまない・・・・・・作者はシリアスで終わると死ぬという不治の病にかかっているんだ・・・・・・。

シリアスと同じくらいネタが多い今回でした。
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