遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ   作:柏田 雪貴

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今回はそんなに開けずに投稿。

デュエルなしです。


四章
学園祭準備


 十月に入ったデュエルスクールは、早くも学園祭に向けての準備を始めていた。各学年、それまでの年と同じように手際良く準備を進める。

 

「誰かー男子ー、手伝ってー」

 

「やるぜ、何をすればいい?」

 

 ただ、去年までと違うことが一つ。

 

「如月くん。機材が届いたらしいから、職員室まで取りに行ってくれない?」

 

「わかった」

 

 遊羽が、このイベントに参加していることである。

 

「何か、如月ってちょっと変わったよね」

 

「そうだな。角がとれて、以前よりも丸くなったように感じる」

 

 休憩中の春樹が話し掛けてきた女子生徒に答え、作業に戻る。

 

「如月くん、これもお願いしていい?」

 

 今度は別の女子生徒から冊子を受け取り、確認をとる。

 

「おう、資料室でいいか?」

 

「うん、お願いねー」

 

 ヒラヒラと手を振られながら遊羽が教室を後にすると、そのやりとりを見ていた戦に虹花が話しかける。

 

「遊民君、あれは一体・・・・・・」

 

「真宮さんがわからないことを、僕がわかると思う?」

 

 虹花が遊羽のことについて訊こうとすると、先回りして戦が否定する。

 

「何か、丸くなったよねー。周りの子も言ってたけどさー」

 

 遥も聞いていたようで、会話に加わる。

 

「そのことはいいんですが・・・・・・」

 

「「?」」

 

 何かを言いづらそうにする虹花に、二人は疑問符を浮かべる。

 

「・・・・・・遊羽が他の女子と仲良くするのが、こう、何と言いますか、・・・・・・」

 

 そのことが自分でもよくわからないらしく、言葉を探すように額に手を当てる虹花。戦と遥は顔を見合わせ、

 

「「もしかして、独占欲/嫉妬?」」

 

 同時に、似たようで違う言葉を言った。

 

「嫉妬、独占欲・・・・・・そう、かもしれません」

 

 今まで、周囲に積極的に関わることがなかった遊羽。そのため、嫉妬するような要素はなかったのだが・・・・・・。

 

「私、結構重たい女かもしれません・・・・・・」

 

 それこそ、『死んでも側にいる』を実践しているのだ。一般人からすれば重いかもしれない。

 

「確かに、初めて会ったときに遊羽君がウィンドウィッチが欲しいって言ったら怒ってたよね? 独占欲強いと思うけど」

 

「カードにまで嫉妬って・・・・・・」

 

 記憶が蘇り、顔を手で覆ってしゃがみ込む虹花。戦は何か物足りないと遥と話すことにした。

 

「そう言えば、何で永野さんは放送部に入ったの? 男装してたのに」

 

 唐突な戦の質問に戸惑い、内容に恥じらって顔を赤くしながら、遥は話す。

 

「うぇ、えっと・・・・・・その頃、テレビで見た人に影響されて・・・・・・」

 

 少し、顔を逸らす遥。戦はニコニコ笑顔で前に回り込み、続きを促す。

 

「それで?」

 

「・・・・・・それだけです、はい」

 

 今度は俯いてしまった遥に戦はいい笑顔で続ける。

 

「遥って意外とミーハーなんだね」

 

「ぅひゃい!? な、名前は止めて!」

 

「期待してたでしょ?」

 

 うぐ、と一瞬言葉に詰まった遥。笑みが増す戦。

 

(ボク、結構調教されてないかなー!)

 

 戦の彼女になって良かったのかと、今更ながら後悔する。

 

「それで、どんな人だったの?」

 

 改めて、と質問を続ける戦に、遥はジトッとした目を向ける。

 

「・・・・・・またいじめる気だよねー」

 

「永野さんがそんな態度だと、ね」

 

 ノータイムで返された返事に、遥はうぅぅぅ~~~と唸り、

 

「・・・・・・その人、アナウンサーでエンターテイナー(自称)なんだけど」

 

 と、話し始めた。

 

「ゲリラで生放送したりとか、凄い楽しそうにしててさー。憧れたんだよ。他にも、エンタメデュエリストを名乗っていたりするよー」

 

 へぇ、と興味深そうに話を聞く戦に、遥はふと気づく。

 

(遊民君って、聞き上手なんだ)

 

 戦が自分についてを話すことは、少ない。その分、他人の話をよく聞くようになったのだろうか。

 

「ねー、遊民君って・・・・・・」

 

 遥がそのことについて訊こうとしたとき、教室の扉がガラリと開いた。

 

「ふぅ、何か色々頼まれたな。今までヘイト溜めすぎたか?」

 

「遊羽!」

 

 戻ってきた遊羽に、先ほどまでぶつぶつと何か呟いていた虹花が飛びつく。

 

「どうした、虹花?」

 

 ドラゴンとしての筋力で難なく受け止め、虹花に心配する眼差しを向ける。

 

「遊羽、私、重い女なのかもしれません・・・・・・」

 

「そうか」

 

 虹花が言うと、遊羽は何でもないかのように頷く。

 

「・・・・・・引かないんですか?」

 

「本当にどうしたんだ、虹花? 俺は虹花から引いたりしないし、嫌ったりもしねぇぜ」

 

 笑顔でそう告げる遊羽に、虹花は正気を取り戻す。

 

「そうですよね・・・・・・すみません、取り乱しました」

 

「おう、気にするな」

 

 そう言って、遊羽は作業に戻る。

 

「遊民、永野。お前らも働け」

 

 休憩を終了した春樹がそう声を飛ばすと、戦と遥も作業を開始し、虹花は書類関係で生徒会へ向かう。

 

「如月、これも運んでもらえるか? 事務室へ提出するものなんだが」

 

「いいぜ」

 

 追加予算要求などと書かれたレポート用紙を持ちながら、遊羽は関連してあることを思い出す。

 

(あー、後でアレを届けないとな・・・・・・宅配便で届くか?)

 

 因みにアレというのは遊羽が書いたドラグニティアームズ-レヴァテインの魅力について書かれたレポートであり『光と闇の竜』との王道コンボや『おろかな重葬』などで墓地へ送った『シューティング・クェーサー・ドラゴン』を装備し場を離れた場合に『シューティング・スター・ドラゴン』を特殊召喚するコンボや各ドラゴンデッキとの相性、そしてソリッドビジョンを使って撮影した様々なアングルからの写真やドラグニティモンスター装備時の武器の形状、更にはドラゴン族を装備した際のちょっとした変化についてなどが百枚ほどに収められている。後で三部ほどどこかの骨董品店に届ける予定だ。

 

 閑話休題(それはともかく)

 

「それにしても、よくやるよね。『コスプレメイド喫茶』なんて」

 

「うん、皆イベント好きだからねー」

 

 戦の呟きを肯定しながら言う遥だが彼女は本人の預かり知らぬ内に女子たちの間でそのメイド役をすることになっており戦に笑顔で試着させられる未来が待っていたりする。

 

「でも、メニューは焼きそばなんだよねー・・・・・・」

 

 女子は接客、男子は厨房。男子から普通は逆なんじゃないかという声も上がったが、遥のメイド服を見たがった戦によって密かに沈静化されている。

 

「それなんだけど、大丈夫みたいだよ? 遊羽君と四谷君が料理できるらしいから」

 

 戦がそう言うと、遥は驚いたように目を丸くする。

 

「四谷君はなんとなくできそうだけど、如月君もって意外」

 

 あまり知られてはいないが、遊羽は家事全般が一通りできる。休日には虹花と一緒に料理することもあり、その様子はさながら新婚のようだとレヴは語る。

 

「遊羽君の両親って、家にいないことが多いらしいから、そのせいじゃないかな」

 

「なるほどー」

 

 納得、というように頷く遥。しかし周りには『作業に戻れって言ってたろリア充な空気出すなよ後爆発しろ!』というオーラがひしめいているのだが遥気付かず、戦は故意に無視する。

 

 こうして、一年一組の学園祭準備は順調に進むのだった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 時刻は夜7時。

 

「戻ったぞー」

 

 ガラリと教室の扉を開けるのは孝之。

 

 三年生は今年で卒業のため、せめて最後のイベントくらい満喫させてあげようという教師の計らいにより、学校に泊まりで学園祭の準備をすることができる。そのため、三年生はほぼ全員が学校に残って作業である。

 

「おう。何買ってにかんだ?」

 

「安くなってた方界カード。ストレージ落ちてたぜ!」

 

「何カード買ってきてんだよ! 買い出しっつっただろ!?」

 

 クラス委員長が叫ぶと、孝之はいやぁつい、と頭を掻く。

 

「あまりふざけるなよ、孝之」

 

 星河も険しい表情で孝之の両肩に手を置き、詰め寄る。

 

「そうだ、銀、何か言ってやれ!」

 

 星河はああ、と頷いてから口を開く。

 

「何故俺を連れていかなかった!? クーポンがあると言ってあったはずだろう!?」

 

 ずこー、とクラスのほぼ全員がずっこけた。

 

「いやー、悪ぃ悪ぃ。オレも今回は流石に真面目にやろうと思ったんだぜ? そしたらそこのカード屋が今日までのセールやってるじゃんか。これはもう買うしかないと思ったね」

 

「その方界カードはどうするつもりだ?」

 

「んー、サブデッキとして組むかな。メインデッキは変えるつもりはないし」

 

 孝之の背後の精霊を気遣って発した星河の言葉に孝之が答えると、精霊たちも星河も安堵する。

 

「いや、そうじゃねぇよ。買い出しは?」

 

 仕切り直すように言ったクラス委員長のセリフに、孝之はてへぺろっとする。

 

「おい!」

 

「まあ落ち着けって。また行ってくるからさ」

 

「孝之、おれはチューニングガムを頼むわ。何か噛んでないと寝そう」

 

 追加オーダーを飛ばす日向。彼は昨日、プロデュエリストとしての仕事であまり寝ていないからだ。

 

「あ、じゃあ俺新作のあん栗棒!」

 

「私トマ棒でー」

 

「あたしプチトマ棒!」

 

 ならばと相次ぐ注文に、孝之はどこからかメモを取り出し書き込んでいく。

 

「へい、ご注文はうさぎでs違う以上でよろしいでしょうか?」

 

 何かを言いかけながらも店員のように言う孝之に、クラス委員長があ、俺も、と手を上げる。

 

「では、ごゆっくりどうぞー」

 

 それを鮮やかに無視して教室の扉を閉める孝之。

 

「え、ちょ、おい!」

 

「あー、怒らせちゃった」

 

「え、俺のせいなのか?」

 

「うん」

 

 近くの女子に頷かれ、がっくりうなだれる委員長。

 

 「俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇ!」という叫びが、夜空に響いた。

 

 

 

 その後、近所迷惑だと教師から苦情が届き、委員長は更にうなだれていたというオチも付けておく。




・・・・・・デュエルをする流れに持ってたいけない(汗

生徒全員が準備で忙しく働いているのにデュエルをする余裕があるはずない、という自分の認識がおかしいんでしょうか?

次回は頑張ってデュエル回にしようと思います。
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